ユネスコの勧告。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

ユネスコの勧告。

先日受講してきた「美術館でコラージュ療法」講座は、「博物館マネジメント人材育成事業」の一環である連続講座「2025年問題に向けた高齢者の健康と博物館の役割」の第一回目でした。

最初に事務局の緒方泉先生(九州産業大学美術館 教授)が、なぜこの事業を今立ち上げたのか、その背景について解説をしてくださったのですが、その柱になるものが、ユネスコの博物館に関する勧告でした。

2015年のパリでのユネスコ勧告があり、そのもっとずっと前に、1960年のユネスコ総会で採択された勧告で、既に博物館・美術館の地域社会でのあるべき姿・果たすべき役割について述べられていました。

1960年の博物館に関するユネスコ勧告について、日本では残念ながらほとんどその内容が国の政策として取り上げられていなかったのだそうです。海外で美術館博物館を訪問した時に感じる空気と、帰国して日本国内の美術館博物館で感じる空気の差異は、ここにも理由があったのだろうと、とても腑に落ちました。

1960年から2015年。日本はこの時点で約半世紀出遅れてしまったわけではありますが、それでも美術館・博物館の地域社会で果たす役割に光が当たるときがきたことは、とても嬉しいことだと思います。

現在、東京オリンピックの開催される2020年に向けて、文化庁では「文化芸術の振興に関する基本的な方針」なるものを掲げ、文化芸術の振興を図ろうとしています。たくさんの予算が使われていますが、打ち上げ花火のようなものばかりではないことを願うばかりです。

以下、ユネスコ勧告より部分抜粋。


博物館をあらゆる人に人に開放する最も有効な方法に関する勧告(仮訳)

(1960年12月4日 第11回ユネスコ総会採択)

(Ⅱ一般原則2.)加盟各国は、各自国内の博物館が経済的又は社会的地位に関係なく、すべての人に利用されるようあらゆる適切な措置をとる。

(Ⅴ地域社会における博物館の地位と役割 13.)博物館は、各地域で知的、文化的中枢として奉仕すべきである。よって、博物館は地域社会の知的、文化的背活に貢献すべく、地域社会はこれに対し博物館の活動と発展に参画する機会が与えられるべきである。


ミュージアムとコレクションの保存活用、その多様性と社会における役割に関する勧告

(2015年11月17日採択 UNESCOの勧告)

イントロダクション

  1. 文化及び自然の多様性の保護と振興は、21世紀における主要な課題である。この観点から、ミュージアムとコレクションは、自然と人類の文化の有形無形の証拠を安全に守るための、最も重要な機関である。
  2. ミュージアムはまた、文化の伝達や、文化間の対話、学習、討議、研修の場として、教育(フォーマル、インフォーマル、及び生涯学習)や社会的団結、持続可能な発展のためにも重要な役割を担う。(後略)
  3. この勧告は加盟各国に、ミュージアムとコレクションの保護と振興の重要性を喚起し、遺産の保存と保護、文化の多様性の保護と振興、科学的知識の伝達、教育政策、生涯学習と社会の団結、また創造産業や観光経済を通して、ミュージアムとコレクションが持続可能な発展のパートナーであることを確認する。

1960年の勧告のなかで、「観覧料はできる限り無料とすべきである。」とはっきりと書かれていることに驚きました。この一文を知っている人が、日本国内の美術館・博物館関係者がどれほどいるでしょうか。

というわけで、写真は入場料無料(寄付制)のロンドン自然史博物館(^^)