茶室「徳り庵」~名前の由来

こんにちは、ふじゆりです。

そういえば、まだこちらでちゃんとご紹介していませんでした。

花祭窯の茶室「徳り庵」

「とくりあん」と読みます。
変形三畳の狭小茶室です。

お茶室の定義は「茶を目的とした空間」
「自然」と「美」を感じるたたずまいでさえあれば自由な解釈が許されるものだとわかり、
徳り庵では「茶室はこうあるべき」にとらわれずにつくりました。

徳り庵の名前の由来は、ふたつあります。

その一、徳利(とっくり)

茶室に入ってふぅっと一息、おちついたら、まず天井を見上げてみて欲しいのです。
土壁がそのまま天に向かってすぼまっていきます。
徳利のなかから上を見たら、こんな景色かしら、という感じ。

花祭窯茶室徳り庵

↑この写真は、天井をつくる過程での骨組み図。
竹の力を借りてつくったこの曲線面に、土壁を塗って完成しています。

 

その二、徳不孤必有隣

「徳は孤ならず必ず隣有り」と読みます。
論語にある孔子の言葉です。
素読を通して親しんでいる論語の言葉からなにかもらいたいな、と思っていたところに見つけました。

意味は「たくさんの人と交わるなかで徳が養われ、親しく理解しあえる仲間ができる」というようなこと。
そんな仲間を迎え、お茶を飲み、語らえる場所でありたいという気持ちをこめて。

余談ですが
この名前を決めて数ヶ月後のこと。
ダンナが急に「あーっ」と大声。
いったいなにかと思ったら「これ、親父がよく書いてたんだ!」と。

20年以上前に亡くなった藤吉憲典のお父さんは書道の先生でした。
掛け軸や色紙に文字や水墨画をたくさん残していましたが、
生前、友人などが訪ねてきたときに、色紙や短冊に書いて差し上げていたのが
この「徳不孤必有隣」であったと、急に思い出したらしく。

これを聞いてますますこのお茶室の名前が気に入っています(^^)

 

 

写真を撮るということ。

こんにちは、ふじゆりです。

蕎麦猪口展に出す蕎麦猪口が窯からあがったところで、
昨日から写真の撮りなおしをしています。

写真を撮るのも大切な仕事のひとつ

16年前(!)はじめてネットショップをつくることを決めたときから、
写真撮影は大切な仕事のひとつです。

もともとカメラの趣味があったわけでもなく、まあ、ド素人。
デジタルカメラなるものをはじめて購入し、ああでもないこうでもないと
撮っても撮ってもどうにもならない時期をどれほど過ごしたことか・・。

今でも突っ込みどころ満載の写真撮りですが
デジカメがどんどん進歩してくれたおかげで、ずいぶん助けられています。

もちろん、ここぞ!という写真撮りはプロにお願いしています。

圧倒的に信頼しているカメラマン赤司憲壕さんの abc photo
https://www.facebook.com/abcphoto.jp/

ただ、写真を撮る必要性というのは日常茶飯事にやってくるんですね。
そのタイミングですぐプロにお願いできるわけではなく、
もしお願いできたとしても、そんなことをしていたらお金がいくらあっても足りなくなるわけで(笑)
これはもう、ある程度は自分でなんとかしなければならず。

そんなわたしの、長年の座右の書(!?)が
その名も 『標準デジカメ撮影講座』 。
2003年発行ですから、もう10年以上前の本なんですね。
いまだにときどき開く本です。

「標準デジカメ」つまりコンパクトデジカメのことです。
はい。わたしはずっとコンデジできています。

写真撮影のセミナーやワークショップに足を運んだり、撮影の上手な方にお話を聞いたり
試行錯誤もしましたが、自分の性格と身の丈にあったやり方は、この本でした。
不器用なうえに大雑把なので「こうすればいい写真が撮れる」の方法を教えてもらっても、
きちっと突き詰めることができないまま、今に至り(汗)
そんなわたしはこの本に助けられ励まされてなんとかやっています。

 

お客さまのひと言

先日、蕎麦猪口のお得意さまからお電話をいただきました。
いわく
「今回も素晴らしい蕎麦猪口が届いてとても満足しています。ありがとう。
それでね、ひとつ気になってることなんだけど・・・」

「ネットショップの写真、もうちょっと頑張っていい写真載せたらもっとお客さん来ると思いますよ!
フェイスブックとか見てたらいい写真もあるんだから、蕎麦猪口も撮りなおしましょうよ」

「よく、ネットショップで写真がすごく良かったのに、現物見てがっかりするってことがあるけど
藤吉さんのところは、かならず本物のクオリティのほうが高くて嬉しくなるんですよ。
だけど、それじゃもったいないじゃない!」

はい・・・。とてもありがたく、同時に自分の手抜きを恥じ入った次第でした。

というわけで、新しいものが焼きあがるタイミングで写真を撮りなおし、
ひとつづつ少しでもいい写真にと更新していっているところですm(__)m

 

そんなわたしの野望。

個展のたびに毎回赤司さんに初日の撮影をお願いする、
やきものが窯からあがる都度に撮影をお願いする、
なんて贅沢ができるようになったら素晴らしいな~!と思いつつ。

藤吉憲典 蕎麦猪口展

こんにちは、ふじゆりです。

熊本のビストロ&バーSUNNYさんで蕎麦猪口展

蕎麦猪口展の案内状がSUNNYさんから届きました!

蕎麦猪口展in熊本

熊本市水道町にある、ビストロ&バーSUNNYでの蕎麦猪口展は今年で三回目。
いつもスタイリッシュなDMをつくってくださるSUNNYのオーナー藤川さん。
今年はそこに添えられた言葉に、特別な思いが詰まっているのを感じました。

藤川さんとはSUNNYをオープンなさる前からのお付き合い。
SUNNYの1周年記念にと蕎麦猪口展のご相談を受け、即断でお受けしたのが2014年。
それから2周年目の昨年、3周年目の今年とお話をいただいています。

4月の熊本地震でお店にも被害があり、また余震がなかなかおさまらず
蕎麦猪口展の開催についても、延期や中止も頭をよぎったことと思います。
お店を再開なさるだけでもどれだけたいへんだったかと、
いろいろな思いを抱えたうえでの開催のご決断に、頭が下がる思いでした。

2011年の東日本の地震ときもそうだったのですが、
わたしたちはわたしたちの仕事で少しでも力になれたら、という思いを強く持っているので、
今回、このタイミングでSUNNYさんの熊本で蕎麦猪口展ができることに、あらためて感謝をしています。

60種類の蕎麦猪口が並びます!

現在160種ほどある蕎麦猪口のレパートリーのなかから、約60種類の文様が並ぶ予定です。
今からの季節に嬉しい涼しげな藍色の染付(そめつけ)はもちろん、元気の出る赤絵の文様も。

そして期間中に限り、熊本産の日本酒を蕎麦猪口で呑むことができる特別メニューも。

初日のランチ・カフェタイムには、つくり手もおじゃましていますので、
蕎麦猪口のこと、やきもののことなどいろいろとお話することも出来ます。

おいしいものを食べながら、呑みながら
蕎麦猪口のいろいろな文様を眺めて、あるいは手にとって楽しんでいただけると幸いです。
蕎麦猪口で、気持ちが潤う場のお手伝いが少しでも出来たら、とても嬉しいです。

わたし個人的には藤川さんのつくるカクテルがとても美しくておいしいので、特に大好きです(^^)
SUNNYドリンクメニュー http://sunny-bistrot.com/menu_drink.html

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Bistrot & Bar SUNNY 3周年
藤吉憲典 蕎麦猪口展
2016.6.25(土)~7.3(日)
*期間中も月曜定休
熊本市水道町4-39-2F
電話096-355-4188
http://sunny-bistrot.com

営業時間18-26時
水・土・日13-16時(ランチ&カフェ)、18-26時
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お近くの方も、遠方の方も、ぜひこの機会にお越しくださいませm(__)m

 

小皿豆皿のこと

こんにちは、ふじゆりです。

北部九州、梅雨入りのニュース。
小雨のなかに紫陽花があざやかです。

さて

小皿豆皿のこと

手塩皿とも呼ばれる径3~4寸ほどまでの小さいお皿。
写真のように、ままごとのような実用品です。

わたしが蕎麦猪口に次いで魅入られたのが、この小皿豆皿。
見て楽しい、使って便利、手のひらにのる愛らしさ。
蕎麦猪口同様、蒐集心をくすぐる小品です。

「こんなに小さくて、なんに使えるの?」という声を何度もお聞きしたことがありますが、
そのたびにお返事しているのが、「実はとっても使い勝手がいいんですよ」ということ。

刺身の醤油皿であったり珍味皿であったり、というのが一番簡単な説明の仕方ですが、
小皿豆皿でわたしが一番助かっているのは、来客時やちょっとした行事の食卓での使い方です。
塗りのトレーや重箱に豆皿を配置して、少しづついろんな料理を盛っていくだけで
あら不思議。華やかで贅沢な雰囲気になるんです。

小さなお皿ですから、盛り付けにたくさんの量は要りません。
料理というよりも、珍味や箸休めになるようなものでいいんです。
ありあわせのものをちょっとづつ盛れば、それだけでなんとなく格好がつく。

「準備の時間がないけれど、おもてなしの気持ちを表したいとき」に最適・最強だと感じています。
わたしは大雑把な性格なので、繊細で美しい盛り付けをするのは苦手。
なので、お皿に任せてしまおう、というわけです。

 

小皿豆皿を探す

小皿豆皿と聞いて、京都の「てっさい堂」さんを思い浮かべる骨董好きの方も多いと思います。
古伊万里も数多く扱っておられるてっさい堂さんは小皿豆皿など小品の充実も有名な名店で、
○○画報はじめ、さまざまな媒体で小皿豆皿の提供や、取材記事を目にします。

わたしも数回行ったことがありますが、毎回その品揃えに圧倒されます。
普段資料として写真でよく見ているものが、そのままたくさんあるというのはすごいことですね。
江戸時代の古伊万里の豆皿を手に入れることができます。

古伊万里の小皿豆皿を見たいならば、もう一箇所、おすすめはやはり
佐賀県の九州陶磁文化館にある柴田コレクションです。
美術館ですから、収蔵品の購入はもちろんできませんが、閲覧には最適です。

柴田コレクションには、江戸時代のさまざまな形・絵付の小皿豆皿があります。
時代を網羅した膨大な数のコレクションは、肥前磁器の宝です。
常設で専用の展示室があり、定期的に展示品が入れ替えられるので、何度でも足を運ぶ楽しみがあり。
骨董屋さんのようにその場で手にとって見ることは出来ませんが、生きた資料だとつくづく思います。

(補足)九州陶磁文化館では、収蔵品を手にとってご覧になりたい場合は、事前申請により、
その理由により許可がおりた場合には、学芸員さん立会いのもと手にとることもできます。

 

そして、最後にちょっとだけ宣伝(笑)

藤吉憲典の小皿豆皿は、こうした肥前磁器の歴史から学んで、復刻したり、あらたに作り出しています。
現在その数約40種。これからもまだまだ増殖しそうです。

「粋」ってなんだ!?

こんにちは。ふじゆりです。

まだ花祭窯として独立する1年ほど前のある日のこと。
有田のとある窯元で商品開発をしていたダンナは、
「粋なデザイン」の新商品をたくさん出せと社長に言われたのでした。

勤めから帰って来ての第一声

「粋」ってなんだ!?

独立してからもずっと、この言葉はどこかに引っかかっていて
ことあるごとに「これは粋なのか、粋じゃないのか」が気になるものの、
そもそも「粋とはなんぞや」を本質的にわかっているかと問われたら、その自信も無く。
「これは粋だ!」と断言できないままに月日は流れて。

そんななか、古本屋で見つけた、そのものズバリのタイトル「粋」。

その前文にこうありました。

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江戸後期、江戸の市民たちは、
「粋」という洗練された美学をもっていました。垢抜けて、しゃれていて、すっきりしていて
それは長い間の泰平が生みだした、
ゆとりと遊びの文化といってよいでしょう。

(中略)

そして「粋」のなかに、私たちが “豊かに活き活きと生きる” ための
重要な指針が秘められているように思えます。

(後略)

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そして「粋」を紐解くさまざまな写真と文章で構成されているのですが、
この本を一読してわかったのは「本を読んだだけでは『粋』はほんとうにはわからない」ということ(笑)

「垢抜けて、しゃれていて、すっきりしていて」「ゆとりと遊びの文化」が生み出したもの・ことを
実際にたくさん見て、たくさん触って・・・体・五感で感じる経験を積み重ねた先にしか
「粋ってなんだ!?」への解は無いように思いました。

果たして「粋ってなんだ!?」に辿りつくのはいつの日か。
そこをめざして、ものづくりに取り組んで行きたいと思うのです。

 

ところでこの本、資生堂さんの企画でした。

なるほど、資生堂さんといえば、これ。

以前にこのブログでも紹介しました、資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた
『美 「見えないものを見る」ということ』

本ふたつ

繋がっていますね(^^)

 

 

続々・蕎麦猪口のこと。

こんにちは。ふじゆりです。

蕎麦猪口(そばちょこ)のこと。

続・蕎麦猪口のこと。

と語ってまいりましたが、その最終回(の予定)。
蕎麦猪口にすっかり魅入られた理由、それは

蕎麦猪口の文様

江戸時代につくられた蕎麦猪口の文様の種類が数千にも及ぶという話を聞いて、
ひとつの形状にそんなにたくさんのデザインが実現するなんてすごい!」と感動したのが最初です。

骨董品や、その破片(陶片)、写真で見る資料に残っている文様の豊かさは見ていて楽しく、
なるほど骨董の蕎麦猪口を蒐集する方の気持ちがわかります。

草花、動物、干支、昆虫、爬虫類、幾何学文、文字、人物、山水、気象などなど

文様の題材にならないものは無いと思えるくらいに、デザインの宝庫です。

日本へのやきもの伝来のルーツとなる中国大陸・朝鮮半島の影響はもちろん、
インドペルシャ文化の流れを感じさせるもの、仏教文化に根ざしたものもたくさん。
そのうえに、日本独自の文化や環境が生んだ文様も加わっています。

身近で素朴な草花や四季を感じる風物の描写は、当時の陶工の周りにあった
豊かな自然を思わせます。

またおめでたい吉祥文様は、中国のやきものにも好まれて描かれていますが、
江戸の時代を反映した縁起担ぎ・駄洒落の効いたものもあり、
文様から日本の風俗文化を感じるものです。

蕎麦猪口という限られた形状に広がる文様の世界。
その面白さにすっかり取り込まれています。

こんな蕎麦猪口の文様の楽しさをもっと知りたい方へのおすすめ本は
「年代別蕎麦猪口大事典」です。

監修の大橋康二さんは、佐賀県立九州陶磁文化館名誉顧問。

九州陶磁文化館といえば、肥前磁器の研究・所蔵が素晴らしく、
特に柴田夫妻コレクションはその数も内容も秀逸で
藤吉憲典が最も勉強をさせていただいた場所。
やきものを志す方には、ぜひ通って欲しい美術館です。

6月9日は花祭窯の開窯記念日です。

こんにちは、ふじゆりです。

紫陽花が咲きはじめ、6月が目の前に迫ってきました。
本日は朝から宛名書きをしています。

6月9日は花祭窯の開窯記念日。

いつを開窯日=創業日にしようかというときに「ロックの日」で決定しました。
おかげで、結婚記念日は毎年忘れていますが、開窯記念日だけは覚えています。

佐賀・花祭での開窯から15年、+津屋崎に越してきて5年目
今年2016年は19周年で、いよいよ20年目に入ります。
毎年創業記念に催しごとをしているわけではありませんが、
時間と気持ちに余裕のあるときに、できるだけ感謝の気持ちを形にしようと思い立ち。

ほんの気持ちではありますが、開窯月を記念して
2016年6月1日~6月30日ご予約のうえお越しのお客さまにお抹茶一服差し上げます
※和菓子準備の都合上、必ず前々日までにご予約くださいませm(__)m

不定休でご予約の無い日はお休みすることもありますので、
ご来窯の前にご一報をお願いいたしますm(__)m

 

20年目を目の前に思うこと。

つくづく「人」に支えられてここまできています。
地域の方々、お取引先ギャラリーさん、お客さま、勉強会仲間、友人・・・。
ありがとうございます!この場を借りて、感謝申し上げます。

1997年「こんなに(景気の)悪いときに独立するの?」といろんな方から言われました。
藤吉憲典は佐賀県有田の複数の窯元で技術を身につけました。いわば有田焼。
当時有田ではやきもののメーカー・窯元がどんどん潰れていました。
でも、その後の20年でさらにメーカー・窯元は激減。いまだ底の無い悪循環のようです。

花祭窯はといえば、とにかくコツコツ亀の歩みで進んできました。
自分達にできること・したいこと・すべきことを、「つくるもの」についてはもちろん、
「販売先・販売の方法」についても試行錯誤を積み重ねています。
金なしコネなしで出発し、間違いや失敗もたくさんしてきましたが、
「何度失敗してもあきらめなければ終わりじゃない」という気持ちで続けています。

やきものは儲かる仕事ではないとよく言われます。
たしかにそうかもしれません。
でも「やきもので食べていく」と決めて、取り組んでいます。

20年目といっても、やっとなんとかスタート地点に立ったぐらいの気持ちだというのが正直なところです。
でも少しづつ、自分達にできることで社会に還元して行けたらいいな、という気持ちも出てきました。

今年から、少しづつですが計画していきます。
ひとつには肥前磁器(有田焼・伊万里・鍋島・柿右衛門などの総称)の技術・文化継承
もうひとつには、肥前磁器文化の楽しさを知ってもらう機会づくり。
計画が整い次第、あらためてご案内してまいります。

支えてくれる方々が「藤吉を応援していて良かった」と思えるような自分達でありたいと思っています。
これからも、どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m

 

続・蕎麦猪口のこと。

こんにちは。ふじゆりです。

引き続き蕎麦猪口のこと。

蕎麦猪口ってなに?

蕎麦猪口が最も盛んに作られたのは、江戸時代中期から後期
蕎麦やうどんが庶民の食文化として広まるタイミングで、蕎麦猪口も広まっていきました。
もともと小さな碗や小鉢が「猪口」と呼ばれていて、
蕎麦やうどんのつけ汁を入れる器、つまりお蕎麦用の猪口だから「蕎麦猪口」。
ところが江戸の当時には、まだ「そばちょこ」とは呼ばれていなかったようです。

猪口(ちょく・ちょこ)の語源は諸説あり、
中国語で盃(さかずき)の意味を持つ「鐘(しょう)」の発音から派生したという説が有力です。
「猪口」の漢字をあてたのは、器の形がイノシシの口に似ているからとか。

江戸時代当時の猪口は、小鉢や小碗の総称でサイズ・形・用途もさまざまでした。
料理を盛る、汁物を容れる、飲み物を飲むなど。
そうした猪口のなかから、蕎麦を食べる際の出汁を入れるに程好く、
蕎麦湯を飲むのに勝手の良いサイズ・形のものが蕎麦猪口と呼ばれるようになっていったようです。

なるほど、蕎麦猪口の用途が広く使い勝手の良い理由がわかりますね。

蕎麦猪口、どう使ってますか?

我が家でも、蕎麦などの出汁入れとしてはもちろん

●お茶・コーヒーを飲むとき
●焼酎お湯割りでもロックでも
●小鉢として和え物や汁気のあるものの盛り付け

など、常に蕎麦猪口が食卓にあります。

お客さまからは、ゼリー・プリンなどの冷果や茶碗蒸しなどの調理にもちょうど良いとのお声も。
そのまま食卓に出せるのも便利なのですね。

先日は、お世話になっている信金の担当者さんがお見えになり
「うちの支店の湯飲みがもう古くて汚くなってて・・・」と。
聞けばお客さま用の湯飲みが欲しいけれど、最近はコーヒー出すことも増えてきたということだったので、
どちらにも使える蕎麦猪口をおすすめしたのでした。

宝珠蕎麦猪口 藤吉憲典

蕎麦猪口だと一般的なお茶托のサイズとバランスがいまひとつなので、
うちは木製の銘々皿に載せてお出ししていますよ、と見ていただきました。
また、夏は冷たいものをお出しすることもあるということでしたので、
そういう場合には布製のコースターなどでも合いますよ、とお話したところでした。

 

と、とにかく使い勝手の良い蕎麦猪口。
ずぼらなわたくしは、蕎麦猪口に日々助けられております。

蕎麦猪口(そばちょこ)のこと。

こんにちは、ふじゆりです。

写真は昨年2015年のビストロ&カフェSUNNYさんでの蕎麦猪口展の様子。
今年も6月25日(土)から7月3日(日)まで開催です。

 

蕎麦猪口(そばちょこ)が好き

わたしの蕎麦猪口へのこだわりがはじまったのは2000年の年末。
江戸時代につくられた蕎麦猪口の文様の種類が数千にも及ぶという話を聞いて、
単純に「ひとつの形状にそんなにたくさんのデザインが実現するなんてすごい!」と感動し、
毎月2種類の新作をつくって紹介していきたいと計画を思い立ったのでした。

「花祭窯」独立から約3年が経ったところでした。
そもそもわたしはやきもののド素人からのスタートで、ド素人ですから、つくり手のたいへんさなど考えず。
ダンナはダンナで、これができたら自分にとってもすごい財産になると、やることを決意。

毎月新作の蕎麦猪口を紹介する「蕎麦猪口蒐集」なるメールマガジンを2001年創刊したのでした。

今でこそ「蕎麦猪口」と言ってすぐに何のことだかわかる人も増えてきましたが、
当時は「そばちょこ」と言ってすぐにわかるのは、一般の方では骨董好きの方ぐらい。
メルマガ「蕎麦猪口蒐集」もとても少ない読者数からはじまり、
一人増えた、また一人増えたと嬉しかったのを覚えています。

そんな時代にスタートした「蕎麦猪口蒐集」の読者の方々は、とても熱心かつマニアックな方々でした。
この計画が継続できたのは、ひとえに読者の方々の熱意によるものでした。
創刊から15年以上を越えた今も、藤吉憲典の蕎麦猪口のファンでいてくださる方が何人もおられます。
メルマガからのお付き合いで、10年以上経って初めて個展会場でお会いした、訪ねて来てくださった
なんてケースも少なくないのは、ほんとうにありがたく嬉しいことです。

 

さて毎月2種類の新作。
やきものの世界には「写し」の文化があり、古典の写し=江戸時代に描かれた文様をそのままコピー
ならば、それほどたいへんなことではなさそうにも思えます。

でも、古いものの良さを、もっと良くデザインしなおすところまでやらなければ、
わざわざ現代作家として手づくりでやる意味がありません。

わたしはクリエイターでは無いのでさっぱりわからなかったのですが、
既にあるものを、もっとよく「リデザイン」するのは実は結構たいへんなのだそうで、
当時のダンナはわたしがメルマガ原稿の締切日を言うたびに胃が痛んでいたのだそうです。

6年以上を経て、その間わたし自身の妊娠出産があったり生活環境が変わり
毎月の予定が遅れがちになったり、月に1種類しか出せなかったり・・。
文様数が150種以上になって、毎月2種のデザインというペースをお終いにしたのでした。

 

現在、藤吉憲典のつくる蕎麦猪口の文様は約160種。
メルマガ「蕎麦猪口蒐集」から、サイト「蕎麦猪口倶楽部」へとステージを変えて、継続中です(^^)

蕎麦猪口倶楽部 http://sobachoko.fujiyoshikensuke.com/

 

と、もっと「蕎麦猪口とは」とか、使い方についてとか、お役立ち情報も書こうと思っていたのですが
ついつい熱が入ってしまいましたので、今日はこのあたりで^_^;

 

 

 

インスタグラムをはじめてみたら。

こんにちは、ふじゆりです。

ロンドン・Sladmore Contemporary ギャラリーでの企画展も残すところ4日です。

海外ギャラリーでの企画展は、昨年のロンドンでのアートフェア参加に続く初体験。
4月、展示を前に「海外の方々に、陶芸家・藤吉憲典の仕事を知っていただく方法」を考えていたところ、
勉強会仲間のお友達がアドバイスをくれました。

海外向けに、インスタグラム

さっそく取り組んでみて、なるほど!
写真をアップし、その写真を説明するキーワードを「#(ハッシュタグ)+英単語」で付けていくだけ。
すぐに海外からの「いいね!」が飛んできました。

これは嬉しい(^^)

写真が主役なので、英文でアレコレ解説を加えなくても成立するのですね。
これは英語が使いこなせていないわたしにとって、とても助かります。
「いいね!」してくださる方も、直感的に反応してくださっているような感じがします。

ビジュアルイメージがすべてなので、写真の撮り方・選び方の腕と眼をもっと磨かねばなりません。

陶芸作家・藤吉憲典のアカウントでは、作品写真を中心に載せています。
https://www.instagram.com/ceramicartist_kensukefujiyoshi/

はじめてみてわかったのは、インスタグラムでは「写真による世界観」が重視されるようだということ。
試しにつくり手の顔の入った写真をアップしたら、あまり反応がありませんでした(笑)

 

仕事と、仕事の背景にあるもの

藤吉憲典の仕事(=作品)を知っていただくための方法をひとつ得た一方で、
「その仕事の背景にあるものも紹介していったら、興味のある人により楽しんでもらえるかも」
という思いが膨らんできました。

そこで「仕事の背景=作陶環境である場所・もの・こと」をビジュアルで紹介するために、
作家とは別に「花祭窯」のアカウントをつくってみました。
https://www.instagram.com/gallery_hanamatsurigama/

作品をつくる人とつくっている環境を知っていただくための場所が揃いました。
あとは、その世界観が伝わるように、コツコツとビジュアル情報発信です。

ビジュアルで伝える表現は、言葉の壁をらくらく越えることをあらためて実感。

言葉による説明ではなく、見たままに判断をゆだねるのは
藤吉憲典の陶芸の仕事と同じだ!と気づき、ますます面白さを感じている今日この頃。

ということは、なおのこと、わたしの写真の撮り方・選び方の腕と眼が問われますね・・・。
日々精進です。