ひさびさ京都(1)京都鉄道博物館

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

ひさびさ京都(1)京都鉄道博物館

1泊2日で京都に研修旅行に行ってきました。

まずは、梅小路の京都鉄道博物館からスタート。京都駅からバスに乗った人たちの顔ぶれから察するに、観光客よりは地元のお客さまが多いように感じました。世間が春休みに入る前、平日朝一番でしたが、オープンを待つ列ができていました。入場してすぐに新幹線ゼロ系との記念撮影スポットがあり、お姉さんがテンション高めで写真を撮ってくれるサービス。否応なしに気分が盛り上がります。

本館の建物に入る前に、プロムナードで並んだホームに実物列車の展示。このあたりの構成は、規模は違えど門司港にある九州鉄道記念館と同様です。いよいよ本館に入ると、まずその広大なスペースにびっくり。展示もロンドンの鉄道博物館をほうふつとさせる、あるいはそれ以上の充実度合。大規模で手の込んだ鉄道ジオラマも素晴らしかったです。

館内では機関車トーマスのスタンプラリーをはじめ、幾つものイベントが同時並行的に開催されていました。展示物やコーナー間のスペースが十分に広く確保されているので、子どもたちがはしゃいでもゆとりをもって眺めることができます。空間の取り方がとてもよく考えられている博物館だなぁ、と思いました。

そしてやはり梅小路といえば、扇型車庫と転車台。蒸気機関車がずらりと半円形に並ぶ景色は、圧巻で感動的でした。扇型車庫は国指定の重要文化財だったのですね。大人も子どもも楽しめる、テーマパーク的な博物館でした。

最後におまけのサプライズがありました。帰りの移動で京阪電車の交野線に乗ったところ、思いがけず車両が「トーマス列車」。鉄道博物館で「トーマスのスタンプラリー」を見てきた直後だっただけに、嬉しい驚きでした。

 

台湾・林先生からのお手紙。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

台湾・林先生からのお手紙。

一月に藤吉憲典が訪問した台南の芸術家・林文嶽さんからお手紙が届きました。

台湾で国宝級の陶芸作家である林文獄さんの芸術活動四十周年を記念するパーティーに参加し、工房とお住まいを兼ねた広大なスタジオに滞在したのでした。

書・水墨画・陶芸と活動範囲の広い林文嶽さんとたくさん話をするなかで、国や環境は違っても、文化芸術を心から愛し大切に思う気持ちと、芸術活動に取り組む姿勢、そしておそらく芸術家としての境遇にも共通点がたくさんあることが伺え、とても喜んで台湾から帰ってきたのでした。

台湾から帰国後に、お世話になったことへのお礼状を出していました。わたしは台湾語はやっと勉強をはじめたところで、ほとんど読むことができないのですが、美しい筆の文字と詩的な文章に、林さんからの気持ちが伝わってきて、とても嬉しく温かい気持ちになりました。

台湾語の堪能な友人に翻訳を頼んでみたところ「とても高尚な言葉遣いの文章」であることが判明。さすが現代の文人・林先生。ご縁にあらためて感謝の午後でした。

 

丹心萬古を照らす

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

南方流の初釜茶会では、色紙をいただいてまいりました。今年の色紙に書いてあったのが、これです。

丹心萬古を照らす

「たんしんばんこをてらす」。解説には「真心から出た行いは、何時の世でも尊いことで、その行いは明らかである」とあります。

少し調べてみたところ、国立国会図書館のリファレンス協同データベース大阪府立中央図書館から提供されている資料を見つけました。明代末の官僚、楊継盛(楊椒山)の最期の詩のなかの一節だそうで、「丹心照萬古」の言葉は全部で四種類の詩で見られるということです。そうのうちのひとつが『中国詩選 鹽谷温/著弘道館1948』にあるということで、以下引用しています。


「浩氣還太虚 丹心照千古 平生未報恩 留作忠魂補」

通釈に「我身に宿る浩然の気は、今われ刑に就いて身首處を異にせば、たちどころにこの身を去って太虚空漠の世界に還り、たとへ肉体は滅びても、赤誠は長く千載の後を照らし得るのである。されば余は死後忠魂となってこの世にとどまり、平素未だ無くゆるを得なかった国恩を補ひ報じようと思ふ」

国立国会図書館のリファレンス協同データベースより


不条理な死を遂げた楊継盛がもっとも言いたかったこと。

「真心から出た行いは、何時の世でも尊いことで、その行いは明らかである」

新年にいただいた言葉です。

 

学芸員技術研修会@大分市美術館。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

学芸員技術研修会@大分市美術館。

約一年ぶりに参加してまいりました、ふくおか博物館人材育成実行委員会が開催してくださる学芸員技術研修。

昨年に引き続き、齋正弘先生による「アート教育」の研修を受講してきました。齋先生は、宮城県美術館に準備段階から参画し、「教育普及部」で来館者への「美術探検」「美術館探検」を行ってきた、この道の達人。

昨年2016年の学芸員技術研修で齋先生の考え方を知り、

学芸員研修に行ってきました。

今年2017年の初めには息子を連れて宮城県美術館での「美術探検」「美術探検」を体験してきたワタクシ。

初!仙台に行ってきました。

今回の大分市美術館では、「美術」や「鑑賞」が「なにに、どのように使えるのか」を、身体感覚として覚えることを意識して受講してきました。人が人としてよりよく生きるために美術は使える。このことをあらためて確認することのできた一日でした。

 

文様の話、紫陽花。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

季節外れですが、久しぶりに色絵の紫陽花文様を描いてもらったので

文様の話、紫陽花(あじさい)。

紫陽花の文様も、江戸時代の古伊万里にも描かれている古典文様のひとつです。染付つまり藍色だけで描かれている場合が多く、それはそれで、藍色の濃淡による表情の違いがなんとも美しくもあるのですが、個人的に、より好きなのは、色絵で描かれた紫陽花です。

梅雨時は雨の日やはっきりしないお天気が多く、だからこそこの季節に花開く紫陽花の色彩の鮮やかさに心惹かれる人が多いのだな、と感じます。器に描かれる紫陽花もまた、色彩の鮮やかさが嬉しい。それが、わたしが「色絵で描かれた紫陽花」が好きな理由なのだと思います。

錦紫陽花文蕎麦猪口 藤吉憲典

紫陽花の花の楽しさは、小さな花(=ガク)の集合であること。これを丁寧に描いて可愛らしく美しく表現するのは、とても集中力が必要なようで。実際、描くところを見ていても、とても細かい作業の連続で、頭が下がります。

藤吉憲典のつくる錦紫陽花文蕎麦猪口はこちらからご購入できます(^^)

文様の話、唐草の美。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

文様の話、唐草の美。

自分のこのブログで「唐草」をキーワード検索してみたら、津屋崎等辺ミュージアムで紹介している古伊万里の陶片の写真が続々と現れました(笑)

唐草の文様のついた陶片をたくさん拾っている、ということなのです。それはつまり、唐草文様が、古くからずっと愛され続け、描き続けられている文様だということでもあります。力強い唐草、繊細な唐草、やっつけ仕事的に描かれた雑な唐草…。古の陶工たちが描いた唐草を見ていると、この文様の魅力の普遍性を感じます。

牡丹唐草(ぼたんからくさ)、微塵(みじん)唐草、蛸(たこ)唐草…ひとことに唐草といっても、モチーフは様々。唐草の蔓の中心に何を据えるのかによっても、バリエーションが無限に広がります。

日本だけではありません。中国からシルクロードを遡ってイスラム圏、ヨーロッパ。唐草が地域・文化圏そして時代を越えて愛されてきたことがわかります。そして、やきもの(陶磁器)だけでなく、さまざまなものに文様として取り入れられていることも、皆さんご存知の通り。

日本でやきものに描かれる唐草文様は生命力の象徴。子孫繁栄の願いが込められたおめでたい文様として描かれています。

 

文様の話、古典とオリジナル(2)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

文様の話、古典とオリジナル(2)

「やきものの文様はどこから生まれるのでしょうか」

ふたつめのこたえは、

日常の景色から生まれるオリジナル。

作り手・藤吉憲典を見ていると、日々の暮らしのなかで目にする自然の生きものが、一番文様の素材になりやすいようです。創業の地・佐賀県の花祭は自然豊かな里山で、四季を通じて折々の自然とのかかわりが密接でした。

草花や昆虫などの小さな生きものが文様のもとになるのは、江戸の昔も今も変わらないのだなぁ、と思います。上の写真のヤマユリも、下のナズナも、メダカも、藤吉憲典のオリジナル文様。

ナズナ皿 藤吉憲典 染付メダカ文蕎麦猪口 藤吉憲典

いずれも、古伊万里の古典文様にありそうでなかったものです。そういう新しいものを古伊万里の文脈に乗せて文様化するのも、藤吉憲典の得意技。

ときどき、有田などで作陶している若い作家さんがナズナやメダカを題材にしているのを見つけると、藤吉のデザインを見て真似ているのだろうということがわかります。なぜなら、古伊万里には無いものなので。でも、皆きっと「藤吉憲典が描いているから、あれは古伊万里の写しなのだろう」と思って、写しているのだと思います。

藤吉の生んだ文様が、彼らにとっての古典になっている部分もあるのだなぁ、とひそかに嬉しくなる瞬間です。

↓ひとつめのこたえ「古典の写し」については、こちらでご紹介↓

文様の話、古典とオリジナル(1)

 

文様の話、古典とオリジナル(1)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

文様の話、古典とオリジナル(1)

「やきものの文様はどこから生まれるのでしょうか」

お客さまからのご質問も多く、わたしもメルマガやブログでときどき思い出したように紹介する内容のひとつです。答えのひとつが、

古典の写し

藤吉憲典の場合、古伊万里の文様からの「写し」が8~9割強ではないでしょうか。やきものの世界にはもともと「写し」の文化があります。「写し」とは、古くからある良いものを真似すること。でもそれは質の悪いコピーを繰り返すこととは違います。「本歌取り」と似ているとわたしは思います。

「写し」で大切なのは、ただそのまま真似するのではなく、元よりももっと良いものにすること。古いものをそのままコピーしても、その評価は「古くさい」となってしまいがちです。そうではなく「なんだか懐かしい」と喜んでもらえることが、写しで大切なことだと思います。

藤吉は窯元時代から商品開発をしており、独立してからのキャリアも含めると30年近く、やきものの文様を生み続けていると言えますが、それを支えているのが、古伊万里の史資料です。古伊万里に大きな影響を与えた韓国や中国の陶磁器の歴史と文化もまた、その「元」になっています。

例えば江戸時代に文化の華開いた蕎麦猪口は、文様の種類が数百とも数千とも言われています。現在までに藤吉憲典が写し直している蕎麦猪口の文様は約160種。まだまだデザインの元がたくさんあるということです。

美術館や骨董やさんにならんでいるやきもの、たくさんの本や美術書でのデータ、そして津屋崎陶片ミュージアムで紹介している陶片の数々も、たいせつな史資料のひとつです。

次回は「オリジナル」について。

 

古九谷(こくたに)様式。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

本日5月26日(金)初日を迎える、東京西麻布の桃居さんでの「藤吉憲典 陶展」。見どころのひとつとして楽しんでいただきたいのが、

古九谷(こくたに)様式。
現代に藤吉憲典がつくると、こうなる。

先日のブログでご紹介した「柿右衛門様式」と同様に、

5月26日(金)は桃居さん個展初日。

「古九谷様式」を現代に解釈した器もぜひご覧いただきたいのです。

ともに赤絵(上絵)の技法ながら、鮮やかで華やいだ柿右衛門様式に対して、渋く滋味深い古九谷様式。この表現方法の幅広さに、日本人の感性の豊かさを感じます。

実は古九谷様式の色遣いは、アート作品にも取り入れていました。

藤吉憲典 サイ

古典的な古九谷様式からアート作品へ、そして食器へと戻ってきたらこうなった(トップ画像のマグカップ)。というわけです。

お時間ありましたら、ぜひお立ち寄りくださいませ。


藤吉憲典 陶展

2017年5月26日(金)~5月30日(火)
11時~19時(最終日17時まで)会期中無休

桃居(とうきょ)
東京都港区西麻布2-25-13
TEL03-3797-4494

 

 

続・仙台。青葉城編。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

仙台に行ってきました、青葉城編。

人生初の東北。もちろん地震後、初めてでもありました。飛行機が仙台空港への降下をはじめると、海~沿岸部が見えました。あちらこちらから土煙が上がっている様子も見えました。頭を下げて黙とうしました。

今回は大きな目的であった宮城県美術館ともうひとつ、仙台城跡(青葉城跡)に行って伊達政宗公の騎馬像に会うという目的がありました。

残念ながら仙台市博物館は休館中でしたので、今回はフィールドを満喫することに。地下鉄の仙台国際センター駅から徒歩で向かいました。

三の丸跡にある仙台市博物館の周りには、さまざまな銅像や記念碑があり、それらを観て回りながら、城跡へと近づいていきます。石段や山道っぽい坂を上っていくと、ところどころに地震の後の復旧の様子を記した立て看板。熊本地震のあとの熊本城にも行きましたが、仙台城跡にも被害の痕跡が。息子と一つ一つ確認しながら進んでいきました。

山道から大きな道路に出ると、目の前に急勾配の急カーブ。うわ~!これを登るのかと思いながら「これは攻めにくい城だっただろうね」と聞いてみると、戦国武将マニアの息子から帰ってきた返事は「だけど青葉城は実際は戦乱には巻き込まれてないんだ」と。なるほど。

息を切らしながら坂を上っていくと、立派な石垣が目の前に現れました。

青葉城

ここからさらにぐるっとひと登りして辿り着いた先に、騎馬像の政宗公がおられました。標高120メートルの山のうえから眺めると、広瀬川がお堀のようになっているのがわかり「立地を生かした山城」であることがひしひしと感じられました。

無事目的達成で、嬉しい初仙台となりました。