こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
先日読んだ、映画字幕翻訳のパイオニア・戸田奈津子さんと、米国における日本美術研究の第一人者・村瀬実恵子さんとの対談集『枯れてこそ美しく』のなかで、村瀬さんの教え子の一人が、日本の現代陶芸をアメリカに紹介して大きな成果を上げておられることを知りました。
ジョーン・B・マービスさんと、お名前が載っていましたので、さっそく検索。彼女自身による、日本の現代陶芸をアメリカに広めた経緯をまとめた書籍がすぐにヒットしました。2019年発刊と最近のものでしたので、これは読んでみなければと、手に入れたのでした。
カラー写真が豊富で、展覧会図録のような雰囲気です。テキストは、左側に日本語、右側に英語と、両方で書かれています。対談も含まれており、もとの原稿が日本語で書かれたものと英語で書かれたもの、両方あったようですね。翻訳には「和→英」「英→和」総勢3名の翻訳者のお名前が挙がっていました。これは、アート分野の英語学習にもかなり使えそうです。
日本の陶芸界で近現代名前が挙がる作家が紹介されています。「最近20年間における日本の現代陶芸に対する西洋の関心の盛り上がり、その背景にある様々な要因を、芸術的、経済的、社会的側面から探ってみたい」というのが、本書の第一の目的として挙げられていました。その魅力に日本人だけが気がついていない、とする著者の言葉には、並々ならぬ熱意を感じました。と同時に、「現代アート」に対して「陶芸」の地位が低く評価されることに対するいら立ちも感じられました。
アメリカの方々が日本の現代(近代)陶芸をどう見ているのか、何を見ているのか、その視点を探るのに、分かりやすい本です。また日本陶芸界の近代史をおさらいするのにも、ぴったりの内容でした。今後の海外市場へのアプローチに、このような視点があるということを知っておくことは、とても勉強になりました。
それにしても、戸田奈津子さんが好きで気軽に手に取った対談本『枯れてこそ美しく』から、自分の仕事に直結するようなヒントが広がってきたことの面白さ。やっぱりつながっているんだなぁ、と一人頷きました。
『世界を魅了する日本の現代陶芸』(光村推古書院)ジョーン・B・マービス著