ART FAIR ASIA FUKUOKA (AFAF)2023 観に行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ART FAIR ASIA FUKUOKA (AFAF)2023 観に行って参りました。

アートフェアアジア福岡(以下、AFAF)です。今年はVIPパスをいただきましたので、少し早め、混みあう前に観に行ってくることが出来ました。会場はマリンメッセ福岡B館。すっかり大規模アートフェアの様相を呈してきました。ホテル開催のアートフェアからスタートしたことを考えると、この数年で隔世の感があります。ホワイトキューブなブースが並ぶさまは、メディアでよく目にする海外の大規模アートフェアさながらの雰囲気でした。

120軒以上のギャラリーが出展するなか、効率よく回れるよう、あらかじめ見たいところを絞り、そこを目指す道々、目についたところに立ち寄る、という感じで会場を歩きました。今回わたしが「とりあえず外さずに見よう」と決めていたのは、みぞえ画廊、日動画廊、ミヅマアートギャラリー、小山登美夫ギャラリーと、先日AFAFのプレイベントでお話を聞いてきたコレクター・宮津大輔氏のキュレーションによる特別展示のコーナー。

さてAFAF。純粋に、楽しかったです!目当てを決めて動いたので、まったく通らなかったエリアもありますが、限られた時間で回る以上、そこは仕方がないと割り切りました。逆に、目に留まったブースでは時間をかけ、作品をじっくり拝見し、ギャラリストさんのお話を聞くようにしました。このギャラリストさんとの会話が、現在の日本の現代アート市場を垣間見るのに、とても勉強になりました。そして、自分の扱う作家さんへの愛情が強く感じられる方々にお会いすることが出来たのは、とても嬉しいことでした。

個人的に今回一番気に入ったのは、日動画廊-nichido contemporary artさんと、韓国から参加なさっていたGallery Upkasさん。特にGallery Upkasさんは、まったくノーマークで偶然見つけたのですが、韓国在住でアメリカにもルーツを持つという作家・Alika Yonさんの出す青とオレンジ色がとても美しくて、しばし見入りました。

全体の感想としては、いっときのような、コンセプトありきでコンテンポラリーのためのコンテンポラリーという感じだったり、すでに売れている誰かに追随した二番煎じ三番煎じの雰囲気ありありのものだったり、という空気感が少し和らいだ気がしました。もちろん、相変わらずそういう作品もたくさんありましたが。ただ、出展ギャラリー数が増えたことにより多様性が生まれて、「ザ・コンテンポラリー」の印象が薄らいだのかもしれないな、という好感は持ちました。わたし個人的には、嬉しい限りです。

また全体に若手を推し出すところが多かったようで、小品で10万円前後からのプライスがついているものが多々あり、自らの眼力で作品・作家を探し出す格好の機会となっていたように感じました。コレクション形成の最初の一歩を踏み出すのに、ちょうど良いアートフェアかもしれません。といいつつ、わたし自身は作品購入には至っておりませんが(笑)。

AFAFは、明日9月24日(日)まで。お時間のある方、ご興味のある方、ぜひ出かけてみてください♪

ART FAIR ASIA FUKUOKA (AFAF)2023

講演会『経営者のためのアートセミナー』-「教養」「投資」としてのアート-に参加して参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

講演会『経営者のためのアートセミナー』-「教養」「投資」としてのアート-に参加して参りました。

アジアをコンセプトとした唯一のアートフェア「アートフェアアジア福岡2023」が、いよいよ来週に迫って参りました。そのプレイベントとして、今年はスペシャルアドバイザーに就任しておられる宮津大輔氏の講演会が、9月に入ってから福岡市内で開催されています。わたしは福岡商工会議所が主催となった掲題の講演会に、参加して参りました。

もともと「サラリーマンコレクター」として有名だった宮津さんは、その後芸術系大学の修士・博士課程で学び直しをされ、現在は横浜美術大学の教授でいらっしゃいます。前回宮津さんの講演をお聞きしたのは、やはりアートフェアアジア福岡の関連イベントで、2019年のことでした。

4年前の講演備忘録を読み返しても、当時のワクワクした気持ちが蘇りますが、今回の講座はさらに「経営者に向けて」とのタイトルに寄せた、独特の面白さがありました。

以下備忘。


  • アカデミック&実践知としてのアート教養。
  • 「資産」であり「ファミリープライド」としてのアート。
  • コンテンポラリーアートとは「同時代性を持ち」「(西洋)美術史上の文脈で語ることが出来る」もの。
  • アート市場において、現代アートは53%の市場占有率を持ち、年々上がっている。←古い良品がほとんど市場に出なくなっているため。*公的美術館に入ったものは、余程の事情がない限りまず市場に出てこない。
  • オークション市場における国別占有率:米国42%、英国18%、中国17%。日本は1%。
  • 未だ日本人にとって美術は「観に行くもの」であり、「購入して手に入れるもの」になっていない。
  • アートの価格形成は、「ローカル」「ドメスティック」「グローバル」×「古美術」「近代美術」「現代美術」の掛け合わせによる。
  • 「現代アート」の台頭:Visual Art(目を楽しませるアート)からConceptual Art(社会課題を表現するアート)へ。
  • 第二次大戦後美術の中心は、パリ→NYへ/具象の時代→抽象の時代へ。
  • 1980年代~新自由主義。重厚長大のものづくりの時代から金融・ITの時代へ。
  • コロナ禍後の今は、中世の価値観がペストにより砕かれたルネッサンスの時代と似ている。*生き残ったモノだけが「古典」となる。
  • アートに描かれる、呪術・ローカル・民俗・宗教。
  • Look Back。世間一般の価値は、後からついてくる。
  • 優れたアーティストだけでは、価値創造・歴史化は不可能。
  • 「アートでありビジネス」は、成り立つ。例えば「チームラボ」。
  • ポーラ美術館・アルティゾン美術館:財団として本業の筆頭または上位株主となる=買収防衛となり、配当による利益を高額な作品購入に充てることが可能。
  • フランスー中東。アート輸出による資源確保(仏)/資源立国から観光立国への脱却(中東)。
  • 書道の起源は「彫ること」にあり。

講演会『経営者のためのアートセミナー』-「教養」「投資」としてのアート(宮津大輔氏)より


とても楽しく学びの多い1時間半でした。現代アート市場に挑戦していく側として、これまでのスタンスが間違っていないことを、再確認することのできる内容でした。この機会を作ってくださった、福岡市商工会議所とアートフェアアジア福岡実行委員会に心より感謝です。

『知識要らずの美術鑑賞』ご参加の皆さんからのご感想。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『知識要らずの美術鑑賞』ご参加の皆さんからのご感想。

福岡市美術館での美術鑑賞講座を開催してきましたのは、つい先日のことでした。

ご参加の皆さんからのご感想が届きました。今後の研修に生かすべく、以下備忘。


  • 今までこんなに作品をつきつめて鑑賞したことはありませんでした。
  • ひとつひとつの作品をじっくり鑑賞できて、とても有意義な時間を過ごしました。また美術館に行って、もっとゆっくり回りたいと思います。
  • 質問できるのがよかった。
  • 今日のような見方をしたことが無かったので、勉強になり楽しかったです。
  • 常設展示作品は観ていなかったので、今回鑑賞できてよかったです。
  • とても楽しく参加できました。ガイドの方もお話が上手で素直な感想が言えました。
  • 一つの作品をここまでじっくり観ることがなかったので、貴重な体験でした。みんなでワイワイ意見を出し合って見るのも楽しいですね。
  • とっても楽しく過ごせました。これからはゆっくりみてみようと思いました。
  • 日頃、なかなか来ることが出来ない、福岡市美術館を見学して、ボランティアガイドさんと一緒に説明してもらってわかりやすかったです。
  • 美術館は久しぶりで良かったです。説明していただき、自分だけでみるだけでなくよかったです。
  • 今日、見た作品、ちょっと不思議な作品でわかりにくかった。
  • 美術館、久しぶりでした。一人でゆっくり再度来てみたい。
  • 良かった。
  • たいへん楽しく参考になりました。
  • わからないと思った作品も自分なりに感じた事を言葉にし、見直すとちょっと違って見えるので見方が変わるようです。

美術館に行くこと自体が久しぶりだった、という方も少なからず、やはり一人で行きづらいという方もあるようで、「美術館への同行」のニーズを感じました。ひとつの作品に時間をかけて向き合う体験が初めてだったという方が多いのも、この講座では毎回感じることではありますが、あらためてこの講座を開催して良かったな、と思いました。そして何より嬉しかったのは「またゆっくり(美術館に)行ってみようと思う」というご感想がいくつもあったこと。コロナ禍をきっかけに、足を運ぶことが途絶えてしまっていた方が、また美術館に向かうきっかけとなることが出来たなら、とても嬉しいです。

郷育カレッジ講座『知識要らずの美術鑑賞』@福岡市美術館を開催してまいりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ講座『知識要らずの美術鑑賞』@福岡市美術館を開催してまいりました。

福津市民のための生涯学習システム「郷育カレッジ」。担当する美術鑑賞講座を開催してまいりました。今年は念願の「美術館訪問」がようやく実現。コロナ禍下では美術館への訪問が叶わず、昨年は福岡市美術館さんのアウトリーチにお世話になっていたのでした。

昨年お世話になったご縁で、引き続き今年は福岡市美術館の常設展示「コレクション展」を利用した教育普及のプログラムを活用。参加者約20名を4つのグループに分け、それぞれのグループにガイドボランティアさんが1名ついて、美術鑑賞をナビゲートしてくださいました。

ガイドさんは鑑賞用に使う題材の作品を選び、解説用の知識・情報を用意して、この日のために準備をしてくださったようです。各グループ、平面と立体を含めた3つの作品を題材に、対話型鑑賞を体験しました。参加者の皆さんは、「鑑賞」に意識を向けた体験が初めてだったようで、とても楽しんでおられました。

昨今、美術館・博物館では教育普及プログラムにとても力を入れています。今回の郷育カレッジ講座のように、館で既に提供されているプログラムを活用することが出来れば、講座の担当者が学芸員でなくても、有意義な講座を開催することが出来ます。特に公立の美術館博物館では、教育普及プログラムは無料で提供していることがほとんどですので、活用しない手はありません。

市民向け講座はもちろん、会社の研修などでも、美術鑑賞をはじめ美術を活用したカリキュラムを導入したいときは、ぜひお気軽にご相談ください。

福岡市美術館の常設展は、やっぱり見応えがあるのです。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福岡市美術館の常設展は、やっぱり見応えがあるのです。

9月に郷育カレッジで講師を務める「美術鑑賞講座」の打ち合わせのため、福岡市美術館へ。今年は久しぶりに郷育カレッジでバスが使えるため、現地訪問でホンモノを鑑賞する講座となります。昨年度もお世話になった教育普及担当学芸員さんと、福津市役所郷育推進課の職員さんとで、実際の展示空間の確認も含め、約1時間ほどの打ち合わせとなりました。

打合せでも常設展示室を回りましたが、せっかくここに来たのですから、じっくり見ない手はありません。打合せ終了後にあらためてチケットを購入。福岡市美術館の常設展は「コレクション展」と名付けられています。古美術をメインとした1階の展示室と、近現代作品をメインとした2階の展示室。実は特別展よりも見応えがある!ということもしばしば感じられるほどに、充実したコレクションをお持ちです。

まずは1階へ。「東光院仏教美術室」の十二神将は、常にここで勇ましい姿を見せてくれます。ちょうど8月は、来場者に十二神将カードをプレゼント!という嬉しいキャンペーンを開催していました。上の写真は、いただいたカード。2回入場しましたので、2枚ゲット!わたしの「酉(とり)」と、ダンナの「午(うま)」です。

そして毎回見ごたえのある「松永記念館室」。戦後の電力事業で財を成した松永安左エ門氏のコレクションは、定期的に展示入れ替えがなされていますが、相当数の素晴らしいコレクションなのでしょう、見るたびにうならされます。茶道具を数多くお持ちで、今回は「懐石の器-向付・鉢・酒器」でした。いやまぁみごとな顔ぶれで、ほんとうに欲しくなる器ばかり。

酒器は「預け徳利」と呼ばれるやや大きめの徳利と、組み合わせた盃をてんじしてありました。土ものも磁器もありましたが、いずれもそうそうたる存在感を放っていました。向付も形がばっちり決まったものが揃いであり、欲しくなりました。なかでも一番気に入ったのは、黄瀬戸の鉢。形、色合い、思わず手に取りたくなるような姿でした。松永記念館室の展示は、8月20日までで入れ替えとなりますので、茶懐石の器をご覧になりたい方は、ぜひ早めにお出かけくださいね。

1階を観終わった時点で、かなり満足度マックスでしたが、せっかくですから2階も回ります。こちらは年1回の展示替えで運営されている通年展示です。ちょうど2023年度の展示替えが、6月下旬に行われたばかりでした。福岡市美術館の近現代の所蔵品は、美術好きから高く評価されています。今回目についたものとしては、ポール・デルヴォーの「夜の通り」が新鮮でした。おそらく初めて見たかな、と。

特集コーナーでは「山好きな画家たち」のテーマで展示が組まれていました。この中で目に留まったのは、畦地梅太郎氏の木版画シリーズ。とてもひょうきんな人物描写とポップな色使いが可愛らしく、部屋に飾ったら楽しいだろうな、と思える作品群でした。また九州各地の山を油絵で描いた、田崎広助さんの絵も素敵でした。キャプションを読まずとも「あ、阿蘇山だ!」「あれは桜島?」とわかる姿で、親しみのわく絵画でした。

福岡は、この福岡市美術館と九州国立博物館が、特に常設展の見ごたえがあります。特別展のタイミングで足を運ぶ方の方が多いと思いますが、常設はお得な金額で素晴らしい作品を観ることが出来ますので、実はとってもおススメです。今回も大満足の福岡市美術館訪問でした。

学芸員研修会「回想法」に参加して参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

学芸員研修会「回想法」に参加して参りました。

九州産業大学の緒方泉先生が中心となって開催してくださる令和5年度文化庁「大学における文化芸術推進事業」の学芸員研修会、第一弾「回想法」に参加して参りました。これまでにも「博物館リンクワーカー養成講座」などで学んできた「回想法」。今回は初めての対面での研修となりました。

今回の研修会場は、大宰府にある九州国立博物館。昨年の学芸員研修では「ユニバーサル・ミュージアム」の会場としてお世話になりました。

研修スタートは、「博物館浴」の実験から。九州産業大学・緒方先生がデータを収集している「博物館浴」の実証実験、その被験者を初体験。美術(博物)鑑賞をする前と後とで、血圧や脈拍、本人の自覚症状がどのように変化したかを測定し、有意差があるかどうかを調べるものです。これまでに全国50館以上の美術館・博物館での実験データを集め、全国的に関心を集めている実証実験です。今回は、データをとるところまでで、実験結果の考察は、また別の機会になります。

続く本日のメインイベント「回想法」講師は、北名古屋市歴史民俗資料館専門幹の市橋芳則先生。館の愛称が「昭和日常博物館」。細部にまでこだわった資料収集は1993年からスタートし、「昭和の回想」が可能な館を作り上げてこられています。筋金入りの実践者。昭和日常博物館での「回想法」の実践と積み重ね、継続の仕組みには、他の追随を許さない専門性を感じます。

以下備忘。


  • あらゆる博物館で可能になる「対話ツールとしての」回想法。
  • 「回想法」の再定義。
  • わたしの考え:すべての博物館資料は顕在的・潜在的に「人間のルーツ」に関わるものである。
  • →だからこそ、あらゆる博物館資料が、回想法の材料となり得る。
  • 対話ツールとしての回想法:来館者と展示、来館者とコミュニケーター(学芸員や支援者)、来館者と来館者…
  • それぞれの「知識・経験」をもとに解釈する=同じものを観ても、そこから受け取るものはそれぞれ。
  • =対話型鑑賞法と同じ。
  • 博物館資料・展示を、参加者の経験のなかに入れ込む。
  • 必ず「参加者は何に興味があるのか?」からスタートし、そこに立ち返ること。

学芸員研修会「回想法」北名古屋市歴史民俗資料館専門幹の市橋芳則先生 より


そして今回も、リアル会場での研修だからこその、グループワークを楽しみました。会場は大好きな九州国立博物館4階の文化交流展示室とあり、何度も来たことのある場所ですが、他者の目に見えているものを共有することで、新しい気づきがたくさんありました。各地の館の学芸員さんのお話を伺うのは、とても楽しく学びも大きく。

いつもありがとうございます!

博多阪急個展、振り返りと備忘。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博多阪急個展、振り返りと備忘。

博多阪急さんでの藤吉憲典展は、初の福岡での商業個展であったとともに、

初の、百貨店さんと一緒に作り上げる個展でもありました。

百貨店さんがお持ちの様々なノウハウに触れる機会になったとともに、通常の「運営はギャラリーさんにお任せ」個展とは異なる部分も多く、いろいろと気づきや反省点もありました。

以下、振り返り&備忘。


  • 集客は結果としてほぼ自前(百貨店集客はほぼゼロ)
    ・ハガキDM
    ・プレスリリース→西日本新聞記事
    ・『美の壺』→サイトやSNSチェック
    ・設置ハガキ・チラシ(→印刷数量は適正。終了後残ってしまっていたので、もっと外部に事前設置・配布するべきだった。知人友人への設置依頼など)
    ・サイト・ブログ・メールマガジン経由
  • 百貨店内に入ってからの会場案内の不備
    →百貨店内での案内・フロア周知徹底の必要性
  • 次回以降は作家在廊日は通常ギャラリー開催と同様に2日程度で。
  • 販促商品販売は成功
    →3000円程度までの価格帯で「来場記念に持って帰るもの」の価値大。(→手ぬぐい制作)
  • キャプションボード等、GOOD!
  • 書画の額装・表装無し状態での展示方法は、今後要検討。
  • 書画の額装・表装方法やそれにかかる金額についての案内を、ボード化してわかりやすく掲示した方がオーダーしやすかったかも。
  • 芳名録、レイアウト悪くはないけれ、より改良できそう。サンプル探し工夫を。
  • 設営準備は前日夕方(15時ごろ)からでOK。設備業者さんの都合と合わせることを考えると、その方が待ち時間等を少なくすることが可能。

と、こんな感じでしょうか。花祭窯おかみとしてはもちろん、展覧会のキュレーション担当学芸員としても、反省点&学ぶことの多い展覧会となりました。だからこそ、何年経っても新しい取り組みに積極的にチャレンジすることが大切なのですね。ほんとうに勉強になりました。

また思い出したことがありましたら、随時追加していこうと思います。

商業個展の展覧会を作る仕事。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

商業個展の展覧会を作る仕事。

2023年7月19日(水)から開催の博多阪急さんでの藤吉憲典個展に向けて、準備のやりとりがそろそろ賑やかになってきています。

今回の博多阪急さんでの個展は、展示計画をこちらで主導する形になるのが、通常の藤吉憲典の個展と異なります。ふだんは作品を送るだけでギャラリーさんに任せっぱなしの仕事を、博多阪急の担当者さんと、設営業者さんとやりとりをしながら、一緒に進めています。

会場となる博多阪急3階にある「特別室」は、ふだん藤吉が個展でお世話になっているギャラリーさんと比べると広めになります。加えて、入口から本会場へのアプローチとなる通路も展示スペースとして活用できるので、より会場全体を楽しんでいただくために「何をどこにどう展示するか」は、頭のひねりどころです。

展示のためにどのような什器を用いるのか、どのような配置が効果的か、阪急さんでの多種多彩なイベントを手掛けておられる設営業者さんが、これまでの知見からさりげなくアドバイスをくださるので、たいへん助かっています。おかげさまで、選ぶ・決める場面でもほとんど迷うことなく、スムーズに進んでいるのが現在のところ。

今回の個展がふだんのギャラリーでの個展と大きく異なるのは、キャプションボードや動画を活用すること。作家の略歴だけでなく、肥前磁器の歴史年表、工房のある津屋崎と肥前磁器のかかわりなど、作品の背景となる文字情報を展示することで、これまで肥前磁器に馴染みの無かった方々にも、より深く展示作品を楽しんでいただける空間にしたいと思っています。まさに博物館学芸員(キュレーター)の仕事のひとつ「展示活用」。そしてその点は、2021年に福岡アジア美術館で開催した藤吉憲典個展での経験を、そのまま生かすことが出来ています。

そのうえで、商業個展は物販が主目的となるのが、美術館の展覧会とは大きな違いです。観ていただいて、「いいね」と言っていただいても、売上につながらなければ、成功とは言えません。そのシビアさがあるからこそ、たいへんだけれども面白くもあります。

イベント告知から会場設営、そして会期中の対応まで、博多阪急さんでの個展は、いわばチームで進めている感じがあります。わたし的には、これまでにあまりなかったケースなので、とても楽しく学びの多い仕事となっています。

ぜひご来場くださいませ。

藤吉憲典個展 博多阪急

藤吉憲典個展 陶芸彫刻書画

会期:7月19日(水)~7月25日(火)
時間:10時~20時(最終日のみ17時閉場)
場所:博多阪急3F特別室(フロアマップは下記URLでご覧いただくことが出来ます)
https://www.hankyu-dept.co.jp/hakata/floor/3f.html

今年も学芸員研修会が開催されます。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年も学芸員研修会が開催されます。

九州産業大学の緒方泉教授が事務局を務める学芸員研修会が、今年度も開催されるとご連絡いただきました。2013年に博物館学芸員資格課程を修了し、2016年度の研修に初めて参加してから、もう8年目になります。当時(今もですが)どこの美術館・博物館にも所属していない身で、ダメで元々と申し込んだところ、快く受け入れてくださったのが最初のご縁でした。上の写真は、一連の学芸員研修会のなかで、最もインパクトを受けた出会いとなった、日本での美術教育(アートエデュケーション)の第一人者・齋先生の講座での成果物。

コロナ禍下ではオンラインでの「語り場」形式での研修もスタートし、オンラインとオフラインの両方で研修を継続してくださったのは、ほんとうにありがたいことでした。今年も両方での開催です。

  • 博物館を活用した「健康寿命」増進プログラム開発のための学芸員研修会
  • 博物館リンクワーカー人材養成講座 オンライン語り場「地域住民の健康を支える方法を考える」

各研修会の詳細・最新情報は、九州産業大学美術館ホームページの「お知らせ」からご覧いただくことが出来ます。研修会への参加対象は、博物館関係者、医療・福祉従事者、大学教員、学芸員有資格者、博物館学を学ぶ学生等となっています。美術(館)と健康・福祉のかかわりに関心のある方におすすめです。

↓これまでにわたしが参加した研修の様子は、こちらでご覧いただくことが出来ます↓
ふじゆりスタイル 学芸員研修

再読書『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

再読書『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著

再読書。本書に出会ったのは、5月の連休中のことでした。一度目はさらっと通して読みましたが、刺さる部分が多くて、これはあらためて要点箇条書きしておきたい!と思ったのでした。

以下、備忘。


  • 日本の美術教育はこうした実技、つまり「お絵かき教育」に偏重しており、欧米と違って美術鑑賞や美術史を教えることがほとんどない
  • 元来、美術というものは(中略)言語と同じく、ある程度の素養が必要であり(中略)こうした知識は日本の学校教育では得られないが、美術館に足を運び、適切な美術書を読むことによって培うことが出来る。
  • 古今東西を通じて造形文化が存在しない社会や文明は無い。美術は分け隔てなくあらゆる人間に作用するものである。
  • 美術は美術館にあるものばかりではない。かたちあるものすべてが美術になりうる。
  • 個人的な趣味ではなく、ある造形物が社会的・文化的・歴史的な意味や価値を持つとき、それは美術作品となり、そのうちでとくに質が高くて力のあるものが多くの人に見られ、語られることによって、名画や名作になるのである。
  • 美術は文字と同じく知性を動員してみて考えるべきものである。
  • 西洋では古来、美術は文化の中心とみなされてきた。そのため多くの国では、日本とちがって、美術をどう見るかという美術史が義務教育に組み込まれている
  • 小型のものを愛する日本人の美意識
  • 名画は公共のものであり、人類の遺産として本来すべての人に鑑賞されるべきである。しかし、ほんとうに価値の分かる個人に大事に所蔵され、愛される方が名画にとっては幸福ではないのか
  • そこ(博物館や美術館)に行けば、その地の文化や歴史についての概略を手早くつかむことができる
  • ミュージアムの真価は、情報よりも本物のモノに出会わせてくれることにある。
  • 情報を得るにしても、モノと対面することは、書物や映像から得られるのとはちがう臨場感とある種の緊張感を伴うものだ。
  • ミュージアムの文脈とは、その地域の歴史や美術史、民族史や自然観といった、西洋の近代的な価値観に基づいた思想である。
  • ミュージアムを必要としないということは、モノが本来の環境で生きているということ
  • 当初の空間にある方が美術館の明るい空間よりもよく見えるのが当然である。
  • 大事なのは、ミュージアムの文脈だけでモノを見ないで、当初の環境の中でとらえること
  • ロンドンのナショナル・ギャラリー(国立絵画館)は、世界一バランスの良い美術館
  • 感覚を麻痺させる酒は、日常と非日常、人間と神とを媒介する手段であった。
  • 天才が酒によって詩作したということが称えられるのは、きわめて東洋的である。
  • (西洋では)彼らの作品が酒の力によって生まれたと考える者はいないし、それを称賛する言説もないだろう。
  • 日本人の自然観や美意識は、花や紅葉に彩られた恵まれた自然だけでなく、こうした美術の名品の数々によっても培われてきたのである。
  • 彼ら(狩野派)の古典学習は徹底しており、雪舟や南宋水墨画をはじめとする膨大な古画を忠実に写し取っていた。(中略)そして彼らが室町や中国の古典をどん欲に吸収して後世に正確に伝えたことによって、日本の絵画伝統が受け継がれ、その質が長く保たれたのである。
  • 日本的な枯淡の美やわびさびの美意識とは対極にある、見ようによっては悪趣味でキッチュなもの(中略)こうした過剰な美こそが、現代の美意識に合致するようになったのかもしれない。
  • 西洋や中国とちがって、日本の伝統的な山水画の多くは、人間と融和した平和で親密な自然を表現するものであった。
  • 実物と対峙する重要性
  • 通常の展覧会であれば、作品群が撤去された後の展示室は、そこにあった絵画や彫刻の気配や、展示風景の記憶を濃厚に留めている。
  • 作品のある空間に身を置いて作品と対面する体験がどれほど大切か
  • 宗教は美術の母体
  • 広く民衆に働きかけていた壁画芸術や民族芸術の生命力
  • そもそも世界遺産という制度自体が、欧米の価値観に基づく一元的なものにすぎない
  • 美術作品は文脈によって意味が与えられる
  • 芸術も永遠ではない。人類の芸術は三万年ほど前に遡るが、今後また三万年もたてばほとんどの芸術は忘れ去られ、跡形もなく消え去っているにちがいない。優れたものが残るとは限らず、すべて偶然の作用次第である。
  • 出会うべき人間は人生のしかるべきときに会っており、(中略)そして美術館や展覧会で出会う美術作品もそうである。
  • 最後に見たい絵というものがあるとすれば、何がよいだろうか。
  • 美術は宗教と同じく、根本的な救いにはならないものの、ときに絶望にも寄り添うことが出来る存在(中略)ある種の美術にはそんな力があるはずだ。

『名画の生まれるとき 美術の力II』(光文社新書)宮下規久朗 著より


ずいぶん長くなってしまいましたが、わたしにとっては響く示唆の多い一冊でした。上の写真は、本著で「世界一バランスの良い美術館」と評されたロンドンのナショナルギャラリー。