こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著
いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。「ヒール」の単語を見て「プロレスのヒールになぞらえた小説かな」と思いながら借りてまいりました。読み始めてすぐに、そのまま「プロレス」のお話だと判明。ストレートなタイトルでした。
著者の中上竜志さんは、本書の前作となる『散り花』で第14回日経小説大賞受賞なさっているのだそうですが、それも「プロレス小説」だったとのこと。日経BPの公式サイトによると “「プロレスを書きたい」という強い思い” が「プロレス賛歌」の受賞作を書かせたということで、それに続く本書『ヒール』もまた、その「強い思い」の延長線上にあるといえそうです。
さてストーリーは、章ごとに何人もの登場人物の視点から描かれます。それぞれの立ち位置からの葛藤が語られ、章を読み進めるほどに全体が見えてきました。本書に限らず、プロレスを語る時に必ずと言っていいほど出てくるのが、エンターテインメントであるプロレスを、「真剣勝負」と呼べるか否かについての議論。わたしが小学生の頃には「プロレス=八百長」というような話題は、子どもたちの間でも熱く交わされていました。それをひとことで八百長と呼んでしまうのは少し違うと思っても、ちゃんと説明する言葉は持っていなかった頃のこと。
小学生の頃にテレビでプロレスを見ていた者としては、とても興味深く入り込めるお話でした。当時わたしが好きだったスタン・ハンセンやタイガー・ジェット・シンは、そういえば「ヒール」だったんだよなぁ、などと思いつつ。プロレス小説では長いこと、中島らも著『お父さんのバックドロップ』が、わたしのなかでは一番で、1993年に出た文庫版が今でも手元にあります。
遡って『散り花』も読もうと思います。