読書『忘れられた巨人』(早川書房)

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『忘れられた巨人』(早川書房)

カズオ・イシグロ作品。

早川書房編集部による解説の表現を借りるならば「神話や歴史を取り込んだファンタジー仕立てで、これまでのイシグロ作品を読んできた読者は不意打ちを食らう」であろう本。全編読んだ後にこの解説を読み、なるほどと思いました。

これも解説で知りましたが、物語の設定を位置付ける要素を「道具立て」というのですね。『忘れられた巨人』では、道具立ての要素として「アーサー王」という時代設定があり、「鬼・竜・魔女」といった空想上の存在がありました。

ただ、だからといって単純に「歴史小説」「ファンタジー」とならないところが、この物語の深みであったように思います。ではジャンルは何かと問われると、よくわかりません。作者的には「ラブストーリー」だそうで、そういわれて見ればなるほどと思えなくもありませんが、この際ジャンルは何でもよいように思います。

とても考えさせられる本でした。歴史小説的・ファンタジー的道具立てでありながら、現在をリアルに生きるわたしたちにも突きつけられるものがありました。その普遍性があるからこそ、目が離せず、夢中で読んでしまうのでしょうね。

これまでにも、イシグロ作品にビックリさせられることはありました。個人的には特に『充たされざる者』。読みながら募る「?」、上下巻すべてを読み切ってなお残る「?」。なので今回の物語も、たしかに不意打ちではありながら「なるほど、今回はそういう展開なのね」と落ち着いて受け止めることができたように思います(笑)