キンコーズで四苦八苦―「スキャンする」はけっこう難しい仕事だとわかりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

キンコーズで四苦八苦―「スキャンする」はけっこう難しい仕事だとわかりました。

藤吉憲典の書画作品をシルクスクリーン版画にするのに、原画が出来上がったら、それをデータ化する作業があります。昨年秋に初めて制作に取り組んだ時は、原画が大きかったということもあり、最初からプロの「スキャニングやさん」にお願いしたのでした。今回は原画のサイズがすべてA2~A3以内でしたので、キンコーズで可能なサイズということで、自分でできるかなと、いざキンコーズへ。

とはいえ近所にはありませんので、博多へGO。最初にJR博多駅地下のキンコーズに行ったところ、そこにはA3までの機械しかないということで、A2まで可能な筑紫口側にあるお店を教えてもらいました。歩いていける距離に複数のキンコーズがあるなんて素晴らしい♪と思いながら移動。タイミングよくお客さんも少なかったので、店員さんに設定方法を教えてもらいながら、いざトライ。プレビュー画面で確認しながら無事USBメモリに保存完了で、会計に向かうと「画像確認なさいますか?」と店員さんがおっしゃってくださいました。聞けば店内のパソコン利用は、画像確認だけなら無料でできるということでしたので、お借りしてチェックすることに。

大きな画面で見てみると、もしかしたらそうなるかな、と心配していたことがそのまま画像に取り込まれているのが見えてしまいました。もとが和紙に描いた書画なので、水墨の水分を吸った紙が微妙に凸凹になり、影の部分ができてしまうのです。そして、予想以上に影響があったのが、和紙の紙質でした。紙の種類により、表面の微妙なざらつきが、光の跡のように残ってしまいました。裏打ちをしてからスキャンしたら多少はいいのかなぁ、などと思いつつ、現状ではこれがわたしにできる精いっぱい。とりあえず一度データを版画職人さんに見ていただいたうえで、これでは厳しいということならば、プロのスキャニングやさんにお願いするべし!という結論に達しました。前回、スキャニング屋さんにお願いしたときも「和紙に水墨画」という条件は同じでしたが、余分な影を残すことなくきれいなデータに仕上げてくださっていました。やはり違いますね。

それにしても、わたしのスキャンデータの結果はともかく、キンコーズはとっても便利でありがたいサービスです。何かあるごとに使いますが、その頻度はさほど多くはありませんでしたので、今回足を運んでついでに、どんなサービスメニューがあるのか、見て回ってきました。11月の合同商談会の準備に使えそうな項目も多々。いざというときのキンコーズですね。

読書『狼の幸せ』(早川書房)パオロ・コニェッティ著/飯田亮介訳

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読書『狼の幸せ』(早川書房)パオロ・コニェッティ著/飯田亮介訳

いつものカメリアステージ図書館。先日読んだ『帰れない山』(新潮社)が素晴らしかったので、著者追っかけです。本書は最新刊のようですね。早川書房さんからの出版で、訳者も変わりましたので、興味深く読みました。早川書房の公式サイトでの紹介では「山岳小説」と書いてあり、ということは『帰れない山』も山岳小説だわ!と妙に腑に落ちました。「○○小説」とジャンル名が付くと、説明しやすくなり、整頓しやすくなりますね。たまに「そんなジャンルなのか?」という感じのものもありますが。

さて『狼の幸せ』。前作同様、映画にしたらさぞかし美しいだろうな、と思える舞台でした。主要登場人物4名それぞれのストーリーも面白く。巻末の訳者あとがきで、著者が「ずっと書きたかった恋愛小説に本書で挑戦した」とあり、恋愛小説だったのだとわかりましたが、恋愛以外の要素のほうが、わたしには面白かったです。恋愛の要素を入れなくても、じゅうぶんに読み応えのあるストーリーだったんじゃないかな、と。そうそう、最初に気になった「訳者が変わった」件は、まったく気になりませんでした。

というわけで、『帰れない山』ほどの切なさやインパクトはありませんでしたが、読んだあとに、自分では見たことのない山々の景色を思い浮かべて、その美しさに酔うことのできる本でした。パオロ・コニェッティ氏、今後の作品も楽しみにしたいと思います。

『狼の幸せ』(早川書房)パオロ・コニェッティ著/飯田亮介訳

合同商談会当日まであと約4か月-試行錯誤の出展準備進捗状況。

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合同商談会当日まであと約4か月-試行錯誤の出展準備進捗状況。

ここ最近のブログのタイトルを眺めていたら、我がことながら、インプットに偏っているように見えてきました。単にブログに書きたくなる内容が、そういう性質ものもだということではありますが、一応「アウトプットもしていますよ」のアピールも(笑)。

長年お世話になっている地元信金さんからのお誘いで出展を決めた展示商談会。個展や企画展には慣れていますが、展示ブースを作ってのBtoB商談会というのは、花祭窯にとってはほぼ初めて(正確には二度目、一度目は2013年ジェトロ大阪主催の海外セレクトショップバイヤー向けの小規模のもの)ですので、1月にお話をいただいてから、関連情報を集めてきました。お友だちの「せっちゃん」こと展示会活用アドバイザー・大島節子さんの著書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)が、とても強い味方です。

情報を集めても、良い本があっても、自分たちの現状と出展の目的に合った形で実行に結びつけなければ成果は得られません。というわけで、ここまでの進捗状況と、これからのスケジュールを確認。


完了

  • 目的・ゴール設定
  • 事前商談マッチング申込
  • 事務局への事前連絡事項提出
  • ブースレイアウト決め→備品・電気申込

これから

  • 商談会用パンフレット制作
  • 商談会用名刺制作
  • ブース設置用作品サンプル準備
  • 動画準備
  • パネル準備
  • 直前準備リストの制作

このように書き出すと、項目数としては意外と少ないような気もします。が、ひとつひとつはそれなりに時間のかかる仕事です。特に、作品サンプルの準備は、そのキャプション制作も含めて手間暇がかかります。「まだ時間があると思っていたら、あっという間に当日になりますよ!」を肝に銘じて、早め早めに動いていきたいと思います。

2025年映画4本目は『国宝』-話題作をやっとこさ観てまいりました♪

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2025年映画4本目は『国宝』-話題作をやっとこさ観てまいりました♪

六月は博多座大歌舞伎のチケットをとっていましたので、映画『国宝』をどのタイミングで観るかな、と考えておりました。6月初旬の公開から、あちらこちらで評判を聞くにつけ、これはロングランするな、と思いましたので、博多座大歌舞伎の後にすることに。

映画の日。お客さん多いかもな、と思っていましたが、ほんとうに多くて驚きました。満席ではなかったものの、わたしがここの映画館で観るようになってから、こんなに席が埋まっていたのは初めてかもしれません。観客が多い=映画館の存続につながりますので、とても嬉しいことです♪

さて国宝。なんといっても舞台のシーンが見応えありました。これはたしかに「映画館で観るべき」ですね。博多座の舞台演出を思い出しながら、映画で舞台裏をちょっぴり垣間見ることができたような気がして、わたしにとってはこれ以上ないグッドタイミングでした。映画のなかで出てきた歌舞伎の演目に興味が沸いたのも、良かったです。この映画をきっかけに歌舞伎ファンが増えるかもしれませんね。

実は当初「約3時間」の長さが気になって「どうしようかな」と思っていたのですが、これも先に観ていた皆さんがおっしゃったように、まったく長さを感じさせませんでした。映画館に観に行ってよかったです。ここ数年「長い」を理由に観に行かなかったものがいくつもありましたので、反省の機会になりました。興味の沸いた作品は、上映時間にかかわらず観に行った方がいいですね。

読書『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)羽田圭介著

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読書『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)羽田圭介著

いつものカメリアステージ図書館から先日借りてきた、羽田圭介さんの短編集『バックミラー』の「日常版滅びの美学」のインパクトが大きかったので、今回も羽田氏の著書を借りようと思っていたら、ちょうど図書館の貸出カウンター横の特集コーナーに本書が並んでいました。わたしの心の声が司書さんに聞こえたかしらと思いつつ、即座にゲット。

10年前の芥川賞受賞作。だからというのではもちろんありませんが、おもしろくて、一気に読んでしまいました。短編ではありませんが、長編という感じでもなく、サクッと読めます。家族小説であり、介護がテーマでもあり、深刻にしようと思えばいくらでもできる材料を、軽くいなしている感じがなんとなく痛快でジワジワ来る、不思議な感覚でした。

「死にたか(死にたい)」が口癖の87歳の祖父と、「死にたい」の手助けを不自然でない形でやろうと決意した主人公と、家族に甘える祖父に我慢の限界が近づいている主人公の母(=祖父の娘)。それぞれのセリフが面白いです。特に祖父の行動とセリフの端々にあらわれる、「イラつく要素」の描写が秀逸です。祖父の方言は長崎弁のようで、祖父の気持ちの載せ方がうまいなぁと思いました。そのニュアンスがよくわかるわたしとしては、思わず笑ってしまいました。

ラスト、思いがけない終わり方に唸りました。全編を通して、そしてラストも、大きな事件やイベントは起こらず、日常の延長線上にある展開なのですが、そのなかでこれだけ面白く読ませることができるんだなぁと思いました。そういえば『バックミラー』も「日常版滅びの美学」でしたので、「日常」の絶妙な切り取り方が、著者の持ち味の一つなのかもしれません。ほかの著書も読んでみようと思います。

『スクラップ・アンド・ビルド』(文藝春秋)羽田圭介著

読書『帰れない山』(新潮社)パオロ・コニェッティ著/関口英子訳

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読書『帰れない山』(新潮社)パオロ・コニェッティ著/関口英子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。新潮社のサイトで本書の紹介文を見て気づいたのですが、2022年に映画化されていたのですね。日本でも公開されていました。これは映画館で観たら、さぞかし見ごたえがあっただろうな、と思います。日本では2018年に本書刊行で、2023年に映画が公開されていたようです。映画を見逃したのは残念でしたが、本書を仕入れてくださったカメリアステージ図書館に感謝です^^

久しぶりに、ガッツリと重く残る本に出合いました。『帰れない山』はイタリアで権威ある文学賞を受賞し、世界39か国で翻訳されているそうです。読み始めたところから最後まで、切なくて切なくて、なにがこんなに胸に迫ってくるのだろうと不思議でした。というのも、主人公と父親との関係も、主人公と友人との関係も、まったく自分と重なるところはなく、単純に共感するものではないのです。訳者あとがきを読んで、その理由がなんとなくわかりました。だからこそ、世界中で共感を呼んだのだろうと理解できました。

著者のパオロ・コニェッティ氏は今回初めましてでしたが、訳者の関口英子さんのお名前は見覚えがあり。ブログに読書記録を残しているだけでも、『「幸せの列車」に乗せられた少年』、『マルナータ 不幸を呼ぶ子』の二冊がありました。出版社・訳者の方が素晴らしい本を届けて下さるおかげで、こうして読むことができます。感謝感謝です。

上の写真は、わたしにとっての「山」である、花祭。山というよりは、山間の谷であり、里山と呼んだほうが正しいです。わたしが生まれてからこれまでに暮らした場所は、10カ所を超えますが、そのなかでもっとも自然環境の厳しい場所でしたし、限界集落で人の去っていく様、土地が放棄され寂れていく様をリアルに目にした場所でした。そこに暮らしたのは15年ほどでしたが、わたしのこれまでの人生のなかで、現時点で最も長く暮らした場所でもあります。住んだのは結婚後でしたから、幼少期を過ごしたわけでもありません。なのに、そこに行けば「帰ってきた」という感じがする。わたしにとっては、花祭が「山」なのだなぁと、本書を読み終えて思いました。

『帰れない山』(新潮社)パオロ・コニェッティ著/関口英子訳

「1年を通して畑の作り方・野菜の作り方をまなぶ」畑レッスン進捗状況その4。

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「1年を通して畑の作り方・野菜の作り方をまなぶ」畑レッスン進捗状況その4。

造園家であり花や野菜を作りハーブの専門家であるガーデンアルテさんの畑で「1年を通して畑の作り方・野菜の作り方を、一緒にやりながら教わる講座」。今年2月からスタートしたレッスンも、気が付けば来月で半分経過です。1年間続くかしらと思いながら参加しましたが、当初の心配をよそに、ほぼ毎週畑に行くことができています。毎回、学ぶこともやるべき作業もたくさんあって、なんといっても楽しい!この調子だと、あっという間に1年間が過ぎそうです。半年後に自分一人でも家庭菜園を作れるように、毎回の畑作業を記録しています。


(16)5/31(土)曇 15/23℃

  • キヌサヤ収穫。
  • トマト苗の周りのレタスミックスを収穫。
  • トマトの支柱を立てる。1本の支柱に麻縄で緩く結びつける「同包スタイル」。
  • ミニカブ、ミニ大根、ビーツを間引き。
  • ラディッシュ、サラダミックスは収穫でお終い→抜いてしまう。

(17)6/7(土)曇 19/27℃

  • キヌサヤ収穫→花が咲いている間はOK。花が終わって黄色くなってきたらお終い。
  • ジャガイモ収穫→あとに枝豆の種まき。
  • ニンジンのウネ(隣の列)にモロヘイヤの種まき。モロヘイヤはウネの中央に指で筋をひいて浅めに蒔く。
  • キュウリの葉っぱの虫除けに、銀色のきらきらしたテープを周りに巻く。
  • ミニカブとミニ大根は収穫でお終い→抜いてしまう。

(18)6/15(日)曇 20/28℃

  • キヌサヤ収穫。花がまだ咲いているので来週あたりまで。
  • トマトの伸びた部分を支柱に結びつける→支柱に対してトマトの茎をまっすぐ立てることによって、成長ホルモンがまっすぐに伝わって良く伸びる!
  • ビーツは成長点(葉っぱの付け根)が土の上に出ていることが大切。
  • ニンジンは7月まで成長させて大丈夫。
  • レタスミックスはそろそろお終い。大きいもの、詰まって生えている部分はばっさり収穫。
  • プランタ栽培のパセリは花が咲いたらもうおしまいになるので、次のものを植える。

6/21(土)曇 20/26℃

  • キヌサヤ撤収→育ちすぎたり黄色くなったさやは、採ってそのまま乾かし、秋植えの種にする→サヤを乾かし、乾いたら種を取り出して、種も乾燥させて、カビないように保管。
  • トマトの伸びた分を結ぶ。
  • ビーツ、ニンジンの大きくなったものを収穫。
  • キュウリ、シシトウの周りにボカシ肥料を少し追加。軽く一掴み、苗の周りにぐるりと撒いて浅く土をかぶせる。

現在の畑作業のペースは、週末に2時間前後です。だいたいは2時間を少し超えてしまいますが、それでも月換算して10時間ぐらい。ふだんデスクワークが多いので、適度に体を動かして運動になるのが、とても良い感じです。花祭窯から自転車で10分かからない場所にあるので、足を運びやすいのもよいです。そしてなんといっても、ささやかながら収穫も手に入れることができるのですから、ありがたいことです。

そしてこれはスタートしてから実感したのですが、レッスン用ということでとても小さい(約2×2m)畑なのが、わたしにとっては体力的にも気分的にも負担にならず、GOODです。これより広いと、「頑張ってやらなきゃ」となりそうで、それは嫌だな、と。指導してくださる先生からは「自分でやるときは、もっと広いほうが、いろいろなものが植えれますよ!」とおっしゃいますが、今ぐらいのほうが自分にはちょうど良いかな、と。

半年後に自分でスタートできるように、そろそろ近所に畑を探しはじめたいと思います^^

読書『バックミラー』(河出書房新社)羽田圭介著

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読書『バックミラー』(河出書房新社)羽田圭介著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。著者名になんとなく見覚えがあるような、と思いながら手に取りましたが、初めましての作家さんです。開いてみたら、短編集。勝手に長編だと思って借りてきたので、おや、と思いましたが、読み始めたらどれも面白いというか、可笑しいというか。とにかく一気に読みました。

これまでに書いたなかから厳選したという12編は、どのストーリーも全く異なるシチュエーションながら、登場人物に対する斜に構えたような目線が見えるようで、読後感がまったく爽やかではありませんでした(笑)。読了後に開いた河出書房新社サイトでの本書の紹介文に、『令和の《没落小説》、爆誕! 日常版「滅びの美学」』と書いてあり、そうか、そういうジャンルかと思わず納得。さすが出版社さん、言いえて妙、の解説です。恥ずかしくて、切実で、どうにもならないもどかしさがあって、深刻さと笑いが同居しているというか、そんな感じです。

本書巻末に載っていた情報で、著者のことを知りました。17歳で文藝賞を受賞してデビューなさっていたのですね。その後、芥川賞も受賞しておられるということで、だからなんとなくお名前に既視感があったのかもしれません。本書は著者の初めての短編集だったということですので、今度は長編を遡って読んでみようと思いました。

『バックミラー』(河出書房新社)羽田圭介著

久しぶりに歌舞伎―『六月博多座大歌舞伎』を観に行ってきました。

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久しぶりに歌舞伎―『六月博多座大歌舞伎』を観に行ってきました。

博多座での観劇自体かなり久しぶりで、歌舞伎というともう前に見たのがいつだったかしら(笑)…というほど。千穐楽の三日前、博多座内はたくさんのお客さんでにぎわっていました。開演前の売店周りの賑わいに巻き込まれると、博多座に来たわ~、と気分が盛り上がります。お弁当屋さんやらお土産屋さんやらフォトスポットやら。ウキウキとした気分になる上質な空間づくりは、やっぱりすごいなぁと思います。

わたしが観に行ったのは「昼の部」でした。テレビだったか新聞だったか、ローカルメディアで目にしたインタビューで、中村勘九郎さんが「今回特にお昼の部は、歌舞伎初心者の方でもわかりやすく楽しんでいただける演目だと思います」とおっしゃっていたので、鵜呑みにして伺いました。とはいえ、あまりにも「まっさらな状態」で臨むと「ストーリーについていけなかった!」という事態になりかねないことは経験上知っていましたので、あらすじと配役が記されたチラシだけいただき、開演までに目を通しました。

演目は『引窓(ひきまど)』、『お祭り』、『福叶神恋噺(ふくかなうかみのこいばな)』の三つ。勘九郎さんのお話のとおり、いずれも分かりやすく、事前にあらすじを読んだ効果もあって、ちゃんとストーリーのなかに入っていくことができました。ついつい、所作の美しさ、動きと音の不思議さ、舞台装置の面白さに見とれてしまうのですが、今回は「人情もの」のお話もしっかり味わうことができたのが良かったです。鑑賞者としてのわたし、ちょっぴりは成長したのかもしれません(笑)。前から10列目ほどの席で、舞台上の演者の表情の変化がちゃんと見えたのも嬉しかったです。

個人的に一番気に入ったのは、勘九郎さんの踊りがメインの『お祭り』。たまにテレビで見かけるイメージとはまったく違っていて、「この人こんなに色気があったのね」と驚愕。これは「一幕見券」でもう一度観たいかも!と思ったものの、千穐楽まで残り2日で断念しました。『引窓』では橋之助さん演じる与兵衛が素敵でしたし、七之助さんが可愛らしかった『福叶神恋噺』はローカルネタを入れ込むなどサービス満点で、時折笑いに包まれながらの観劇でした。

久しぶりの歌舞伎、とっても楽しくて大満足でした。それにしても、勘九郎さんに対して持っていたイメージがガラッと変わりました。次、機会があれば、ぜひ七之助さんの女形が際立つような演目を拝見したいと思います。

読書『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

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読書『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

映画『国宝』が大ヒット中ですね。「絶対映画館で観るべき!」というお友だちが続出するなか、いつものカメリアステージ図書館で目に留まったのが、吉田修一さんの既刊本である本書でした。『国宝』はさすがに誰か借りてるよな、と思っていたところに視界に飛び込んできたので、借りることに。2022年の発刊ですので、約3年前ですね。新聞かなにかの書評で目にして「これは読んでみたいかも」と思ったのを覚えていますが、そのままになっていました。

吉田修一さんの著書は、映画化されているものも多いですね。わたしはこれまで『悪人』を読んだだけだったと思います。妻夫木聡&深津絵里という、個人的にはかなり魅力的に感じる配役で映画化されていましたが、観ていません。長崎県出身の吉田修一さんが描く『悪人』の舞台は福岡・佐賀・長崎だったので、「ああ、あの辺のことだな」とわかる場所が何カ所も登場し、本を読みながらそれらの場所の現実的な景色が鮮やかに頭に浮かんでいたので、そのイメージを壊したくなかったのかもしれません。

さて『ミス・サンシャイン』。発刊当初に書評を読んで興味を持った理由の一つが、著者が「長崎=原爆」にどういうアプローチをするのか、というところでした。わたしは10代~高校卒業までを長崎県内で育ったのですが、本書にも何度も出てくるように、長崎県では8月9日を語り継ぐための「平和学習」にとても力を入れています。公立学校では8月9日は「登校日」になっていて、毎年平和学習が続けられます。今もそうなのかな?少なくともわたしが育った時代はそうでした。吉田修一さんは1968年生まれとなっていましたので、がっつり同世代。そんな方が、どんなふうに小説に載せるのか興味がありました。

文藝春秋の公式サイトでは、「僕が恋したのは、美しい80代の女性でした」というフレーズで、本書が紹介されています。たしかにそのような物語なのですが、そのサイトに女優の吉永小百合さんによる推薦コメントが掲載されているところが、注目です。吉永小百合さんは、テレビドラマで体内被曝をした役を演じてから、ずっと反戦・反核の運動をなさっている人。推薦コメントには、そのような文言は一切含まれていませんが、「作家の故郷への思いを 私は今、しっかりと受け止めたいです」とおっしゃっていて、そのことが何を指しているのかは、著者と同じような平和教育を受けてきた者には、明らかでした。

長崎の原爆を現代から見る小説としては、カズオ・イシグロ著『遠い山なみの光』が、わたしのなかには印象的に残っています。こちらは今年、映画が公開されるということで話題にもなっていますね。広瀬すずさんが主演。今年初めに見た映画『ゆきてかへらぬ』の広瀬すずさんがとても良かったのと、もちろんカズオ・イシグロさんの原作も興味深く読みましたので、これは観に行かねばと思っています。

『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著