津屋崎千軒民俗館「藍の家」で、展示「戦時下のくらし」を見て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

津屋崎千軒民俗館「藍の家」で、展示「戦時下のくらし」を見て参りました。

藍の家(あいのいえ)は、花祭窯のご近所さんです。国登録有形文化財。建物自体の価値・見応えもさることながら、館内で開催される展示やイベントにも工夫を凝らしておられます。なかでも、季節ごとに定期的に開催されているものは、年々資料も増え、どんどん重厚な展示になっていると感じます。

そんな、季節の定期開催の展示のひとつが、夏季に開催されている戦争関連の展示です。現館長さんになられてからの取り組みで、その展示企画への共感・反響が大きく、年々資料が増えているもののひとつだと思います。展示最終日の先日、閉館前に滑り込みで拝見してまいりました。

今年は特に「証言」を多数集め、資料としておられました。「証言で考える戦時の暮らし」。自分たちが暮らしている福津で、どのようなことが実際に起こっていたのか、その地に暮らしている(暮らしていた)方々の生の証言だからこそ見えてくるものが、とてもたくさんありました。

一学芸員としてなるほどと感心したのは、展示物となる資料は遺物にこだわらなくても、証言自体をテキストに起こし展示することによって、立派に展示資料となるということ。証言者の顔写真を添えることで、より力のある展示となっていました。「伝えたい」という展示側の強い気持ちが形になっていました。

また展示されていた遺物のなかで、やきものの仕事関係者として目を引いたものは、磁器製のフォークとナイフ。金属類がすべて供出に回されたあと、磁器制作の技術がその代替として活躍したことがわかります。手に取ることが出来ましたので、触って見たところ、フォークの先はしっかり尖り、ナイフの刃もシャープでした。実際の使用感はわかりませんが、このようなものを作っていたのですね。

それにしてもすごいなぁ、えらいなぁと思うのは、市の所有物でありながら、運営を担っているのは「藍の家保存会」というボランティア団体であること。市からの予算がとても小さいなかで、さまざまな工夫で社会教育施設としての役割を担っておられます。文化・教育関連の予算がないがしろにされているのは、そもそも国の方針がそうなので、福津市だけの課題では無いかもしれませんが。ともあれ、現館長さんはじめ、藍の家のスタッフの皆さんには、頭が下がります。

今年の展示は終了いたしましたが、また来年の夏に向けて、資料収集が進むことと思います。日本では、夏は戦争と平和を考える季節。ぜひ来年の夏は、藍の家でいかがでしょうか。特に、教職など子どもたちの教育に関わる立場にある方々には、ぜひ足を運んでいただきたい内容です。自分たちの住んでいる場所の名前が出てくる資料は、反戦映画など「他所での昔の出来事」ととらえられがちなものよりも、切実さを伴って伝えることが出来ると思います。また来年、次は会期の早いうちにご紹介できればと思います。