読書『美しき人生』(河出書房新社)蓮見圭一著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『美しき人生』(河出書房新社)蓮見圭一

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。タイトルの文字の並びに惹かれて手に取った一冊です。上の写真は、ある雪の日のサザンカの花ですが、こんな読後感でした。

校長先生の、生徒に向ける講話が素晴らしいため、卒業式などの学校行事に校長先生の話を聞きたいがためにやってくる卒業生たちがいる、という、現実的にはあり得ない(!?)エピソードから、物語がはじまります。主人公と思しき構成作家がその先生の話を聞きとる、という形をとりながら、わたしたちが読むのは校長先生のストーリーそのもの。いわば二重構造的なのですが、それがまた物語に深みを与えているのも確かだと思いました。

なぜ校長先生が、生徒たちに向けて「いい話」をすることが出来るのか、その理由が次第にわかってきます。恵まれた環境で育ってきたわけではない少年時代、たくさんの失敗と後悔、周りの人に助けられたありがたさを抱えた青年時代を経てきたからこそ出てくる、これから人生をこぎ出す生徒たちに向ける言葉。単なる「いい人」ではない校長先生の人間味が、ひしひしと迫ってきます。

出版社である河出書房新社のサイトでは「両親の顔を知らずに育った校長・真壁が語る秘められた切ない恋と愛の奇跡」と紹介されていました。たしかに「恋と愛の奇跡」の物語ではあるのですが、そうして文字にしてしまうと、なんだか軽く感じてしまうような、重さのあるストーリーでした。

蓮見圭一さんの著書は、これまた初読みでした。『水曜の朝、午前三時』という大ベストセラーがあるようですので、こちらも遡って拝読したいと思います。

『美しき人生』(河出書房新社)蓮見圭一