こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。表紙の装丁の文様が気に入ったのと、やはり「イスラエル」が気にかかりました。これまでにイスラエルの作家が書いた小説を読んだことがあるかどうか、定かではありません。おそらく無いのでは、と思います。
古今のいろんな作家さんによる、短編・掌編サイズの物語の傑作選。一つ一つの作品の後に作家の略歴解説がついているのが、とても親切でした。どのお話をとっても、イスラエルという国の地理的な位置づけ、歴史的な位置づけを強く意識させられました。そのような周辺情報無しでもストーリーそのものを味わえますが、少しの知識を足すことで解釈が進み想像力が喚起される側面があるのも事実です。最初の一話を読んで、まずはイスラエルの位置を確認し直し。上の写真は、我が家の壁に貼ってある世界地図から。こういうときにすぐに確認できるので便利です。
前半に集められた、いわば現代の小説家の方々による短編が、とても興味深かったです。それぞれのストーリーに横たわる、それぞれに独特の世界観は、いずれも彼の地で生きる厳しさを考えさせるものでした。日本という国でぬくぬくと生きてきた自分には、生み出すことのできない世界観。あからさまな残酷さや、現実的な悲惨さというよりは、じっと動かずにある諦観と怒り、そのなかを生きる強さなどがないまぜになったパワーを感じました。
海外の書籍を翻訳したものを読むといつも思うのですが、翻訳して届けてくださった出版社や翻訳者の方に、今回も「感謝」の一言でした。世界に目を向けなければ、というときに、その方法の一つとして、その国に生きる人が書いた本を読むことは、とても有用だとわたしは思っています。もちろん新聞を読んだり、テレビやインターネットから流れてくるニュースを見たり聞いたりすることも、その一つかもしれませんが、政治によって簡単に情報が操作され、フェイクニュースがはびこるなかでは、創作された小説から読みとり推し量ることによって得られた印象の方が、事実に近いこともあるような気がしています。
本書の翻訳・編集者の方からは、並々ならぬイスラエルへの執着を感じました。こういう方がいらっしゃるからこそ、我々は、知らない世界を少しづつ垣間見ることが出来ます。これを機会にイスラエル作家の小説、気にかけていきたいと思います。