読書『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

本書も、いつものカメリアステージ図書館新刊棚で手に取った一冊。ふだん「エッセイ」はほとんど読まないのですが、「林真理子」の名前に釣られました。

林真理子氏のお名前は、彼女の作家としてのデビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の頃から知っています。これが出たのが1982年ということですから、当時わたしはといえば中学生。マスメディアにもどんどん登場した林真理子氏は、まさに社会現象的な存在でした。そんな彼女がずっと気になりつつも、実は著書はほとんど読んではおらず、小説家としての彼女に完全に脱帽したのが、約1年前に読んだ『私はスカーレット』の上下巻という。

さて『マリコ、アニバーサリー』。林さんがデビューした時代はバブル前夜から最盛期、「クリエイター」という存在と言葉が現れた、イケイケドンドンな時代です。本書の文章の端々から、その雰囲気をじゅうぶんにまとい、牽引してきた人の一人だということをあらためて思いました。当時のキラキラとした「クリエイター」なる人種のなかでも、林真理子さんはちょっと劣等感を抱えてひねた感じがしていた、というのがわたしの拙い印象だったのですが、本書を読んで、「実はどんな人なのか」「当時どんなふうだったのか」、情報を修正することが出来ました。

本書はもとは「文藝春秋」に連載されているエッセイをまとめたものだということです。掲載されていたのは、ちょうどコロナ禍前・中・後の時期にあたり、またご本人的には日大の理事長就任なども重なっていて、興味深く読みました。意外だったのは、その語り口がとっても「すなお」なこと。とげとげしさを伴う「そっちょく」というよりは、やさしさを伴う「すなお」な感じだったのが、新鮮でした。長年彼女のエッセイを読んでいる方々からしたら、それが彼女で当たり前のことなのかもしれません。もっと、毒を持った雰囲気だったような気がしていたのですが、何十年も前に抱いた印象をそのまま持っていた自分の思い込みを恥じるとともに、ただす機会となりました。

『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

わたしはエッセイはあまり手に取らない方なのですが、その著者自身に余程興味が沸いたときは、読んでみると面白いものですね。その方の背景がうっすら分かったうえで読む小説は、また少し違って見えてくるものかもしれません。