読書『小さくも重要ないくつもの場面』(白水社)シルヴィー・ジェルマン著/岩坂悦子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『小さくも重要ないくつもの場面』(白水社)シルヴィー・ジェルマン著/岩坂悦子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。10月に入ると図書整理日のために1週間ほど休館になると聞いたので、9月末に大量に借りてきていた中の一冊です。

なんとなく詩的な文章で、テンポの静かな美しさを感じながら読みました。これは訳者の方の力ですね。わたしはフランス語はさっぱりですが、原著のフランス語の文章が、さぞかし美しかったのだろうなとイメージしました。その美しさを損なうことなく日本語に置き換えるのに、訳者の方はものすごく神経を使ったのだろうな、と。

自分はいったいどこから来たのか、どこに向かっているのか、居場所に辿り着くことができるのか。母親・父親の存在の曖昧さが、自己の存在にかかわる根源的な疑問となり、その疑問と漠とした不安を抱えて生きていく主人公と、兄・姉妹たちと家族の物語です。主人公の成長していく姿は、危なっかしい場面の連続でしたが、その一方で、父親や母親が異なっても続いていく家族のつながりの強さは、不思議ながらも心強く、光を感じさせるものでした。

読み終わって、つくづくとこのタイトルが沁みました。どんな人生も「小さくも重要ないくつもの場面」の積み重ねというか、繰り返しというか、なのだな、と。

著者のシルヴィー・ジェルマンさんはフランスの方。著書『マグヌス』が有名だそうで、日本語訳されているのは、その『マグヌス』に続いて、本書が二冊目ということです。これは『マグヌス』に遡って読まねばなりません。図書館にあると良いのですが。