読書『この星のソウル』(新潮社)黒川創著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『この星のソウル』(新潮社)黒川創著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から借りてきた一冊。新刊棚から本を選ぶときは、「前情報」を持っていない本を手に取ることがほとんどです。そのおかげで、これまで読んだことのなかった作家さんの本を手にすることが出来ます。黒川創さんの著書も、初めまして(たぶん)。タイトルや表紙から勝手にイメージを持って借りてくるので、読みはじめてからのギャップに驚くこともしばしばで、それが楽しみでもあります。

さて『この星のソウル』。1981年と1994年に韓国のソウルを訪れた経験を持つ主人公が、2024年の時点から当時を振り返る物語です。ただし、李朝最後の王・高宗とその王妃である閔妃の生涯とその時代の出来事に触れながら、というのが、一筋縄ではないところ。高宗の妃・閔妃は1895年に日本の官僚と軍人によって惨殺されています。彼らの生きた時代を考えるということは、すなわち日清・日露の戦争のこと、朝鮮を植民地化しようとした日本が彼の地で、あるいは日本国内で、彼の地の人々に対して何をしたのかを、見つめ直すということになります。

日本と朝鮮半島との間で何があったのか、近代史について、韓国や北朝鮮とのかかわりについて、あまりにも無知な自分に気づかされる一冊でした。新潮社の公式サイトでの紹介のなかに「激動の朝鮮史」という言葉が出てきます。それがどのようなものだったのか、主人公の思考のなかにあるものが綴られることによって、読者(わたし)は知ることになったのですが、残酷・残虐な歴史が淡々とした文章で語られることで、その痛みの大きさの計り知れなさを感じました。

黒川創さん、すごいですね。さっそく図書館の蔵書を検索。さかのぼって追いかけたいと思います。

『この星のソウル』(新潮社)黒川創著