読書『降りていこう』(作品社)ジェスミン・ウォード著/石川由美子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『降りていこう』(作品社)ジェスミン・ウォード著/石川由美子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。こちらも「初めまして」の作家さん(たぶん)。作品社さんという出版社も、初めましての出版社さんだと思います。すべての読書記録をブログにつけているわけではないので、定かではありませんが。1979年創立で「硬派であるが人文・日本文学・海外文学・芸術・随筆など幅広いジャンルで独創的出版物を刊行」(作品社公式サイトより)ということです。その通り、読み応えのある一冊でした。

奴隷制度をテーマにした本といえば、わたしは真っ先に思い浮かぶのが『ルーツ』、そして『風と共に去りぬ』です。『ルーツ』はテレビドラマで広まったのが先で、当時わたしはまだ小学生。「人種差別」や「奴隷制度」の存在を認識した、一番最初のものだったと思います。『風と共に去りぬ』は、直接的に奴隷制度をテーマにしたものではありませんが、主人公が奴隷ではない人種・階層のため、そうした立場に都合よく描かれているという議論もあると言われていて、そうした議論も含めて奴隷制度が大きな主題のひとつになっていると、わたしは感じています。

さて本書『降りていこう』。作品社公式サイトの紹介文を借りれば「奴隷の境遇に生まれた少女は、祖母から、そして母から伝えられた知識と勇気を胸に、自由を目指す」物語です。この一文だけを読めば、冒険物語のような雰囲気も感じられますが、実際にはそのようなものではありません。「奴隷として生まれる」残酷な運命を背負ったら、そこから真の意味で自由を目指す=逃げ出すことはできない現実が押し寄せてきます。

「あんたの武器はあんた」という母の言葉を信じ、「でもその武器は何の役にも立たない」と絶望させられるいくつもの場面があり、それでも「あたしの武器はあたし自身」と自らに言い聞かせるようにして生きていく主人公の姿は、単純には言葉に形容できない強さを感じさせるものでした。

訳者のあとがきは、読後に読むことによって、本書の背景を理解するのに役に立ちました。また巻末に、アメリカ文学研究者である青木耕平氏による「附録解説」が別添されていて、こちらも奴隷制度の歴史を知る手助けになります。この附録解説は作品社公式サイト内にもPDFでファイル添付されているので、本書を手に取る前に読むことも可能です。

『降りていこう』(作品社)ジェスミン・ウォード著/石川由美子訳