こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『わたしの人生』(新潮社)ダーチャ・マライーニ著/望月紀子訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚からの一冊。表紙の写真が印象的で手に取り、小説かと思って借りてきました。著者はイタリアを代表する小説家・劇作家だそうですが、本書はご本人の回想記=ノンフィクションです。1936年生まれの著者が、たくさんの文筆活動をしながらも、これまで書いてこなかったこと。「今書かなければ」という思いに突き動かされたのだろうということが、読後にしみじみと感じられました。
1938年から日本に住み、1943年から終戦まで一家5人で抑留された、2年間の体験が語られています。戦時中に日本に暮らす外国籍の方々がどのような目にあったのか、当事者によって語られたものを、わたしはこれまで読んだことがなかったと思います。読んだことはありませんでしたが、日本の官憲がひどいことをしたのではないかという推察はできるもので、恐る恐るページを繰りました。
ひどい目にあった著者が、それでも自分は日本を恨んではいないし、日本が好きだと言ってくれることが、読む者にとって救いになりました。数々の出来事や行為に対して、抑留された人たちが、日本の歴史や日本人の精神性からそれを紐解こうとする姿に、理性や知性を保ち続けることの強さを感じました。
新潮社の公式サイトでの紹介には、映画翻訳でおなじみの戸田奈津子さんが短評を寄せています。訳者のあとがきも、力が入っています。歴史をのなかで何度も同じ過ちを繰り返してきた人間への警鐘が込められた一冊です。
今回「はじめまして」の著者さんでした。これを機会に、彼女の書いた小説も読んでみたいと思います。