読書『そこに工場があるかぎり』(集英社文庫)小川洋子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『そこに工場があるかぎり』(集英社文庫)小川洋子著

本屋さんぶらぶら、で見つけた、わたしにとっては「!!!」な掘り出しもの。なにせ、あの小川洋子さんによる、ビジネス書(!?)ですから、その取り合わせにびっくりです。集英社のサイトによると「おとなの工場見学エッセイ」なるジャンル。そんなジャンルが存在したのね!?という疑問はさておき、5月20日に出たばかりの文庫本です。ただ、わたしが知らなかっただけで、本書以前にも『科学の扉をノックする』なる「科学入門エッセイ」(ベストセラー!)もあるらしく、小川洋子さん=フィクション小説というのは古い認識であったことを思い知らされました(笑)。

これはその取り合わせの妙を味わいたいと、購入即決。表紙がまた可愛いです。気になる内容=工場見学の顔触れは下記の通り。聞いたことのある社名もあれば、初めて聞く社名もあり。

細穴の奥は深い         (エストロラボ<細穴屋>)
お菓子と秘密。その魅惑的な世界 (グリコピア神戸)
丘の上でボートを作る      (桑野造船)
手の体温を伝える        (五十畑工業)
瞬間の想像力          (山口硝子製作所)
身を削り奉仕する        (北星鉛筆)

どのストーリーも素敵です。一般的なビジネス書の取材もののイメージとは、やはり異なりました。ルポではなく、エッセイということですね。「なぜその工場を取材することになったのか(取材したいと思ったのか)」のきっかけや、工場の現場やそこで働く人への目線、取材事実に対する著者自身の感想。「おとなの工場見学」のワクワク感が、伝わってきます。わたしがいちばん最近行った工場見学は、すでに10年以上前のビール工場になりますが、その時の気持ちを思い出しました。読む前には、自分のなかのベストワンを選んでここで紹介しよう、と思っていましたが、どのストーリーも素敵で、選びきれません。

比較的薄い文庫本ですし、工場ごとに章立てしてありますので、隙間時間にサクッと読むことができます。温かい気持ちになる一冊です。

『そこに工場があるかぎり』(集英社文庫)小川洋子著