読書『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著

映画『国宝』が大ヒット中ですね。「絶対映画館で観るべき!」というお友だちが続出するなか、いつものカメリアステージ図書館で目に留まったのが、吉田修一さんの既刊本である本書でした。『国宝』はさすがに誰か借りてるよな、と思っていたところに視界に飛び込んできたので、借りることに。2022年の発刊ですので、約3年前ですね。新聞かなにかの書評で目にして「これは読んでみたいかも」と思ったのを覚えていますが、そのままになっていました。

吉田修一さんの著書は、映画化されているものも多いですね。わたしはこれまで『悪人』を読んだだけだったと思います。妻夫木聡&深津絵里という、個人的にはかなり魅力的に感じる配役で映画化されていましたが、観ていません。長崎県出身の吉田修一さんが描く『悪人』の舞台は福岡・佐賀・長崎だったので、「ああ、あの辺のことだな」とわかる場所が何カ所も登場し、本を読みながらそれらの場所の現実的な景色が鮮やかに頭に浮かんでいたので、そのイメージを壊したくなかったのかもしれません。

さて『ミス・サンシャイン』。発刊当初に書評を読んで興味を持った理由の一つが、著者が「長崎=原爆」にどういうアプローチをするのか、というところでした。わたしは10代~高校卒業までを長崎県内で育ったのですが、本書にも何度も出てくるように、長崎県では8月9日を語り継ぐための「平和学習」にとても力を入れています。公立学校では8月9日は「登校日」になっていて、毎年平和学習が続けられます。今もそうなのかな?少なくともわたしが育った時代はそうでした。吉田修一さんは1968年生まれとなっていましたので、がっつり同世代。そんな方が、どんなふうに小説に載せるのか興味がありました。

文藝春秋の公式サイトでは、「僕が恋したのは、美しい80代の女性でした」というフレーズで、本書が紹介されています。たしかにそのような物語なのですが、そのサイトに女優の吉永小百合さんによる推薦コメントが掲載されているところが、注目です。吉永小百合さんは、テレビドラマで体内被曝をした役を演じてから、ずっと反戦・反核の運動をなさっている人。推薦コメントには、そのような文言は一切含まれていませんが、「作家の故郷への思いを 私は今、しっかりと受け止めたいです」とおっしゃっていて、そのことが何を指しているのかは、著者と同じような平和教育を受けてきた者には、明らかでした。

長崎の原爆を現代から見る小説としては、カズオ・イシグロ著『遠い山なみの光』が、わたしのなかには印象的に残っています。こちらは今年、映画が公開されるということで話題にもなっていますね。広瀬すずさんが主演。今年初めに見た映画『ゆきてかへらぬ』の広瀬すずさんがとても良かったのと、もちろんカズオ・イシグロさんの原作も興味深く読みましたので、これは観に行かねばと思っています。

『ミス・サンシャイン』(文藝春秋)吉田修一著