こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『帰れない山』(新潮社)パオロ・コニェッティ著/関口英子訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。新潮社のサイトで本書の紹介文を見て気づいたのですが、2022年に映画化されていたのですね。日本でも公開されていました。これは映画館で観たら、さぞかし見ごたえがあっただろうな、と思います。ということは本書は日本ではいつ刊行されたのかしらと確認したところ、2018年でした。映画を見逃したのは残念でしたが、本書を仕入れてくださったカメリアステージ図書館に感謝です^^
久しぶりに、ガッツリと重く残る本に出合いました。『帰れない山』はイタリアでたくさんの文学賞を受賞したそうで、世界39か国で翻訳されているそうです。読み始めたところから最後まで、切なくて切なくて、なにがこんなに胸に迫ってくるのだろうと不思議でした。というのも、主人公と父親との関係も、主人公と友人との関係も、まったく自分と重なるところはなく、単純に共感するものではないのです。訳者あとがきを読んで、その理由がなんとなくわかりました。だからこそ、世界中で共感を呼んだのだろうと理解できました。
著者のパオロ・コニェッティ氏は今回初めましてでしたが、訳者の関口英子さんのお名前は見覚えがあり。ブログに読書記録を残しているだけでも、『「幸せの列車」に乗せられた少年』、『マルナータ 不幸を呼ぶ子』の二冊がありました。出版社・訳者の方が素晴らしい本を届けて下さるおかげで、こうして読むことができます。感謝感謝です。
上の写真は、わたしにとっての「山」である、花祭。山というよりは、山間の谷であり、里山と呼ぶのが正しそうな場所ですが。わたしが生まれてからこれまでに暮らした場所は、10カ所を超えますが、そのなかでもっとも自然環境の厳しい場所でしたし、限界集落で人の去っていく様、土地が放棄され寂れていく様をリアルに目にした場所でした。そこに暮らしたのは15年ほどでしたが、わたしのこれまでの人生のなかで、現時点で最も長く暮らした場所でもあります。住んだのは結婚後でしたから、幼少期を過ごしたわけでもありません。なのに、そこに行けば「帰ってきた」という感じがする。わたしにとっては、花祭が「山」なのだなぁと、本書を読み終えて思いました。