読書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)三宅香帆著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)三宅香帆著

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』という本が売れているのは、知っていました。書評欄でも何度か目にしましたし、本屋さんでも目立つところに置いてある話題作。わたしもサラリーマン時代は、読書欲はあるので本を買うものの、時間が取れずに未読本がたまっていく…というループにハマっていました。なので、今の自分には当てはまらないけれど、このタイトルには心当たり有り、というところで。

ここ数年の自分自身の感覚としては、仕事に集中するほどに読書量も増えているような気がしています。根拠を測定したわけではありませんので、気のせいかもしれませんが(笑)。ともあれ、本が読めなくなるのは「働く」の内容にもよるのかもしれないな、と思いました。そう考えはじめると『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の中身にどのようなことが書いてあるのか気になりはじめ、こんなことなら先日丸善で見かけたときに買えばよかった、と思いつつ、試しに図書館で蔵書検索をかけたら…ありました。ありがとう!図書館♪

さて『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』。予想していたよりもはるかに硬派で、興味深い内容でした。「日本人と読書」について、音読から黙読へと「読書」が変化を遂げた明治時代にまでさかのぼり、現代にいたるまでの時代を追って分析をしています。出版文化の広がり、日本人の労働の仕方・階級(格差)の変化、時代背景とブーム、国(政府)の政策(思惑)、出版社の事情などなどを並べて、その関連性を探っています。

読むほどに「なるほど、そういうことだったのかぁ!」と腹落ちすること多々。1980年代~1990年代についての論考は、自分事としてものすごくよくわかりましたし、それ以前の時代については、自分たちの親の世代がどのようであったのかを理解する大きな手掛かりとなりました。感じたのは、無意識に時代の影響を受ける・時代に流される怖さです。「本を読む」という側面から眺めるだけでも、これだけのことがわかってくるのですね。そして第九章、最終章と、著者が本書を書いた理由(言いたいこと)があふれてきます。

読んでよかったです。読む前と読んだ後で、まったく印象が変わった一冊でした。わたしには、内容に対してタイトルが軽く感じられたのですが、でも、これが、今の時代に合ったものなのでしょうね^^

『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)三宅香帆著