読書『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳

西日本新聞書評コーナーで見つけて気になり、本書を読むために、マーク・トゥエインの『ハックルベリー・フィンの冒険』を遡って読んだという、こんなふうに、ある種の手続きを踏んでまで読んでみようと思った作品は、久しぶりでした。というわけで、期待大!で読み始めましたが、その期待を上回る読書となりました。

『ジェイムズ』は、米国文学『トム・ソーヤーの冒険』で知られるマーク・トゥエインが書いた『ハックルベリー・フィンの冒険』を、語り手(主人公)を変えて書いた小説です。『ハックルベリー・フィンの冒険』は、主人公である、貧困層に生まれた白人ハックと黒人奴隷ジム(ジェイムズ)の冒険物語。もともとはハックの視点で描かれた物語を、『ジェイムズ』ではジムの視点で描き直しています。著者は、アフリカ系アメリカ人作家のパーシヴァル・エヴェレット氏。

興味を持ったものの、わたしは『ハックルベリー・フィンの冒険』を読んでいませんでしたので、まずは『ハックルベリー・フィンの冒険』を読むところからスタートしたのは上述の通りです。あらすじが頭に入ったところで、いざ『ジェイムズ』へ。『ハックルベリー…』もそうでしたが、冒険小説というよりは、社会小説。そして「アイロニー(皮肉)」という意味では、『ジェイムズ』の過激さは『ハックルベリー…』の比ではないと感じました。読み手たる自分のなかにあった無意識の思い込みと、甘さ・浅さを突き付けられる、ハードな読書体験となりました。

本書の著者パーシヴァル・エヴェレット氏の著書は、日本ではあまり刊行されていないようですが、米国では20作以上の長編を発表していらっしゃり、高く評価されているとのことです。俄然興味がわいてきました。ほかに訳書が出ていないか、ちょっと探してみたいと思います。

『ジェイムズ』(河出書房新社)パーシヴァル・エヴァレット著/木原善彦訳