芙蓉(フヨウ)の花を見ると、思い出すギャラリーオーナーさんがいます。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

芙蓉(フヨウ)の花を見ると、思い出すギャラリーオーナーさんがいます。

ご近所のあちらこちら、庭先にフヨウの花が咲いているのを見かけます。見た目にふわふわとしていて、優しさと柔らかさの象徴のような姿。

芙蓉の花

その方は、大阪梅田にある「工芸店ようび」オーナーの眞木啓子さん。初めてお伺いしたのは、藤吉憲典が肥前磁器作家として独立してから数年の頃でした。当時、器ギャラリーの名店と呼ばれるところに、作った器を持って伺い、見て(評価して)いただくということを繰り返していました。『家庭画報』『婦人画報』などに特集されていた、作家ものの器を扱うギャラリーさんは、ほとんどが東京都内や関西圏のギャラリーさん。インターネットが今ほど当たり前ではなかった時代です。ギャラリー情報を集め、実際に足を運んでお店の雰囲気を確認し、オーナーさんと対面でお話をしたうえで、双方納得してお取引がスタート、というのが藤吉のやり方でした。

肥前磁器に描かれる古典文様には「芙蓉手(ふようで)」という様式があります。下の写真の器の文様は「染付間取芙蓉手岩花鳥文(そめつけ まどりふようで いわかちょう もん)」。

染付芙蓉手輪花縁小鉢 藤吉憲典

作家として独立したての頃、藤吉憲典の描く線はとても細く几帳面でした。繊細といえばよく聞こえますが、その線は使う人に緊張を強いるものだったかもしれません。藤吉の作った芙蓉手(ふようで)の器を見ての眞木さんの第一声が「芙蓉手って、どういう文様か考えた?」ということでした。「芙蓉の花は知ってる?ちゃんと観察した?」と。「芙蓉手」は「フヨウの花のような雰囲気の文様様式」のことで、花のやさしくやわらかくおおらかな雰囲気こそが文様の魅力となります。

もう20年以上前のことですが、フヨウの花を見るたびにはっきりと蘇ってきます。この出来事が、わたし以上に藤吉本人に響いていたのは言うまでもありません。仕事を続けていると、折々に原点回帰を促される地点(あるいは出来事)が生まれてきますが、その重要な地点のひとつです。現在、藤吉憲典とようびさんとのお取引はありませんが、共通の知人から、眞木さんが「藤吉さん頑張ってるようね、元気かしら」とおっしゃってたと聞きました。ほんとうにありがたいことです。今ふりかえって考えると、ダンナが作家としてスタートした時代は、「作家ものの器」というジャンルを切り開いてきた、器や伝統工芸について造詣が深く確固たる信念を持つ、厳しくも愛情あふれるオーナーさんたちに出会うことができた良い時代でした。素晴らしいギャラリーオーナーさんたちに鍛えていただいて、今があります。

福岡県中小企業ステップアップ支援事業「サッシン・ベース」ワークショップ第二回目。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福岡県中小企業ステップアップ支援事業「サッシン・ベース」ワークショップ第二回目。

福岡県の商工部スタートアップ推進課からご案内をいただき、8月から参加している支援事業「サッシン・ベース」。サッシン・ベースでのワークショップは、事前にいただいたスケジュールによると、ぜんぶで3回。そのほかに企業訪問ツアーがあり、3回のワークショップが終わったら、デモに向けてピッチ資料を作りこんでいく、という順番になりそうです。

ワークショップ第2回目は「事業開発で必要な考え方とビジネスモデル」ということで、きざしデザイン合同会社の代表・月原直哉氏のお話でした。ワークショップは毎回1時間半なのですが、「事業開発」についてガッツリ話をしたら1時間半ではとてもおさまらないということで、短縮(あるいは凝縮)バージョン。そのなかで、わたしに響いたポイントは、以下の5つ。


  • 売り手の意図と、買い手の行動は異なる=思いがけない需要に辿り着くことがある。
  • その事業によって、世界はどう変わる?
  • 実現するために、誰に伴走してもらうのか、どんなチームでやるのか。
  • 最初に買ってくれる人(イノベーター)は誰?
  • 事業開発の肝は「他力」=仲間を見つける。

ここ数年のわたしのテーマ「他力本願」が、やはり最重点事項であることを再確認する時間となりました。そのことは、頭では既にわかっているんですよね。だからこそ「他力本願」のチーム作りを実現するにはどうしたらよいか、行動ベースでの解決策が必要で。その手掛かりを得たくてサッシン・ベースに参加した、と言っても過言ではないのですが、なんにせよまずは自分が動かなければ、チームを作ることはできません。

ということで、わたくし個人的に、一番苦手とするところへのチャレンジを迫られています。がんばろう。

大丸福岡天神店に新たなアートフロアが誕生したというので、足を運んできました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大丸福岡天神店に新たなアートフロアが誕生したというので、足を運んできました。

大丸福岡天神店の東館エルガーラ5階に、新たにアートフロアが誕生したと、話には聞いて気になっていました。ちょうど天神界隈に出る予定があり、ついでに足を運ぶことに。これまでは大丸福岡天神店の本館にあった美術画廊スペースが、東館5階に移動してアートギャラリーになり、その隣にあらたにgallery UGさんが入っていました。東京天王洲の寺田倉庫さんのエリアに本店を持つgallery UGさんは、2拠点目の大丸梅田店に続く3店目として九州初出店だそうです。

gallery UGさんの展示スペースに隣接してアート&コーヒーなカフェがあり、コーヒーを飲みながら作品を楽しむことができる空間になっていました。展示中の写真作品を見ていたら、ちょうどその作家さんが在廊中で、いろいろとお話を伺うことができました。もともとは東京本拠のギャラリーさんですが、福岡店では、在福岡・在九州の地元にゆかりのあるアーティストも積極的に扱うことを意識しておられるようです。ギャラリーに来たお客さんと、作家との距離が近いことを生かせそうな空間だなぁ、と感じました。

さて大丸さんのアートギャラリーでは、『アンティーク工芸展』として、ガレ、ルネ・ラリック、ドームなどのガラス作品が並んでいました。オールドバカラも数点、そして古いマイセンもありました。展示情報をまったくチェックせずに足を運んだのでしたが、アール・ヌーヴォー、アール・デコ期のアンティークを拝見することができて、ラッキーでした。1週間ごとの展示入れ替えということでしたので、グッドタイミングです。

ちなみに次回は10月8日(水)から1週間、『レオナール・フジタとエコール・ド・パリの作家たち』のタイトルで、藤田嗣治作品を中心に、ピカソやシャガールの作品も観ることができるようです。わたしが足を運んだのは平日の午後ということで、時間帯のせいもあるかもしれませんが、お客さまがとても少なく、せっかくの展示がもったいないなぁと思いました。新しいアートフロアは8月29日にオープンしたということで、まだあまり知られていないのかもしれませんね。

ギャラリーは美術館と違って基本的に入場料を取られませんし、展示作品との距離が近くじっくり見ることができますので、おススメです。展示イベントの予定をチェックして、興味のあるテーマのときには、気軽に足を運びたいですね。

読書『小さな嘘つき』(早川書房)パスカル・ロベール=ディアール著/伊禮規与美訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『小さな嘘つき』(早川書房)パスカル・ロベール=ディアール著/伊禮規与美訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。いつの間にか「早川書房さんからの海外ノベル」は、わたしのなかで一定の位置付けになってきたようで、気になって手に取ったものに「早川書房」と書いてあると、勝手に信頼して期待して、中身をチェックせずに借りてくることが増えてきました。

本書はフランスのジャーナリストでありコラムニストであり小説家であるという著者の一冊。もちろんわたしは「初めまして」の作家さんです。読後にチェックした早川書房の公式サイトには、法廷記者であり、フランスで最も権威のある文学賞のひとつ「ゴンクール賞」にノミネートされたと書いてありましたが、それ以外にあまり著者情報が載っていませんでした。社会の、無意識の偏見に対する鋭い視点は、法廷記者というお仕事からのものだったのだろうな、と解釈しつつ。

さて物語は、5年前に15歳だった少女が被害者となった裁判結果が、実はその少女の「嘘」によるものだったという、かなりびっくりな展開からはじまります。その「元少女」を弁護することになった女性弁護士を語り手として、ストーリーが進みます。少女が嘘をついた理由、嘘をつくような状況に追い込まれていく様子は、解き明かされるほどに苦々しくも心あたるものでした。読者であるわたし自身もまた、ある種の思い込み(あるいは偏見)を持って小説を読み進めていたからこその「びっくりな展開」だったのだと突き付けられました。

なぜ彼女はそのような嘘をつかざるを得なかったのか。15歳、思春期真っただなかの中学生というのは、自意識が強く、自分の立ち位置を守ることに必死で、とても生きづらい年代だったと思います。そのうえ「こうであるはず」という大人の偏見や周囲からの無意識の期待にさらされたら、どうすればよいのか。自分を守るためについた嘘が、結果として他者を貶めることになるのは、彼女の例に限ったことではなく、いろいろなことを考えさせられました。

『小さな嘘つき』(早川書房)パスカル・ロベール=ディアール著/伊禮規与美訳

オンライングラフィックデザインツール「Canva」のゆる~い勉強会でした。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

オンライングラフィックデザインツール「Canva」のゆる~い勉強会でした。

今年の初めにパソコンをWindows11にアップデートしたところ、これまで使っていたグラフィックソフトが動かなくなってしまいました。まぁ、ずいぶん昔に購入したものをずっと使っていましたので、仕方がありません。さてどうしよう、わたしの利用範囲のレベルなら、新たにアドビのサービスを契約するほどでもないんなんだよな~と思っていたところに「Canva、けっこう使えるよ♪」との声。

そんなわけで、春ごろから「Canvaでデザイン」にちょこちょこチャレンジしていました。なるほど便利です。デザインされたテンプレートがたくさんあるので、それを活用すると、わたしでもそこそこおしゃれな制作物が作れる優れもの。名刺、ポストカード、三つ折りパンフレット、ピッチ資料などなどなど、サクサクと作れます。自分で一からやっていたことを思うと、かなり時間短縮が図れます。有料版と無料版がありますが、とりあえずは無料版でいろいろとやってみました。

実際に制作物を作っていくと「これ、どうしたらいいのかな」という点がちょこちょこと出てきます。そんなところに友人から「Canvaの勉強会するけど、興味ありますか?」とグッドタイミングなお誘い。嬉々として参加表明し、行ってまいりました。講師を務めてくださったのは、ウェブデザイナーでありウェブ解析士マスターであるyukottoの大鶴久子さん。Canvaの基本操作からスタートし、実際に使ってみて困っていること・質問をどんどん受け付けてくださいました。「ゆる~い勉強会」どころか、ガッツリ学ぶことができました。春から積み上げてきたわたしの「これ、どうしたらいいのかな」も、スッキリ解消。

おかげさまで春から制作してきたデザインものを、アウトプットしていく目途がつきました。こんなふうに声をかけていただけることが、とってもありがたく。勉強会を企画してくださったお友だち、一緒に楽しく学ぶ場を作ってくださった講師とお友だちの皆さんに、心より感謝です^^