読書『シリアの家族』(集英社)小松由佳著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『シリアの家族』(集英社)小松由佳著

本書も、いつものカメリアステージ図書館新刊棚から借りてきた一冊です。いつものように前情報無しに手に取ったら、小説と思いきやノンフィクションでした。久しぶりのノンフィクションは、感情を揺さぶられる読書となりました。著者はドキュメンタリー写真家であり、その前は登山家として「植村直己冒険賞」を受賞したこともあるという方。そして本書は「第23回開高健ノンフィクション賞受賞作」でした。

「シリア内戦」「シリア難民」ニュースで目にする字面として知っているに過ぎなかった現実を、本書を通して垣間見ることができました。著者は2012年からシリア内戦・難民を取材してきたといいます。アサド政権崩壊・崩壊後の2024年末にかけての記録は、家族だからこその距離感で描かれていました。集英社の公式サイトでの本書の紹介ページには、開高健ノンフィクション賞の選考委員の方々のコメントが並んでいます。なかでも、映画監督・森達也氏の「秘密警察も移民となったシリア人も政府軍兵士もイラン軍兵士も、すべて等身大の人間として描かれている。」という評が、とてもしっくりきました。

シリアという場所の地理的・政治的・宗教的な複雑さは、わたしには本書を読んだだけでは正確に理解できないどころかイメージするのも難しいのでした。ただ、読みながらずっと思い出していたのは、以前に読んだ三浦英之氏の『沸騰大陸』、アフリカの現在とその背景を伝えるルポ・エッセイでした。これも集英社からの刊行ですね。そのなかに、アフリカで起こっている紛争が、民族や宗教を起点とするものではなく「富」と「格差」を起点としたもの、豊かな資源があるからこそ起こるのだという記述があったのを思い出していました。

それにしても、危険を顧みずにそうしたエリアに足を運ぶ、記者や写真家の人たちは、いったい何に、どのような信念に突き動かされているのか。このようなノンフィクション作品に触れるたびに、その凄みに圧倒されます。そして、内に向きがちなわたしの視界を少しでも広げようとしてくれる彼らに、感謝と敬意を感じています。

『シリアの家族』(集英社)小松由佳著