「美」とか「美術」とか「美学」と言いながら、おしゃれにとても疎いもので。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「美」とか「美術」とか「美学」と言いながら、おしゃれにとても疎いもので。

若いころから「おしゃれをする」ことに目を向けてこなかった結果、この歳になって慌てることが増えてきました(笑)。一般に、おしゃれに興味を持ったり気を使ったりしだすのは、10代思春期の頃からでしょうか。10代のころから「自分の身だしなみ」について考えることをしてきた人と、50代になって「なんとかせねば」と思いはじめる人(わたし)とでは、すでに約40年の開きがあるわけです。この差は大きい!

あらためて考えてみると、ずっと長い間、わたしにとっての「美」は、自分が見たり感じたりするもの=自分の外にあるものなのでした。いわば「自分のことは棚に上げて」語っている状態ですね。美術的な仕事について25年以上が過ぎた今頃になって、そもそもその語り手があまりにも見た目にこだわらなさすぎるのはいかがなものか、説得力があるのだろうか、という疑問が頭をよぎるようになってきました。ひとつには、更年期の年頃を経て、自分自身のいろいろなことが目に見えて変化してきた、というのも現実的に大きな要因だと思います。

『美 「見えないものを見る」ということ』福原義春

そういえばわたしにとってのバイブル的な本の一冊である『美 「見えないものを見る」ということ』の著者である福原義春さんは、化粧品会社・資生堂で名誉会長まで務めた方。うーん…。

というわけで、今更ながら、いつもきれいな友人に話を聞いてみたり、女性誌のファッション雑誌を手に取ってみたりしています。これまであまりにもそういうことをしてこなかったので、正直どこから手を付けたらよいのかわからない状態(笑)。あるときには「ローマは一日にして成らず」と思い、またあるときには「始めるのに遅すぎることはない」と思いながら、「少しはなんとかせねば」とジタバタしています。義務感や焦燥感ではなく、もっと楽しんで取り組めるようになると良いのでしょうけれど、なにしろ、慣れていないのです。きっとおしゃれ上級者の皆さんは、楽しんでいらっしゃるのだろうな、と思いながら、修業は続きそうです。

今年度は全97講座-郷育カレッジ2025年度のカリキュラムが決定しました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年度は全97講座-郷育カレッジ2025年度のカリキュラムが決定しました!

福津市民のための生涯学習システム「郷育カレッジ」。福津の「ひと、もの、こと」を題材に、ふるさと、健康福祉、環境、生きがいなど、さまざまな分野の講座を開催します。昨年10月から検討をスタートした2025年度のカレッジカリキュラムは、年明けまでにほぼ確定し、パンフレットの制作に入っていました。

毎年のカリキュラム編成の検討は、かなり時間をかけて議論をしています。そのときに参考にする要素として大切にしているのが、講座内容と、受講者の方々の反応。毎回簡単なアンケートを実施していますが、アンケート用紙には書かれない反応も、たくさんあります。それらを確認するためにも、各講座での様子を、運営委員や市の職員が自らの目で確かめるようにしています。

アンケートに記されたご意見は、良いことも悪いことも講師の方にきちんと伝えます。人気の高い定番講座であっても、マンネリ化しないよう、毎回ブラッシュアップして新しい内容を盛り込んでいただくことをお願いしています。一方で、定員割れする講座であっても、伝えるべき内容であるものは、継続しています。パンフレットに載せるタイトルのつけ方や解説文の内容を、いかに市民の皆さんにわかりやすくするか、いかに講座の良さを伝えるかに、一番時間をかけているかもしれません。

新しい講座の候補が上がってくるたびにしっかり吟味するのはもちろん、年度により削減する講座も出てきます。一年間で実施できる講座数のなかで、これらの増減を調整するのも、なかなかシビアな仕事です。でも、講座数の制約があるからこそ、講座内容を精査し「今年度のカリキュラムに入れるべきもの」を選択していく過程が重要で、その結果として、少しでも受講者の方々にご満足いただけるものに、近づけていけているのだと思います。

今年度のパンフレットは、5月末あたりに配られる福津市報と一緒に全戸配布される予定です。今年度も、一人でも多くの市民の方が、一つでも多くの講座にご参加なさることを願っております。

郷育カレッジについてのお問い合わせは、福津市郷育推進課へどうぞ^^

大阪市立東洋陶磁美術館の「陶磁入門」がわかりやすくて便利です。

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大阪市立東洋陶磁美術館の「陶磁入門」がわかりやすくて便利です。

大阪万博開催に向けて、関西方面の美術館がここ数年続々と改修工事に入り、昨年あたりから続々とリニューアルオープンしています。大阪市立東洋陶磁美術館もそんな「万博リニューアル組」の一つでしたので、足を運びたいなと思いつつ、サイトチェック。館のリニューアルに合わせて、ウェブサイトも大幅にリニューアルされていました。直感的にわかりやすく、ストレスフリーなつくりになっていると思います。

大阪市立東洋陶磁美術館

なかでも目に留まったのが「陶磁入門」のメニュー。「鑑賞の手引」「地図・年表」「陶磁史」の三分野で、簡潔にやさしくまとめられています。内容が難しすぎたりボリュームが多すぎたりすることなく、基礎的な知識を知ることができると感じました。「東洋陶磁」の専門館としての切り口が、とても勉強になります。入門者向けというだけでなく、概要を確認したいときの手引きとしても、参考になりそうです。

訪問前にサイトを覗くのは、昨今あたりまえの行動パターンになりつつあります。大阪市立東洋陶磁美術館さんのサイトは、訪問がより楽しみになる情報が満載でした。ますます足を運びたくなってきました。近々行けるといいな♪

読書『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著

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読書『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著

移動のお伴用にゲットした新書版。持ち歩くバッグが重くならないように(本が入ってなくてもまあまあ重いのですが)、タイトル指名買いでない場合は、できるだけ文庫サイズか新書サイズの本を物色するよう心がけています。

自分のやってきていること、考え続けていることがどうやら「美学」の範疇なのだと(かなり遅ればせながら)気づいたのは、昨年末に読んだ本のおかげでした。

せっかくなので少し掘り下げてみようと、「美学」キーワードで見つけたのが本書『美学への招待』です。「増補版」とある通り、2004年に初版発刊されたものを、2019年に時代に合わせて大幅にアップデートしたというもので、わたしが手に取ったのは、2024年10月25日付の増補版6版。初版から20年以上が経っているわけですが、まったく古臭さを感じないのは、増補=アップデートによる成果だけではなく、そもそもが根本的・普遍的なことについて書かれている本だからなのだと思いました。

以下、備忘。


  • 人間の創造性が発揮される領域として、科学と並んで藝術が考えられていた、という事実
  • 魅力とは、言葉にならないもの、感ずるよりほかにないもの
  • 藝術の領域が美にあり、その美は感性的に認識される(ドイツの哲学者 A・G・バウムガルテン)
  • 人格形成への美の影響
  • 美は物質性と精神性の融合からなる
  • 「美は体験のなかでしか存在しない」という考え方
  • 感覚とは身体の持ち分であり、判断力というような知性の働きとは正反対の事柄
  • 過去の経験の記憶や考え方のパターン、概念的な知識など、多様な要素が現実の鑑賞体験に関与し、それを重層的な和音のようなあり方のものにしている
  • 哲学的な瞑想を行う場所(museumの由来となるラテン語mouseion)
  • 美術とアートとartの違い
  • マスプロダクションとしての複製と、オリジナルをコピーした複製(の違い)
  • 生のなかの藝術
  • 空間を人間化する(イサム・ノグチ)
  • 「永遠」型の藝術
  • 永遠派と現代派
  • 藝術の価値をどこに見出すかという問題
  • 藝術における伎倆の重要性の後退
  • 「幸福の約束」(ネマハス)
  • 「人生に不可欠」(ダントー)
  • 「藝術」ももとは生活世界の一部だった
  • 見てただちに捉えられる「よさ」とは、「美しさ」を措いてほかにありません。

『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著より


本書はわたしにとって入門書であり教科書的な一冊となりました。巻末には、ここから先に進みたい場合に参考になる文献一覧と簡潔な紹介文が記してあり、とても親切。少しづつ読んでいきたいと思います。

『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著

2025年九州産業大学国際シンポジウム テーマは「美術館が変わる、若者が変える」でした。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2025年九州産業大学国際シンポジウム 博物館と医療・福祉のよりよい関係 テーマは「美術館が変わる、若者が変える」でした。

今年も、学芸員研修会の年度まとめとなる、九州産業大学国際シンポジウムに参加いたしました。ここ数年の大きなテーマは「博物館と医療・福祉のよりよい関係」が続いていて、なかでも若年層や地域住民とのかかわりが、今回のテーマでした。

英国のダリッジ・ピクチャー・ミュージアムとつないでの国際シンポジウムは、ずっと続いています。発表者であるキュレーターのジェーンさんとは、コロナ禍前になる前の年度に、九産大で現地開催されたシンポジウムで一度お会いしています。定点観測的に毎年取組報告をお聞きするたびに、その歩みを止めないチャレンジへの敬意が湧いてきます。

以下、備忘。


  • How can historic paintings and old master peace speak and connect to contemporary lives and society?
  • The Past for the Present.
  • Unlock art for all.
  • Bringing art to life and life to art.
  • 「地域の人々にとって価値のあること」は、どんなこと?「自分に関係のある場所」と認識してもらうには?
  • 単に「教育」面での役割を担う場所、で終わらせないためには。
  • 「誰のストーリーを語るのか」を考えることの重要性。
  • Sending informal time in a formal place.
  • Oracle card →アートカード活用の可能性。
  • welcoming place としての galleries and museums。
  • 単なるアンケートによる意見聴取ではなく、resercherによる踏み込んだ調査と実験→フィードバック。
  • 理論と実践。
  • making place for young people
  • Museums are fundamentally for people
  • handling = making something が、making new friends につながる
  • 利用者にとって、意義のある存在であり続けるには。
  • 来館者が、自分の人生や経験とのつながりを見出したと思えるか。

2025年九州産業大学国際シンポジウム 博物館と医療・福祉のよりよい関係「美術館が変わる、若者が変える」より


今回もとても勉強になりました。ありがとうございました。

2025九州産業大学国際シンポジウム

教育普及学芸員の師と仰ぐ齋先生の言葉に、身の引き締まる思いがしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

教育普及学芸員の師と仰ぐ齋先生の言葉に、身の引き締まる思いがしました。

わたしが博物館学芸員資格課程に挑戦したのは、40代に入ってからのことでした。大卒資格(学士)を持っていましたので、佛教大学の通信課程に三年次編入し、二年間の学習と試験、博物館での実習、卒論を経ての課程修了。大人になってからの学び直しを考えるとき、大卒の学士があると、このように三年次編入で専門分野を学べるケースが多いので、とても便利ですね。通信でしたが、博物館実習にかかる実技と講義では、京都北野にある佛教大キャンパスを拠点に、各分野の教授たちから10日間ほど朝から夕方まで対面で学びました。

通常博物館実習は、1つの館に滞在して学ぶスタイルですが、わたしが佛教大に在学したときは、特別に複数の館で学ぶスタイルでした。京都~奈良にある、歴史系・仏教系・産業系・美術系と分野も異なれば、国立・府立・市立・私立・学校附属と運営母体もさまざまな館のバックヤードを訪問し、それぞれの学芸員さんからお話を聞くことができたのは、かなり珍しく贅沢な実習だったと思います。ただ「ゼミ」的なものが無く、卒論もガッツリ指導教授が就くというものではなかったため、資格取得に至るまで、専門的分野での「師匠」と呼べる存在がありませんでした。

そんなわたしにとって「師匠」と仰ぐ存在と出会えたのは、九産大の緒方泉先生率いる「博物館学芸員技術研修」への参加がきっかけでした。一番最初に参加したカリキュラムで、当時宮城県美術館で教育普及学芸員をなさっていた齋正弘先生に出会い、「アートエデュケーション」という概念に出会い、勝手に「これだ!この人に学ぼう!」と思ったのでした。2016年のことです。

それから、学芸員研修での齋先生の講義は毎年受講し、仙台にある宮城県美術館まで押しかけ、著書を読み込み…。

花祭窯の「陶片ミュージアム構想」に興味を持ってくださった齋先生と、雪の舞うなか津屋崎から福間・花見の海岸線を「陶片探し」で何時間も歩き回ったこともありました(笑)。

コロナ禍後は、学芸員技術研修会で齋先生の教育普及の講座が無くなってしまったため、お会いする機会がありませんでしたが、ずっと年賀状で近況報告をしておりました。その、今年の年賀状で先生が書いていらっしゃった言葉に、考えさせられたのです。

曰く、

「学芸員は世の中の変化の最先端にいる存在である。」

「困ったら基(もと)に戻る。」

齋昌弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』(仙台文庫)

思えば「美術はもっと使える」とおっしゃったのは齋先生でしたが、それは同時に「使えない・役に立たない(ように見える)ものの価値」への眼差しを持ち続ける大切さを説いていたと思います。そして「基(もと)」の大切さ。

新年早々、目を開かせられました。やはり齋先生は、わたしの(勝手に)偉大な師匠です。

今年最初の九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年最初の九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。

九州国立博物館は、新年の展示で徳川美術館の「初音の調度」をするのが恒例になっていました。毎年、ポスターやウェブサイトで展覧会情報を目にしては「すごいなぁ、観に行きたいなぁ」と思いながらも足を運べずにおりましたが、今年ようやく観に行くことが出来ました。会場は常設展示フロアの4階「文化交流展示室」内。「九博は常設がすごい!」は、わたしが常々感じ、言いふらしていることです^^

さて「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。美しい!のひとことです。なかでもわたしが一番惹かれたのが、こちら。

九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」

大きな箱の中に、小さな箱が12個おさめられているというもの。その一つ一つが精緻で美しいのですから、蒐集心がくすぐられるといいましょうか、なんとも欲しくなりますね。展示されている小さな箱は11個で、ひとつ紛失したようだとの説明書きがありました。

いつもの「田中丸コレクション」の部屋でも美しいものをたくさん拝見。古伊万里は長年いろいろなところで現物や資料を見ているので、見覚えのあるものが多いのですが、今回「これ初めて見たかも」というものを見つけて嬉しくなりました。特別展の会期中では無かったので、来場者数もそれほど多くなく、ゆっくり楽しむことが出来ました。眼福眼福。

そして、今回の九博訪問で何が一番嬉しかったかと言えば、長らく空き店舗となっていたスペースに、ようやくレストラン&カフェが登場したことです。わたしが行ったのは特別展の無い平日の午後でしたが、そこそこ賑わっていました。これまでこのようなくつろげるスペースが無い状態だったことが、美術館愛好家としては懸念すべき状態だと感じていましたので、関係者でもないのにホッとしました。

昨年度は3階特別展示室のリニューアルのために販売が停止されていた「九博メンバーズプレミアムパス」が、今年は特別展「はにわ」から再開するという嬉しいニュースも。九博開館20周年記念の年なので、2025年度の特別展にも、大いに期待しているところです。

九州国立博物館

読書『おとなのOFF 絶対見逃せない2025年 美術展』(日経TRENDY)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『おとなのOFF 絶対見逃せない2025年 美術展』(日経TRENDY)

2025年読書記録の一冊目は、本というか雑誌ですが、毎年恒例の美術展情報。この手の美術展情報誌は毎年初めに数種類出ているのですが、比較的近所の本屋さんで手に入るのが「おとなのOFF」ということで、ここ数年の定番になっています。

さっそく中身を見ていきますと、まず気が付くのは、今年は京都・大阪など関西方面の美術館博物館で力が入っているなぁ、ということ。ここ数年、大阪の美術館でリニューアルのための休館をしているところが多いな、と思っていましたが、万博開催に合わせていたのですね。と、今頃気が付きました。関西に日本の国宝が大集結するようです。

今年はゴッホやら印象派やらの展覧会が目白押しのようです。日本に限らないことかもしれませんが、ゴッホも印象派も、根強い人気ですね。そんななか、本書で紹介されていたなかで個人的に気になった展覧会ベスト5(順不同)は次のとおりです。

  • 西洋絵画、どこから見るか?-ルネサンスから印象派まで サンディエゴ美術館vs国立西洋美術館(国立西洋美術館、京都市京セラ美術館)
  • 異端の鬼才-ビアズリー(三菱一号館美術館、久留米市美術館)
  • ブルックリン博物館所蔵特別展 古代エジプト(森アーツセンターギャラリー)
  • 絵金(サントリー美術館)
  • 九州国立博物館20周年記念 特別展 九州の国宝 きゅーはくのたから(九州国立博物館)

そして、展覧会内容に関わらず、個人的に今年こそ足を運びたい館ベスト5(順不同)はこちらの顔ぶれ。

  • 泉屋博古館京都本館
  • 大阪市立東洋陶磁美術館
  • 大阪中之島美術館
  • 大阪市美術館
  • 福田美術館

足を運びたい館は、みごとに関西方面に集中しました(笑)今年は大阪での藤吉憲典の個展がありますので、それに合わせてひとつでも回ることが出来たらいいな、と。それから九州国立博物館が20周年なので、こちらもきっといろいろと企画があるはずで、楽しみです。2025年も素晴らしい展覧会と出会えますように^^

『おとなのOFF 絶対見逃せない2025年 美術展』(日経TRENDY)

博物館学芸員研修「オンライン語り場」―「恐れず弟子をとれ!~博物館の最コアユーザーの育成~」に参加しました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館学芸員研修「オンライン語り場」―「恐れず弟子をとれ!~博物館の最コアユーザーの育成~」に参加しました。

2016年からお世話になっている、九州産業大学の緒方先生が責任者を務める博物館学芸員のための技術研修会。令和6年度も文化庁「大学における文化芸術推進事業」連続講座・オンライン語り場が開催されました。今年度のテーマは「地域の子ども、若者を支えるミュージアム活動」。最終回は、沖縄市立郷土博物館の主任学芸員さんからの報告でした。

以下、備忘。


  • 師匠はいますか?弟子はいますか?
  • 「もの」を中心に、時間・空間・こと・人とつながる(つなげる)。
  • 「恩師」との出会い。
  • 引き継ぎたい時間の流れ。
  • 背中を見せる・追いかける。
  • 子どもの「体験格差」。
  • 格差を縮小させることができる、公的施設での体験。
  • 博物館の理念に共感する「コアユーザー」。
  • 近隣施設との協力。
  • イベント参加者ではなく、「調査隊員」。
  • レポート(観察報告記録)を書くことで、より観察力が増す。観察力が増すと、レポートもよりレベルが上がってくる。の、好循環。
  • 単なる体験イベントではなく、科学的な成果も残す。上がる。→論文の発表、成果の共有(動画など)。
  • 科学者・研究者とは?-大学の研究者じゃなくても、在野でもできる!
  • 学校に行けない子たち→博物館へ!!
  • 来館者(弟子)も、学芸員(師匠)も、笑い合える場所。
  • 同じ方向性を見つめ、師の作った道の延長線上に、さらに道を進めること。
  • こんな仕事もあるよ!を示せる大人。
  • いろいろな場所に、それぞれに「師匠」が存在する。
  • 次の世代へ、の想い。空回りも多いけれど。

「恐れず弟子をとれ!~博物館の最コアユーザーの育成~」沖縄市立郷土博物館からの報告より


沖縄市での、子どもの教育環境に見られる問題点の提示からスタートした、今回の報告。「体験格差」の言葉が頭に浮かびました。経済的なゆとりが無いと、子どもに習い事や旅行などの体験をさせることが出来ないというのは、世の中がある程度豊かになったからこそ生まれた事態だとは思うものの、やはり切ないです。

公的施設である美術館博物館は、家庭での経済状況に関わらず、館に来る子どもたちに「体験」を提供できる場所です。その機能を最大に生かすことで「経済的な格差≠体験格差」を掲げていくことが出来る場所し、そうならなければならないと思いました。美術館博物館には、お金をかけた習い事や旅行などにも匹敵するような体験を、来館者に提供できるポテンシャルがあると信じています。

また参加者の自由な意見交換の場である「語り場」からは、芸員さんの立場の不安定さについての話がでました。日本の文化・教育行政の大きな課題ですが、現状がこうである以上、そのなかでいかに道を拓いていくかをそれぞれに考えて行くしかありません。報告者さんのお話のなかで「在野の研究者」という言葉が出ており、同様に「在野の学芸員」もアリなのです。もちろんそのなかで、いかに収入を得るかという問題は大きなものですが、現にわたしはフリーで動いているので、難しさと同時にたくさんの可能性・選択肢があることも感じています。これからは学芸員の在り方も、もっと自由になるように思います。

一番上の写真は、わたしが勝手に師と仰いでいる、齋正弘先生の著書。

博物館学芸員研修「オンライン語り場」―「不登校児童生徒を支える博物館活動」に参加しました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館学芸員研修「オンライン語り場」―「不登校児童生徒を支える博物館活動」に参加しました。

2016年からお世話になっている、九州産業大学の緒方先生が責任者を務める博物館学芸員のための技術研修会。令和6年度も文化庁「大学における文化芸術推進事業」連続講座・オンライン語り場が開催されています。今年度のテーマは「地域の子ども、若者を支えるミュージアム活動」。今回は、福岡県北九州市にある「いのちのたび博物館」さんからの報告でした。いのちのたび博物館というのは通称で、正式名は北九州市立自然史歴史博物館。北九州市は、美術館も博物館も動物園も充実しています。もともと製鉄で栄えた一大産業地ではあるものの、斜陽となったのちも、文化的な社会教育施設が維持され機能している、その理由が垣間見えるような報告でした。

以下、備忘。


  • MT(ミュージアムティーチャー)と学芸員の協働。
  • MTは、来館者や学校と、博物館をつなぐ役割を受け持つ。
  • 北九州市教育委員会が提唱するセカンドスクール事業。
  • 「博物館は第二の学校」
  • 学校では得られない知識習得や体験活動。
  • 「未来へのとびらオンライン授業」
  • 教育委員会主導→博物館施設への依頼。
  • 博物館からオンライン授業を中継して、学習への興味を。
  • 展示解説+クイズ+質問コーナー。
  • チャット(匿名性・発語ではなく入力による会話)の良さ。
  • オンライン=自分が安心して居られる場所から参加できる安心感の確保。
  • 博物館授業に参加することによる新たな発見・知的好奇心の高まり・探求心や意欲の向上→外界への意識の高まり・「行ってみたい」行動の喚起。
  • 事後アンケートにより児童・生徒の振り返りを促す:質問項目の作り方への工夫。

以上、北九州市自然史歴史博物館「不登校児童生徒を支える博物館活動」より

  • 教育委員会との連携、学校との連携、横のつながり。
  • 声をかけてもらえるような関係づくり、取り組みのアピール。
  • 学校教育のなかでは埋もれてしまう子どもたちが、安心して居れる場所・活躍できる場でありたい。
  • 社会包摂。
  • 多様な窓口、多様な切り口を作る→発信。
  • 図書館に続け!

以上、語り場(ルーム6)より


今回も学びの大きい90分でした。ご一緒させていただいた皆さま、ありがとうございました!