大阪万博視察・番外編-「竹中大工道具館」に行ってまいりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大阪万博視察・番外編-「竹中大工道具館」に行ってまいりました。

今回の大阪出張は、万博の視察がメインイベントでした。前日入りでしたので、毎回出張時のミッションにしている、美術館博物館訪問を検討。万博に合わせて、京都・奈良の国立博物館と大阪市美術館では国宝を集めた特別展が開催されている、というのはもちろん知っていたのですが、今回は混雑するところは万博だけで十分…ということで、別の場所を選択。ずっと行きたいと思っていた「竹中大工道具館」に、ついに行ってまいりました。博多から新幹線に乗り、新大阪の一つ手前の新神戸駅で降りて、歩いて3分ほど。駅からすぐ近くの便利な場所です。

竹中大工道具館は、ご存じ関西拠点の大手ゼネコンのひとつ竹中工務店さんが、「大工道具」を民族遺産として収集・保存・研究・展示する目的で、1984年に開館なさったものです。新神戸駅の建物は、2014年に移転したものとのこと。上の写真の見事な門構えに、思わず「おおー!」と声が出ました。当日は霧雨がずっと降っていたのですが、雨の景色を見れてラッキー!とさえ思わせる美しい佇まいでした。中に入れば、見事な建築としつらえと展示の数々に、ワクワクどきどき。ずっと居たくなる空間でした。

竹中大工道具館

展示内容のすごさもさることながら、展示方法の種類・工夫がすごいです。

竹中大工道具館

引き出し式の展示ケースは、わたしのあこがれ。見事でした。

竹中大工道具館

茶室がどのようになっているかを見ることができる、スケルトンの実物大模型。靴を脱いで茶室の中に入ることができるのが嬉しいですね。写真左奥の壁の向こう(裏側)には、ちゃんと水屋もありました。

竹中大工道具館

展示室から外に出ると、小径の奥に休憩室がありました。これまた美しく落ち着く空間で、ゆっくり庭を眺めつつ、一休みすることができました。

お目当てだったミュージアムグッズの「カンナのキーホルダー」は、残念ながら売り切れで、人気が高くて入荷してもすぐ完売してしまうということで、今回は「木槌のストラップ」をゲット。カンナのキーホルダーリベンジも含め、また足を運びたいと思いました。

竹中大工道具館

そして、これは翌日万博会場に行って知ったのですが、大阪万博会場のシンボルである大屋根リングは、実施設計・施工・監理に竹中工務店さんも入っておられたのですね。知らずに竹中大工道具館に行っておりましたが、図らずもグッドタイミングな組み合わせでした。

大阪万博視察・その2-パビリオン訪問、お食事、予約と待ち時間など。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大阪万博視察・その2-パビリオン訪問、お食事、予約と待ち時間など。

イタリア館を訪問した後は、腑抜けのようになりましたので、あとは同行してくれたお友だちに一任です(笑)。次はお昼過ぎに「日本館」。移動時間を考慮しても少し時間がありましたので、近くにある「コモンズD」館へ。すでに万博に足を運んだお友だちのレポートで、何人もの方がこの「コモンズ」シリーズがかなり楽しいとおっしゃっていたので、実は楽しみにしていたのです。

コモンズDは、25か国が参加。一つ一つのブースは広くはないけれど、それだけに各国が自国の「イチ推し」をアピールしていて、特色がわかりやすく興味深かったです。なかでもわたしが一番「おおー!」と思ったのが、岩塩のパキスタン。床も壁もオブジェも岩塩で出来ている幻想的な空間でした。入り口で迎えてくださった、その国の方であろうスタッフさんに「運んでくるの、たいへんだったんじゃないですか?」と尋ねると、「潮風に乗って、ここまで来ました」とユーモアを交えたお返事。こういうコミュニケーションの楽しさがまた、良かったです。「コモンズD 岩塩」などのキーワードでググると写真がたくさん出てきますので、興味のある方は探してみてくださいね。

さてコモンズDは次の予約時間までに回り切れず、半分以上を見逃したまま日本館へ。予約を入れると、確実に見れるという良さがある反面、時間に縛られるという不自由さもありますね。その日本館は、予約時間に到着してすぐに受付してもらえたものの、そこから館内に入るまでに長蛇の列ができており、30分以上待たされました。予約の上に待たされる…でも日々改善を繰り返しているようで、スタッフの皆さんの心配りが素晴らしかったです。日本館は「循環」をテーマにしたゾーンづくり。「藻のキティちゃん」と「火星の石」が目玉のようでした。キティちゃんはかわいかったけれど、個人的には、意図がよく理解できなかったかな、というところ。訪問前の予習と、訪問後の復習があると、より理解が深まるだろうなと感じました。わたしはといえば、勉強不足でした。

次の予約までに少し時間があるので、その間にお昼ご飯を食べることに。ランチ難民になりたくないと思いつつ、せっかくだから海外のお国柄を感じることができるような食事にありつきたいと思っていたところ、すでに14時近くになっていたからか、比較的すんなりアフリカのレストランに入ることができました。お値段は、もちろん万博価格。イタリアのサンドウィッチ1600円にも驚きましたが、アフリカのランチセットは、お野菜たっぷりの具材がかかったクスクスにハイビスカスのジュースがついて3900円也。美味しかったです&ボリュームたっぷりでお腹いっぱいになりました。わたしたちがレストランに入ったときに、ジャンベを使った太鼓演奏がちょうど始まり、観ることができたのがラッキーでした。飛び入り参加で踊り出す人があり、それがまたとてもかっこよくて、大いに盛り上がりました^^

次に予約で入ったパビリオンは「飯田グループ×大阪公立大学共同出展館」。未来の「ウェルネススマートシティ」をテーマにしていました。が、わたしの興味はといえば、会場中央に据えられた大きなジオラマ。電車も車も動いていて、夜になれば明かりが灯り、楽しかったです。ああいうものは、ずっと観ていて飽きないですね。大好きです。パビリオンが伝えたかったこととはまったく異なる目線だったとは思いますが、楽しみました。そうそう、こちらは予約のおかげで受付がスムーズだったほか、入り口から中に入るのにも、10分も待たされなかったと思います。その10分ほどの間にも、中の様子やパビリオンの概要を説明してくださる方があり、こういうサービスがあると、待ち時間も苦になりませんね。

というわけで、思いのほか長くなってしまいましたので、続きはまた次回。

↓大阪万博視察・その1はこちら↓

大阪万博視察・その1-カラヴァッジョ『キリストの埋葬』を拝んでまいりました!

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大阪万博視察・その1-カラヴァッジョ『キリストの埋葬』を拝んでまいりました!

ここひと月ほどの大阪万博関連のニュースを見ていると、開幕前の酷評はいずこへ、というほどに盛り上がっている感じがします。かくいうわたしも、当初気になっていたのは、大阪万博=「カラヴァッジョの絵が来る!」その一点だけでした。友人から「チケットあるけど、行く?」のお誘いをいただいたのは、3月初めのこと。それまでまったく考えてもいなかった「万博視察」が、急に現実味を帯びてきて、即決で「行く」となったのでした。

すぐに日程を決めて、そのあとはパビリオン予約。チケットを持っている友人がすべて手配してくれて、とっても助かりました。「どこ行きたい?」に対して「イタリア館さえ見れたら、あとはどこでもOK」の希望を出していたところ、イタリア館の予約を取ってくれました。現在、イタリア館は人気が高すぎて予約がなかなか取れないようですが、3月初旬時点ではすんなりと予約が取れたようで、ありがたいことでした。

朝9時半からのイタリア館予約に間に合わせるには、オープンする9時にすぐ万博会場入りしていなければならない、ということで、前日から大阪入り。入場ゲート前には2時間前に到着するも、すでに長蛇の列ができていました。それでも広い入場ゲートのおかげで、オープンしてからはスムーズに入ることができ、朝一の誰もいない大屋根リングをゆっくり歩いてイタリア館に向かうことができました。

さてイタリア館。無事予約時間に入場。インストラクションの映像を数分見た後に本会場へと入ると、最初の空間では、1920年に飛行家アルトゥーロ・フェラーリンがローマから東京への初飛行に使用したという飛行機「アルトゥーロ・フェラーリンの飛行機」と、紀元2世紀の大理石彫刻「ファルネーゼ・アトラス」が出迎えてくれます。飛行機は、オリジナルの技術図面に基づいて忠実に再現したものだそうで、つくづくと天井を見上げてしまいました。天文学の巨神アトラス、人間と宇宙の関係を擬人化したアトラスは、今回のイタリア館のシンボル。1800年前にこのような彫刻が作られていたこと、それがここに運ばれてきて、現代のわたしたちが見ることができるということに驚愕します。ぐるりと一周回ってみることができるように展示されているので、あらゆる角度から拝むことができます。

そして次の間に進むと、目指すカラヴァッジョの絵画に会うことができました。バチカンが万博に参加したのは初めてのことだとか。小さく暗い空間に、絵だけがバン!とスポットライトを浴びていて、その圧倒的な存在感に、思わずこみあげてくるものがありました。皆さん遠慮してか、絵からかなり離れていたので前の方ががら空きで、絵の正面真ん前に陣取って至近距離でじっくりと拝見することができました。絵とわたしと、一対一(実際には周りにたくさん人がいましたが)で対峙することができた、素晴らしい時間でした。わたし的にはこの時間だけで充分、大阪万博に足を運んだ意味がありました。

大阪万博カラヴァッジョ

イタリア館、ほかにももちろん見どころの展示やお庭があり、素晴らしかったですが、わたしはもう大満足で、館内を回りつつひたすら絵の余韻に浸っていました。もうひとつ目玉作品とされていた、レオナルド・ダ・ヴィンチの「アトランティック手稿」の素描は、立ち止まらないように流れるよう促されていて、そこはちょっと残念でしたが、仕方がないのでしょうね。胸いっぱいになって館の外に出ると、ピッツァやジェラートのキッチンカー。ジェラートのところには大行列ができていたので、トマトとモッツァレラとバジルソースのサンドウィッチ(1600円也)を購入して、ベンチでかじりながら一休み。

イタリア館のテーマは「芸術は生命を再生する」。ご興味のある方、これから足を運ぶ方は、イタリア館のサイトにある展示内容の解説を読んでから行くと、見え方が一層深まるかもしれません。ちなみにわたしは、まっさらな状態で観に行って、帰ってきてから復習しております^^

イタリア館 – L’ITALIA A EXPO 2025 OSAKA

「美」とか「美術」とか「美学」と言いながら、おしゃれにとても疎いもので。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「美」とか「美術」とか「美学」と言いながら、おしゃれにとても疎いもので。

若いころから「おしゃれをする」ことに目を向けてこなかった結果、この歳になって慌てることが増えてきました(笑)。一般に、おしゃれに興味を持ったり気を使ったりしだすのは、10代思春期の頃からでしょうか。10代のころから「自分の身だしなみ」について考えることをしてきた人と、50代になって「なんとかせねば」と思いはじめる人(わたし)とでは、すでに約40年の開きがあるわけです。この差は大きい!

あらためて考えてみると、ずっと長い間、わたしにとっての「美」は、自分が見たり感じたりするもの=自分の外にあるものなのでした。いわば「自分のことは棚に上げて」語っている状態ですね。美術的な仕事について25年以上が過ぎた今頃になって、そもそもその語り手があまりにも見た目にこだわらなさすぎるのはいかがなものか、説得力があるのだろうか、という疑問が頭をよぎるようになってきました。ひとつには、更年期の年頃を経て、自分自身のいろいろなことが目に見えて変化してきた、というのも現実的に大きな要因だと思います。

『美 「見えないものを見る」ということ』福原義春

そういえばわたしにとってのバイブル的な本の一冊である『美 「見えないものを見る」ということ』の著者である福原義春さんは、化粧品会社・資生堂で名誉会長まで務めた方。うーん…。

というわけで、今更ながら、いつもきれいな友人に話を聞いてみたり、女性誌のファッション雑誌を手に取ってみたりしています。これまであまりにもそういうことをしてこなかったので、正直どこから手を付けたらよいのかわからない状態(笑)。あるときには「ローマは一日にして成らず」と思い、またあるときには「始めるのに遅すぎることはない」と思いながら、「少しはなんとかせねば」とジタバタしています。義務感や焦燥感ではなく、もっと楽しんで取り組めるようになると良いのでしょうけれど、なにしろ、慣れていないのです。きっとおしゃれ上級者の皆さんは、楽しんでいらっしゃるのだろうな、と思いながら、修業は続きそうです。

今年度は全97講座-郷育カレッジ2025年度のカリキュラムが決定しました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年度は全97講座-郷育カレッジ2025年度のカリキュラムが決定しました!

福津市民のための生涯学習システム「郷育カレッジ」。福津の「ひと、もの、こと」を題材に、ふるさと、健康福祉、環境、生きがいなど、さまざまな分野の講座を開催します。昨年10月から検討をスタートした2025年度のカレッジカリキュラムは、年明けまでにほぼ確定し、パンフレットの制作に入っていました。

毎年のカリキュラム編成の検討は、かなり時間をかけて議論をしています。そのときに参考にする要素として大切にしているのが、講座内容と、受講者の方々の反応。毎回簡単なアンケートを実施していますが、アンケート用紙には書かれない反応も、たくさんあります。それらを確認するためにも、各講座での様子を、運営委員や市の職員が自らの目で確かめるようにしています。

アンケートに記されたご意見は、良いことも悪いことも講師の方にきちんと伝えます。人気の高い定番講座であっても、マンネリ化しないよう、毎回ブラッシュアップして新しい内容を盛り込んでいただくことをお願いしています。一方で、定員割れする講座であっても、伝えるべき内容であるものは、継続しています。パンフレットに載せるタイトルのつけ方や解説文の内容を、いかに市民の皆さんにわかりやすくするか、いかに講座の良さを伝えるかに、一番時間をかけているかもしれません。

新しい講座の候補が上がってくるたびにしっかり吟味するのはもちろん、年度により削減する講座も出てきます。一年間で実施できる講座数のなかで、これらの増減を調整するのも、なかなかシビアな仕事です。でも、講座数の制約があるからこそ、講座内容を精査し「今年度のカリキュラムに入れるべきもの」を選択していく過程が重要で、その結果として、少しでも受講者の方々にご満足いただけるものに、近づけていけているのだと思います。

今年度のパンフレットは、5月末あたりに配られる福津市報と一緒に全戸配布される予定です。今年度も、一人でも多くの市民の方が、一つでも多くの講座にご参加なさることを願っております。

郷育カレッジについてのお問い合わせは、福津市郷育推進課へどうぞ^^

大阪市立東洋陶磁美術館の「陶磁入門」がわかりやすくて便利です。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大阪市立東洋陶磁美術館の「陶磁入門」がわかりやすくて便利です。

大阪万博開催に向けて、関西方面の美術館がここ数年続々と改修工事に入り、昨年あたりから続々とリニューアルオープンしています。大阪市立東洋陶磁美術館もそんな「万博リニューアル組」の一つでしたので、足を運びたいなと思いつつ、サイトチェック。館のリニューアルに合わせて、ウェブサイトも大幅にリニューアルされていました。直感的にわかりやすく、ストレスフリーなつくりになっていると思います。

大阪市立東洋陶磁美術館

なかでも目に留まったのが「陶磁入門」のメニュー。「鑑賞の手引」「地図・年表」「陶磁史」の三分野で、簡潔にやさしくまとめられています。内容が難しすぎたりボリュームが多すぎたりすることなく、基礎的な知識を知ることができると感じました。「東洋陶磁」の専門館としての切り口が、とても勉強になります。入門者向けというだけでなく、概要を確認したいときの手引きとしても、参考になりそうです。

訪問前にサイトを覗くのは、昨今あたりまえの行動パターンになりつつあります。大阪市立東洋陶磁美術館さんのサイトは、訪問がより楽しみになる情報が満載でした。ますます足を運びたくなってきました。近々行けるといいな♪

読書『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著

移動のお伴用にゲットした新書版。持ち歩くバッグが重くならないように(本が入ってなくてもまあまあ重いのですが)、タイトル指名買いでない場合は、できるだけ文庫サイズか新書サイズの本を物色するよう心がけています。

自分のやってきていること、考え続けていることがどうやら「美学」の範疇なのだと(かなり遅ればせながら)気づいたのは、昨年末に読んだ本のおかげでした。

せっかくなので少し掘り下げてみようと、「美学」キーワードで見つけたのが本書『美学への招待』です。「増補版」とある通り、2004年に初版発刊されたものを、2019年に時代に合わせて大幅にアップデートしたというもので、わたしが手に取ったのは、2024年10月25日付の増補版6版。初版から20年以上が経っているわけですが、まったく古臭さを感じないのは、増補=アップデートによる成果だけではなく、そもそもが根本的・普遍的なことについて書かれている本だからなのだと思いました。

以下、備忘。


  • 人間の創造性が発揮される領域として、科学と並んで藝術が考えられていた、という事実
  • 魅力とは、言葉にならないもの、感ずるよりほかにないもの
  • 藝術の領域が美にあり、その美は感性的に認識される(ドイツの哲学者 A・G・バウムガルテン)
  • 人格形成への美の影響
  • 美は物質性と精神性の融合からなる
  • 「美は体験のなかでしか存在しない」という考え方
  • 感覚とは身体の持ち分であり、判断力というような知性の働きとは正反対の事柄
  • 過去の経験の記憶や考え方のパターン、概念的な知識など、多様な要素が現実の鑑賞体験に関与し、それを重層的な和音のようなあり方のものにしている
  • 哲学的な瞑想を行う場所(museumの由来となるラテン語mouseion)
  • 美術とアートとartの違い
  • マスプロダクションとしての複製と、オリジナルをコピーした複製(の違い)
  • 生のなかの藝術
  • 空間を人間化する(イサム・ノグチ)
  • 「永遠」型の藝術
  • 永遠派と現代派
  • 藝術の価値をどこに見出すかという問題
  • 藝術における伎倆の重要性の後退
  • 「幸福の約束」(ネマハス)
  • 「人生に不可欠」(ダントー)
  • 「藝術」ももとは生活世界の一部だった
  • 見てただちに捉えられる「よさ」とは、「美しさ」を措いてほかにありません。

『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著より


本書はわたしにとって入門書であり教科書的な一冊となりました。巻末には、ここから先に進みたい場合に参考になる文献一覧と簡潔な紹介文が記してあり、とても親切。少しづつ読んでいきたいと思います。

『美学への招待 増補版』(中央公論新社)佐々木健一著

2025年九州産業大学国際シンポジウム テーマは「美術館が変わる、若者が変える」でした。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2025年九州産業大学国際シンポジウム 博物館と医療・福祉のよりよい関係 テーマは「美術館が変わる、若者が変える」でした。

今年も、学芸員研修会の年度まとめとなる、九州産業大学国際シンポジウムに参加いたしました。ここ数年の大きなテーマは「博物館と医療・福祉のよりよい関係」が続いていて、なかでも若年層や地域住民とのかかわりが、今回のテーマでした。

英国のダリッジ・ピクチャー・ミュージアムとつないでの国際シンポジウムは、ずっと続いています。発表者であるキュレーターのジェーンさんとは、コロナ禍前になる前の年度に、九産大で現地開催されたシンポジウムで一度お会いしています。定点観測的に毎年取組報告をお聞きするたびに、その歩みを止めないチャレンジへの敬意が湧いてきます。

以下、備忘。


  • How can historic paintings and old master peace speak and connect to contemporary lives and society?
  • The Past for the Present.
  • Unlock art for all.
  • Bringing art to life and life to art.
  • 「地域の人々にとって価値のあること」は、どんなこと?「自分に関係のある場所」と認識してもらうには?
  • 単に「教育」面での役割を担う場所、で終わらせないためには。
  • 「誰のストーリーを語るのか」を考えることの重要性。
  • Sending informal time in a formal place.
  • Oracle card →アートカード活用の可能性。
  • welcoming place としての galleries and museums。
  • 単なるアンケートによる意見聴取ではなく、resercherによる踏み込んだ調査と実験→フィードバック。
  • 理論と実践。
  • making place for young people
  • Museums are fundamentally for people
  • handling = making something が、making new friends につながる
  • 利用者にとって、意義のある存在であり続けるには。
  • 来館者が、自分の人生や経験とのつながりを見出したと思えるか。

2025年九州産業大学国際シンポジウム 博物館と医療・福祉のよりよい関係「美術館が変わる、若者が変える」より


今回もとても勉強になりました。ありがとうございました。

2025九州産業大学国際シンポジウム

教育普及学芸員の師と仰ぐ齋先生の言葉に、身の引き締まる思いがしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

教育普及学芸員の師と仰ぐ齋先生の言葉に、身の引き締まる思いがしました。

わたしが博物館学芸員資格課程に挑戦したのは、40代に入ってからのことでした。大卒資格(学士)を持っていましたので、佛教大学の通信課程に三年次編入し、二年間の学習と試験、博物館での実習、卒論を経ての課程修了。大人になってからの学び直しを考えるとき、大卒の学士があると、このように三年次編入で専門分野を学べるケースが多いので、とても便利ですね。通信でしたが、博物館実習にかかる実技と講義では、京都北野にある佛教大キャンパスを拠点に、各分野の教授たちから10日間ほど朝から夕方まで対面で学びました。

通常博物館実習は、1つの館に滞在して学ぶスタイルですが、わたしが佛教大に在学したときは、特別に複数の館で学ぶスタイルでした。京都~奈良にある、歴史系・仏教系・産業系・美術系と分野も異なれば、国立・府立・市立・私立・学校附属と運営母体もさまざまな館のバックヤードを訪問し、それぞれの学芸員さんからお話を聞くことができたのは、かなり珍しく贅沢な実習だったと思います。ただ「ゼミ」的なものが無く、卒論もガッツリ指導教授が就くというものではなかったため、資格取得に至るまで、専門的分野での「師匠」と呼べる存在がありませんでした。

そんなわたしにとって「師匠」と仰ぐ存在と出会えたのは、九産大の緒方泉先生率いる「博物館学芸員技術研修」への参加がきっかけでした。一番最初に参加したカリキュラムで、当時宮城県美術館で教育普及学芸員をなさっていた齋正弘先生に出会い、「アートエデュケーション」という概念に出会い、勝手に「これだ!この人に学ぼう!」と思ったのでした。2016年のことです。

それから、学芸員研修での齋先生の講義は毎年受講し、仙台にある宮城県美術館まで押しかけ、著書を読み込み…。

花祭窯の「陶片ミュージアム構想」に興味を持ってくださった齋先生と、雪の舞うなか津屋崎から福間・花見の海岸線を「陶片探し」で何時間も歩き回ったこともありました(笑)。

コロナ禍後は、学芸員技術研修会で齋先生の教育普及の講座が無くなってしまったため、お会いする機会がありませんでしたが、ずっと年賀状で近況報告をしておりました。その、今年の年賀状で先生が書いていらっしゃった言葉に、考えさせられたのです。

曰く、

「学芸員は世の中の変化の最先端にいる存在である。」

「困ったら基(もと)に戻る。」

齋昌弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』(仙台文庫)

思えば「美術はもっと使える」とおっしゃったのは齋先生でしたが、それは同時に「使えない・役に立たない(ように見える)ものの価値」への眼差しを持ち続ける大切さを説いていたと思います。そして「基(もと)」の大切さ。

新年早々、目を開かせられました。やはり齋先生は、わたしの(勝手に)偉大な師匠です。

今年最初の九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

今年最初の九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。

九州国立博物館は、新年の展示で徳川美術館の「初音の調度」をするのが恒例になっていました。毎年、ポスターやウェブサイトで展覧会情報を目にしては「すごいなぁ、観に行きたいなぁ」と思いながらも足を運べずにおりましたが、今年ようやく観に行くことが出来ました。会場は常設展示フロアの4階「文化交流展示室」内。「九博は常設がすごい!」は、わたしが常々感じ、言いふらしていることです^^

さて「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」。美しい!のひとことです。なかでもわたしが一番惹かれたのが、こちら。

九州国立博物館は「徳川美術館所蔵 菊の白露蒔絵調度 晴れなる輝き」

大きな箱の中に、小さな箱が12個おさめられているというもの。その一つ一つが精緻で美しいのですから、蒐集心がくすぐられるといいましょうか、なんとも欲しくなりますね。展示されている小さな箱は11個で、ひとつ紛失したようだとの説明書きがありました。

いつもの「田中丸コレクション」の部屋でも美しいものをたくさん拝見。古伊万里は長年いろいろなところで現物や資料を見ているので、見覚えのあるものが多いのですが、今回「これ初めて見たかも」というものを見つけて嬉しくなりました。特別展の会期中では無かったので、来場者数もそれほど多くなく、ゆっくり楽しむことが出来ました。眼福眼福。

そして、今回の九博訪問で何が一番嬉しかったかと言えば、長らく空き店舗となっていたスペースに、ようやくレストラン&カフェが登場したことです。わたしが行ったのは特別展の無い平日の午後でしたが、そこそこ賑わっていました。これまでこのようなくつろげるスペースが無い状態だったことが、美術館愛好家としては懸念すべき状態だと感じていましたので、関係者でもないのにホッとしました。

昨年度は3階特別展示室のリニューアルのために販売が停止されていた「九博メンバーズプレミアムパス」が、今年は特別展「はにわ」から再開するという嬉しいニュースも。九博開館20周年記念の年なので、2025年度の特別展にも、大いに期待しているところです。

九州国立博物館