読書『モノのお手入れ お直し 作りかえ』(翔泳社)暮らしの図鑑編集部編

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『モノのお手入れ お直し 作りかえ』(翔泳社)暮らしの図鑑編集部編

いつものカメリアステージ図書館、こちらは新刊棚よりセレクト。昨日ご紹介した本もそうですが、今の自分のアンテナが「日常の暮らし」に向いていることがわかります。

サブタイトルに「繕って長く使う、自分らしく整えるアイデアとヒント一六〇」とあります。一番上の写真は目次ページの一部ですが、ここを眺めただけでも使えそうなアイデアがたくさんで、ワクワクしてきます。もちろん「これ知ってた!もうやってる!」というものもありますが、それも含めて一覧できること、分野が多岐にわたっているのが魅力です。個人的には、ちょうど気になっていた「万年筆のお手入れ」「衣類を染め直す」「古布ではたきを作る」を、まず実践してみることを決定。

これは保存版です。手元において、必要の都度開きたい本です。いわば生活用の事典。図書館で借りて中身確認→購入、のパターン。購入前に中身をじっくりチェックできるのは、図書館のおかげです^^

『モノのお手入れ お直し 作りかえ』(翔泳社)暮らしの図鑑編集部編

読書『自然の力で夏をのりきる暮らし術』(農文協)農山漁村文化協会編

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読書『自然の力で夏をのりきる暮らし術』(農文協)農山漁村文化協会編

いつものカメリアステージ図書館。最近特にお気に入りの、貸出カウンター横の特集コーナーには、季節ごとの特集お薦め本が並んでいます。スーパーマーケットのレジ横の「ちょっと買い足しコーナー」よろしく、「次いで借り」を促してくれます。ぱっと見、10-20冊も並ぶかな?というくらいの小さなコーナーですが、優れものです。

今回は、梅雨から夏にかけての暮らし術的なテーマに変わっていました。その前は健康特集のような感じのタイトルが並んでいたのです。

どうやら月2回はテーマが変わっているような感じがします。貸出期間が2週間ですので、2週間ごとに変えていれば、返却と貸出でカウンターに立ち寄るたびに、毎回新しい「レコメンド」をチェックすることができる計算ですね。素晴らしい!わたしはすっかりはまっています。今度司書さんに戦略を聞いてみたいと思います^^

さて『自然の力で夏をのりきる暮らし術』。じわじわと気温が上がってきている今、まさに読みたいタイトルでした。サブタイトルに「エアコン半減でも 手づくりローテクアイデアで 夏を涼しく・楽しく!」とあります。2012年の刊行。ここ10年余りの間に、暑さ対策への考え方・常識とされるものは多少変わってきているところもあると思いますが、エアコンをけちるということではなく、自然な涼しさを取り入れる知恵は、学びたいところです。

まず「涼しさの原理」の解説からはじまるところが、本書の本気というか、実用性を感じさせました。緑のカーテン、雨水利用、すだれなどの日除けの使い方など、これまでにも聞いたことがあるものの、ちゃんと理解していなかった知恵を、学び直すことが出来たのは大きいです。実際に自分の住まいでなにをどう取り入れることができるか、楽しんでできるところからはじめよう!と思いました。我が家の場合は、まずは「すだれ」をもっと生かせそうです。本書の後ろの方には、暑さをのりきる飲み物や料理の知恵が載っていて、これまた「試してみよう」と思えるものがいくつも。なにをするにも、自分が楽しみながらできる要素がないと続きませんよね。そのことをわからせてくれる本でもありました。とりあえずゴーヤの苗を買ってこようかな^^

『自然の力で夏をのりきる暮らし術』農山漁村文化協会編

お茶、いよいよ奥点前「天目(てんもく)」のお稽古に入りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

お茶、いよいよ奥点前「天目(てんもく)」のお稽古に入りました。

茶道南方流に入門したのは、2013年のことでした。2012年に佐賀花祭から福岡津屋崎に移転して来て、30代のときに3年ほどだけ習ったお茶を習い直そうと、教室を探していて見つけたのが、博多の禅寺円覚寺で「南方録」をもとに禅茶の稽古をしている南方流でした。

茶道南方流

もともと流派にはまったくこだわるものではなく、窯元おかみの仕事上必要なことが最低限身に付けばとはじめた茶道。佐賀時代は、同じ町内で裏千家の先生(正式には先生の先生)をしている方のご厚意で、まったくの初心者でありながら先生方に混ざってお稽古をつけていただいていたのでした。たった三年ではありましたが、その時に茶道の所作の基本にあるもの=動きと精神性を学ぶことの意味・価値を、体験として教えていただきました。

さて茶道教室。ネットで探していたのですが、南方流のサイトで目にした茶道精神がなんとなくしっくり来たので、体験に足を運んだのが第一歩でした。お師匠さん=和尚さんが直々に説明をしてくださり、「やっぱり自分に合いそうな気がする!」と、即座に入門を決めたのでした。その後は、素晴らしい先生方・先輩方に囲まれて、お稽古を続けています。お茶に限らず、お稽古事を継続できるかどうかは、学びの内容もさることながら、現実的にはそこでの人間関係が大きく影響すると思います。そういう意味でも、南方流(南方会)に入門したことは、わたしにとってこれ以上ないベストな選択でした。

2019年3月に、最初の免状である「初伝披露懐石」で、日頃の成果を披露する懐石茶会の亭主を務めました。この時、茶会を終えてご挨拶に伺ったときに和尚さんにいただいたのが、「スタート地点に立ちましたね」の言葉でした。

初伝披露懐石を務めたあとは、「奥点前」と呼ばれるお稽古に進みます。ところが翌年からコロナ禍下となり、お稽古が進みにくい状態が3年ほど続きました。それでも少しづつ少しづつ、先生方がお稽古の機会を作ってくださいました。おかげさまで、奥点前のお稽古を進めてくることが出来ています。

「天目」は、南方流では基本的に納めるべきお点前の一番最後のものと説明をいただきました。もちろん、その他にも場面に応じてさまざまなお点前がありますので、まだ習ったことの無いものがたくさんあります。まずは「天目」を目指してお稽古を積んできた後で、さらに展開があるというように理解しています。その天目のお稽古を自分がするようになるとは、なんだか実感がないというのが正直なところなのですが、ともあれこの春から天目のお稽古がはじまりました。

天目はそもそもお茶碗の種類の名前。そのお茶碗を載せる「天目台」を使ったお点前は、南方流では専ら「献茶」の儀式の際に行われています。いわば非日常的なお点前です。お稽古をはじめて気が付いたのは、とにかく袱紗を捌く回数が多いこと。そういえばお炭手前の御稽古を始めたときに「掃除ばっかりしている」という印象があったのを思い出しました。先生方も冗談半分に「何回袱紗捌きがあるか、数えておきましょうか」とおっしゃられるほど、とにかく「捌いて、拭いて」すなわち「清める」所作が繰り返されます。

この春からスタートした天目のお点前のお稽古は、これから丸一年かけて続きます。今はあたふたしているお稽古が、一年後には多少なりとも落ち着いていることを願いつつ、精進いたします。

読書『人生100年、長すぎるけどどうせなら健康に生きたい。』(光文社新書)藤田紘一郎著

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読書『人生100年、長すぎるけどどうせなら健康に生きたい。』(光文社新書)藤田紘一郎著

いつものカメリアステージ図書館では、貸出カウンター横に、季節ごとの特集お薦め本が並んでいます。わたしにとっては、スーパーマーケットのレジ横の「ちょっと買い足しコーナー」と全く同じ効用があります。借りる本を決めてカウンターで手続きしている間にタイトルが自然と目に入るので、「これも借ります!」と、ほぼ毎回「ギリギリでさらに1冊追加」している次第。図書館の利用状況を測る指標のひとつに「貸出冊数」がありますので、その数字を伸ばすのに、間違いなく貢献しているコーナーでしょう。特集テーマは1カ月より短いスパンで変わっているのかな、という感じで割と頻繁に変わっている印象なので、その都度新しい発見があります。

で、先日そのコーナーで目についたのが本書。今回は食養生はじめ健康情報系のタイトルがずらりと並んでおりました。そのなかで本書に手が伸びたのは、タイトルではなく著者名が理由でした。藤田紘一郎先生といえば、ムシ=寄生虫博士として有名な、免疫学の研究者。わたしは子どもがアレルギー体質だと分かったときに、その手の本をたくさん読み漁ったのですが、そのなかでとても面白かったのが、この先生の著書の数々だったのでした。久しぶりに手に取った本書には寄生虫の話は出て参りませんが、先生の本の面白さは、内容やテーマのみならず、その軽妙でわかりやすい文章にもよるものだと理解する読書となりました。サクッと読めます。

さて『人生100年、長すぎるけどどうせなら健康に生きたい。』サブタイトルに「病気にならない100の方法」とある通り、目次にはその100の方法が並んでいます。第一部が「食事編」として1~69まで、第二部が「生活習慣編」で70~100まで。目次を眺めただけでも「「腸に良いもの」ばかり食べると、腸が悪くなる」「無理して「朝型生活」を送らなくていい」「定年後はストレスフリーにならないよう気を付ける」「医学の常識には半信半疑でいる」と、なかなか刺激的な文字を見つけることが出来ます。本文中にもそのような「藤田節」が散見されます。わたしが特になるほどと思ったのは、「私は医者ですが、病気を探すための検査は受けないことにしています。」というくだり。気になる方には、ぜひ本書全文を読んで本意を探ってみてくださいね。

『人生100年、長すぎるけどどうせなら健康に生きたい。』(光文社新書)藤田紘一郎著

読書『護られなかった者たちへ』(NHK出版)中山七里著

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読書『護られなかった者たちへ』(NHK出版)中山七里著

お友だちが「今、ハマっている作家さん」として、中山七里さんのお名前を挙げていたので、気になりました。読んだことがありませんでしたので、さっそくいつものカメリアステージ図書館で蔵書検索。著者名で検索をかけたところ、出てくる出てくる、たくさんの著作タイトルが上がってきました。図書館活用の第一歩は、検索・予約・リファレンスですね。

「こんなにたくさん本を出している人気作家さんなのね!」と、驚きつつ、自分が読んでいる範囲の狭さ=まだまだ読むべき本がたくさんあることに喜びつつ、少々まとめて借りて参りました。

さて『護られなかった者たちへ』。ミステリーの形ではあるものの、その謎解き以上に、背景にある現代日本のひとつの問題点を考えさせられる物語でした。こういうのを社会派ミステリーというのでしょうか、NHK出版のサイトでは「日本の社会福祉制度の限界に挑んだ問題作!」と紹介してありました。物語中盤辺りから、事件の動機につながるものがだんだんと明らかになってくるのですが、明らかになるにつれて腹が立ち、非常に考えさせられました。

犯人が最後にSNSに残している叫びが、響きます。フィクションの形を借りた切実な訴え。読了後、この本をいったい誰に読ませたらよいのか、読ませるべきなのかと考えている自分がいました。

後日、何気なく息子の本棚に目を向けたところ、中山七里著の文庫がいくつか並んでいました。身近に読者がいたとは気づかず(笑)。『護られなかった者たちへ』は、阿部寛と佐藤健で映画化もされていたのですね。タイトルに何となく見覚えがあるような気がしたのは、そういうことだったかと思いつつ。これは、見ねばなりません。

『護られなかった者たちへ』(NHK出版)中山七里著

九響はじめ―「九響サンクス・コンサート2024」を聴いて参りました。

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九響はじめ―「九響サンクス・コンサート2024」を聴いて参りました。

福岡県には九州交響楽団(九響)があります。と言いつつ、わたしが前回九響の演奏を聴きに行ったのは、2021年のこと。その前回も「サンクス・コンサート」=ご招待でした。

その後なかなか機会を作れずにおりましたが、九響のコンサート会員になって定期演奏会に足を運んでいるお友だちに影響を受けて、今年は九響を聴きに行こう!と思いついたのでした。調べてみたところ、会員の種類がいくつかありましたので、自分の行けそうなスケジュールをもとに、まずは一番回数の少ないタイプで入会。年に4回なら、時間を確保できるかな、いや、確保しよう!ということで。

九州交響楽団コンサート会員のご案内

チケットが一回ごとに購入するよりもお得である、ということに加え、「年間My sheet」すなわち自分の指定席が確保できるというのも魅力的です。その他にも特典がいろいろ。年4回のつもりが、初めて会員になった人には「サンクス・コンサート」のご招待があるということで、思いがけずプラス・ワンのラッキーでした。

さて「九響サンクス・コンサート2024」。九響が毎年福岡県内の中学生に向けて行っている「中学生の未来に贈るコンサート」でのプログラムを披露してくださいました。2005年以降、県内各地の中学校で、年間50公演ほども開催しているとのことです。馴染みのある楽曲が並び、わかりやすい解説が入り、来場者参加のサプライズ企画がありと、とても楽しい2時間でした。

九響はこの春から新たに、首席指揮者として太田弦さんを迎えたということで、今回のコンサートも太田弦さんの指揮によるものでした。30歳という若さのマエストロは、身体全体を使ったエネルギーを感じる指揮で、雄弁な動きとチャーミングな笑顔がとても魅力的でした。息の合った九響のメンバーのチームワークを強く感じる演奏会でした。

アンコールは、九響ならではの「いざゆけ若鷹軍団」、ソフトバンクホークスの応援歌です。つい歌いそうになり、誰も歌っていないことに気づいて口を閉じ(笑)。ともあれ全体を通して、自然と笑顔になるコンサートでした。次の演奏会も楽しみです♪

読書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)展示会活用アドバイザー・大島節子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)展示会活用アドバイザー・大島節子著

わたしが勝手にブログの師匠と仰いでいる、せっちゃんこと展示会活用アドバイザーの大島節子さんが、初の著書を出版なさいました。展示会活用アドバイザー大島節子さんのブログはこちら。

著者の大島さんは、家業の什器レンタル会社を継いで若くして社長となり、2001年26歳の時に売上の95%以上を占めていた得意先の倒産を経験なさっています。その後、連鎖倒産の危機を回避するために家業を立て直していくなかで、同様の悩みを抱える中小企業の展示会出展をサポートする仕事を生み出した方です。「展示会活用アドバイザー」の仕事は、まさにご本人が現場で積み上げて来られた経験そのもの。彼女のブログには、中小企業が新規顧客を開拓するために「展示会」を活用するための情報が、てんこもりです。

本書はそのブログの情報を一冊にまとめたもので、エッセンスがギュッと詰まっています。まず序章で本書がサポートする「展示会」の定義が書かれています。そこには「アート作品や工芸品、ハンドメイド作品を見てもらう展覧会は含みません」と明記されていて、文字通りに受け取れば、我が花祭窯はサポートの範囲外ということになります。たしかに、本書でいう「展示会」と、アート作品の展覧会はまったく異なりますので、そこは混同できません。が、本書のなかに記されている考え方、方法論のなかには、実はわたしたちにも役立つものがたくさんありました。

展活サイトからダウンロードできるBtoBtoC型の「コンセプトワークシート」や「チラシフォーマット」は、要素を置きかえれば、そのまま多様な業種・場面で使えます。また「キービジュアル」の重要性と使いまわし術、展示会用動画を無料で作る方法と効果的な動画制作のための注意点など、「この方法、いただきます!」というテクニックも盛りだくさん。本書では、原則として「目的はここにありますよね、そこに進むためには、こうしましょう」というスタンスが通底しているので、それを自分ごとに置き換えると、「うちの場合は、こうしよう」という応用法が見えてきます。

「展示会」を活用することをお考えの中小企業・個人事業の方々に、とってもおススメの一冊です!

『展示会を活用して新規顧客を獲得する方法』(笑がお書房)展示会活用アドバイザー・大島節子著

福岡県産業デザイン協議会の特別講演「創造性を組み立てる」を聴いて参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福岡県産業デザイン協議会の特別講演「創造性を組み立てる」を聴いて参りました。

今年初めから3月までお世話になった、福岡県産業デザイン協議会の「デザイン開発ワークショップ」。

そこからのご案内で、特別講演「創造性を組み立てる」を聴いて参りました。

お話は、北九州のお土産として人気拡大中の「ネジチョコ」を開発した、オーエーセンター株式会社・代表取締役社長の吉武太志氏。ネジチョコはその開発経緯などをあちらこちらで耳にしたことがありましたし、実際に食べてみたこともありましたので、面白いなぁと興味を持っておりました。そこにご本人のお話が聞けるとあって、即申し込みました。

NTT西日本の特約店としてスタートした会社が、二代目になってどのようにスイーツショップの展開に到り、ネジチョコのメーカーとなったのか。そのストーリーが、とても面白かったです。特に多種多様な組織団体との協業(コラボレーション)による展開や、NPO法人として取り組んでいる地域との連携・活性化のお話には、現代の、そしてこれからのビジネスに必要不可欠な要素を強く感じました。もちろんたくさんのご苦労もあったはずですが、実に楽しそうに軽やかにお話なさる姿が印象的でした。コラボと地域連携。うちとしては、ずっと頭の片隅にありながら、なかなかうまく取り組むことが出来ずにいるところであり、大きな課題をいただいた講演会となりました。

会場は、福岡大名ガーデンシティ・タワー内の大名カンファレンスでした。スタートアップ拠点として知られ、福岡県・市の産官学の様々なイベントが開かれている場所であり、リッツ・カールトン福岡が出来たことで、ますます注目度が上がっているエリアです。気になりながら足を運んでいませんでしたので、これ幸いと当日は少し早めに到着して、エリア内を歩き回り、カフェでお茶しつつ、行き交う人々をウォッチ。こちらも刺激になりました。

読書『映画館を再生します。』(文藝春秋)小倉昭和館・館主 樋口智巳著

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読書『映画館を再生します。』(文藝春秋)小倉昭和館・館主 樋口智巳著

タイトルに「小倉昭和館、火災から復活までの477日」とあります。福岡県北九州市は小倉旦過市場の、二度目の火災で焼失した映画館「小倉昭和館」再生のドキュメント。

小倉旦過市場では、2022年4月に商店街を焼く火災が起こり、ようやく復興に向けて動き始めようかという同年8月に、二度目の火災が起こりました。古い建物が密集しているエリアで、いずれの火災でも何店舗もが消失しています。小倉昭和館は、福岡最古の映画館と言われ、創業83年を目前にしたところでした。

三代目映画館主である樋口智巳氏の気持ち、言葉、行動が、火災後間もない時点から記録されています。なかには著者自身が、「わたしはよく覚えていないのですが」というような記述もあります。物理的にも心理的にもとても大きなダメージを受けた状態で選択を迫られるなかで、「再生するにしても、再生しないにしても本にしましょう」という編集者によって、かたちになったものだということがわかります。著者が再生を決意するまでには、かなりの時間がかかっており、本書が「映画館の再生ありき」でスタートしたものではないということが、伝わってきます。

それにしても、80年を超える歴史のなかで、小倉昭和館がたくさんの映画人にどれほど愛された場所であったのかを、本書で初めて知りました。今回の再生にあたっても、リリー・フランキー、光石研、仲代達矢、秋吉久美子、片桐はいり、笑福亭鶴瓶など、そうそうたる顔ぶれが様々な形で館主を支えています。火災があるまで、わたしは小倉昭和館の存在は知っていましたが、「小倉にある老舗の単館映画館」というほどの認識でした。火災以降のローカルニュースでの報道内容を目にしながら、その存在に興味が湧いてきて、本書を読んで、これはぜひ一度足を運ばねばと思いました。再生したのは昨年冬、2023年12月。そこから魅力的なイベントを次々に開催なさっています。

小倉昭和館の公式サイト

『地球の歩き方』の北九州市版をブログで紹介したのは、つい先日のことでした。

このところ北九州市に足を運ぶ理由がどんどん増えています^^

読書『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著

わたしが「湊かなえ著作を読む」デビューしたのは、今年の三月のことでした。その後、図書館の「湊かなえ」さんの棚にずらりと並んだなかから、ときどき借りてきては読んでいます。まだまだ今から読める既刊がたくさんあるので、嬉しくなります。

『落日』は2019年発刊の書下ろし。『告白』を読んだときと同じような、ざわざわした感じが、読みながら胸の内に広がりました。幾重にも張り巡らされた伏線がどこにつながるのか、推理しながらの読書は、頭の体操にもなったような気がします。半分以上読んだあたりで、「真実はこうなのではないか」とつながったあとは、それが正解かどうかを確かめるための読書となりました。

主要な登場人物が脚本家と映画監督であり、フィクションとして事件を描くために、事実をできるだけ明らかにしていくというスタンスが、読んでいるわたしにとっては新しい視点でした。事実と真実との違いというのは、最近よく耳にしたり目にしたりするテーマですが、言葉での説明というよりも、このストーリー全体を通して、なるほどと理解できたような気がします。

ところで一番上の写真は、わたしの夕方散歩コース・津屋崎浜から海に沈む夕陽。『落日』のなかでは、「海に沈む夕日」が象徴的なイメージとして登場します。わたしにとっては、海に沈む夕日はここ津屋崎に住みはじめて以来、日常的に見ることができる当たり前の景色となっています。当たり前ではあっても、毎回その美しさに感動するのには違いありませんが。それでもこの場所から離れることになったとき、離れたあとに、自分にとってもっともっと特別な景色になるのかもしれないなぁと、思いながらの読書となりました。

『落日』(角川春樹事務所)湊かなえ著