キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

9月に郷育カレッジで講座を担当する「知識要らずの美術鑑賞」のために、福岡市美術館での打ち合わせ。打合せは午後からでしたので、午前中から足を運んで、開催中の「キース・へリング展」を見て参りました。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)

そもそもは、昨年の学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」でのこと。山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」の実践報告の発表を聴いてディスカッションするという、稀有な機会に恵まれました。そのときに「来年は福岡市美術館で展覧会があります」と聞いて、楽しみにしていたのでした。

キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題と、彼の社会活動の「いかに」がバンバンと伝わってくる展覧会でした。展示を通して響いてきたのは、思っていたよりも「もっと重く、もっと切実」な、キースの叫び。「イコンズ」と名付けられた、ポップでカラフルなアイコニックな作品が、キース・へリングを印象付けるものとして有名ですが、その奥にある危機感が迫ってきました。

会場は一部展示室を除いて、写真OK(フラッシュ撮影や動画はNG)でしたので、今回のわたしに響いた「これ!」を、以下にちょっぴりお裾分け。写真NGの部屋は、1988年来日の際の東京でのイベント資料を展示したものでした。ちなみにダンナは当時東京でグラフィックデザイナーをしていて、「生キース・へリング」をその時に見ていたとのこと。そんな話を聞くと、自分たちの少し先を走っていた方なのだなぁと、実感します。

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展@福岡市美術館

わたしは、表面的に社会的な課題をちりばめた「現代アート(コンテンポラリー)」と呼ばれているものに懐疑的なのですが、今回の展覧会を見て、これこそが「いわゆる現代アート」なのだと分かりました。考えさせられ、見応えのある展覧会でした。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)は、会期残すところちょうどあと一か月9月8日(日)です。おススメです。

山梨県にある「中村キース・へリング美術館」にも、そのうちぜひ行ってみたいと思います。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

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読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。こんな本を待っていた!というところです。帯に『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』の著者・山口周さんが「答えは本書にあります」と推薦コメントを寄せていますが、まさに、科学的・実証的エビデンスでその答えを明示したと言えるのかもしれません。

400ページ越えを二日間かけて読了しました。わたしのアートエデュケーションの原点となる本ベスト3は、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』なのですが、それに本書を加えなければなりません。

さっそく以下、備忘。


  • 神経美学
  • 感覚的に豊かな環境では学習の効率が高まり、記憶の定着率が高い。
  • 『20分間のアート』
  • あなたは脳だけでなく、身体全体で世界を取り込んでいる
  • 環境的経験に応じて動物の脳に構造的変化が生じる
  • 脳が生涯にわたって環境的な刺激に反応し、物理的に回路を書き換え、新たな経路を生成する
  • 究極に豊かな環境は自然である。自然は最も美しい場所であり、それはわたしたちが生まれた場所であるからにほかならない。
  • 文化、経歴、生きている時代や場所といったことのすべてが、物事をどのように受け止め、反応するかを特徴づける。
  • あなたが美しいと認識する経験がある。その経験は、あなたと、あなたの生物学的特質と環境に特有の要素が混ざり合ったものから成り立っているが、同時にあらゆる人々が美しいと思わずにはいられない普遍的な要素も含んでいる。
  • 「アートでも建築でも、人が創造したものはその形になってからほんの数千年しか経っていない」
  • 美しさはいかなるときも、見る者の目のなかにのみ存在している。
  • どこで生まれ、どのように育ち、それぞれどのような経験をしてきたのかといったことが重なり、なにを美しいと感じるかが決まる。
  • (アートと美は)人間のありとあらゆる経験に感情的に結びつくことを可能にする。
  • (アートは)本来ならば難解で不快な考えや概念に向き合うための媒体となる。
  • アートには(中略)感情を解放させる作用がある。
  • あなたの知覚は、あくまでもあなたにとっての現実にほかならない。
  • DMN(デフォルトモード・ネットワーク)はあなたが美しいと思うもの、記憶すべきだと思うもの、意味があると思うものを、それ以外のものと区別するフィルターであり、アートと美を私たち1人ひとりにとって、きわめて個人的な体験にする役割を担っている。
  • 「形は感情を模倣する」
  • 私たちが意識的に考えることと、生物学的な感覚は必ずしも一致しない(「オシャレ」と思った部屋が、本当に心地いいとは限らない)
  • 周囲に対する自分の美意識は、(中略)先入観や偏見、長年の考え方にとらわれていないか?
  • アートとは自分の身体状況あるいは感情の状態を変化させ、幸福感を高める活動である。
  • アートの創作に長けている必要も無ければ、得意である必要すらない。
  • わずか45分間アートの創作に取り組むだけで、田尾藩の人々において、スキルや経験の有無とは一切関係なく、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの低下が見られた。簡単な材料などを用意して、出来栄えを気にせずに取り組めば、誰でも自宅で同じことができる
  • 週に1回以上アート活動を行うか、少なくとも年に1、2回は文化的な催しに参加する人は、そうでない人よりも生活の満足度が優位に高い
  • ストレスとは気分屋感情ではなく、感情に対する生理的な反応だ。
  • 20分間ほど色をぬるという単純な行動によって不安やストレスが和らぎ、充足感が高まり、気持ちが落ち着く
  • ぬり絵は体系的な作業なので、混沌とした暮らしに秩序をもたらす効果がある。
  • 「小さな創造性」の活動
  • マンダラはひじょうに複雑なため、不安や頭に付きまとう思考から注意を切り替えなければならないほど高い集中力が求められ、それが気持ちを落ち着かせる構造と方向性を与える
  • マインドフルネス・アートセラピー
  • 自然は究極の美的経験
  • ストレス症状を和らげるには、自然の本質的な美に根差した空間を意識的に整えることが効果的
  • 「社会的処方」
  • 社会的処方では、(中略)ニーズに合わせて文化的活動を勧める。
  • こうした(文化的)活動は日常生活に取り入れられることが大切で、時間やコストが多くかかるものである必要はない。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


ここまでで全7章のうちの第2章までです。わたし自身のアンテナがこの1-2章に特に集中したということでもあるのですが、思っていた通り長くなりましたので、続きはまた次にいたしましょう^^

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を見て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を見て参りました。

2024年5本目の映画鑑賞は再び邦画です。原作本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』眞邊明人著(サンマーク出版)にを読みたいと思い、いつものカメリアステージ図書館で貸出予約を入れていた一冊。ビジネス小説ですね。人気が高く、予約待ち数名で、順番が回ってくる前に映画を観ることになりました。

まあ、キャストを見れば「濃い」演劇が繰り広げられるのであろうという予測はつくわけで、原作は「ビジネス小説」でも映画は「コメディ」以外の何物でもないだろうと。上の写真は映画の公式サイトからお借りしたものですが、まあ、濃いですよね。脚本は『翔んで埼玉』の脚本家さんですし、これはもう爆笑を期待して映画館に向かいました。

結論としては、爆笑への期待値が高すぎて、ちょっと足りませんでした(笑)面白さのピークは前半にあって、ラストにかけてはひたすら説教臭い(笑)。今回、戦国武将マニアで映画鑑賞が趣味の息子と一緒に見に行ったのですが、彼に言わせると「ラストに向かって、雑過ぎて、残念」と手厳しい感じでした。

それでも、それぞれの「偉人」の皆さんの濃い演技は、期待通りではあり、土方歳三役で山本耕史が出てくるなど、期待していなかったところでの嬉しいサプライズがあり、という感じではありました。個人的に大ヒットだったと思ったのは、「聖徳太子」役の長井短さん。その存在感が一番面白く、わたしは彼女のことを知りませんでしたので、映画館を出てすぐに「あの聖徳太子誰?」と息子に聞いたところ、「今売り出し中の女優さん。長い短い」で覚えてね、と。

というわけで、少々残念ななかにも、まあまあ楽しめた映画でした。今月はもう一本観に行けるといいな、と思いつつ。まずはビジネス小説の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』に期待したいと思います。

読書『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

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読書『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

本書も、いつものカメリアステージ図書館新刊棚で手に取った一冊。ふだん「エッセイ」はほとんど読まないのですが、「林真理子」の名前に釣られました。

林真理子氏のお名前は、彼女の作家としてのデビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の頃から知っています。これが出たのが1982年ということですから、当時わたしはといえば中学生。マスメディアにもどんどん登場した林真理子氏は、まさに社会現象的な存在でした。そんな彼女がずっと気になりつつも、実は著書はほとんど読んではおらず、小説家としての彼女に完全に脱帽したのが、約1年前に読んだ『私はスカーレット』の上下巻という。

さて『マリコ、アニバーサリー』。林さんがデビューした時代はバブル前夜から最盛期、「クリエイター」という存在と言葉が現れた、イケイケドンドンな時代です。本書の文章の端々から、その雰囲気をじゅうぶんにまとい、牽引してきた人の一人だということをあらためて思いました。当時のキラキラとした「クリエイター」なる人種のなかでも、林真理子さんはちょっと劣等感を抱えてひねた感じがしていた、というのがわたしの拙い印象だったのですが、本書を読んで、「実はどんな人なのか」「当時どんなふうだったのか」、情報を修正することが出来ました。

本書はもとは「文藝春秋」に連載されているエッセイをまとめたものだということです。掲載されていたのは、ちょうどコロナ禍前・中・後の時期にあたり、またご本人的には日大の理事長就任なども重なっていて、興味深く読みました。意外だったのは、その語り口がとっても「すなお」なこと。とげとげしさを伴う「そっちょく」というよりは、やさしさを伴う「すなお」な感じだったのが、新鮮でした。長年彼女のエッセイを読んでいる方々からしたら、それが彼女で当たり前のことなのかもしれません。もっと、毒を持った雰囲気だったような気がしていたのですが、何十年も前に抱いた印象をそのまま持っていた自分の思い込みを恥じるとともに、ただす機会となりました。

『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

わたしはエッセイはあまり手に取らない方なのですが、その著者自身に余程興味が沸いたときは、読んでみると面白いものですね。その方の背景がうっすら分かったうえで読む小説は、また少し違って見えてくるものかもしれません。

読書『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。またもやすごい人を見つけてしまいました。タイトルに「ホームズとワトソン」とくれば、否応なくある種のイメージが沸くわけで、迷わず借りて参りました。読後にわかったことですが、このシリーズで何冊か既に出ていたのですね。さっそく既刊本を図書館蔵書検索&予約しました。

さて『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』。タイトルから広がる期待の大きさゆえに、「もしかしたらがっかりするかもしれないな」という心配もありつつ本を開きました。が、まったくの杞憂でした。主要登場人物がすべて女性になっていて、現代が舞台という設定が、ちゃんと面白さを増す要素になっているのがすごいと思いましたし、作者自身が楽しみながら本書を書いている感じが伝わってきました。

本家のニュアンスを上手に取り込んでいて、そこが面白さであり、ニヤッとする場面がいくつも出てくるのはもちろんですが、ストーリー自体、本家を知らなくても楽しめる本だと思います。登場人物が個性的で魅力的に描かれていました。わたしが読んだのはシリーズ最新刊でしたので、「その前」のストーリーがどのように始まっていたのか、とても気になりました。というわけで、これから遡って読書です。わくわく。

『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

多言語化支援セミナー~ChatGPTとDeepLの活用による翻訳業務の改善~に参加いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

多言語化支援セミナー~ChatGPTとDeepLの活用による翻訳業務の改善~に参加いたしました。

長年お世話になっている、福岡アジアビジネスセンターさんが主催するZoomセミナーに参加いたしました。

ここ数年のわたしの翻訳仕事は、もっぱらDeepLをメインで使用しておりましたが、今年に入ってから、ChatGPTも併用するようになっていました。とはいえ、ChatGPTについては「活用」と言えるほどではなく…という状態であったところに、ドンピシャ!なタイトルのZoomセミナーのご案内をいただき、飛びつきました。

以下、備忘。


  • 機密情報を翻訳するなど、AIにトレーニングさせたくない場合の対処:設定→データコントロール→モデルの改善を「オフ」
  • それぞれの「訳し方の癖」を理解する。
  • 日本語としての自然さ:DeepL>ChatGPT
  • 逐語的な訳:DeepL<ChatGPT
  • いずれも、英→日のほうが、日→英よりも精度が高い。
  • DeepLは、かたまりとしての文章の訳が得意。
  • DeepLで自然な文章を作り→ChatGPTで逐語的に追って訳漏れを防ぎ→人によるチェック・修正をかける。
  • 翻訳作業におけるChatGPTの役割:翻訳・書き換え・校正・辞書。
  • 訳文の種別・表現・スタイルを指定できるのがChatGPTの強み=言葉で簡単に支持できるので、「訳し方」のカスタマイズが容易。
  • ChatGPTでは「リファレンス」を示すことにより「訳し方」を指示することが可能。
  • AIの判断で付け加えられる情報があるので、人の目によるチェック・修正が必須。
  • ChatGPTは、最新の情報やニッチな情報については弱い。
  • 「文法上の誤りを修正して」の指示で、校正が可能。
  • ChatGPTで類語や例文をたくさん出してもらうと、より適切な表現が見つかりやすい。

ITを活用した多言語化支援セミナー~ChatGPTとDeepLの活用による翻訳業務の改善~(福岡アジアビジネスセンター)より


基礎的な事柄を中心にした内容でした。かなり期待値を高くしての参加でしたので、「あら、もうおしまい?」という感じがなかったと言えばウソになります。が、実際に使っていてなんとなく感じていたことに、翻訳のプロの目線から裏付けをいただくことが出来たのは、大きかったです。

今回も福岡アジアビジネスセンターさんに、たいへんお世話になりました。ありがとうございました!

郷育カレッジ開講式2024―今年度も郷育カレッジがスタートしました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ開講式2024―今年度も郷育カレッジがスタートしました!

週末土曜日は、令和6年度郷育カレッジの開講式でした。

『郷育カレッジでは、福津の「ひと、もの、こと」を題材に、ふるさと、健康福祉、環境、生きがいなど、さまざまな分野の講座を開催しています。
令和6年度は、7月から令和7年3月までに100講座を開催予定です。
小学生以上で市内に在住、通勤、通学をしている人ならどなたでも入校できます。』

福津市公式サイトより)

今年のオープニングイベントは、神興小学校5年生による「へらそう!食品ロスプロジェクト~活動報告~」の発表と、おなじく神興小学校2年生による合唱でした。例年通り「名誉郷授」と「学位認定者」の表彰に続いて、オープニングイベント、その後第2部の公開講座となりました。

公開講座は今年も放送大学とのコラボレーション。放送大学客員教授・九州大学大学院農学研究員教授の佐藤匡央先生の「“One World, One Health”(一つの世界、一つの健康)における栄養学の役割」のお話がありました。わたしは運営委員として受付担当でしたので、残念ながら講座をお聴きすることが出来なかったのですが、ラッキーなことに、講座が始まる前の待ち時間に先生とおしゃべりできるタイミングがありました。とても視点が面白く、そのうえ今日の講座に合わせてでしょう、福津市とその近隣の市(宗像、古賀)について下調べをしてくださっていたようで、雑談の中でたくさんの示唆をいただくことが出来ました。役得です。

郷育カレッジの開講式は、毎回集客に課題が残ります。今回ももっとたくさんの人に聴いていただきたい内容だったのですが、力及ばずな感じで、先生には申し訳ありませんでした。講座を聴いた皆さんの帰りの様子から、満足度がとても高そうだったのが嬉しかったですが、そうであれば尚のこと、もっとたくさんの人に来ていただくようにしなければなりませんでした。もったいない。参加してくださった市議の方からも、同様のご意見をいただきました。来年に向けての最優先反省事項です。

ともあれ今年も郷育カレッジが無事スタート。これから三月末まで、100講座が皆さまをお待ちいたしております!

郷育カレッジ2024(令和6年度)講座一覧と申込はこちらから
※受講できるのは、福津市内にお住まいの方と福津市内に通勤通学の方のみです。

読書『ユニクロ』(日経BP)杉本貴司 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ユニクロ』(日経BP)杉本貴司 著

週末読書は久しぶりにビジネス書。経営者お友だちの方々から「面白かった!」と声が上がっていた、ユニクロ柳井さんを追ったノンフィクションです。かれこれ30年ほど前、サラリーマンをしていた時に「山口の宇部にあるファーストリテイリングって知ってる?宇部空港からタクシーの運転手さんに聞いても知らないって言われちゃって、何にもないところにある会社なんだけど、すごく面白いんだよ」と西日本を管轄していた支社長から聞かれて、「知りません」と答えたことを思い出します。わたしは学生時代を山口で過ごしましたが、知りませんでした。ところが、その後あれよあれよという間に誰もが知る「ユニクロ」となり、世界企業になるのですから、なるほど感慨深いものがあります。

本書では、その第三者から見れば「あれよあれよという間」のように感じた企業の成長の「実際のところはどうだったのか」を読むことが出来ました。496ページ、分厚い一冊です。わたしが会社で「ファーストリテイリングって知ってる?」と聞かれたときは、古参の社員さんがほとんど辞めてしまったあとで、これからの会社の人材をどのように集め、どのように組織化していくか、というようなタイミングだったと記憶しています。でも既に社名は「ファーストリテイリング」でしたので、柳井正氏が継いでからある程度時間が経っていたということですね。わたし自身は担当していたわけではありませんでしたので、いろいろなことを先輩からの聞きかじっていました。なるほど内情はそんな感じだったのね、ということを、30年も経ってから本で読むことになるとは、面白いものです。

さて、ザ・ワンマン経営者のイメージのある柳井正氏の物語は、たくさんの失敗と、たくさん失敗したからこその成功の物語でした。怒涛のスクラップアンドビルドの繰り返しと、大きくなり続けることを止められない経営者の凄みが迫ってきます。本書内でも何度も出てくる「ユニクロとはなにか」の問いは、あらゆる経営者・事業者に求められる問いだと思いました。ことあるごとにこの根本的な問いに立ち返り、その答えを突き詰めていくことで何度も壁を突破していくさまには、読んでいてハッとさせられました。

本書を読みながら、圧倒的にすごいなと思いながらも、では、そこにあこがれるかと問われれば、個人的には決してそうではない経営者の姿がそこにはありました。「成功するまでやり続ければ、失敗は失敗にならない」という言葉そのままの姿。その基本的な姿勢には強く共感できるものが多々あるのだけれど、柳井さんはそれらが桁外れに極端なように見えました。その極端さと執念がどこから生まれてきたのか、本書を読めば、生い立ちだとか環境だとかに結び付けることも出来そうでもあるのですが、個人的には、生まれながらに持っている気質が強いのではないかと感じました。

日経BP社のサイトでの紹介には「この国に存在する名もなき企業や、そこで働く人たちにとって希望になるであろう物語である」とありましたが、実際にこれを希望として「自分にもできる!」と考えるに至るには、かなりの覚悟と根性が求められるだろうというのが、正直な感想です。ともあれ、学ぶこと多々。「ユニクロとはなにか」の根本的な問いは、そのまま自分達に置き換えて、これからの指針としていけるものだと思います。

『ユニクロ』(日経BP)杉本貴司 著

映画『フェラーリ』を観てきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『フェラーリ』を観てきました。

2024年4本目の映画鑑賞は『フェラーリ』。前回は邦画、しかも時代劇でしたので、次は洋画を観たいな、と思っていたところです。

『フェラーリ』。特に車好きというのではありませんが、映画観に行こう!と思ったときに上映中のラインナップから、あらすじを読んで、決定。フェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリの実話ということで、興味が湧きました。氏についての本などまったく読んだことはありませんでしたが、彼の信念として有名な「速く走れる車はカタチも美しい」すなわち「美しいものは機能的でもある」とのスタンスだけは、どこかで聞いたことがあって知っていました。また、これからイタリアに打って出ようとしているからには、少しでもかの国のことは知りたいし、オールイタリアロケですから、景観を楽しめるだろうという期待もありました。

というわけで、出演者も監督もチェックせずに映画館へ。映画がはじまってまず「あれ?」と思ったのは、イタリア語だと思い込んでいたのですが、言っていることがなんとなく聞き取れるぞ?ということ。英語でした。イタリア映画だと思い込んでいましたが、アメリカ・イギリス・イタリア・サウジアラビア合作でした。主役のエンツォ・フェラーリを演じたのは、アダム・ドライバーだったのですが、わたし的にはこれがツボでした。まあ、カッコいいこと。スーツ姿が最高で、色気があり、とても素敵でした。ただ、実は観ている間は「めちゃめちゃ素敵なんだけど、この人誰だったっけ?」という状態で、エンドロールで名前を確認しても「ああ!そういえば!前に何で観たんだっけ…?」という感じ。ファンの方に怒られそうですね。で、前回彼を観たのは約二年半ほど前のこと、『HOUSE OF GUCCI』でした。

『HOUSE OF GUCCI』のときも、ブログに「実は失礼ながら期待していなかったのにすごかったのが、アダム・ドライバー」と書いていたのですが、いやほんとうにすごい方だと今回あらためて思いました。まず、GUCCIの時の印象とまったく違います。単に役が違うというレベルを超えて、醸し出す雰囲気がまったく別物でした。例えばトム・クルーズは何を演じてもトム・クルーズですし、ロバート・デ・ニーロはロバート・デ・ニーロですが、アダム・ドライバーは「ほんとうに同じ人?」という印象。『フェラーリ』の宣伝でインタビューに答えている姿さえも、エンツォ・フェラーリのときとあまりも違い、驚愕しました。ちょっとこれから先、アダム・ドライバーに注目したいです。

期待していたイタリアの景色は、映画のハイライトであるロードレース「ミッレミリア」のシーンで、街中の景色も自然の景色も大画面で楽しむことが出来ました。そしてわたしが唯一知っていたエピソードは、映画のなかでは、車の設計図を息子に説明しながらのエンツォ・フェラーリ自身のセリフとして登場しました。曰く「良く機能するものはたいてい、見た目にも美しい」というようなこと。予告編では「勝利するものはすべて美しい」と字幕がついています。

ストーリーのなかで涙腺が緩んだのは、レースに臨む前のドライバーたちが、愛する人に向けて手紙を書くシーン。それまでのストーリーの中でも、さんざんレーサーは「死を覚悟してレースに出る」というニュアンスのセリフが出てくるのですが、どんなセリフよりも、愛する人への「もしかしたら最後になるかもしれない手紙」を書く姿が、その仕事の厳しさ、現実を物語っているように感じました。

もう一度機会があれば、また観たいと思った映画でした。二回観たいと思った映画は久しぶりでした。

映画『フェラーリ』公式サイト

読書『小学生でもわかる世界史』(朝日新聞出版)ぴよぴーよ速報 著―選書ツアー本が上がってきました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『小学生でもわかる世界史』(朝日新聞出版)ぴよぴーよ速報 著―選書ツアー本が上がってきました!

毎年恒例、福津市カメリアステージ図書館の選書ツアーの選書本が納品されました。ツアー参加者=素人の選者がそれぞれに選んだ10数冊の本から、司書さんが専門家の視点で一人当たり2~3冊を選び、図書館の蔵書として納入していただくことが出来ます。今回わたしの選書から選ばれた本は、2冊。『図解でよくわかる菌ちゃん農法』『小学生でもわかる世界史』でした。

『図解でよくわかる菌ちゃん農法』はこちら↓

さて『小学生でもわかる世界史』。出版元・朝日新聞出版さんのサイトでの紹介文がとても分かりやすかったです。いわく、

登録者数91万人・総再生数1.4億回の教養系YouTuberによる、史上最高に面白くて誰もが世界史を好きになるパラダイスみてえな教科書。“全ての国民が理解できる”超シンプルな解説と700点以上の地図&図版(後略)(朝日新聞出版のサイトより

です。

そもそもはYouTubeチャンネルのコンテンツなのですね。教養系ユーチューバーの方々が提供するコンテンツに優れものがたくさんあるという話はよく聞いてはいましたが、実のところわたしはあまり使ったことがなく、この手の動画を見たことがありませんでしたので、ぴーよぴよ速報さんのチャンネルを探してみることに。

ぴーよぴよ速報 YouTube

まずはコンテンツがたくさんあることにびっくり。なにかひとつ見てみようと物色していて、小学生に向けてのコンテンツは、それぞれがほぼ10分以内程度にまとめられていることがわかりました。サクッと観ることが出来る長さですね。「第一次世界大戦」を見たところ、わかりやすく、年表上の点だったものが、面となって理解できたような気がしました。アニメーションの作り方、映像だけでなく音声も、かなり考えられているのだと思いました。

さて本書、いやほんとうに、カラフルで絵や図がたくさんあって、文章がとってもくだけていて、楽しかったです。なにより、読んでいて飽きません。YouTubeと異なり音声はありませんが、簡潔なテキストの解説が秀逸です。動画に慣れている方には、ややまどろっこしい感じがあるかもしれませんが、本の方が便利だと感じる世代(わたしのことです)には、じゅうぶんにスピード感のある構成です。動画のテンポを損ねないように考えて作られたのでしょうね。現実的に考えれば、小学生はYouTubeで見るでしょうから、本書は『小学生でも』とタイトルに付いてはいますが、大人向けだと思います。

それにしても、これだけ簡潔に要点を押さえてまとめるには、よほど学びこんで、世界史が自分のものになっていないと難しいだろうなと思いました。そしてそれを裏付けるように、巻末についた参照文献の数がすごいです。脱帽の一冊です。

『小学生でもわかる世界史』(朝日新聞出版)ぴよぴーよ速報 著