読書『ユニクロ』(日経BP)杉本貴司 著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ユニクロ』(日経BP)杉本貴司 著

週末読書は久しぶりにビジネス書。経営者お友だちの方々から「面白かった!」と声が上がっていた、ユニクロ柳井さんを追ったノンフィクションです。かれこれ30年ほど前、サラリーマンをしていた時に「山口の宇部にあるファーストリテイリングって知ってる?宇部空港からタクシーの運転手さんに聞いても知らないって言われちゃって、何にもないところにある会社なんだけど、すごく面白いんだよ」と西日本を管轄していた支社長から聞かれて、「知りません」と答えたことを思い出します。わたしは学生時代を山口で過ごしましたが、知りませんでした。ところが、その後あれよあれよという間に誰もが知る「ユニクロ」となり、世界企業になるのですから、なるほど感慨深いものがあります。

本書では、その第三者から見れば「あれよあれよという間」のように感じた企業の成長の「実際のところはどうだったのか」を読むことが出来ました。496ページ、分厚い一冊です。わたしが会社で「ファーストリテイリングって知ってる?」と聞かれたときは、古参の社員さんがほとんど辞めてしまったあとで、これからの会社の人材をどのように集め、どのように組織化していくか、というようなタイミングだったと記憶しています。でも既に社名は「ファーストリテイリング」でしたので、柳井正氏が継いでからある程度時間が経っていたということですね。わたし自身は担当していたわけではありませんでしたので、いろいろなことを先輩からの聞きかじっていました。なるほど内情はそんな感じだったのね、ということを、30年も経ってから本で読むことになるとは、面白いものです。

さて、ザ・ワンマン経営者のイメージのある柳井正氏の物語は、たくさんの失敗と、たくさん失敗したからこその成功の物語でした。怒涛のスクラップアンドビルドの繰り返しと、大きくなり続けることを止められない経営者の凄みが迫ってきます。本書内でも何度も出てくる「ユニクロとはなにか」の問いは、あらゆる経営者・事業者に求められる問いだと思いました。ことあるごとにこの根本的な問いに立ち返り、その答えを突き詰めていくことで何度も壁を突破していくさまには、読んでいてハッとさせられました。

本書を読みながら、圧倒的にすごいなと思いながらも、では、そこにあこがれるかと問われれば、個人的には決してそうではない経営者の姿がそこにはありました。「成功するまでやり続ければ、失敗は失敗にならない」という言葉そのままの姿。その基本的な姿勢には強く共感できるものが多々あるのだけれど、柳井さんはそれらが桁外れに極端なように見えました。その極端さと執念がどこから生まれてきたのか、本書を読めば、生い立ちだとか環境だとかに結び付けることも出来そうでもあるのですが、個人的には、生まれながらに持っている気質が強いのではないかと感じました。

日経BP社のサイトでの紹介には「この国に存在する名もなき企業や、そこで働く人たちにとって希望になるであろう物語である」とありましたが、実際にこれを希望として「自分にもできる!」と考えるに至るには、かなりの覚悟と根性が求められるだろうというのが、正直な感想です。ともあれ、学ぶこと多々。「ユニクロとはなにか」の根本的な問いは、そのまま自分達に置き換えて、これからの指針としていけるものだと思います。

『ユニクロ』(日経BP)杉本貴司 著

映画『フェラーリ』を観てきました。

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映画『フェラーリ』を観てきました。

2024年4本目の映画鑑賞は『フェラーリ』。前回は邦画、しかも時代劇でしたので、次は洋画を観たいな、と思っていたところです。

『フェラーリ』。特に車好きというのではありませんが、映画観に行こう!と思ったときに上映中のラインナップから、あらすじを読んで、決定。フェラーリの創業者であるエンツォ・フェラーリの実話ということで、興味が湧きました。氏についての本などまったく読んだことはありませんでしたが、彼の信念として有名な「速く走れる車はカタチも美しい」すなわち「美しいものは機能的でもある」とのスタンスだけは、どこかで聞いたことがあって知っていました。また、これからイタリアに打って出ようとしているからには、少しでもかの国のことは知りたいし、オールイタリアロケですから、景観を楽しめるだろうという期待もありました。

というわけで、出演者も監督もチェックせずに映画館へ。映画がはじまってまず「あれ?」と思ったのは、イタリア語だと思い込んでいたのですが、言っていることがなんとなく聞き取れるぞ?ということ。英語でした。イタリア映画だと思い込んでいましたが、アメリカ・イギリス・イタリア・サウジアラビア合作でした。主役のエンツォ・フェラーリを演じたのは、アダム・ドライバーだったのですが、わたし的にはこれがツボでした。まあ、カッコいいこと。スーツ姿が最高で、色気があり、とても素敵でした。ただ、実は観ている間は「めちゃめちゃ素敵なんだけど、この人誰だったっけ?」という状態で、エンドロールで名前を確認しても「ああ!そういえば!前に何で観たんだっけ…?」という感じ。ファンの方に怒られそうですね。で、前回彼を観たのは約二年半ほど前のこと、『HOUSE OF GUCCI』でした。

『HOUSE OF GUCCI』のときも、ブログに「実は失礼ながら期待していなかったのにすごかったのが、アダム・ドライバー」と書いていたのですが、いやほんとうにすごい方だと今回あらためて思いました。まず、GUCCIの時の印象とまったく違います。単に役が違うというレベルを超えて、醸し出す雰囲気がまったく別物でした。例えばトム・クルーズは何を演じてもトム・クルーズですし、ロバート・デ・ニーロはロバート・デ・ニーロですが、アダム・ドライバーは「ほんとうに同じ人?」という印象。『フェラーリ』の宣伝でインタビューに答えている姿さえも、エンツォ・フェラーリのときとあまりも違い、驚愕しました。ちょっとこれから先、アダム・ドライバーに注目したいです。

期待していたイタリアの景色は、映画のハイライトであるロードレース「ミッレミリア」のシーンで、街中の景色も自然の景色も大画面で楽しむことが出来ました。そしてわたしが唯一知っていたエピソードは、映画のなかでは、車の設計図を息子に説明しながらのエンツォ・フェラーリ自身のセリフとして登場しました。曰く「良く機能するものはたいてい、見た目にも美しい」というようなこと。予告編では「勝利するものはすべて美しい」と字幕がついています。

ストーリーのなかで涙腺が緩んだのは、レースに臨む前のドライバーたちが、愛する人に向けて手紙を書くシーン。それまでのストーリーの中でも、さんざんレーサーは「死を覚悟してレースに出る」というニュアンスのセリフが出てくるのですが、どんなセリフよりも、愛する人への「もしかしたら最後になるかもしれない手紙」を書く姿が、その仕事の厳しさ、現実を物語っているように感じました。

もう一度機会があれば、また観たいと思った映画でした。二回観たいと思った映画は久しぶりでした。

映画『フェラーリ』公式サイト

読書『小学生でもわかる世界史』(朝日新聞出版)ぴよぴーよ速報 著―選書ツアー本が上がってきました!

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読書『小学生でもわかる世界史』(朝日新聞出版)ぴよぴーよ速報 著―選書ツアー本が上がってきました!

毎年恒例、福津市カメリアステージ図書館の選書ツアーの選書本が納品されました。ツアー参加者=素人の選者がそれぞれに選んだ10数冊の本から、司書さんが専門家の視点で一人当たり2~3冊を選び、図書館の蔵書として納入していただくことが出来ます。今回わたしの選書から選ばれた本は、2冊。『図解でよくわかる菌ちゃん農法』『小学生でもわかる世界史』でした。

『図解でよくわかる菌ちゃん農法』はこちら↓

さて『小学生でもわかる世界史』。出版元・朝日新聞出版さんのサイトでの紹介文がとても分かりやすかったです。いわく、

登録者数91万人・総再生数1.4億回の教養系YouTuberによる、史上最高に面白くて誰もが世界史を好きになるパラダイスみてえな教科書。“全ての国民が理解できる”超シンプルな解説と700点以上の地図&図版(後略)(朝日新聞出版のサイトより

です。

そもそもはYouTubeチャンネルのコンテンツなのですね。教養系ユーチューバーの方々が提供するコンテンツに優れものがたくさんあるという話はよく聞いてはいましたが、実のところわたしはあまり使ったことがなく、この手の動画を見たことがありませんでしたので、ぴーよぴよ速報さんのチャンネルを探してみることに。

ぴーよぴよ速報 YouTube

まずはコンテンツがたくさんあることにびっくり。なにかひとつ見てみようと物色していて、小学生に向けてのコンテンツは、それぞれがほぼ10分以内程度にまとめられていることがわかりました。サクッと観ることが出来る長さですね。「第一次世界大戦」を見たところ、わかりやすく、年表上の点だったものが、面となって理解できたような気がしました。アニメーションの作り方、映像だけでなく音声も、かなり考えられているのだと思いました。

さて本書、いやほんとうに、カラフルで絵や図がたくさんあって、文章がとってもくだけていて、楽しかったです。なにより、読んでいて飽きません。YouTubeと異なり音声はありませんが、簡潔なテキストの解説が秀逸です。動画に慣れている方には、ややまどろっこしい感じがあるかもしれませんが、本の方が便利だと感じる世代(わたしのことです)には、じゅうぶんにスピード感のある構成です。動画のテンポを損ねないように考えて作られたのでしょうね。現実的に考えれば、小学生はYouTubeで見るでしょうから、本書は『小学生でも』とタイトルに付いてはいますが、大人向けだと思います。

それにしても、これだけ簡潔に要点を押さえてまとめるには、よほど学びこんで、世界史が自分のものになっていないと難しいだろうなと思いました。そしてそれを裏付けるように、巻末についた参照文献の数がすごいです。脱帽の一冊です。

『小学生でもわかる世界史』(朝日新聞出版)ぴよぴーよ速報 著

読書『図解でよくわかる菌ちゃん農法』(家の光協会)吉田俊道著―選書ツアー本が上がってきました!

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読書『図解でよくわかる菌ちゃん農法』(家の光協会)吉田俊道著―選書ツアー本が上がってきました!

2024年度の選書ツアー報告をしたのは、ふた月ほど前のことでした。

いつものカメリアステージ図書館から「選書ツアーから購入する本が決定しました」とご連絡をいただきましたので、さっそく受け取りに行ってきました。というのも、選書ツアーで選んだ本には、「選者」として責任を持って、本の紹介ポップを書くのが、選書ツアー参加のルールなのです。ポップが出来上がったら、晴れて図書館の本棚に選書が並びます。ポップを書く=一番最初に読むことができる、ということでもあり、嬉しい特典。

選書ツアーで素人の選者がそれぞれに選んだ10数冊の本から、司書さんが専門家の視点で一人当たり2~3冊を選ぶのが、毎回の手順です。今回わたしの選書から選ばれた本は、2冊。『図解でよくわかる菌ちゃん農法』『小学生でもわかる世界史』でした。

まずは『図解でよくわかる菌ちゃん農法』。著者の「菌ちゃん先生」こと吉田俊道さんは、長崎県佐世保市で自ら農業を実践しながら、この菌ちゃん農法の伝道師として全国を飛び回っている方です。わたしは2017年に、菌ちゃん先生のお話を直接聞くことが出来ました。当時九州大学で教鞭をとり「自炊塾」を提唱していた比良松道一先生の活動に、ダンナと息子が参加していたご縁でした。

その時のお話がとても面白く、しかも腑に落ちるものでしたので、ひそかに菌ちゃん先生を応援していました。7年以上が経ち、俳優の山田孝之さんや柴咲コウさんが佐世保の菌ちゃん先生のところに、その農法を習いに行ったことなどが話題にもなり、ジワジワと全国的に知られるようになってきたように思います。

さて『図解でよくわかる菌ちゃん農法』。表紙に載っている文言=タイトル?を全て並べると『微生物の力だけで奇跡の野菜づくり 図解でよくわかる 菌ちゃん農法 農薬なし、防虫ネットなしでも虫がつかない』です。長いですね。これが本書の概略です。中身は、カラー写真がたっぷり、図解がたっぷりで、ものすごくわかりやすいです。農業に携わる方、家庭菜園をしている方に、ぜひ読んで欲しいと、個人的に思っています。ただ、これをちゃんとやろうとすると、けっこう大変だろうな、ということもわかります。なので、まずはこのような方法があるのだということを知って、少しづつでもそこに近づけていけたら良いのかな、と。

かくいうわたしは今年久しぶりに「プランタで野菜を育てる」をはじめたところですが、まだ菌ちゃん農法でやっているわけではありません。“まずは1品でもいいから、自分で野菜をつくる”からスタートし、次の段階として、菌ちゃん農法でなにか作ってみようとたくらんでいます。そう、本書ではプランタや肥料袋を使ったミニ栽培での菌ちゃん農法も、ちゃんと紹介してくださっているので。レッツ・チャレンジ!です^^

『図解でよくわかる菌ちゃん農法』(家の光協会)吉田俊道著

次回は『小学生でもわかる世界史』をご紹介いたします。

読書『異常(アノマリー)』(早川書房)エルヴェ・ル・テリエ著/加藤かおり訳

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読書『異常(アノマリー)』(早川書房)エルヴェ・ル・テリエ著/加藤かおり訳

早川書房の公式サイトのほかに、早川書房の書籍&雑誌コンテンツを紹介するHayakawa Books &Magazines(β)というサイトがあり、そこでも本書が紹介されています。

その記事タイトルが

「文学界の未確認飛行物体(UFO)」こと『異常【アノマリー】』の魅力を営業担当が語る

で、この営業担当者さんの記事を読んだだけでも、本書の「なんだこれ!?」感が伝わってきます。「文学界の未確認飛行物体(UFO)」って、すごいですよね。2020年にフランス最高峰の文学賞「ゴンクール賞」を受賞し、40の言語で翻訳が進められ、日本では2022年の刊行です。

わたし自身が本書を見つけたのは、定期購読している雑誌『TRANSIT』の記事でした。(『TRANSIT』ユーフォリアファクトリーの公式サイトTRANSIT Webはこちら)『TRANSIT』No.64の特集が「フランス」で、数々のマニアックな情報のなか、目を引いたのが、現代のフランス文学を紹介するページ。この中に先日読んだ『シェフ』のタイトルを発見し、ほかの本も俄然気になったというわけです。

さて『異常』。すごいことを考えついたものだなぁ、と、まず思いました。それをまたこんなふうに小説に仕上げるなんて!と驚嘆しつつ読みました。突拍子もないことだけれど、もしかしたら既に現実に起こっていることなのかもしれないと感じさせる怖さがありました。もし自分がその当事者になったら、どんなふうに折り合いをつけるのだろうと考えつつ、でもこれは実際にそうなったときでないと、真に切羽詰まって考えることが出来ないだろうなとも思いつつ。

わたしにとっては、どんどん読み進めて一気読み!という類のものではなく、小説の中で起こっている状況を把握するのに時間をかけつつ読んだ一冊となりました。時間をかけつつも「目を離せない」感がずっとまとわりついていました。

先日の『シェフ』に、今回の『異常』で、「フランス文学」へのイメージががらりと変わりました。TRANSITで紹介されている本、読破を目指します^^

『異常(アノマリー)』(早川書房)エルヴェ・ル・テリエ著/加藤かおり訳

九響の定期プログラム「名曲・午後のオーケストラ」を聴いて参りました。

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九響の定期プログラム「名曲・午後のオーケストラ」を聴いて参りました。

福岡県には九州交響楽団(九響)があります。今年度、初めて定期会員になり、アクロス福岡シンフォニーホールの「年間マイシート」を確保しての、第一回目の演奏会でした。4月に足を運んだ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」のときは、あこがれの「3階バルコニー席」をゲットし、演奏を満喫したものの、舞台上のオーケストラの皆さんの様子が、身体を乗り出さなければほとんど見えないということが判明。その反省を生かして獲得した「年間マイシート」は、舞台正面の3階の最後尾席の端っこです。高い位置から舞台全体が見えて、とても良い席でした。距離的には舞台から遠いので、お一人お一人のお顔まではわかりませんが、全体の動きが見えるのが、とても嬉しい席でした。

さて演奏会は、指揮とヴァイオリンにゲストを迎えての、ブラームス「ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品77」に、シベリウスの「交響曲第2番ニ長調作品43」。と言っても、わたしは作曲家の名前を聴いたことある!という程度の知識ですので、ただひたすら音に耳を傾けるばかりです。一曲目、第三楽章まで終わったときには約1時間が経っており、久しぶりにフルで演奏を聴いた身としては、そういえばそうだった!という感動と満足感が沸き上がってきました。20分の休憩中に身体を伸ばして整え、いざ後半。遠くから舞台を俯瞰して見えるので、指揮者の方の動きと、今どの楽器の方が演奏しているのかを連動してみることが出来たのが、とても興味深かったです。

ヴァイオリンの郷古廉さんは、有名で人気の高い方のようですね。後日、彼の演奏を見たいがためにこのチケットをとった!という友人がいたことがわかり、そうだったのね、と感心したところでした。知識無しで鑑賞を楽しむ愉しみは、美術も音楽も同じことで、わたしの得意とするところです。大満足のコンサートでした。また次回も楽しみです♪

おまけに…どうでもよいことなのですが、今回、「クラシックの演奏会には、男性も結構いらっしゃる」ということに気が付きました。大雑把な感覚ですが、男性女性が半々くらいのように思いました。ミュージカルや演劇、歌舞伎では、(特に博多座での印象になりますが)9割超女性客!という環境になることが多かったので、これは新鮮。個人的に「へぇ~!」な気づきでした^^

読書『互換性の王子』(水鈴社)からはじまっての、雫井脩介著いろいろ。

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読書『互換性の王子』(水鈴社)からはじまっての、雫井脩介著いろいろ。

いつものカメリアステージ図書館新刊棚での出会いに加え、SNSでお友だちが紹介してくれる「この人の小説が面白かったよ!」情報により、このところ「知らなかった!読んだことなかった!」人気作家さんの存在が増えてきています。面白いのは、お名前を知らなくても、著者名で検索してタイトルを見ると、「あれ、なんか見たこと(聞いたこと)があるような…」という本が出てくること。やはり人気作家さんの本は映像化しているものがたくさんあって、映画情報やら配信情報やらで目にしたり耳にしたりしているのだなぁと、あらためて思います。

先日読んだ雫井脩介さん。こちらは図書館新刊棚での発見でしたが、その本が面白かったので、さかのぼって蔵書検索。数冊まとめて借りてきました。何度も同じことを言っていますが、こういうとき、ほんとうに図書館って便利でありがたいなぁと思います。で、まずはお名前の読みを確認、「しずくいしゅうすけ」さんなのですね。読めませんでした。

さて『互換性の王子』に続けて読んだのは、『望み』(KADOKAWA)『検察側の罪人』(文藝春秋)『クロコダイル・ティアーズ』(文藝春秋)の三冊。

いやもうどれも面白かったです。引き込まれて週末一気読み。すごいな、と思ったのは、これまで読んだ四冊がそれぞれまったく別物だということ。そんなの当たり前、とおっしゃる向きもあると思いますし、確かにそうなんです。が、同じ作家さんが書いたものは、ジャンルやアプローチがまったく違っていても、その方のクセというか「心のなかにある引っ掛かり」がたびたび本の中に顔を出すのを見つけることがあるのも事実。雫井脩介さんの前に読んでいた、中山七里さんの場合は、それがわりと如実でした。奥田英朗さんも、そうですね。多作でジャンルも異なるなかに、同じテーマが通底しているのを、読みながら感じます。

どちらが良いとか悪いとかいうことではなく、そういうものが出てくるのがふつうだろうと思いこんでいたもので、それが発見できなかったことにちょっと驚いたのでした。今回の選書がたまたまだったのかもしれませんが、「ミステリー」というほかは、かなり趣の異なるストーリーであったのも、新鮮でした。いずれも面白かったです。

雫井脩介さんの本もまた、まだまだ読んでいないものがたくさんですので、これからも楽しみが続きます。図書館でコツコツ借りて参ります^^

読書『互換性の王子』(水鈴社)雫井脩介著

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読書『互換性の王子』(水鈴社)雫井脩介

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で発見。タイトルの面白さと表紙の絵の面白さに釣られて借りて参りました。雫井脩介(しずくいしゅうすけ)さん、初めましてでした。とっても面白く、ちょっと調べてみたら、この方も映像化作品多数ということで、かなりの人気作家さんなのですね。先日から読みはじめた中山七里さんといい、我ながら「知らなかった!」が多過ぎると気が付かされる今日この頃。

さて『互換性の王子』、出版社・水鈴社のサイトでは「異母兄弟がビジネスと恋で火花を散らす、一気読み必至のエンターテインメント!」と紹介してあります。たしかに、一気読みしました。企業小説としての面白さが大きかったので、「恋」のストーリーは必要なのか!?と個人的には思わないでもありませんでしたが、これは映像化の際には必須要素なのかもしれませんね(笑)。

社内での後継者争いに、飲料メーカーとしての競合との争い。そんなことあるのか!?な設定や出来事も、フィクションだからと片付けられず、事実はもっと熾烈でえげつないのかも知れないと思いながら読みました。ラストがハッピーエンドなのは、出来過ぎのような気もしつつ、それこそ「フィクションだから」と納得できました。最近イヤミス=嫌な感じのする終わり方をするミステリーをたくさん読んでいたので、王道っぽいエンディングに、ちょっとホッとしました。それにしても、主要人物二人の名前が「成功(なりとし)」に「実行(さねゆき)」。成功と実行とは、面白いつけ方だなぁと妙なところに感心しつつ。

たまたま手に取った本からはじまる読書の面白さ。読みたい作家さんがどんどん増えてきて、嬉しい悲鳴です。こういうときに図書館の存在はほんとうにありがたいですね。過去作から読み進めて参ります。

『互換性の王子』(水鈴社)雫井脩介

読書:『護られなかった者たちへ』から始まって、中山七里著いろいろ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書:『護られなかった者たちへ』から始まって、中山七里著いろいろ。

読書好きのお友だちが「今、ハマっている作家さん」として名前を挙げているなかに、中山七里さんのお名前がありました。今このブログを書くために、著者のウェブサイトを見ておこうと思い、見つけましたら、中山七里さん、男性だったのですね。

中山七里オフィシャルウェブサイト

つい先ほどまで、わたしはなぜか女性だと思い込んでおりました。もともと初めての著者の小説を読むときには、余計な先入観無しで読みたいので、必要以上に著者の情報を入れないようにしています。それにしても10冊ほども読んだのに、ずっと女性が書いたものだと思い込んでいたとは、我ながら驚きです。お名前の響きで勝手に思い込んだのだろうと思うのですが…。

それはさておき、まず最初はいつものカメリアステージ図書館で蔵書検索。著者名で検索をかけたところ、たくさんの著作タイトルが上がってきました。そしてそのタイトル新刊の方から、ずらりとついた「貸出中」マーク。最新刊などは、予約11人待ちとなっていました。一人2週間の貸出期間として、22週、5カ月以上待ちということになります。なるほど人気作家さんですね。まずは待たずに読める旧作から、ということで最初に読んだのが『護られなかった者たちへ』でした。

その後、『棘の家』『人面島』『ラスプーチンの庭』『境界線』『夜がどれほど暗くても』『嗤う淑女』『いつまでもショパン』と、読んでみました。一か月も無い間にこれだけ読めたのは、ひとえに面白くてどんどん読み進んだから。

こうして少しまとめて読むと、著者のなかにある、ある種の「引っ掛かり」とでもいうようなものが見えて参ります。これはどなたの場合でもそうなのですが。中山七里氏の著書を読んで見えてきたキーワードは「貧困」「身近な政治の限界」「メディアの暴力」「3.11東日本大震災」「匂い」そして「音楽(クラシック)」。一見まったく異なる背景をもって書きはじめられた小説も、いずれかのキーワードに収束していくような感じを受けました。

そういえば、昨年2023年は、やはり読書家のお友だちからの紹介で「奥田英朗」氏にハマり、一年でけっこうな量を読んだのでした。

奥田英朗氏も多作だと思いましたが、中山七里氏もまだまだ読んでいない本が山積みです。スタートダッシュでたくさん読みましたので、ここから先はゆっくり読んで行きたいと思います。

中山七里オフィシャルウェブサイト

三日三晩の土用干し、とは参りませんが、梅仕事の進捗状況。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

三日三晩の土用干し、とは参りませんが、梅仕事の進捗状況。

北部九州地方の梅雨入りが発表されました。例年よりもずいぶんゆっくりだったようです。一昨日まで続いた晴れも、昨日の雨を境に、週間天気予報は曇/雨マークが並んでいます。そこに突入する前の貴重な晴れ、ということで、今朝から梅干を干しています。

「ビン干し梅干し」方式を取り入れるようになってから、土用干しに神経質にならなくなりました。手抜きといえばそうですが、毎年のことなので、気楽に作れることのほうがありがたく。土用干しを簡略化した「ビン干し」梅干しのつくり方をわたしに教えてくれたのは、『梅ぢから』という一冊の本。もう10年以上『梅ぢから』一冊。基本的な梅仕事がひと通り載っています。

ビン干しの方法は、上の写真の通り、梅干を仕込んだビンをそのままお日さまの当たる場所に置くだけ。梅干を広げて干すと、とっても良い香りが広がるのは知っていますので、その魅力は理解しつつ、一つ一つ並べるのは、とっても時間と手間のかかる仕事でした。大きなざるを広げる広いスペースも必要ですしね。それに比べると、まずは楽に、晴れていればいつでもできるのが、ビン干しの良いところ。そしてなによりも、天気の急変に慌てなくて良い、というのが一番です。ビンのふたを開けて干しますが、お天気が心配なときはラップをしておけば、上からお日さまは当たるけど雨は入らない、という便利さがあります。

毎年梅干を漬けているので、今年付けた梅を実際にいただくのは2年後3年後。梅干つくりをはじめた最初の頃に、一度カビさせてしまったことがあって、それ以来、塩の分量をレシピよりも多めにしていますが、年数がたつごとに熟成して味がまろやかになりますので、いただく頃には塩分の強さもだいぶ和らぐという算段です。

美味しく出来上がりますように♪

『梅ぢから びん干し梅干しから梅酢みそまで』(農文協)藤清光/中山美鈴 著

今気が付きましたが、農文協から出ていましたね。農文協から刊行された本は、つい先日も紹介したばかり。なにげにお世話になっていますね。