Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その1。

現代アートコレクターのOmer Koc氏は、藤吉憲典のSladmore Contemporaryでの最初の個展の時から、作品を購入してくださっています。ロンドンのギャラリーMESSUMSから刊行される氏のコレクション図録用に、藤吉憲典のインタビューを求められたのでした。5月に英文原稿を送り、藤吉に関する部分については、夏に既に校正も終了し、刊行を待つばかりとなっています。英文原稿については刊行待ちとなりますが、元となっている日本語原稿を一足早くこちらでご紹介いたします。


Q1. ご自分のことを陶芸家だと考えていますか、それとも彫刻家だと考えていますか?

A1. どちらでもあり、どちらで呼ばれても構いません。1997年に陶芸作家として独立したところから、わたしの作家としてのキャリアはスタートし、その10年ほどあとから、磁器彫刻家としての作品を発表し始めました。そして今は、書画家(水墨画家)としても作品を生み出しています。すべての表現技法がわたしにとっては大切なものであり、これからもアーティストとしてどのように変化していくか、自分自身でも予見できません。わたしの作った作品を所有してくださる方が、「藤吉憲典は何者か」をそれぞれにイメージしてくださったら、それでよいと思います。


Q2. どのようにして陶芸家・磁器彫刻家としての技術を身に付けたのでしょうか。どのような環境に影響を受けてきましたか?

A2. 佐賀県の磁器の産地・有田の隣町で育ちました。当時県内で唯一デザイン科があった有田工業高等学校に進学し、高校時代は絵ばかり描いていました。卒業後は、グラフィックデザイナーとして東京のデザイン事務所に就職。ところが父親の病気のためにわずか3年ほどで帰京することとなり、佐賀有田の窯元に商品開発デザイナーとして参画したことが、やきもの(肥前磁器)との出会いとなりました。

立体であり用途を求められるやきもののデザインは、グラフィックで培った平面デザインの技術やセンスだけではまったく不足であり、そこから「古伊万里」と呼ばれる古い名品、遡っては中国や朝鮮の古い磁器を研究しまくることになりました。美術館や博物館、骨董商、ギャラリーに通って実物を見て触るとともに、資料を大量に読みました。わたしは、やきものについての学術的な教育も受けていませんし、やきものの師匠もありません。古い名品こそがわたしの師となってくれました。

おかげで、自分自身の目、手、五感を通して、自分の美意識に忠実に、ものづくりに向き合うことが出来ています。そしてもうひとつ、幼少期から書道家であった父親の特訓を受けており、書道の基礎が叩き込まれていたことも、今考えると特質すべきことでした。自然な筆遣いや余白のバランス感覚、全体としての調和美を最も重視する視点は、わたしが陶芸作家としてデビューし、磁器彫刻家として作品を生み出すキャリアにおいて、大きな特長になっていると思います。


Q3.以降はまた次に。

偶然同じ時期にインタビューが入った『Homes and Antiques』8月号の、日本語もと原稿も、バックナンバーでご紹介しています。どちらも読んでいただくと、アーティスト・藤吉憲典の作品バックボーンが、より分かりやすいと思います。

英国の雑誌『Homes & Antiques』8月号への、藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その1。その5まで続きます。

暮らし用品さんでの「藤吉憲典 陶展」スタート!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

暮らし用品さんでの「藤吉憲典 陶展」スタート!

久しぶりの大阪個展は、阿倍野の暮らし用品さんです。ちゃんと調べてみましたら、関西方面での個展は2017年が最後となっておりましたので、なんと6年ぶり。関西方面の皆さま、たいへんたいへんお待たせいたしました。

大阪・阿倍野にある暮らし用品さん。数年前から、常設で藤吉憲典の器を扱ってくださっています。暮らし用品さんでは初めてとなりますので、暮らし用品さんのお客さまに「はじめまして」のご挨拶をする気持ちです。常設ではふだん使いに取り入れやすい器を中心にお届けしておりますが、個展ではアイテムを絞り込まずに、「藤吉憲典」の様々な顔をご覧いただけるよう、お届けしています。

暮らし用品さんのインスタグラムでも、器をご紹介いただいております。気になる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。

藤吉憲典陶展 暮らし用品

暮らし用品 藤吉憲典 陶展

【会期】2023年10月28日(土)~11月7日(火)※水・木曜休み

【時間】11:00~18:00

【場所】大阪市阿倍野区阪南町1-45-15

【電話】06-6628-2606

週末は梱包発送仕事に追われていました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

週末は梱包発送仕事に追われていました。

2023年秋冬の展覧会は、ロンドンSladmoreでのクリスマス・ショウへの作品参加と、今週末からはじまる大阪阿倍野・暮らし用品さんでの「藤吉憲典 陶展」です。週末は、その二つの展覧会への作品発送準備でした。先方への納品期限は前から決まっているので、早く準備出来ればそれに越したことは無いのですが、作品あっての梱包発送ですから、事前にできることは限られており、作品が揃い次第、一気に梱包&発送!という感じです。

梱包作業の間、ふだんギャラリースペースとしてお客様をお迎えしている部屋は、梱包材がたくさん散らかり、ちょっとお見せ出来ない混沌とした状態です。梱包し、作品リストを作り、運送業者さんを手配して、発送が完了するまで、軽く緊張状態。今回は2か所分の作業を立て続けに行いましたので、いつもよりさらに混とんとしていました。

何十年も続けているこの作業仕事も、定型仕事ということは決してなく、毎回改善点を見つけては次回に生かすことを繰り返しています。より無駄なく効率的に、より安全に、ギャラリーにお届けできるように。おかげで「余程のことがなければ破損しない」梱包が出来るようになりましたし、リスト作成や発送におけるミスも減ってきたと思います。もしかしたら「外注」という発想もあるのかもしれません。でも、今のところ、作家とわたし二人で自ら手を動かすことは、わたしたちにとっては必要な仕事だと感じています。

ともあれ、無事に発送完了。あとは「無事到着しました」のご連絡が来ることを祈りつつ待つばかりです。

ついにダンナが英語の勉強をはじめました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ついにダンナが英語の勉強をはじめました。

花祭窯の海外進出は、2014年からなので、10年。これまでも藤吉憲典は、出張して帰ってくるたびに「今度こそ英語を勉強する!」と言い、入門者向けの本を買いこんできては数日後にはその決意はどこへやら、を繰り返していました。2013年から付き合いのあるルカからは、ロンドンで会うたびに「ケンはいったいいつになったら英語をしゃべるようになるんだ!?」といわれるのが挨拶代わりになっています。それでも周囲の方々のおかげでコミュニケーションがそこそこ取れていましたので、なんとなくそのまま来ていた、というところです。

九月のイタリア研修での2週間を、一人で英語とイタリア語に囲まれて過ごした経験が、「今度こそ」の決意につながったようです。

研修期間中、ことあるごとに参加者たちが「美術史についての議論」をするなかで、自分も話したいことはたくさんあるのに、なにひとつ伝えることが出来なかったのが、余程堪えたようです。海外で仕事をするようになって、皆さんが話している内容は断片的には聞き取れるようになっていますので、「ああ、そのことについては、自分はこう考えているんだ!」と伝えることが出来なかったのが、かなりのストレスになったようです。カッラーラという場所柄、話題はミケランジェロ、ルネッサンス美術、彫刻・造形についての議論と、藤吉にとっては「語りたいことがたくさんある!」分野だったとのこと。ふだん日本語では超おしゃべりなので、そのストレスや如何に、です(笑)。

記念すべき英会話レッスン第一日目は、「すごく楽しかった!」と大喜びで帰宅。福津・津屋崎に英会話教室を展開するブループラネットさんにお世話になります。もともとご近所付き合いもあり、わたしも長年お世話になっていますので、何を目指して英語を習うのかは、よく理解していただいています。おまけに、花祭窯の仕事で使う英語のほとんどを最終ネイティブチェックしてくださっていますので、仕事内容も理解してくださっています。これ以上ない学習環境です。

ブループラネット英会話スクール

英語は中学1年で諦めたというダンナ。数十年を経ての学び直し、まずは長続きすることを願うばかりです。わたしも長年英会話を続けているおかげで、上達したとは言えないまでも、維持できているのは間違いありません。継続は力なり、は、語学の学習においても真実だと思うのです。

ご近所の皆さん、見かけたら英語で話しかけてやってくださいませ。

クリエイターマッチング@ホテル日航福岡に参加して参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

クリエイターマッチング@ホテル日航福岡に参加して参りました。

福岡商工会議所さんからご案内いただき、参加して参りました。コロナ禍下の2021年から取り組みをはじめた「藤吉憲典を地元で知っていただく機会を増やそう」の一環です。

福岡商工会議所さんが昨年トライアル的にスタートし、反応が良かったということで、今年から本格的に開催の運びとなった展示会です。会場が博多駅からすぐの日航ホテル内というところからも、力の入れようが伝わってきました。出展者は52社。バイヤー側となる参加社数は「今年は200社以上を目標としていますから!」と商工会議所の担当者さんはおっしゃっていましたが、実際には100社ほどだったかと思います。ただ、昨年から続けて参加なさっている方のお話を聞くと、一年目に比べたらかなり規模も参加者数も増え、会場の雰囲気もとても良くなっているとのことでした。

さて花祭窯としてこの手の出展型イベントに参加するのは、ほぼ初めてかも…と思いつつ、記憶を遡れば、2013年に大阪ジェトロさんの主催で開催された海外バイヤー招聘事業への参加がありました。その展示会で、ロンドンでセレクトショップを経営しているルカとの出会いがあり、彼からの激励を得て、ロンドンへの進出に本気で取り組んだのでした。そういうことがありますので、直感的に「何かのきっかけになるかもしれない!」と感じるイベントには参加するのが良いですね。

当日、花祭窯のご近所ブースは若い方ばかりでした。わたしたちとは親子ほど年が離れた方も少なからず、ちょっとドキドキ。でも、それぞれに取り組んでおられる制作物を拝見すれば、ユニークで熱意を強く持っていることが伝わってくる方ばかり。ご挨拶して言葉を交わせば皆さんとても気さくに話してくださり、まずは一安心しました。終日和やかな雰囲気で、人に恵まれた場所にブースをいただいたように思います。まったくストレスなくブース運営が出来ました。

商談時間がはじまると、それぞれの皆さんがどのような制作に取り組んでいるかが、よく見えました。このような機会は、これまでめったにありませんでしたので、とても新鮮で、なによりも勉強になりました。特に花祭窯の向かいのブースでは、メタバース内のキャラクター制作や空間制作、それらを通じた広告宣伝手法のプレゼンテーションなどをなさっていて、それらを来場者にご説明なさっているのを拝見するだけでも、ものすごく勉強になりました。

肝心の花祭窯にとっての商談は、即具体的な話につながるものはありませんでしたが、いくつかの面白い出会いがありましたので、まずは良しとしましょう、という感じです。

続・表装の楽しみ、ますますワクワク。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

続・表装の楽しみ、ますますワクワク。

表装の楽しみがひとつ形になって、ますますワクワクしていると投稿したのは、つい1カ月前のことでした。

展示した状態のビジュアルイメージがもたらす「わかりやすさ」が嬉しくて、もうひとつ、パターンを増やしました。手はじめに縦長作品・横長作品を表装しましたので、次は「全紙」です。この三種類があれば、壁面に飾ったときのサイズ感、見え方が、おおよそイメージできるのではないかと思います。頭ではわかっていたつもりのことですが、全紙を表装するとかなり大きくなりますね。やはり作品本体がポンと置いてあるのに比べると、「ここに飾ったらどんな感じになるか」が各段にイメージしやすくなります。これは額装にした場合もまったく同じことが言えますが、表装の良いところは、丸めて持ち歩けること。

藤吉憲典 円相龍図

額装にはじまり表装が続きと、このところ立て続けにお世話になっている大崎周水堂さん。スタッフの方々にも、なんとなくわたしの人となりというか、オーダーの「癖」のようなものを、少しづつ理解していただきつつあると感じます。生地の選びかた、切り替えの仕方など、あまりにもシンプルで、「掛軸の常識」から離れていることもあるので、ベテランのスタッフさんや表装職人さんからは、その都度「一般的にはこのようにするのがほとんどで、藤吉さんの希望するようにすると、このように見える可能性がありますが、ほんとうに大丈夫ですか?」の確認が入ります。ときには、作業に入る直前で電話確認が入ることも。こちらはもともと素人です。その相手に面倒がらずにひとつひとつ説明し確認してくださることを、とてもありがたく感謝しています。

アドバイスを取り入れる部分と、我流を貫く部分。掛軸という伝統的なスタイルを、現代の藤吉憲典の書画作品を見せる方法として、どのように生かせるか。今回は大物でしたので、大崎周水堂さんの店先で出来上がりを確認する際、スタッフの方が二人がかりで広げてくださいました。「こんな生地があったんですね」「初めてのことで心配しましたが、良い感じに上がりましたね」などなど、感想をつぶやいてくださるスタッフの方と一緒に出来上がりの確認ができるのは、嬉しい瞬間でもあります。

長く立体を扱ってきておりますので、平面の面白さ・わかりやすさが、とても新鮮です。展示機会に皆さんにご覧いただけるのが楽しみです。

大阪阿倍野の「暮らし用品」さんで、藤吉憲典陶展。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大阪阿倍野の「暮らし用品」さんで、藤吉憲典陶展。

関西方面の皆さま、たいへんたいへんお待たせいたしました!ようやく大阪で藤吉憲典の個展開催をアナウンスできます。

個展を主催してくださるのは、大阪・阿倍野にある暮らし用品さん。数年前から、常設で藤吉憲典の器を扱ってくださっています。昨日、素敵な案内状が届きました。さっそく宛名書きをしているところです。今週末には発送いたしますので、案内状をご希望のお客さまには、来週中にはお手元に届くと思います。

個展を控えた昨年、オーナーの米田さんが津屋崎の花祭窯にお越しくださり、初個展に向けて方向性の確認などをしたのでした。藤吉憲典の個展は、暮らし用品さんでは初めてとなりますので、暮らし用品さんのお客さまに「はじめまして」のご挨拶をする気持ちです。アイテムを絞り込まずに、「藤吉憲典」の様々な顔をご覧いただけるように、ということで、方向性を共有しました。そのうえで、これまでに暮らし用品さんの常設でお買い求めくださったお客さまのお好みも伝わってきておりますので、期待に沿う顔ぶれもお届けしたいと思っています。

藤吉憲典陶展 暮らし用品

藤吉憲典 陶展

暮らし用品

【会期】2023年10月28日(土)~11月7日(火)※水・木曜休み

【時間】11:00~18:00

【場所】大阪市阿倍野区阪南町1-45-15

【電話】06-6628-2606


関西方面ではほんとうに久しぶりの個展になります。楽しみにご来場いただけると幸いです。

アート作品の新作撮影-@abc pictures赤司さん。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

アート作品の新作撮影-@abc pictures赤司さん。

2023年も早くも10月。今年も、ロンドンSLADMOREでの11月~12月恒例のクリスマス・ショウに参加いたします。その作品の撮影をお願いしてきました。ギャラリー側でも撮影してくださるのですが、やはり手元にも持っておきたいもので。ロンドンへは、Animal Boxesシリーズを中心に10点前後の作品をお届けする予定です。

SLADMORE :Sladmoreの公式サイトも、この秋リニューアルされたばかりです♪

撮影をお願いしたのは、今回もabc pictures 赤司憲壕さん。雑談しながらこちらの意向を確認し、撮影する作品の顔ぶれを確認し、セットを用意し、試し撮りと確認を2~3回繰り返して、納得のいく環境が整うまでにかかった時間は15~20分ほど。ここ数年「白背景」の写真が続いたので、「ちょっと変えてみますか?」とのご提案で、今回は「グレー背景」にしてみることに。

一度環境が決まってしまえば、あとはサクサクと撮っていくばかりです。シャッターを切るごとにディスプレイで見え方を確認するのですが、ほとんどがワンカットでばっちりOKなのは、いつものことながらさすがです。またこれも毎回感じていることですが、技術の高さが素晴らしいのは大前提として、被写体である作品に対する理解や敬意を持ってくださっているからこそ、写真を通して伝わってくるものがあり、そこが一番有難いところです。

撮影をお願いしたのは10数点でしたが、スタジオに入ってから約1時間で完了。もちろん早ければ良いというものでもありませんが、時間をかければ良いものが撮れるというわけでもなく、期待以上の成果物をサクッと仕上げてくださるので、たいへん助かります。

最新の作品写真は、藤吉憲典公式インスタグラムでもご紹介して参ります。

藤吉憲典公式インスタグラム

KENSUKE FUJIYOSHI 公式サイトプチリニューアル。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

KENSUKE FUJIYOSHI 公式サイトプチリニューアル。

藤吉憲典の公式サイトを前回リニューアルしたのは2020年夏から秋のことでした。

ちょうど3年ぶりとなる今回も、夏から作業に入っていただき、先月アップしたのでした。

今回も、ウェブ制作を担当してくださったのは、福岡を拠点にご活躍のウェブデザイナー・ハラプロ原田大輔さん。そして、いつも作品を撮ってくださるabc pictures 赤司憲壕さんの写真に、今回も大いに助けていただきました。おかげさまで、格好良いサイトが出来上がりました。

リニューアルの主目的は、藤吉憲典の新しい作品群である「書画(Ink Drawing)」を、サイトでもご紹介すること。

藤吉憲典公式サイト Ink Drawingページ

更新が滞っていた藤吉憲典の略歴書(最新のレジュメ)も、日本語版・英語版ともに2023年度版に更新することが出来ました。PDFになっていますので、ダウンロードしてご覧いただくことが出来ます。

藤吉憲典の最新陶歴(The latest profile of Kensuke FUJIYOSHI)

こちらは今後、年に1回のペースで定期更新していこうと考えていますが、ご必要なタイミングでの「最新版レジュメ」が必要な場合は、その都度ご連絡を頂ければご提供することが可能です。

陶芸家・磁器彫刻家・書画家として活動の幅を広げていく藤吉憲典について、わかりやすく情報提供ができるよう、今後も心掛けて参ります。

KENSUKE FUJIYOSHI 公式サイト

アーティスト・藤吉憲典のイタリア短期研修報告、その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

アーティスト・藤吉憲典のイタリア短期研修報告、その2。

トスカーナ州カッラーラでの約2週間の大理石彫刻の研修。カッラーラは大理石の世界的な産地であり、ミケランジェロはじめ、ルネッサンスの偉人たちがここに通い詰めて彫刻を制作した、まさに「聖地」です。

大理石の山に囲まれた研修場所は、工房(作業場)と寮があり、寮にはWi-Fiが通っていますがラジオやテレビはなく、まさに大理石彫刻のほかにするべきことがない=そこに集中できる環境だったそうです。周囲には飲食店はなく、キッチンがついているので、近くのスーパーに買い出しに行って自炊をする前提です。同じタイミングで参加していたフランスから来たジャン・ピエール氏が、彼は何度目かの研修だったということで、買い物や料理その他、なにかと気を使って助けてくださったとのこと。ありがたいですね。

大理石を彫る作業は、ふだんの磁器制作とは使う筋肉がまったく違ったということで、毎日体力を使い果たして一日を終えたようでした。マエストロが指導してくださるのをはじめ、近所に工房を持つ大理石作家の方々が、ちょこちょことのぞきにいらっしゃるようで、たくさん声をかけていただきながらの研修となったようです。周囲にある作家の工房には、どの工房にもミケランジェロのダヴィデ像の「写し」が、大小さまざまなサイズで作られていたそうで、それがその彫刻家の「これだけの腕がありますよ」を保証するものとなっていたようです。

そんな環境のなか、藤吉憲典が研修中に一番言われた言葉は「ゆっくりゆっくり」だったと。研修期間が2週間という短期でもあり、そのなかで作品をひとつ完成させようと、大理石を彫るスピードが知らず知らず、速くなっていたようです。アーティストならではの、初めてで自分にどれぐらいできるものかを見てみたいという自負もあったでしょう。「もっとゆっくりじっくり取り組みなさい」ということを、ことあるごとに声掛けしていただいていたとのことでした。

イタリア語はまったくわからず、英語もほとんどしゃべることのできない藤吉憲典ですが、無事研修期間を楽しんできたことがわかるのは、上の写真の笑顔が物語っています。イタリア語、英語、フランス語、スペイン語の飛び交う空間で、モノづくりという一点でつながっているからこそ言語外に通じるものがあるというのは、モノづくりのできないわたしにとってはなんともうらやましいことでもあります。週末にはマエストロはじめ皆で、ピエトラサンタに出かけ晩餐を楽しんだり、カッラーラの中心地に出かけて古い街並みを歩いたりもできたと。さりげなくサポートしてくださったのであろう皆さんに、心より感謝です。

そうして出来上がった作品を、手荷物で大事に大事に抱えて持って帰ってきました。ルネサンス時代・マニエリズム美術の起点になったと言われる「セルぺンティナータ(螺旋状の/蛇がとぐろを巻いたような)」が思い浮かぶ、ドラゴンが柱に巻き付いている、の図です。最初にデッサンを描いて見せたときには、マエストロに「初めてなのにこれにチャレンジするのか?難しいぞ!」と言われたそうですが、そのマエストロの技術指導のもと、ここまで形になったようです。

藤吉憲典カッラーラ大理石彫刻研修

ふだんの磁器彫刻作品の完成度の高さを見慣れているワタシや息子としては、「初めてにしてはすごいんだろうね」というぐらいの感想でしたが、ミラノマルペンサ空港の出国手続きで「この大理石彫刻は高価なものだろう!?」と止められたのだと、武勇伝(笑)。何人も駆けつけてきた空港スタッフに、スマホで撮っていた作業中の写真を見せて「自分が研修で作った習作である」ことを納得してもらい、「お前はアーティストなのか?」という問いに「そうだ!」と返事して無事ゲートを通過できたのだそうで、なによりでした。

これからさらに細かいところを彫り込み、やすりで磨いていき、仕上げていくようです。研修中は、彫刻に使う道具はすべて研修所が貸してくれていましたので、道具を買う必要があるのかなと思いましたが、ダンナのお父さんが篆刻をしていたため、うちには石を彫る道具があり、それがそのまま使えるということに気づきました。書に端を発する篆刻が大理石彫刻と結びつくなんて、まったく思ってもみなかったことであり、思いがけずつながっている不思議を感じました。

現地での様子(写真)は、藤吉憲典の公式フェイスブックページでご紹介しています。

藤吉憲典公式フェイスブックページ イタリアカッラーラ研修2023