こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
教育普及学芸員の師と仰ぐ齋先生の言葉に、身の引き締まる思いがしました。
わたしが博物館学芸員資格課程に挑戦したのは、40代に入ってからのことでした。大卒資格(学士)を持っていましたので、佛教大学の通信課程に三年次編入し、二年間の学習と試験、博物館での実習、卒論を経ての課程修了。大人になってからの学び直しを考えるとき、大卒の学士があると、このように三年次編入で専門分野を学べるケースが多いので、とても便利ですね。通信でしたが、博物館実習にかかる実技と講義では、京都北野にある佛教大キャンパスを拠点に、各分野の教授たちから10日間ほど朝から夕方まで対面で学びました。
通常博物館実習は、1つの館に滞在して学ぶスタイルですが、わたしが佛教大に在学したときは、特別に複数の館で学ぶスタイルでした。京都~奈良にある、歴史系・仏教系・産業系・美術系と分野も異なれば、国立・府立・市立・私立・学校附属と運営母体もさまざまな館のバックヤードを訪問し、それぞれの学芸員さんからお話を聞くことができたのは、かなり珍しく贅沢な実習だったと思います。ただ「ゼミ」的なものが無く、卒論もガッツリ指導教授が就くというものではなかったため、資格取得に至るまで、専門的分野での「師匠」と呼べる存在がありませんでした。
そんなわたしにとって「師匠」と仰ぐ存在と出会えたのは、九産大の緒方泉先生率いる「博物館学芸員技術研修」への参加がきっかけでした。一番最初に参加したカリキュラムで、当時宮城県美術館で教育普及学芸員をなさっていた齋正弘先生に出会い、「アートエデュケーション」という概念に出会い、勝手に「これだ!この人に学ぼう!」と思ったのでした。2016年のことです。
それから、学芸員研修での齋先生の講義は毎年受講し、仙台にある宮城県美術館まで押しかけ、著書を読み込み…。
花祭窯の「陶片ミュージアム構想」に興味を持ってくださった齋先生と、雪の舞うなか津屋崎から福間・花見の海岸線を「陶片探し」で何時間も歩き回ったこともありました(笑)。
コロナ禍後は、学芸員技術研修会で齋先生の教育普及の講座が無くなってしまったため、お会いする機会がありませんでしたが、ずっと年賀状で近況報告をしておりました。その、今年の年賀状で先生が書いていらっしゃった言葉に、考えさせられたのです。
曰く、
「学芸員は世の中の変化の最先端にいる存在である。」
「困ったら基(もと)に戻る。」
思えば「美術はもっと使える」とおっしゃったのは齋先生でしたが、それは同時に「使えない・役に立たない(ように見える)ものの価値」への眼差しを持ち続ける大切さを説いていたと思います。そして「基(もと)」の大切さ。
新年早々、目を開かせられました。やはり齋先生は、わたしの(勝手に)偉大な師匠です。