読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その2

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その2

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。わたしにとっては、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』に続く、アートエデュケーターとしての指針盆になりそうです。先日「その1」をまとめたところでした。

続き、本日は第3章から備忘。


  • 落書きやぬり絵、思いのままに絵を描くことは、いずれも前頭前野皮質を活性化させる。
  • 「絵を描いているときはいわゆる単調な状態になる。いつもとは違う頭の部分が働いているんです。普段はスイッチが入っているところがオフになります。そしてオフになったときは、自分の感情について、というよりあらゆることについて会話をしやすくなる。(後略)」
  • 絵を描くことは脳波の活動を変化させ、前頭部への血流を増やし、精神の回復力にプラスの影響を与えることが明らかになっている。
  • アートが瞑想に近い状態を引き出し、生理機能の自己調節を促す
  • アートを利用して瞑想に近い状態を育む
  • 創造しては手放すというこの工程のなかに(中略)、無意識へと入り込む道(がある)
  • (粘土)手でリズミカルな反復運動を行うと脳内でセロトニン、ドーパミン、オキシトシンの分泌が促されることが報告されており、そのため気持ちが少し楽になった
  • 年度は両手を同じように器用に動かして取り組む数少ない創作材料の1つであり、意識と無意識のどちらにも働きかけることができる。
  • 書くことで個人的で感情的な物語にあえて入り込むことは、心身の不調を軽減する効果がある
  • 書く行為を通して、自分の心の位置付けを把握する方法を学びとり、書き終えたときには自分がどのように感じ考えているのか、より多くの情報が得られるようになっている。
  • 肉体的な感覚を経験することにより、頭で考えることから抜け出し
  • アートが完成したら共有する場を設け、(中略)完成させたものの意味を説明できるようにする。
  • これはアートの「出来栄え」を評価することが目的ではない
  • 生活にアートを取り入れる機会が年に1、2回だとしても、死亡リスクは14%下がる。
  • 生涯にわたり美術館やコンサート、劇場に足を運ぶといったアート活動を行うと、加齢に伴う認知機能の低下を遅らせる効果もある。
  • 美やアートは高尚なものではない。人生の基礎である。
  • アートや美が教育や仕事、生活に統合されたとき、私たちの学ぶ能力が強化される
  • 持続的幸福
  • 「この絵のなかで何が起きているでしょう?」「ほかに気づいたことはありませんか?」
  • ただ目の前の柄を解釈すればよい
  • 好奇心は進化に必要なものとして、人の脳に織り込まれてきた。
  • 進化の目的は、予測不能な世界で最善の判断をできるように適応すること
  • アートは内省のきっかけとなり、それぞれが自分なりの洞察を得て、他者の視点を理解し
  • 人が普遍的に美しいと感じる現象がある
  • 美の認識の多くの部分は個人に依存する
  • 感嘆
  • 積極的に畏怖の念を経験している人々は、自主規制をあまり求めず、不確かさに対する耐性が比較的高い。
  • 創造性―「自分が大切にしているもの」を取り戻す
  • フロー
  • ある活動そのものに完全に没頭している状態。自我は消失、時間は飛ぶように過ぎる。そして新たなアイデアが生まれる
  • 内なる台本を書き換えるために舞台に立つ
  • 「正常」なものの外に出て、あっと驚く
  • 自分以外の誰かのケアにあたるときは、あなたには自分自身をしっかりと労わるための追加的な手段があり、自分の心身の健康を回復することは習慣になっている。そしてアートと美のツールキットは大いに頼りになる。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


今回も十分に長くなってしまいましたね(笑)。わたしは「美術」の観点から読んでいるので、そちらに偏った備忘メモになっていますが、本書では美術以外の芸術…音楽や演劇やダンスやいろいろ、とのかかわりについてもたくさん述べられています。なので、ご興味のある方は、ぜひ本書を読んでみることをお勧めいたします。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

キース・へリング展「アートをストリートへ」を見て参りました―まるっと一日、福岡市美術館デー。

9月に郷育カレッジで講座を担当する「知識要らずの美術鑑賞」のために、福岡市美術館での打ち合わせ。打合せは午後からでしたので、午前中から足を運んで、開催中の「キース・へリング展」を見て参りました。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)

そもそもは、昨年の学芸員研修「博物館リンクワーカー人材養成講座」でのこと。山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」の実践報告の発表を聴いてディスカッションするという、稀有な機会に恵まれました。そのときに「来年は福岡市美術館で展覧会があります」と聞いて、楽しみにしていたのでした。

キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題と、彼の社会活動の「いかに」がバンバンと伝わってくる展覧会でした。展示を通して響いてきたのは、思っていたよりも「もっと重く、もっと切実」な、キースの叫び。「イコンズ」と名付けられた、ポップでカラフルなアイコニックな作品が、キース・へリングを印象付けるものとして有名ですが、その奥にある危機感が迫ってきました。

会場は一部展示室を除いて、写真OK(フラッシュ撮影や動画はNG)でしたので、今回のわたしに響いた「これ!」を、以下にちょっぴりお裾分け。写真NGの部屋は、1988年来日の際の東京でのイベント資料を展示したものでした。ちなみにダンナは当時東京でグラフィックデザイナーをしていて、「生キース・へリング」をその時に見ていたとのこと。そんな話を聞くと、自分たちの少し先を走っていた方なのだなぁと、実感します。

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展「アートをストリートへ」福岡市美術館より

キース・へリング展@福岡市美術館

わたしは、表面的に社会的な課題をちりばめた「現代アート(コンテンポラリー)」と呼ばれているものに懐疑的なのですが、今回の展覧会を見て、これこそが「いわゆる現代アート」なのだと分かりました。考えさせられ、見応えのある展覧会でした。

キース・へリング展「アートをストリートへ」(福岡市美術館)は、会期残すところちょうどあと一か月9月8日(日)です。おススメです。

山梨県にある「中村キース・へリング美術館」にも、そのうちぜひ行ってみたいと思います。

おかげさまで、55=GOGO!な1年がスタートしました―まずは一人戦略会議から。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

おかげさまで、55=GOGO!な1年がスタートしました―まずは一人戦略会議から。

北京個展が無事スタートし、とりあえずはホッと一息、な今日この頃です。今月はワタシのお誕生月でもありますので、長期計画を含めて久しぶりに一人戦略会議。そういえばこのところ、じっくり考える時間が作れていませんでした。ややもすると日々の雑事に追われて流されてしまうので、意識して時間を確保する大切さを感じています。何かをはじめようとか、何かをじっくり考えようという時に、「誕生日」というのは、「お正月」や「年度初め」とならぶ、とても良いタイミングですね。

まずは2024年初に立てた経営指針書の進捗状況チェックと見直しから。

途中5月に一度見直しをかけていますが、そこからまた新たに加わった事案、取りやめになった事案等があります。昨今変化のスピードが速いので、「朝令暮改は当たり前」の基本精神で、自分たち自身の動きも状況に応じて変えていきます。そうして「花祭窯」の動きを整理整頓したのちには、自分自身の動きを計画策定。…というとなんだか大袈裟ですが、自分のやりたいこと、特にアートエデュケーターとして活動したい内容の書き出しを行いました。

GOGO!な今年からは、アートエデュケーターとしての仕事を、また少しづつ増やしていきたいと考えています。毎年、博物館学芸員としての新しい知見の獲得や技術研修は行っていますが、せっかく学び身に付けたものに対して、これまではアウトプットが少なかったので。花祭窯おかみの仕事とアートエデュケーターとしての仕事は、関連し合っているところもたくさんありますので、上手に双方を活かしていきたいと思います。さあ、がんばろう!

今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳―その1

原題は『YOUR BRAIN ON ART How the Arts Transform Us』。こんな本を待っていた!というところです。帯に『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか?』の著者・山口周さんが「答えは本書にあります」と推薦コメントを寄せていますが、まさに、科学的・実証的エビデンスでその答えを明示したと言えるのかもしれません。

400ページ越えを二日間かけて読了しました。わたしのアートエデュケーションの原点となる本ベスト3は、齋正弘先生の『大きな羊の見つけ方 「使える」美術の話』、元資生堂名誉会長の福原義春氏が書いた『美 「見えないものを見る」ということ』、そして山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』なのですが、それに本書を加えなければなりません。

さっそく以下、備忘。


  • 神経美学
  • 感覚的に豊かな環境では学習の効率が高まり、記憶の定着率が高い。
  • 『20分間のアート』
  • あなたは脳だけでなく、身体全体で世界を取り込んでいる
  • 環境的経験に応じて動物の脳に構造的変化が生じる
  • 脳が生涯にわたって環境的な刺激に反応し、物理的に回路を書き換え、新たな経路を生成する
  • 究極に豊かな環境は自然である。自然は最も美しい場所であり、それはわたしたちが生まれた場所であるからにほかならない。
  • 文化、経歴、生きている時代や場所といったことのすべてが、物事をどのように受け止め、反応するかを特徴づける。
  • あなたが美しいと認識する経験がある。その経験は、あなたと、あなたの生物学的特質と環境に特有の要素が混ざり合ったものから成り立っているが、同時にあらゆる人々が美しいと思わずにはいられない普遍的な要素も含んでいる。
  • 「アートでも建築でも、人が創造したものはその形になってからほんの数千年しか経っていない」
  • 美しさはいかなるときも、見る者の目のなかにのみ存在している。
  • どこで生まれ、どのように育ち、それぞれどのような経験をしてきたのかといったことが重なり、なにを美しいと感じるかが決まる。
  • (アートと美は)人間のありとあらゆる経験に感情的に結びつくことを可能にする。
  • (アートは)本来ならば難解で不快な考えや概念に向き合うための媒体となる。
  • アートには(中略)感情を解放させる作用がある。
  • あなたの知覚は、あくまでもあなたにとっての現実にほかならない。
  • DMN(デフォルトモード・ネットワーク)はあなたが美しいと思うもの、記憶すべきだと思うもの、意味があると思うものを、それ以外のものと区別するフィルターであり、アートと美を私たち1人ひとりにとって、きわめて個人的な体験にする役割を担っている。
  • 「形は感情を模倣する」
  • 私たちが意識的に考えることと、生物学的な感覚は必ずしも一致しない(「オシャレ」と思った部屋が、本当に心地いいとは限らない)
  • 周囲に対する自分の美意識は、(中略)先入観や偏見、長年の考え方にとらわれていないか?
  • アートとは自分の身体状況あるいは感情の状態を変化させ、幸福感を高める活動である。
  • アートの創作に長けている必要も無ければ、得意である必要すらない。
  • わずか45分間アートの創作に取り組むだけで、田尾藩の人々において、スキルや経験の有無とは一切関係なく、ストレスホルモンとして知られるコルチゾールの低下が見られた。簡単な材料などを用意して、出来栄えを気にせずに取り組めば、誰でも自宅で同じことができる
  • 週に1回以上アート活動を行うか、少なくとも年に1、2回は文化的な催しに参加する人は、そうでない人よりも生活の満足度が優位に高い
  • ストレスとは気分屋感情ではなく、感情に対する生理的な反応だ。
  • 20分間ほど色をぬるという単純な行動によって不安やストレスが和らぎ、充足感が高まり、気持ちが落ち着く
  • ぬり絵は体系的な作業なので、混沌とした暮らしに秩序をもたらす効果がある。
  • 「小さな創造性」の活動
  • マンダラはひじょうに複雑なため、不安や頭に付きまとう思考から注意を切り替えなければならないほど高い集中力が求められ、それが気持ちを落ち着かせる構造と方向性を与える
  • マインドフルネス・アートセラピー
  • 自然は究極の美的経験
  • ストレス症状を和らげるには、自然の本質的な美に根差した空間を意識的に整えることが効果的
  • 「社会的処方」
  • 社会的処方では、(中略)ニーズに合わせて文化的活動を勧める。
  • こうした(文化的)活動は日常生活に取り入れられることが大切で、時間やコストが多くかかるものである必要はない。

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳 より


ここまでで全7章のうちの第2章までです。わたし自身のアンテナがこの1-2章に特に集中したということでもあるのですが、思っていた通り長くなりましたので、続きはまた次にいたしましょう^^

『アート脳』(PHP研究所)スーザン・マグサメン、アイビー・ロス著/須川綾子訳

映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を見て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

映画『もしも徳川家康が総理大臣になったら』を見て参りました。

2024年5本目の映画鑑賞は再び邦画です。原作本『もしも徳川家康が総理大臣になったら』眞邊明人著(サンマーク出版)にを読みたいと思い、いつものカメリアステージ図書館で貸出予約を入れていた一冊。ビジネス小説ですね。人気が高く、予約待ち数名で、順番が回ってくる前に映画を観ることになりました。

まあ、キャストを見れば「濃い」演劇が繰り広げられるのであろうという予測はつくわけで、原作は「ビジネス小説」でも映画は「コメディ」以外の何物でもないだろうと。上の写真は映画の公式サイトからお借りしたものですが、まあ、濃いですよね。脚本は『翔んで埼玉』の脚本家さんですし、これはもう爆笑を期待して映画館に向かいました。

結論としては、爆笑への期待値が高すぎて、ちょっと足りませんでした(笑)面白さのピークは前半にあって、ラストにかけてはひたすら説教臭い(笑)。今回、戦国武将マニアで映画鑑賞が趣味の息子と一緒に見に行ったのですが、彼に言わせると「ラストに向かって、雑過ぎて、残念」と手厳しい感じでした。

それでも、それぞれの「偉人」の皆さんの濃い演技は、期待通りではあり、土方歳三役で山本耕史が出てくるなど、期待していなかったところでの嬉しいサプライズがあり、という感じではありました。個人的に大ヒットだったと思ったのは、「聖徳太子」役の長井短さん。その存在感が一番面白く、わたしは彼女のことを知りませんでしたので、映画館を出てすぐに「あの聖徳太子誰?」と息子に聞いたところ、「今売り出し中の女優さん。長い短い」で覚えてね、と。

というわけで、少々残念ななかにも、まあまあ楽しめた映画でした。今月はもう一本観に行けるといいな、と思いつつ。まずはビジネス小説の『もしも徳川家康が総理大臣になったら』に期待したいと思います。

北京・喜水ギャラリーさんから、e-DM(個展案内状)が届きました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

北京・喜水ギャラリーさんから、e-DM(個展案内状)が届きました。

今週末からいよいよ、です。久しぶりの中国、初めての北京。前回の上海は、コロナ禍直前の2019年11月から2020年2月でした。こうしてまた中国でご覧いただけることが、とても嬉しいです。

喜水ギャラリーさんが可愛らしいDMを作ってくださいました。なんともやさしい雰囲気に仕上がっていて、とても嬉しくなりました。オーナーが花祭窯にいらっしゃったときにもおっしゃっていたのですが、喜水ギャラリーのお客さまには、若い年齢層の方々も多くいらっしゃるというということが、このDMデザインを見ても伝わってきました。

添えられている「空山新雨后」は、中国・唐代の漢詩だそうです。「そろそろ夏が終わり立秋だよ。気持ちの良い季節が来るよ」というほどの意味だと教えていただきました。今回の個展開催にあたり、ギャラリーオーナーさんがいろいろと考えてくださっていることが伝わってきて、とても嬉しいです。

北京喜水ギャラリー 藤吉憲典作品展

藤吉憲典 個人作品展

北京 喜水ギャラリーにて

8月4日(日)ー8月11日(日)

※詳細は中国版インスタグラム「小紅書」をご参照ください。
喜水ギャラリー 小紅書ID 675288412

北京喜水ギャラリー 藤吉憲典作品展

北京喜水ギャラリー 藤吉憲典作品展

北京喜水ギャラリー 藤吉憲典作品展

中国にお友だちのいらっしゃる皆さま、ぜひ宣伝していただけると嬉しいです。

読書『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

本書も、いつものカメリアステージ図書館新刊棚で手に取った一冊。ふだん「エッセイ」はほとんど読まないのですが、「林真理子」の名前に釣られました。

林真理子氏のお名前は、彼女の作家としてのデビュー作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』の頃から知っています。これが出たのが1982年ということですから、当時わたしはといえば中学生。マスメディアにもどんどん登場した林真理子氏は、まさに社会現象的な存在でした。そんな彼女がずっと気になりつつも、実は著書はほとんど読んではおらず、小説家としての彼女に完全に脱帽したのが、約1年前に読んだ『私はスカーレット』の上下巻という。

さて『マリコ、アニバーサリー』。林さんがデビューした時代はバブル前夜から最盛期、「クリエイター」という存在と言葉が現れた、イケイケドンドンな時代です。本書の文章の端々から、その雰囲気をじゅうぶんにまとい、牽引してきた人の一人だということをあらためて思いました。当時のキラキラとした「クリエイター」なる人種のなかでも、林真理子さんはちょっと劣等感を抱えてひねた感じがしていた、というのがわたしの拙い印象だったのですが、本書を読んで、「実はどんな人なのか」「当時どんなふうだったのか」、情報を修正することが出来ました。

本書はもとは「文藝春秋」に連載されているエッセイをまとめたものだということです。掲載されていたのは、ちょうどコロナ禍前・中・後の時期にあたり、またご本人的には日大の理事長就任なども重なっていて、興味深く読みました。意外だったのは、その語り口がとっても「すなお」なこと。とげとげしさを伴う「そっちょく」というよりは、やさしさを伴う「すなお」な感じだったのが、新鮮でした。長年彼女のエッセイを読んでいる方々からしたら、それが彼女で当たり前のことなのかもしれません。もっと、毒を持った雰囲気だったような気がしていたのですが、何十年も前に抱いた印象をそのまま持っていた自分の思い込みを恥じるとともに、ただす機会となりました。

『マリコ、アニバーサリー』(文藝春秋)林真理子著

わたしはエッセイはあまり手に取らない方なのですが、その著者自身に余程興味が沸いたときは、読んでみると面白いものですね。その方の背景がうっすら分かったうえで読む小説は、また少し違って見えてくるものかもしれません。

読書『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。またもやすごい人を見つけてしまいました。タイトルに「ホームズとワトソン」とくれば、否応なくある種のイメージが沸くわけで、迷わず借りて参りました。読後にわかったことですが、このシリーズで何冊か既に出ていたのですね。さっそく既刊本を図書館蔵書検索&予約しました。

さて『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』。タイトルから広がる期待の大きさゆえに、「もしかしたらがっかりするかもしれないな」という心配もありつつ本を開きました。が、まったくの杞憂でした。主要登場人物がすべて女性になっていて、現代が舞台という設定が、ちゃんと面白さを増す要素になっているのがすごいと思いましたし、作者自身が楽しみながら本書を書いている感じが伝わってきました。

本家のニュアンスを上手に取り込んでいて、そこが面白さであり、ニヤッとする場面がいくつも出てくるのはもちろんですが、ストーリー自体、本家を知らなくても楽しめる本だと思います。登場人物が個性的で魅力的に描かれていました。わたしが読んだのはシリーズ最新刊でしたので、「その前」のストーリーがどのように始まっていたのか、とても気になりました。というわけで、これから遡って読書です。わくわく。

『シャーリー・ホームズとジョー・ワトソンの醜聞』(早川書房)高殿円著

ご近所観光案内施設「津屋崎千軒なごみ」で「藤吉憲典 書画展」を開催しました♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ご近所観光案内施設「津屋崎千軒なごみ」で「藤吉憲典 書画展」を開催しました♪

銀座黒田陶苑さんでの個展、博多阪急さんでの個展と続き、七月のラストは、いつもなにかとお世話になっているご近所観光案内施設の「津屋崎千軒なごみ」で、書画を飾りました。

ここ2-3年力を入れてきた、藤吉憲典の書画作品。表装してご覧いただけるようにしたものを、一堂に会して見れるようにする機会をこれまで作っておりませんでした。その前の個展機会も、銀座と博多で分けて展示したので、「ぜんぶいっぺんに観れるように」というのが、わたしたち自身のやりたかったことでした。

藤吉憲典の書画@なごみ

ホワイトキューブのギャラリーと異なり、和室の壁面を使っての展示は、リラックスした雰囲気となりました。ご近所さんやお友だちが立ち寄ってくださり、良い時間となりました。なにより当初の目的通り、わたしたち自身が、今書画作品が全体としてどのような顔ぶれになっているのかを、文字通り一覧でビジュアル的に確認することが出来たのが、良かったです。

遊びに来てくれた友だちのなかには、海外の美術館で展示をする現代アーティストさんのご夫妻や、大型遊興施設を手掛ける建築家のご夫妻などもいらっしゃって、現代生活空間のなかで書画(平面作品)の表装(飾り方)をどう考えるべきかなど、おしゃべりのなかで貴重なご意見をいくつもいただきました。ざっくばらんにご意見をいただくことが出来たのは、プライベートスペース的なこじんまりとした展示だったからこそであり、思いがけずとてもありがたいことでした。

なごみには、展示スペースのレンタルもありますが、時間貸しの和室があり、わたしは仕事で籠りたいときにここを借りることがあります。今回の展示は、この和室をお借りしたのでした。いろいろと使えて便利なご近所さんです^^

七月末、津屋崎・波折神社の恒例行事―今年も茅の輪をくぐって参りました♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

七月末、津屋崎・波折神社の恒例行事―今年も茅の輪をくぐって参りました♪

一年の上半期の穢れを祓い、無事に感謝する夏越祭=茅の輪くぐり。ここ津屋崎の波折神社では例年7月末に行われています。今年も最終日曜日の夕方から神事がスタート。神主さんの後に続いて、みんなで茅の輪をくぐります。時刻になると、あちらこちらからご近所さんが集まってきます。今年は昨年よりもさらに人が増えていたような気がしました。と思っていたら、ほんとうに毎年神事の後に配られる紅白饅頭が、今年は足りないかも!という状態だったということで。こうした地域行事に人が増えるのは、じんわりと嬉しいことです。

左足から入ってくださいね、くぐるときには軽く低頭してくださいね、などのご指導もありつつ、周りの人たちとおしゃべりしながらぞろぞろと歩くのは、なんとも長閑で楽しいものです。くぐり終わって、お饅頭をいただいて、あとは「茅」を何本かいただいて帰ります。いただいて帰った茅で小さな輪っかを編み、これを玄関先に下げるのです。

我が家では、輪っかを編むのはダンナの仕事。一本の茅がけっこう立派なので、数本持って帰るだけで、二つ三つとできあがります。毎年、我が家の分のほか、茅の輪くぐりに参加していなかったご近所さんにお分けしたりしています。と書いて、昨年編んでお守りにしていた茅の輪をまだ返していないことに気が付きました。あとから神社にお返ししてお礼を伝えることにいたします。

↓昨年の茅の輪くぐりレポートはこちら↓