花祭窯の長月9月の庭―いつもより遅かったけれどヒガンバナが咲いてくれました♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯の長月9月の庭―いつもより遅かったけれどヒガンバナが咲いてくれました♪

毎年秋のお彼岸には必ず花を咲かせてくれていたヒガンバナ。今年は秋分の三連休を過ぎても気配を見つけられずにいました。あまりにも暑い夏でしたから、ヒガンバナに限らず調子を狂わせてしまった草花の話はあちこちで聞いていて、今年はお休みでも仕方ないよね、と思っていたところだったのです。

が、遅れること数日、ヒガンバナの茎がシュッと伸びてきたのを発見。思わず「おおーっ!」と声が出ました。そんな、長かった夏の終わりの花祭窯の露地では、いろんな植物が頑張ってくれています。

百日紅サルスベリ

夏の暑い盛りに唯一花をつけてくれた百日紅は、今日も満開です♪

ザクロ柘榴

台風に負けず残ったザクロの実は二つ。だいぶ大きく育ってきました。

露草ツユクサ

夏の終わりからは、「紫色」があちらこちらから顔を出してきてくれました。

紫の実

いつもの顔ぶれを見つけると、ホッとしますね。

ヤブラン

そして、こちらはもう少しで開くヒガンバナ。花祭窯のヒガンバナはクリーム色です。

ヒガンバナ彼岸花

一日後には、見事に咲いてくれました。

彼岸花ヒガンバナ

朝晩だいぶ涼しくなってきましたので、そろそろ庭の草むしりもせねばと思いつつ^^

花祭窯のギャラリースペースに椅子が入りました―ようやく気に入ったものを発見♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯のギャラリースペースに椅子が入りました―ようやく気に入ったものを発見♪

花祭窯のギャラリースペースは靴を脱いで上がる和室なので、座るときは「畳に座る」ことになります。和室に上がってしまうと「ちょっと腰掛ける」ような場所が無く、特に膝や腰の悪い方がいらっしゃったときは、申し訳ない状態が続いていました。「畳の部屋に似合う椅子」を探さないとね、と言いつつ、コロナ禍下で来客を受け入れない時期も数年あり(と言い訳しつつ)そのままになっていました。

先日おじゃました大川家具ドットコムさんの10周年パーティーが、本社ショールームで開催されたので、これ幸いと2階のショールームで椅子を物色(笑)。そしてあっさりと、気に入ったものを発見したのです。これ、けっこうすごいことかも。

座面の大きさといい、高さといい、配色といい、座り心地といい「花祭窯の和室に、これ!」という椅子です。素晴らしい出会い♪これまでに探したなかで、木製のデザインチェアーは、シックで美しいもの、座り心地の良さそうなものがいろいろとありましたが、実は「重い」ものが多いです。今回出会った椅子は、良いつくり、良い雰囲気のものでありながら、片手でも動かせる形・重さであるというのも見逃せないグッドポイント。

大川家具ドットコムさんで手に入れた椅子

正座の苦手なお客さまも、これからは安心して受け入れることが出来ます。嬉しい^^

読書:上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ(もりびとシリーズ)」

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書:上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ(もりびとシリーズ)」

少し前に、お友だちがSNSで「上橋菜穂子さんの『守り人シリーズ』が面白い」と書いておられて、気になりながらも、「ファンタジーノベルは苦手」という思い込みがあり、積極的に探すまでに至っておりませんでした。ところがある日、息子の本棚に『精霊の守り人』と『闇の守り人』の文庫が並んでいるのを発見。目の前にあるということは、読んでみなさいということだ!ということで、手に取りました。

面白かったです。わたしと同じように、ファンタジーノベル=子ども向け、と思い込んで読んでいない方がいらっしゃったら、だまされたと思って手に取ってみて欲しいと思いました。大人が楽しめるファンタジーに仕上がっているのは、著者・上橋菜穂子さんが文化人類学の研究者であり、文化人類学的アプローチが土台にあるから、ということが感じられます。

守り人シリーズは、子どもの本を専門とする出版社・偕成社さんから出ていて、そのなかに『「守り人」シリーズ公式サイト』がありました!すごいですね。

「守り人」シリーズ公式サイト(偕成社)

ちなみにわたしが読んだのは文庫版で、こちらは新潮文庫から出ています。あとがきを読むと、文庫版を出すにあたり、もともと偕成社から出ていたものから、漢字表記を増やすなど「大人が読みやすいように」文章を多少修整してはいるものの、内容はまったく変わっていないということが記されていました。子ども向けの本として出すことにこだわる理由、大人にも読んでもらえる本であるということについて、「あとがき」で著者の思いが述べられています。

シリーズの他の本も読んでみたいと思います^^

読書『ある晴れたXデイに』(東京創元社)マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一 編訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ある晴れたXデイに カシュニッツ短編傑作選』(東京創元社)マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一 編訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚。既視感のあるタイトルに吸い寄せられました。ブログでセルフ検索をかけて納得、2年ほど前に同著者の、やはり短編集『その昔、N市では』を読んでおりました。せっかくなら本書のタイトルにも「、」を付けて、『ある晴れた、Xデイに』にしたらより既視感が増したのに、などとどうでもよいことを思いつつ(笑)

さて『ある晴れたXデイに』。いずれの物語も、読み終わった後になんとも「わけの分からない感じ」が残ります。東京創元社での本書の紹介ページに「日常に忍びこむ幻想」という言葉があるのですが、まさにそれ。ありえなさそうで、ありえそう、の怖さ。読んでいる自分にもイメージできるからこそ、の怖さです。少ない文章のなかで、過剰に説明することなく、でもその光景をありありとイメージさせる、著者の凄みを感じる一冊です。

著者は1974年に亡くなっていますので、あらたな作品が生まれることはありませんが、既に出ていて日本にまだ紹介されていないものがたくさんあるはずです。出版社や訳者の方の熱意で、また短編集を作って出してくれないかな、と期待しています。

東京創元社さんは「ミステリー・SF・ファンタジー・ホラーの専門出版」なのですね。わたし自身は、あまりSFやファンタジーやホラーにあまり興味が無いと思っていましたが、試しに調べてみたところ、このブログに読書記録を残しているぶんだけでも、ここ数年で10冊以上、東京創元社から出ている本を読んでいました。そういえば子どもの頃は星新一の短編集が大好きだったことを思い出し。

『ある晴れたXデイに カシュニッツ短編傑作選』(東京創元社)マリー・ルイーゼ・カシュニッツ著/酒寄進一 編訳

ロンドンSLADMORE GALLERYでのクリスマス・ショウ詳細がオープンになりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ロンドンSLADMORE GALLERYでのクリスマス・ショウ詳細がオープンになりました。

Unique sculpture by Edouard Martinet and Kensuke Fujiyoshi

12月のロンドンSLADMOREでのクリスマス・ショウ。今回はフランスのエドワード・マルチネ氏との二人展です。実は同じギャラリーに所属していても、お会いしたことのない作家さんがほとんど。もっと頻繁にロンドンに足を運べるようになれば、その機会も増やせるとは思うのですが、今のところはなかなか思うようには渡航できておりません。そんななかマルチネ氏は、藤吉のSLADMOREでの初めての個展のとき…なので7-8年前になりますが…に顔を合わせる機会がありました。わたしの顔が緊張していたのでしょう、「楽しんで!成功するから大丈夫!」と声をかけてくださったのを覚えています。

Unique sculpture by Edouard Martinet and Kensuke Fujiyoshi
エドワード・マルチネと藤吉憲典の、唯一無二の彫刻

会期:2024年12月4日(水)―12月20日(金)

会場:SLADMORE GALLERY 57 Jermyn Street, St James’s, London, SW1Y 6LX

オープン:月-木曜日=午前10-午後6時、金曜日=午前10-午後5時、土曜日=予約制


Unique sculpture by Edouard Martinet and Kensuke Fujiyoshi

4 December 2024 – 20 December 2024

Our Christmas season exhibition showcases Edouard Martinet’s new unique sculptures of insects, animals and birds, all remarkable and witty creations, and Japanese master ceramicist Kensuke Fujiyoshi with his new collection of exquisite porcelain animal boxes.

Catalogues will be available soon.

展覧会カタログは電子カタログで配布されます。展覧会に登場する作品の最新情報をいち早くゲットしたい方は、SLADMOREの公式サイトから、ニュースレター(メールマガジン)を申し込むことをお勧めいたします。トップページ下方に申込フォームがあります。

ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024を見に行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ART FAIR ASIA FUKUOKA 2024(アートフェアアジア福岡)を見に行って参りました。

今年で9回目を迎えたアートフェアアジア福岡(以下、AFAF)。個人的に今年はスケジュールが合わないかもしれないと思い、チケットを手配していなかったのですが、お友だちからVIPチケットのお誘いがあって、時間も最終日に作ることが出来ましたので、「これはやはり、見に行って来いという神さまのお計らいだ」と思い、行って参りました。

例年、一人で行くかダンナと一緒に行くか、という感じだったのですが、今回はお誘いくださったお友だちご夫妻とともに四人で会場へ。会場は大相撲九州場所が行われる国際会議場です。広いし、出展ギャラリー数もそれなりの数ありますので、集合時間を決めて、それぞれ自由に見ることに。

会場入ってすぐに、福田平八郎と思しき画が一点、目に飛び込んできました。「あれ?」と思いつつ、吸い込まれるようにそのブースへ。やはり福田平八郎です。今年上半期に開催された展覧会「没後50年 福田平八郎」に足を運び損ねたわたしとしては、たとえ一点でも、思いがけず見ることが出来てラッキー♪の心境です。「AFAF Masters」と名付けられたそのブースでは、そのほか黒田清輝、藤田嗣治、マティス、ピカソ、梅原龍三郎、藤島武二などを見ることが出来ました。まさにMasters。AFAFのサイトで紹介されている作品のうち、展示されていなかったものがありましたので、どうやら売約済があったということですね。素晴らしい。

AFAF Mastersを堪能した後は、各ギャラリーブースへ。気になるものがあったら足を止めて見る。場合によってはギャラリストさんに話を聞いてみる、ということをしながら、1階2階のブースを回ったら、あっという間に時間が経っていました。各ブースには、そのギャラリーのギャラリストさんや、アーティストさんがおられて、こちらが希望すれば直接いろいろと話を聞くことができるのも、アートフェアの楽しいところです。

ぐるりと回った印象として、昨年よりも出展ギャラリー数が減っているかな?と感じました。数を調べてみたところ、やはり少し減っていたようです。アートフェアの運営側が出展ギャラリーの審査を厳しくしている、という可能性もあるでしょうし、出展側としても思ったような成果・効果を見いだせなければ出展を見送るということもあるでしょうから、内情を知らない者としては、これは一概にどうだということは言えません。ただ、客観的に見ていて、これまでずっと出展ギャラリー数・会場ともに「拡大拡大」という感じで動いてきていたAFAFが、また少し違った方向性での成長を目指しているのかもしれないという感想を持ちました。

友人ご夫妻と合流して、帰りの道々が最高に楽しかったです。AFAFでのそれぞれの感想を聞き、日本のアート市場のこと、アーティストや作品のことを、あーでもないこーでもないと勝手におしゃべりする時間の、まあ面白いこと。アートフェアにはこういう楽しみ方があるのだということを、AFAF9年目にして知りました。これもひとえに、アートフェアを福岡に根付かせようと取り組んでおられる、福岡のアート市場関係者の皆さまのおかげですね。ありがとうございます!

九州ECつながり「大川家具ドットコム設立10周年パーティー」におじゃまいたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九州ECつながり「大川家具ドットコム設立10周年パーティー」におじゃまいたしました。

経営者・EC事業者の有志の方々が幹事となり、事業運営に役立つ情報交換・提供を行う勉強会・九州EC(九州ECミーティング)でお世話になっている大川家具ドットコムさんの、法人化10周年パーティーがあるということで、おじゃまして参りました。

実は九州ECだけでお世話になっているのではなく、花祭窯のメインビジュアルともいえる「蕎麦猪口棚」をフルオーダーで作ってくださったのも、大川家具ドットコムさんです。上の写真は、蕎麦猪口棚を花祭窯に設置に来てくださったときの写真。

かねてより、大川家具ドットコムさんのショールームを一度拝見したいと思いながら、延び延びになっていたところでもあり、今回の10周年パーティーを本社ショールームで開催なさるということで、喜び勇んで出かけて参りました。

社長の堤さんのお人柄、スタッフの皆さんのお人柄が伝わってくるパーティーで、とても温かく、ワイワイと楽しい時間でした。なかでも特に印象的だったのが、大川家具ドットコムさんのパートナーでありお取引先である家具メーカーさん、作り手さん、地元の家具業界の方々が、ニコニコと楽しそうにご参加なさっていたこと。こういう関係性を築いていらっしゃったからこそ、のお仕事ぶりが伝わってきて、すごいなぁと思いました。

集まってきておられた皆さんの「愛」が強く感じられるパーティーでした。わたし自身は「初めまして」の方も多かったのですが、そのなかでも寛いでたくさんおしゃべりし、たくさん笑い、たくさん食べ、帰るときにはとっても嬉しい気持ちでいっぱいでした。

事業をしている人にとって「○周年」は、「まずはここまで来れた」という道のりを振り返るとともにこれからの進み方を考える、感慨深くも気持ちの引き締まるタイミングです。そのような貴重な機会に同席させていただいたことが、とても嬉しくありがたかったです。会場でお会いしたすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。

ぷらす、大川家具ドットコムさんの素敵なショールームでは、ずっと欲しいと思っていた「和室にも似合う背の低い椅子」のイメージぴったりの椅子を発見。花祭窯のギャラリースペース用にその場で購入予約が出来たのも、大きな収穫でした^^

九州産業大学の公開講座―実証実験「『博物館浴』でリラックスしませんか」に参加して参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

九州産業大学の公開講座―実証実験「『博物館浴』でリラックスしませんか」に参加して参りました。

博物館学芸員の技術研修で毎年お世話になっている、九州産業大学特任教授・緒方泉先生からのご案内をいただき、「博物館浴」の実証実験に参加して参りました。美術館博物館がウェルビーイングに果たせる役割として、2020年から全国各地で実証実験を重ねてきておられる緒方先生。わたしもこれまでにも参加したことがありましたが、今回、久しぶりに福岡近隣で一般参加できる実証実験の機会とあって、足を運んで参りました。

アートエデュケーターふじゆりのブログ「博物館浴」に関する記事

実証に使用するデータは「血圧(最高血圧・最低血圧)、心拍数、心理測定(POMS)」です。「測定→美術鑑賞→再測定」によって、その変化を記録し、集まったデータから傾向や特徴を読みとります。二回目の測定が終わった後に、参加者に向けてのレクチャーがあります。

以下、備忘。


  • 「黙々鑑賞」と「おしゃべり鑑賞」
  • 「社会とのつながり」は、健康を考えるときに、食事や運動と並んで重要な要素の一つ。
  • 美術館博物館は日本全国に5700館以上あるのに、日本人の訪問回数平均は1.2回。
  • 博物館の社会的役割。
  • ロンドン大学研究グループによる2019年の論文で「文化芸術を鑑賞する習慣のある人は、そうでない人よりも、死亡率が有意に低い」。
  • 博物館美術館の新たな価値=知的・創造的役割+Well Beingへの寄与。
  • 10分の美術鑑賞でも、リラックス効果が認められる。
  • →「年間パスポート」サービス拡充・有効活用の必要性。
  • 「血圧・心拍数。心理測定」による実証実験は、「森林浴」において30年以上のエビデンスがある。
  • リラックス効果=血圧も心拍数も、正常値に戻ろうとする(高い人は下がり、低い人は上がる)。
  • 体調・状態により作品を選ぶ必要もあり。
  • 今後の動きとして「処方箋に『博物館』と書く」を目指したアプリ開発:このような体調のときは、このような作品を見ることがおススメ、を提案できるアプリ。

ちなみにわたし自身のデータとしては、「血圧」は美術鑑賞前後でほとんど変わりませんでした。これは、そもそも自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスが安定している状態であったことを示しているようです。それに対して「心拍数」は鑑賞後で下がっており、リラックスして呼吸が深くなった状態に変化したらしいことがわかりました。

被験者としての体験もまた、今後提供していくアートエデュケーションに大きく役立ちそうです。機会をくださいました緒方先生に心より感謝いたします。

読書『世界の図書館を巡る 進化する英知の神殿』(マール社)ゲシュタルテン社編/ヤナガワ智予訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『世界の図書館を巡る 進化する英知の神殿』(マール社)ゲシュタルテン社編/ヤナガワ智予訳

いつものカメリアステージ図書館で見つけた、図書館本。美しい図書館を紹介する大型本は何冊も出ていて、なかでも本書は美術関連書籍に強いマール社から出ています。「進化する叡智の神殿」とついている通り、建築物としての美しさだけでなく、蔵書内容や取り組みの特徴などに注目した編集になっているあたりが、素晴らしい一冊です。

マール社のサイトには「世界の53の図書館を写真とともに紹介。見た目の美しさだけにとどまらない、それぞれの図書館の唯一無二の魅力を伝えます。」「図書館の歴史や建築様式に触れながら、図書館の使命や役割、これからの図書館のあり方についてあらためて考えさせられる1冊。」と紹介されていて、まさにその通りの感想を抱きました。

一番上の写真は、「ランガナターンの5法則」。「図書館学の父」と言われるインド出身の図書館学者ランガナータン博士が1931年に発表・提唱し、「図書館学の五法則」とも言われます。その五つめ「図書館は成長する有機体である」が、本書に登場する数々の図書館から伝わってきます。見て楽しく、読んで考えさせられる魅力的な一冊。

『世界の図書館を巡る 進化する英知の神殿』(マール社)ゲシュタルテン社編/ヤナガワ智予訳

ご質問をいただいたので、あらためて龍の文様(特に爪の数)について調べてみました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ご質問をいただいたので、あらためて龍の文様(特に爪の数)について調べてみました。

やきものに描かれる龍の絵(文様)には、三本爪、四本爪、五本爪と、爪の数の描かれ方がさまざまです。「五本爪は中国皇帝への献上品だった」(けれど、現代では中国でも日本でもあまり関係なく描かれている)というのは、この業界ではあたりまえに言われていることでしたので、その認識でずっと仕事をしてまいりました。作品に描かれた龍の爪について説明をするときも、そのように申し上げておりました。

今回、龍の掛け軸をお届けしたお客さまから「龍の爪は五本爪が本物なのでは無いでしょうか」というお問い合わせがありました。どうやら少し知識のある方が、そのような話をしたようです。その掛軸に描いていたのは四本爪の龍でしたので、お客さまのご心配を取り除くためにも、この機会にあらためて文献に当たったうえで、ご説明することに。

龍の掛け軸 藤吉憲典

中国の古いやきものの資料も、花祭窯にはたくさんありますが、ちょうどタイミングよく、つい先日中国上海から帰国した友人から『中国文様全集』の贈り物をいただいたところでした。年代別に描かれた中国の文様事典です。やきものに限らず、さまざまな場面で描かれてきた文様、造形されてきたデザインが、膨大な資料として編纂されていて、日本ではなかなか手に入らないであろう貴重な資料です。

『中国文様全集』

この全集の背表紙に描かれているのも龍で、こちらの爪は四本。資料を開くより先に「五本爪ではないからと言って、ほんものではないという言い方はできない」ことが真っ先に証明されました。本資料と、その他の資料をあたって、お客さまにご説明差し上げた「龍の爪問題」への回答は次の通りです。


  • 龍の爪の本数については、中国では、歴史的に皇帝への献上品(すなわち皇帝に認められた官窯で作られるもの)だけに許されるものとして、5本爪が描かれてきました。
  • 龍は霊獣のひとつ、そもそも想像上の存在なので、何が正しいというものはありません。猛禽類の足の鉤爪を模して龍の爪であるとする解釈があります。猛禽類の爪(足)は、前に 3 本、 後ろに 1 本の合計4本です。
  • 日本では、水墨画などにおいても、歴史的に見ても3本爪か4本爪で描かれているのが一般的です。
  • 5本爪だけが「本物」とする説は、中国の骨董品を見極めるときに、それがきちんと官窯(皇帝のお抱え窯)で作られたものかどうか、という点で語られる視点としては、ありえます。 が、これも当時からたくさんの模造品が作られていますし、現代では誰でも自由に描いています。
  • 5本爪で皇帝の権威を示すようになったのは、明時代からのようです。それ以前の時代は、3本爪か4本爪で描かれているのが一般的です。

このような回答となりました。お客さまからのおたずねで、あらためて調べ直す機会を得たおかげで、今後同様のご質問をいただいた場合にも、またきちんとご説明できそうです。