海外美術館の教育普及ツール、その5。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その5。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第5弾。

昨日に引き続き、ロンドンのコートールド・ギャラリー(The Courtauld Institute of Art)のサイトからご紹介します。写真は、コートールド・ギャラリーのある建物サマセットハウス。ここから建物をぐるりと回った反対側に、ギャラリーへの入り口があります。

The Courtauld Collection

↑コートールド・ギャラリーの所蔵品を見ることができる「コレクション」へのアクセスページです。

「Highlights of The Collection」では、館がおススメする21作品が取り上げられています。何から見ようか迷ったときは、ここから順番に参りましょう。モネ、ゴッホ、ゴーギャン…とお馴染みの名前が並ぶのも、とっつきやすくて嬉しいですね。

「Paintings」「Prints and Drawings」「Sculptures and Decorative Arts」と、分野別のページもあるので、見たいものがはっきりしている人は、こちらから入っていっても好いと思います。紹介されている所蔵品すべてを見ようとすれば膨大な時間がかかりますから、「どこから入って何を見るか」は、サイト上でも悩ましいところです。

コレクションページでは、その作品写真だけでなく、その作品や作者にまつわる文字情報も一緒に載っています。が、文字情報(知識)に頼らず、自分の感性で作品そのものをじっくり眺めるのも、わたし個人的にはおススメです。

海外美術館の教育普及ツール、その4。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その4。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第4弾。

本日取り上げるのは、ロンドンのコートールド・ギャラリー(The Courtauld Institute of Art)のサイト。「コートールド美術館展」は、2019年秋から今年2020年にかけて、東京・愛知・神戸と巡回しているところでしたが、神戸がまだ開幕未定の状態です。

コートールド研究所は、芸術と建築の歴史・保存を研究する専修大学で、ロンドン大学の付属研究機関とされています。その研究所に付属した美術館は、それほど広くはありませんが、特に印象派の作品をじっくり見ることができるとあって人気です。建物もとっても素敵です。

コートールドギャラリー

そもそもコート―ルド研究所が学術機関であり教育機関ですので、ウェブサイトで紹介されているラーニングツールも非常に充実しています。豊富で充実したコンテンツのなかから、より簡単に楽しめそうなものをご紹介。

Explore The Courtauld

↑直訳すると「コート―ルド探検」。鑑賞教育の第一歩は「美術館探検」から始まります。そのままのタイトルで、思わず嬉しくなりました。

このなかでも、バーチャルなビジュアルツアーを体験できる「Explore the Gallery」コーナー、コートールドギャラリー館内の説明や所蔵絵画についての解説など豊富な動画が揃った「Watch our films」(YouTubeチャンネル)が、特におすすめです。Watch our filmsにアップされている動画は、すべて英語解説ではありますが、ほとんどに英語字幕がついていますので、比較的意味を拾いやすいです。

神戸での展覧会の開幕を楽しみにしつつ、ご覧になってはいかがでしょうか。

海外美術館の教育普及ツール、その3。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その3。

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介して参ります。その第3弾。

海外美術館の教育普及ツールその1その2と、USワシントンのナショナルミュージアムが続いたので、今回はUK、ロンドンのナショナルギャラリーのサイトから収蔵作品のページをご紹介したいと思います。特に「教育普及ツール」と位置付けられているページではありませんが、鑑賞教育に使えるコンテンツです。

2020年度予定の日本国内の特別展でも一番注目を集めていたであろう、ロンドン・ナショナル・ギャラリー展。現在、国立西洋美術館での展覧会は開幕延期中で、その後予定されている大阪への巡回も含め、詳細不確定な状況です。こんなときは、本物を目の前で見ることを楽しみにしつつ、作品の予習をするというのはいかがでしょうか。

Highlights from the collection

↑ロンドン・ナショナル・ギャラリーの所蔵品の中から「must – see paintings」30点が紹介されています。「must – see」=「絶対見なきゃ!」といったところでしょうか。実際に美術館を訪問する時もそうですが、「どこから見たらいいかしら」と迷うときは、まずはその館のお薦めからスタートするのが一番。

画面で見たい絵をクリックすると、ひとつひとつをじっくり見ることができます。絵に近づいたり離れたりできるので、全体を見たり細かいところを見たり。同じ作者の別の作品も所蔵している場合、その絵が一緒に紹介してあります。また作者紹介のページへのリンクも貼ってあります。

画面上部にはその絵画のタイトルや作者名、サイズや技法、描かれた時代などの要素がわかる「Key facts」、絵画の内容理解を促す解説文の「Description」といったメニューがあり、「知りたい!」と思ったときに便利です。全文英語ではありますが、レッツチャレンジ。

Search the hole collection

↑具体的に、タイトルがわかっていたり、作者名がわかっていたりと、目的の絵がある場合には、こちらから探すことができます。2600点以上の絵画がこのように探せるようになっているのが、嬉しいですね。

今、日本に来ているロンドン・ナショナル・ギャラリー展の出品リスト↓と照らし合わせて、事前チェックしてみるのも面白いと思います。

ロンドン・ナショナル・ギャラリー展出品リストPDF(国立西洋美術館サイトより)

海外美術館の教育普及ツール、その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その2。

写真は、今が満開のご近所の桜。今日のブログの内容とは関係ありません^^

内容が充実しているといわれる、海外美術館サイトのエデュケーションツール。そのなかから、実際に自分で試してみたものを、その都度ご紹介していきたいと思います。その第2弾。

今回試してみたのは、引き続きNational Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムから、Exhibitionコーナーのビデオ前回ご紹介したKid’sプログラムでウォーミングアップしたあとは、少し長めの美術鑑賞にチャレンジです。

このコーナーにも約50のビデオが紹介されています。わたしもまだ全部に目を通したわけではありませんが、「見るだけでも楽しい」という意味では、National Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムのなかでは、Kid’sプログラムに次ぐとっつきやすさだと思います。

こちらは一般向けのプログラムになりますので、話される英語のスピードも内容も、一般向けのレベルになってきます。それでも、映像に合わせて比較的短いセンテンスが多いのに加え、すべてに英語字幕が入っているので、助かります。わたしは音声と文字とで意味を拾っていくことで、なんとなく理解できるかなぁ、という感じ。ただ「英語」に引っ張られてしまうと「鑑賞」への集中は削がれてしまいますね(笑)。逆に、美術鑑賞を利用して英語を学ぶ、というスタンスの方には最適だと思います。

Exhibitionコーナーというだけあって、展覧会での鑑賞をサポートするような映像のつくり方だと感じました。わたし個人的には、英語の意味を考えず映像だけで楽しめるものも少なくありませんでした。また、内容は展覧会のテーマによるので、絵画や彫刻といった美術作品だけではなく、取り上げられているテーマが様々なのも興味深く。なかにはアポロ11号のミッションをテーマとしたものなどもあります。

National Gallery of Art, Washingtonのビデオプログラムから、Exhibitionコーナーのビデオ

興味が湧いたら、のぞいてみてくださいね!

海外美術館の教育普及ツール、その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

海外美術館の教育普及ツール、その1。

前々からチェックしたいと思っていた、海外美術館のエデュケーションツール。これまでにもこのブログで何回かご紹介している『英語でアート』の宮本由紀先生が、その著書内でエデュケーションにお薦めの美術館サイトをご紹介くださっています。

そのなかから、実際に自分で試してみたものを、少しづつご紹介していきたいと思います。その一発目。

その1:National Gallery of Art, Washingtonの、Kid’s用ビデオ

所蔵品のなかから、50点の絵画がピックアップされていて、子ども向けに音声解説がついています。解説はすべて英語なのですが、わたしが最初に子ども向けを選んだ理由は、自分自身の英語レベルでも比較的聞き取りやすいから。

絵画なのでもちろん絵自体は動きません(部分的にCGで動かしているものもありましたが)。でも、カメラ=視線・視点を動かしながら解説することで、絵画鑑賞の要である「絵をよく見る」への集中が促されます。1本=1作のビデオの時間は、ほぼ3分以内。長いものでも3分半ぐらいですので、集中力を持続できます。

作者名を見れば、ドガ、ラファエロ、マネ、モネ、レオナルドダヴィンチ、ゴッホ、ルーベンス、セザンヌなどなど、よく聞く名前も多く並んでいます。なんか聞いたことある名前だな、という絵から見てみてもいいし、メニューの絵を観て惹かれるものから見てみてもいいし。

興味が湧いたら、ぜひ試してみてくださいね♪

National Gallery of Art, Washingtonの、Kid’s用ビデオ

大学の美術館。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

大学の美術館。

1月にこのブログで、今年観に行きたい美術展の情報を上げておりましたが、そこに追加したい情報です。

今日から新年度ですね。上の写真は、福岡市にある九州産業大学美術館2020年度展覧会予定。今年度最初の展覧会「家具をつくる」は、スタート日が変更になっていますので、お出かけの前にご確認くださいね。

大学美術館の良いところは、その大学や、学校のある地域に縁のある作家や作品が集められていることと、展示に大学での研究成果を反映させることができるところにあるのではないでしょうか。それを大学関係者だけのものとせず、一般の人々にオープンになっているところが少なくありません。

ここ数年、学芸員技術研修などでお世話になっている九州産業大学の美術館は「コレクションを本学の芸術教育研究に役立てるとともに、学外にも公開して地域の方々の楽しみと学習に資するため、2002年4月に開館しました」(九州産業大学美術館ウェブサイトより)というもので、積極的に地域からの観覧受け入れをしています。

今年大学創立60周年ということで、今年の企画展には特に力が入っているようです。なかでも個人的に「行くぞ!」と思っている展覧会を二つご紹介。

〇第29回九州産業大学美術館所蔵品展「絵画と語らう―風景・動物・人をめぐる旅―(2020年9月11日-10月11日)

鑑賞教育にぴったり合いそうな展覧会タイトル!と思ったら、既に地域の小学校からの訪問予定が何件も入っているということでした。初めての絵画鑑賞にも向いていそうです。

〇九州産業大学創立60周年記念特別展「酒井田柿右衛門×九州産業大学=MIRAI」(2020年10月17日-11月15日)

学内にある伝統みらいセンター所蔵の古陶磁も観覧できるということで、楽しみな展覧会です。

九州産業大学美術館の2020年度すべての展覧会予定(PDF)

↑こちらで予定表をご覧になることができます^^

木の椅子を見てきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

木の椅子を見てきました。

お日さまが気持ちのよい休日、宗像の別格本山鎮国寺で開催中の「木と出会う」展を見てまいりました。仏像彫刻と、木の椅子のお二人での展示でした。今回のわたしたちの目的は、FDY家具デザイン研究所・山永耕平氏の、ウィンザーチェア

とても美しかったです。ウィンザーチェアはもちろんのこと、花祭窯はほぼ畳の和室なので、畳の部屋での和の椅子の展示にイメージが触発されまくり、思わず持って帰りたくなるものが多々。

FDY家具デザイン研究所・山永耕平氏の椅子

ゾウに見える美しいスツール。座面も脚も、線と面のなだらかな曲線がたまりません。座ると包み込まれるような納まりの良さを感じます。

FDY家具デザイン研究所・山永耕平氏の椅子

和の空間を意識して、デザインを研究したという座椅子。あちらこちらにさりげなく施された傾斜、丸み、凹凸がすべて意味を持っていました。これぞ機能美。

FDY家具デザイン研究所・山永耕平氏の椅子

写真はほんの一部です。このほかにも、ウィンザーチェアのミニチュアや、簡単に動かすことのできる大きなベンチ、消防の出初式から着想を得たという梯子椅子など、いろいろ。

美しくて座り心地の素晴らしい椅子の数々に実際に座って、触って。制作者の山永さんから直々にたくさんお話を伺うこともできました。贅沢な時間でした。現在は、工房で娘婿さんが技術を引き継いでおり、注文に応じて制作してくださるそうです。工房にもおじゃましたいところ。

「木と出会う」展は、宗像の別格本山鎮国寺にて、2020年2月22日(日)まで。10-17時オープン、入場無料です。

日本で、藤吉憲典のアートを。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

日本で、藤吉憲典のアートを。

ご覧いただき、お買い上げいただける場所ができました!

これまで海外個展用か、特定のお客さま用に作ることがほとんどでしたので、津屋崎の花祭窯にお越しくださっても作品をご覧いただけないこともありました。「国内ではどこに行けば見れるの?」とのお問い合わせに、ようやくお返事できることを嬉しく思います。

「インテリアアート」を提唱する、インポートインテリア・DONO(ドーノ)さん。東京・青山エリアにあるDONOさんのショールームで、ご覧いただくことができます。 数は多くはありませんが、藤吉憲典の作品世界と、アートを自分の生活空間に採り入れたときの豊かなイメージを感じていただける場所です。

オーナーの上田桐子さんのアートに対する考え方は、これまでのわたしたちのスタンスと共通点がとても多く、ぜひ作品をお任せしたいと思いました。藤吉憲典のアート作品は、特別な展示スペースを必要とするアートではなく、ふだんの生活空間・仕事空間を彩るアートが多いです。桐子さんから「インテリアアート」という言葉を聞いたとき、そのコンセプトがぴったりと理解できました。

日本でのアート作品紹介はここがスタート。これからの展開がとっても楽しみです。

アートイベント「買える、若冲」に行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

アートイベント「買える、若冲」に行って参りました。

東京青山のB&B Italia Tokyoで開催された、伊藤若冲の水墨画掛け軸特別販売会に足を運んでまいりました。このイベントで販売を担当なさったインポートインテリアDONO(ドーノ)オーナー上田桐子さんからお話を聞き、ぜひ自分の目で見たい!と思っての訪問でした。

アートイベント「買える、若冲」

今回のイベントは、creative design officeの鬼澤孝史さん、DONOの上田桐子さん、場所提供のB&B Italia Tokyoさん、古美術商さんなどの協力により実現したそうです。

「イタリア家具ショールーム」という場所での展示は、「現代の生活空間にアートがどうフィットするか」のイメージを膨らませるのに、とても良かったです。ソファに腰かけ、ふと目線を挙げたときに視界に入る水墨画の高さがちょうどよく、思わずニヤリ。隣の部屋に進む角の踊り場的小スペースに、縦長の掛け軸の存在感を感じ、ニヤリ。

「掛け軸=床の間」の固定観念は、日本人特有のものかもしれません。掛け軸もまたひとつの絵画だと思いだせば、あらゆる壁面が装飾のステージになり得ます。そんな、シンプルで本質的なことを、視覚的・体感的に理解させてくれるアートイベントでした。

桐子さんが提唱する「インテリア・アート」の考え方は、花祭窯創業以来わたしがずっとモヤモヤと思っていたことに重なります。すなわち「必需品ではないけれど、それが側にあることで嬉しくなる(豊かな気持ちになる)もの」の意味。生活のなかにあってこそのアートの意味・価値を楽しむ方々が、どんどん増えたらいいな、と思っています。

今回のイベントを皮切りに「日本文化を日々の暮らしに採り入れる」提案をますます展開して行かれるようです。どんなイベントが飛び出すか、これからもとっても楽しみです。

絵描きになりたい!の夢。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

絵描きになりたい!の夢。

昨日のブログでお伝えした、上海での「日本現代陶芸の逸品鑑賞体験会」の続き。現地スタッフさんが、藤吉憲典在廊当日の様子を伝えてくださいました。

作家来場ということで、急遽開催されたアーティストトークや描画のデモンストレーション。事前告知をしていなかったにも関わらず、たくさんのお客さまが集まってくださいました。

アーティストトークでの作品解説。景徳鎮の勉強をしているという学生さんから、熱心な質問があり、大いに盛り上がったとか。

会場の大パネルの前で、記念撮影タイム。「この歳にしてモテ期が来た!」と大笑いしていたそうです。

そして、この写真を見たとき「作家が行った甲斐があったなぁ!」とつくづく思いました。聞けばこの男の子は将来画家になりたいそうで、毎日絵ばかり描いているとか。描画のデモンストレーションのあいだ、ずっと隣に張り付いて見ていたそうです。スタッフの方が「触らないようにね」「もう少し離れてね」と何度言っても、かぶりつき。

現在は陶芸術家の藤吉憲典、幼少期のころから「自分は絵描きになる」と決めていたそうです。そして今、やきものの上に絵を描いているわけですから、そういう大人の姿をこの男の子に見せることができたのは、とても良かったなぁ、と。機会をくださった銀座黒田陶苑さんに感謝です!