藤吉憲典の陶箱。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

藤吉憲典の陶箱。

初日まであと2週間となった西麻布桃居さんでの「藤吉憲典陶展」は、今年初めて「箱、蓋もの」をテーマにご覧いただく個展になります。

思い返せば陶箱は、藤吉憲典が作家として独立した当初から、ぽつりぽつりと作ってはいたのでした。箱のてっぺんに小鳥がのったり、恐竜がのったり。我が家でも梅干し入れになったり、キャンディポットになったり、ずっと使っています。

洋の東西を問わず、美しい箱は昔から人気があります。特にヨーロッパでは、用途はとりあえず、箱自体が愛でられるようになっていると感じます。「その箱になにをいれるの?」という問いは、箱を手に入れた自分自身に向けられる、最高に贅沢な問いかけのよう。

これまで藤吉憲典は、日本国内のギャラリーさん向けに和食器を中心とした用途あるもの、海外のギャラリーさん向けに磁器彫刻家としてアート的なものを発表してまいりました。2019年桃居さんの個展では、その二つの流れのひとつの融合点を示すことができそうです。

国内のお客さまには、陶箱をまとまった数ご覧いただくことのできる、初めての機会となります。楽しい展示になるだろうと、今からワクワクしています。お時間が許しましたら、ぜひ足をお運びくださいませ。

藤吉憲典陶展 at 桃居

藤吉憲典陶展
2019年5月31日(金)→6月4日(火)
AM11:00→PM7:00(最終日PM5:00)
会期中無休
桃居
港区西麻布2-25-13
TEL03-3797-4494
藤吉憲典陶展 at 桃居

西洋名画コレクション展@みぞえ画廊

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/アートエデュケーターふじゆりです。

西洋名画コレクション展@みぞえ画廊

みぞえ画廊さん、現在本社は東京にある田園調布ギャラリーになっていますが、もともとは福岡でスタートなさっているアートギャラリーさんです。

物故巨匠から現代の作家まで扱っておられます。福岡市内にもアートギャラリーはいくつもありますが、なかでもみぞえさんは「美しいもの」を大切に扱おうという意思が強いギャラリーさんだと、勝手にわたしは感じています。延長された会期終了間際に伺うことができてラッキーでした。

よかったです!

ギャラリー空間で絵画を拝見する嬉しさは、なんといっても作品との距離の近さ。離れて見たり、最接近して見たり、角度を変えて見たり。特に気に入った絵の前で、時間の許す限りじっくり見てまいりました。

出品作家名には、ピカソ、アンリ・マティス、ジャコメッティ、シャガール、モネ、ユトリロ、カンディンスキーとそうそうたる名が並んでいましたが、個人的には、シャガールの作品四つが特に良かったです。

美術館の展覧会では無い空間で良い絵画に向き合う機会を、ここ福岡ではなかなか見つけられずにいたので、とてもありがたい時間でした。

ギャラリートーク「アート×スタートアップ」聴いてきました。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)/Meet Me at Artふじゆりです。

アートフェアアジア福岡2019プレイベント連続ギャラリートーク「アート×スタートアップ」(第一夜)聴いてきました。

場所は福岡市赤坂にあるギャラリーモリタさん。

寺田倉庫(TERRADA ART ASSIST)さんの話が聞けるとあって、興味津々、参加してまいりました。写真は当日いただいたTERRADA ART ASSIST さんのパンフレット。

文化芸術分野での活動を評価されて第27回モンブラン国際文化賞を受賞なさったということで、少し前にテレビでも大きく取り上げられていたそうです。実はわたしはそういうことはまったく知らなかったのですが、アートの物流において革新的なお仕事をしているというイメージを持っていて、お話を聞いてみたいな、と思っていたのでした。

TERRADA ART ASSIST代表取締役の是川泰之氏と、ギャラリーモリタ代表でアートフェアアジア福岡2019実行委員長の森田俊一郎さんによる対談形式のギャラリートーク。

是川氏の淡々としたトークが素晴らしかったです。約1時間と短い時間でしたが、アートを取り巻く仕事へのプロフェッショナルなスタンスがビシビシと伝わってきました。芸術を特別なものと位置付けるニュアンスを無意識に期待する参加者に対して、あくまでもビジネスライクな視点の結果としてのTERRADA ART ASSIST さんの在り方が、清々しく感じました。だからこそ、お客さまの要望にこたえ、さらにその期待を先取りするサービスを提供することができるのですね。

トーク終了後の交流タイムでは、是川さんと直接お話もできました。海外へのアート作品発送において、どのような問題がよく相談されているか、どのように解決しているか。わたし自身の持っている課題に対しても、解決を期待できるお話を伺うことができました。

今年は年末にかけて海外発送の事案が待ち構えているので、いざというときにご相談できる場ができて、心強い限りです。企画してくださったアートフェアアジア福岡2019実行委員の皆さま、ありがとうございました!

読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)その2

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 著 その2

以下、備忘。書き留めておきたい内容のボリュームがあったので、その1(はじめに・1章~3章)と、その2(4章~)に分けてレポート。 その後半分。


  • 「一瞬でも本物の経験をするとそれまで学んだ知識が全部つながって大きく飛躍する」
  • 「対話による意味生成的な美術鑑賞」(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 美術はそういう「かけがえのない自分」が成立する時間
  • 美術作品は「私」を映す鏡
  • そのとき、豊かな鑑賞経験があると、ただそこにきれいな絵がかかっているだけでは終わらない。 (帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 「新しい私」が生まれるためには、鑑賞の方法を知ることも必要 (帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 絵の中に入って、五感で鑑賞する(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 風景を選び取る力、技術や物を組み合わせる力、計画する力などが統合されて一つの絵になっていく。(中略)名品はそれが高度なレベルで統合されている上に、文脈みたいなものまで背負っている
  • 「来館者を来館したときと同じ状態で帰しては意味が無い」(テート美術館の学芸員)
  • 美術館に行って、「私」の見方や考え方、「私」を取り巻く世界への理解、さらには「私」自身の在り方などに何らかの変化を及ぼすとしたら、美術鑑賞は今以上にぜいたくな時間になる
  • 美術館の最終目的は教育
  • 見る人が意味や価値をつくりだす
  • ものを思索的に見るということが大事で、それを美術鑑賞で育むことができる(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • 思索的にものを見るということは、思索的に世界を見ること(帝京科学大学こども学部教授 上野行一氏)
  • そんな風に美術鑑賞をすることで、厚みのある多様な考え方や見方が身に付けられる。しっかりと思索して自分で考えられる有能な自分になれる。
  • 美術は文化として生み出された数多い社会的な実践の一つ

『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 より


読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)その1

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

読書『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 著 その1

銀座に行くと、時間をみつけてはGINZA SIX内にある銀座蔦屋書店に足を運んでいます。このところ出版が増えているアート×ビジネス系の書籍をチェックするのに最適な場所です。関連書籍が増えると嬉しい一方で、自分の方向性と異なるものが増えてくるのも世の常。中身をちゃんと確認して、本書をゲットできました。

以下、備忘。書き留めておきたい内容のボリュームがあったので、その1(はじめに・1章~3章)と、その2(4章~)に分けてレポート。


  • まなざし:単にありのままを「見る」のではなく、何らかの予見や考え方などを含んで見る姿勢
  • 「問題を発見し、それを解決する力を身に付けるためには芸術は欠かせません。(後略)」(日立製作所フェロー小泉英明博士の話より)
  • 見えるというより、脳が受け取った情報から神経活動が始まるということです。(臨床心理学者 前田基成氏)
  • 美術というのは、大切なものは何かとかを見つける視点を持たせてくれるのではないでしょうか。 (臨床心理学者 前田基成氏)
  • 人間って、そもそも論理では解決できない能力を持っていて、それを直感や感性、創造性というんでしょうけど。実はそこをうまく鍛えられると現状打破する力が発現する。
  • 直観は論理
  • 生き残る可能性を高めるために創造性が必要
  • 大人も子供も、鑑賞は視覚だけの作業ではなく、全身の感覚を働かせる運動なのです。
  • 自分の経験から見る―鑑賞は経験の再構築
  • 美術鑑賞では目の前の作品に間違った要素はありません。
  • そのすべて正しい条件の中から自分の根拠になる条件を選び取り、それらを論理的に組み立てます。
  • 美術鑑賞では一人ひとりの「私の解」が求められます。

『エグゼクティブは美術館に集う』(光村図書)奥村高明 より



アート・エデュケーターのお勉強@銀座。

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

アート・エデュケーターのお勉強@銀座。

大型連休のど真ん中、東京出張に行って参りました。資生堂ギャラリーに行ったり、三菱一号館美術館に行ったり、黒田陶苑さんにご挨拶に寄ったりしていましたが、今出張のメインイベントは、こちらでした。

アート・アライアンスの宮本由紀さんが主催するアートのオシゴト座談会】アート・エデュケーター編 。学芸員資格を取得して以来、あちらこちらで学芸員技術研修を受けてきたなかで、今わたしが「最も深めていきたい」分野です。

宮本由紀さんの著書『英語でアート』をきっかけに、機会を見つけてはご指導を仰いでいます。今回3回目だったというアートのオシゴト座談会は、食事をしながら楽しく学べる場で、テーマが「アート・エデュケーター」とあって、これは行かねばと申し込んだのでした。

エデュケーターとは、日本の美術館等では「教育普及担当学芸員」といったところになります。アート・エデュケーターが活躍する最先進地域のひとつである北米で実際に仕事をしてこられた宮本由紀さんのお話は、ひとつひとつが腑に落ちるものであり、講座中ずっとうなずいておりました。

エデュケーターとして大切にすべきこと・存在理由を考えるところから、実際にエデュケーションの場面で活用できる具体的な方法論、今後エデュケーターとしてさらにスキルアップするために有用な情報源まで、包括的に学ぶことができました。

わたしは福岡からでしたが、関西方面・中部地方からも参加者があり、皆さんの意欲の高さが心地よい時間でした。質疑応答なども含めて、当初2時間の予定が、気がつけば3時間半。あっという間でした。

お会いするたびに、ご自身の持っているものを惜しげなく伝授してくださる宮本由紀さん。心から感謝申し上げます。ありがとうございました!

ラファエル前派の軌跡 展@三菱一号館美術館

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

ラファエル前派の軌跡 展@三菱一号館美術館

大型連休のど真ん中、東京出張に行って参りました。帰る日に少し時間がとれたので、三菱一号館美術館初訪問。開催中の展覧会タイトル「ラファエル前派の軌跡」には、正直なところピンと来ていなかったのですが、なんとなく足が向きました。

行ってみて、大正解!前日の資生堂ギャラリーといい、今回の出張では「思いがけず、いい展示に会える」幸運が重なりました。

ラファエル前派とは、のちのアーツ・アンド・クラフツ運動につながる思想を持った芸術活動でした。ウィリアム・モリスより少し前に、「生活と芸術」がテーマとして現れた時代があったのですね。

ブリティッシュカウンシルの後援による展覧会。次回英国訪問の際に足を運びたい美術館・ギャラリーが、また増えました。

展示室入り口に出品目録とともに置いてあった、ジュニア版の「ラファエル前派の軌跡展 見どころガイド」がとても分かりやすくて、学芸員さんの「伝える力」を感じました。

資生堂ギャラリー@銀座

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

資生堂ギャラリー@銀座

大型連休のど真ん中、東京出張に行って参りました。

銀座で個展のたびに何度もその前を通るものの、なかに入る時間をとれずにいた資生堂ギャラリーに久しぶりに行って参りました。福原義春氏の著書『美 「見えないものをみる」ということ』(PHP新書)を読んで以来、わたしにとってなんとなく特別な場所になっています。

開催中だったのは、荒木悠展:LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲ。現代日本のアーティスト情報に疎いワタクシ、そのうえ「資生堂ギャラリーに行く」を目的に中に入ったのもので、作家さんについても作品についてもまったく前情報無しでした。

これまで現代アートのインスタレーション作品と呼ばれるものに心を動かされることは少なかったので、最初は「とりあえず」ぐらいの気持ちで拝見していたのですが…

ものすごく面白かったです!!

わたしが夢中になったのは、メインとなる映像作品ではありませんでした。戯曲ならぬ「戯訳シリーズ」と呼べばよいのでしょうか、映像作品の戯訳「聖なる都・京都」、戯訳「日光霊山」、戯訳「江戸」の三作品が、最高に面白かったです。そもそも「戯訳」って!と思わずニヤリ。椅子に腰かけ、三作品にガッツリ向き合って拝見しました。

社会批判的目線を持ちつつユーモアたっぷり。こういう現代アートは大好きです。2年前にロンドンのサーチギャラリーで見た作品を思い出しました。すなわち、 過剰な難解さ(=作家の自己満足)が一切無くて説明が要らず、観る人を楽しませようというサービス精神あふれる作品。それでいて、きちんと問題提起や社会批判も行っているもの。

ほんとうはこちらにも行きたかった資生堂パーラーは、その行列を見て今回は断念(笑) 荒木悠展:LE SOUVENIR DU JAPON ニッポンノミヤゲは、6月23日(日)まで資生堂ギャラリーにて開催中です。

藤吉憲典陶展 at 桃居

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

藤吉憲典陶展 at 桃居

西麻布の桃居さんから個展DMが届きました。今年は連休が長いので、と、ひと月以上前に完成してくださいました。今回もインパクトのある案内状が届き、これを見てまた作り手のモチベーションがあがるのです。いつもありがとうございます!

藤吉憲典陶展 at 桃居
藤吉憲典陶展
2019年5月31日(金)→6月4日(火)
AM11:00→PM7:00(最終日PM5:00)
会期中無休
桃居
港区西麻布2-25-13
TEL03-3797-4494

桃居さんで1年おきに開催していただいている「藤吉憲典陶展」も今回が8回目。今年は初めてテーマを「蓋もの・箱もの」と作り手自ら設けて、せっせと作っています。楽しくて仕方が無いようです。

個展案内状ご希望のお客さまへは、連休明けに発送予定です。どうぞお楽しみに!

Happy sculpting to Ken !

こんにちは。花祭窯・内儀(おかみ)ふじゆりです。

Happy sculpting to Ken !

今年12月に予定しているSladmore Contemporary(ロンドン)での個展に向けて、プロモーションの準備を少しづつはじめています。写真は前回2017年Sladmore Contemporaryでの初個展(solo exhibition)の時に撮った一枚。

「Happy sculpting to Ken!」は、ギャラリーオーナーGerryからのメールにあった1文。Gerryからのメールはいつも、アーティスト・藤吉憲典と、彼のつくる作品への愛情でいっぱいです。

ロンドンでは藤吉憲典は陶芸家という呼び方ではなく、Ceramic Sculptorすなわち造形作家(または彫刻家)とされています。Happy sculpting とはまさに、彼の仕事そのもの。

藤吉憲典のつくるものがロンドンのコレクターに喜んでいただけるのは、彼がとても楽しんでつくっているから、というのが大きな理由の一つだと思います。つくるのが嬉しくて仕方がないから、ひとつの作品への手間のかけよう、細部への神経の配りようがすごいのです。作品を手に取ってくださった方に、そういうものが伝わるのだろうな、と。

ダンナ・藤吉憲典に「GerryがHappy sculpting to Ken!って」と伝えたところ、「そう!それなんだよね!自分が楽しく作ってるから、手に入れてくれた人もハッピーな気分になってくれるんじゃないかな。そうだと嬉しいな、と思うんだよね」と。

いい仕事をさせてもらえているなとつくづく思います。