世界遺産 大シルクロード展@福岡アジア美術館を観て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

世界遺産 大シルクロード展@福岡アジア美術館を観て参りました。

福岡アジア美術館で正月1月2日から開催中の「日中平和友好条約45周年 世界遺産大シルクロード展」。ダンナが会期スタート早々に足を運んで大絶賛していましたので、博多に出たタイミングで観て参りました。

「世界遺産認定後、中国国外で初めて行われる大規模展」と銘打ってありましたが、まさに圧巻でした。石彫、壁画、絵画、手紙や写経(書)、唐三彩、彫金、青銅器…シルクロードが運んできた文化が、どれほど日本に大きな影響を与えてきたかを、痛烈に感じる展覧会でした。その、時間と空間にまたがるスケールの大きさを、展示物とともに写真資料・映像資料とで感じることができ、展示計画にも頭が下がりました。

数ある名品のなかから、わたしが特に見入ってしまったのは、次の三つ。

世界遺産 大シルクロード展@福岡アジア美術館

↑まずひとつめは、パッと見て兵馬俑を思い起こした、青銅器の馬隊。大きさは兵馬俑に比べたらずっとミニチュアですが、馬の表情が良くて迫力がありました。もっとたくさんあったのかもしれないな、どんなふうに並んでいたのかな、と想像すると楽しくて、思わずニヤニヤしながら眺めました。

↓ふたつめは、唐三彩のラクダ。やきものでこのような造形を作る難しさがわかっているだけに、感嘆のため息が出ました。

大シルクロード展@福岡アジア美術館

ラクダの姿の美しさはもちろん、鞍についた魔除けの顔がインパクト大でした。

↓みっつめは、ラクダのはく製。

大シルクロード展@福岡アジア美術館

数々の名品にお腹いっぱいになった出口付近で待ち構えていたラクダ2頭。こんなに大きいのですね。大迫力のサイズと毛並みの豊かさに、思わずじっと立ち止まりました。本展覧会は写真撮影OK(フラッシュ禁止・動画撮影禁止)でしたので、このコーナーで写真を撮っている人多数。

会期は3月24日(日)まで。お近くの方はぜひ足を運んでみてください。

福岡市美術館は、常設のコレクション展がすごいのです。

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福岡市美術館は、常設のコレクション展がすごいのです。

福岡市美術館の常設展示がいい!の話は、これまでにも何度かしてきました。

先日「永遠の都ローマ展」に足を運びましたので、

そのあとはコレクション展へと回遊。前回足を運んだのは昨秋でしたので約4ヶ月ほど経っています。その間にあちらこちら展示替えが行われていました。

まずは2階・近現代美術のコレクションハイライトから。このなかでは、まず今までなかったもの=2023年に新たに取得したコレクションのひとつを拝見することが出来ました。あれ、塩田千春さんっぽいなぁと思ったら、その通り。東京で何度か展示を拝見したことがありましたが、パッと見てその人だとわかるインパクトがさすがです。下の写真、赤いやつ。

塩田千春「記憶をたどる船」福岡市美術館

コレクションハイライトの出口のところでは、この1月から「生きている壁画」の第2段階制作がはじまったということで、タイミングよく、作家さん=田中千智さんが絵筆をとっているところを拝見することが出来ました。なかなか見ることのない景色です。

「生きている壁画」福岡市美術館

なんてツイてるんだろう!と嬉しくなりながら、1階の古美術展示室へ。

茶道具を中心としたコレクションの松永記念館室は、ちょうど前日に展示替えが行われたばかりで、これまたラッキーでした。見るたびに外れ無し!の素晴らしい顔ぶれなのですが、今回も、備前の鶴首徳利、柿蔕(かきのへた)茶碗、青磁の獅子が載った水指など、思わずニヤニヤしてしまうものが並んでいました。「原三渓と松永耳庵」と名付けられた現在の展示は3月17日まで。

奥の企画展示室では「狩野派絵画名品展」。これがまたすごかったです。奥まったところでひっそりと展示されているのがもったいないほどに、素晴らしい絵画の数々。特別展をひとつ観たぐらいの満足感でした。これは、日本画に興味のある方は、ぜひ観に行って欲しい展示です。こちらの会期はあとひと月、2月18日までです。そしていつも阿吽の金剛力士像が出迎えてくれる東光院仏教美術室は、長いこと十二神像がぐるりと並んでいましたが、少し顔ぶれが変わって薬師如来像、日光月光菩薩、大日如来像、阿弥陀如来像などの皆さんにお会いすることが出来ました。

大満足の美術館訪問、2024年も素晴らしいスタートとなりました^^

福岡市美術館

永遠の都ローマ展@福岡市美術館。

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永遠の都ローマ展@福岡市美術館

2024年の美術鑑賞は、ローマ展から。年の初めの美術展チェックで、観に行きたい上位に挙げていた展覧会のひとつです。

いやぁ~、素晴らしかったです!第一室から、感動でウルウルしながら見て回りました。紀元前からの大理石彫刻の美しさ、複製とはいえブロンズの巨大彫刻の迫力、そして絵画館のコレクション。絵画館コレクションの部屋は、ダークレッドとでもいうべき赤い壁面に絵が並び、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの展示を思い出しました。

今回最大のお目当てであったカラヴァッジョの画は、やはり、ぐっと引き込まれるものがありました。寄れるギリギリまで近くに寄ったり、少し離れて俯瞰で眺めたり、とにかくジロジロと観て参りました。数点あるのかなと思っていましたが、カラヴァッジョはポスターにもなっていた「洗礼者聖ヨハネ」のひとつのみ。でも、ここ福岡で観ることが出来たのですから、ひとつだけでもありがたいことですね。

今回の展示の中心は、ローマ・カピトリーノ美術館の所蔵品でした。カピトリーノ美術館のはじまりは1471年。ここから美術館とギャラリーの歴史はスタートしたと言われており、世界的に最も古い美術館のひとつです。ぜひ現地に足を運びたいと思いました。

新年ひとつめの美術展、大満足でした。ただ、行ったのが平日のお昼時とはいえ、それほど混みあっていなくて、ちょっと拍子抜け。自分が鑑賞しやすかったという意味ではラッキーでしたが、せっかくの素晴らしい作品の数々、ぜひもっとたくさんの方にご覧いただきたいと思いました。

永遠の都ローマ展@福岡市美術館

藤吉憲典2024展覧会予定など。

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藤吉憲典2024展覧会予定など。

※2024年3月21日更新(北京個展の日程が少し早くなりました)

おかげさまで、本年も各地での展覧会の機会をいただいております。いつもお世話になっておりますギャラリーの皆さまに、心より感謝申し上げます。まだ会期が確定していないものもございますが、現時点で決まっている内容をお知らせいたします。


3月16日(土)~3月29日(金)ギャラリー栂(岡山・和気町)

約二年半ぶりの栂さんでの個展です。今回も、器とアート作品の両方をお持ちする予定です。会期中に栂さんが「作家を囲む会」を計画してくださっているとのことで、作家本人も楽しみにしています。案内状が出来上がり次第、あらためてお知らせいたします。

7月13日(土)~7月18日(木)黒田陶苑(東京・銀座)

隔年開催の銀座黒田陶苑さんでの個展です。建て替え中だった本社店舗ビルが今年春に落成し、新しいギャラリースペースでの展覧会となります。これまでよりもスペースが広くなるということで、ワクワクしています。

7月17日(水)~7月23日(火)博多阪急(福岡・博多)

昨年に引き続き、今年も博多阪急さんでの個展です。二回目となる今年は、「より足を運びやすく、より見やすい展覧会」を目指して参ります。地元福岡の皆さまとお会いできる貴重な機会、一人でも多くのお客さまにご来場いただけると嬉しいです。

8月4日(日)~8月11日(日) 喜水ギャラリー(中国・北京)

初の北京個展です。喜水ギャラリーさんは、日本の現代工芸作家の個展を定期的に開いておられます。藤吉憲典の個展は来年2025年に本開催予定。それに先駆けて今年「ミニ個展」開催の運びとなりました。北京の皆さまにご覧いただけるのが、とても楽しみです。

11月9日(土)~11月15日(金)百福(東京・南青山)

隔年で開催してくださっている百福さんの個展、今年は11月の開催です。定番のご飯茶碗や蕎麦猪口などふだん使いの器を中心に、年末年始に嬉しいハレの器も取り揃える予定です。染付の器・赤絵の器の魅力を存分にお届けする展覧会を目指します。

12月 Sladmore Gallery クリスマス・ショウ(英国・ロンドン)

ロンドンSladmoreでのクリスマス・ショウに、今年も参加いたします。人気のAnimal Boxesシリーズの新作を中心に、Kensuke FujiyoshiならではのColored Porcelain Sculpture(彩色磁器彫刻)作品をお届けいたします。


各展覧会の詳細は、それぞれ会期が近づいたころに、あらためてブログやSNSを通してご案内いたします。今年も一人でも多くのお客さまにお会いできるのを、楽しみにしております!

読書『おとなのOFF 絶対見逃せない2024年 美術展』(日経TRENDY)

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『おとなのOFF 絶対見逃せない2024年 美術展』(日経TRENDY)

すっかり年初恒例となった、美術展チェックです。昨年に引き続き、今年も『おとなのOFF』の臨時増刊号をゲット。

展覧会会場となる美術館博物館は日本全国にありますので、なかなか足を運べないのが現実ではありますが、昨年は「これは観たい!」ベスト5に挙げていたもののうち、3つの展覧会に足を運ぶことが出来ました。わたしとしては、上出来です。福岡県内あるいは出張先(東京)での訪問がほとんどですが、意識の片隅に置いておくと、時間を見つけて機会を上手く生かすことが出来ますね。

ではさっそく『おとなのOFF 絶対見逃せない2024年 美術展』に掲載されているもののなかから、「これは観たい!」ベスト5。


1位 キース・へリング展 アートをストリートへ

昨年12月の学芸員研修で、「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんに「社会課題と向き合う美術館活動」のお話を伺ったばかりで、素晴らしいタイミングです。

現在、六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中ですが、福岡への巡回も予定されています。ありがたいことですね。福岡市美術館 2024年7月13日〜9月8日。楽しみです!

2位 永遠の都ローマ展

こちらも福岡市美術館 2024年1月5日~3月10日。新年5日から始まっていますので、近いうちに足を運びます。カラヴァッジョの「洗礼者聖ヨハネ」が目玉とされています。カラヴァッジョの作品を福岡で、生で観ることが出来る貴重な機会です。今からドキドキしています。

3位 没後50年 福田平八郎

大阪中之島美術館 2024年3月9日~5月6日。実のところ「福田平八郎」と聞いてもぴんと来なかったのですが、作品を見て「ああ!」と心当たりました。「写実に基づく装飾画」と呼ばれているそうですが、色使いとパターンがポップで、魅力的です。ぜひ観に行きたい展覧会です。地元・大分県立美術館での巡回展は2024年5月18日~7月15日。

4位 円空-旅して、彫って、祈ってー

あべのハルカス美術館の開館10周年記念展覧会。160体の「円空仏」が揃うというのですから、なかなか稀有な機会だと思います。会期は2024年2月2日~4月7日ですので、中之島美術館の福田平八郎展と合わせて、大阪展覧会ツアーを計画するのも良いかもしれません。

5位 生誕120周年 サルバドール・ダリ―天才の秘密―

福島県にある諸橋近代美術館。本書で見るまで知りませんでした。ゼビオ株式会社の創立者・諸橋廷蔵氏が収集した作品を展示する美術館。ダリをメインに、ルノワール、マチス、ピカソ、シャガール等19・20世紀巨匠20数人の作品を収蔵しているそうです。会津磐梯山の景勝地に位置するという美術館。ぜひ足を運んで観たいものですが、九州では大分県立美術館 2024年11月22日~2025年1月19日の巡回があるので、そちらで観るのが現実的かもしれません。

3位に挙げている福田平八郎の展覧会も大分県立美術館でありますので、これは大分に足を運べということかもしれませんね。


このほか、『おとなのOFF 絶対見逃せない2024年 美術展』に載っていなかったところでは、福岡アジア美術館で新年1月2日から開催されている「日中平和友好条約45周年 世界遺産大シルクロード展」も楽しみにしていた展覧会。近々博多に出たときに鑑賞予定です。

今年も、ひとつでも多くの「お!」な作品と出会えるのが楽しみです。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その3。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その3。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023。3回目の参加となった今回は、福岡市博物館の教育普及担当さんからの発表でした。タイトルは「“院内学級”に対するオンラインプログラムの開発~これまでとこれから~」。福祉との連携を探るリンクワーカー人材養成講座では、認知症への対応や連携など高齢者の方々とのつながりでの実践発表が多かったのですが、今回は病気やけがなどで学校に通えない子どもたちが学ぶ「院内学級」との連携のお話でした。

以下、福岡市博物館からのお話と、語り場からの備忘。


  • 「博物館はおもしろい」を扉に、さまざまなことを学ぶ機会を提供したい。
  • 各プログラムの「学習の手引き」を作成し、学校の学習指導要領に沿った視点・解説を入れる。
  • 「院内学級」に限らず、さまざまなパターンでの「出前授業」としての活用可能性。
  • 社会とのつながりが遮断されがちな人たちへのアプローチ―不登校、大人の引きこもり、ギフテッド…
  • 組織としての取り組みが無くても、まずは個人としてできることをスタート➜いずれ広げていけるように。
  • 多職種連携、他業種連携。
  • オンラインプログラム用に、ハードコピー・レプリカ等の手元資料の事前配布。
  • 安定した通信環境があれば、タブレット端末だけで博物館ツアーのオンラインプログラムリアルタイム実施が可能。

博物館リンクワーカー人材養成講座は、参加する方の所属や職種が回を増すごとに広がっています。講座の音頭をとっていらっしゃる九州産業大学緒方先生のご尽力によるもので、すごいなぁと思います。まさに「リンクワーカー」を増やす試みとして、機能しています。そして、毎回の情報共有時間「語り場」で出会う皆さんが、それぞれにご自身の居場所で取り組んでいらっしゃる活動の面白さ。たくさんのお話を聞くなかで、皆さんに次に会ったときに自分の活動報告が出来るように、と、モチベーションが上がります。

次回は2023年度の最終回。楽しみです。

読書『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

ご存じ『怖い絵』シリーズ中野京子さんの最新作です。

ドイツ文学者であり、絵画をテーマにした書籍を、大量に生み出しておられる中野京子さん。西洋絵画史に伝わる名品の数々を、現世のわたしたちにぐっと身近にしてくれる本の数々は、誰でもが気軽に絵画を楽しめるようになる、大きなきっかけになっていると思います。と同時に、美術界にとっても大きな貢献になっているのは間違いないでしょう。実のところ、わたしはまだ読んでいない本がたくさんありますが、これまでに読んだなかでは『名画で読み解く 王家12の物語』シリーズが、とても興味深かったです。

さて『名画と建造物』。『怖い』シリーズとはまた少し異なる角度からの、絵画へのアプローチで、図書館で発見して期待が高まりました。『怖い絵』シリーズから続く、独特の重厚感ある文章まわしによるエピソードが、安定の面白さでした。もともと雑誌の連載であったものを編集し直したとのことでしたが、対象となる絵画と、そのなかに描かれている建造物の「今」の写真が加わり、歴史と今を比較しながら見ることが出来ます。絵と写真はいずれもオールカラーという贅沢さ。なので、文章を読むのが面倒でも、ビジュアル的な要素で十分に楽しめます。

個人的には巻頭の、エドワード・ホッパー『線路脇の家』(=映画「サイコ」の家)の解説がツボにハマり、そこから一気に読み込みました。読者それぞれに、心に響く絵、建造物、エピソードを見つけることが出来ると思います。本書を片手に、美術館と建造物を巡る旅行するのも楽しそうですね。

『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

美術と建築は密接な関係にあるものですから、相性が良いことは間違いありません。最近開いていませんでしたが、わたしの本棚には『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』があった!と、引っ張り出してきて復習しました。この第2章が「美術のなかの建築」の特集になっています。西洋史をベースにした中野京子さんのアプローチと、建築を専門とする五十嵐太郎さんのアプローチ。どちらも面白いです。

ロンドンSladmoreのクリスマス・ショウ、スタートしました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ロンドンSladmoreのクリスマス・ショウ、スタートしました!

The Christmas show will run from now until 22nd December! とメールが届いて、そうだった、クリスマス・ショウだ!とあらためて12月を認識。作品が完成して写真を撮ったのも、ロンドンへの発送作業も10月でしたので、なんとなく自分のなかでは完了したような気になっていましたが、いえいえ、ショウは今からです。

Sladmoreに所属する作家がクリスマス・ショウのために作った新作が並びます。いわばグループ展。藤吉憲典は今年は10個ほどの新作を送りました。ギャラリーでの展示とともに、電子カタログにもなりますので、ロンドンに足を運べない方もご覧いただくことができます。下のSladmore公式サイト「Contact」ページ下方にある「Newsletter Sign Up」からメールアドレスを登録すると、展覧会の最新情報が届きます。ちなみに藤吉憲典(Kensuke Fujiyoshi)情報を得るには、「Department」から「Contemporary」を選ぶと、他の現代作家さんの情報とともに展覧会情報が届きます(の、はず!)。

大きなサイズの彫刻を手掛ける作家さんが名を連ねるSladmoreで、Kensukeの作品は贈り物にちょうど良いサイズだと言っていただけます。今年も、自分自身や大切な人へのクリスマスプレゼントとして喜んでいただけると嬉しいな、と。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その2。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023、前回は甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課の佐野正晴氏による『「歴史文化財課 佐野さんの民具図鑑」の作り方』でした。

今回は、山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」のお話。キース・へリングのコレクションを持ち、キース・へリング財団から日本で唯一認証されている美術館ということで、個人的には今年度の連続講座のなかで一番興味を持っていた回です。上の写真は、中村キース・へリング美術館のサイトから。https://www.nakamura-haring.com/

31歳という早逝のキース・へリングですが、ニューヨークでブレイク後、日本では1983年の初来日以降なんども展覧会が開かれ、本人も来日しています。ダンナ・藤吉憲典は、高校卒業後に上京して東京で最初に観た展覧会が、キース・へリングだったとのこと。この時は、へリング本人も来日していました。そんなふうに、我々世代にとっては、とても親近感ある存在です。

以下、中村キース・へリング美術館「社会課題と向き合う美術館活動」のお話より、備忘。


  • キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題➜美術館としてその意思を継いで「今日的」な社会課題に向き合う。
  • キース・へリング=アーティストであり、アクティビスト(政治的・社会的活動家)。
  • 「展覧会活動」と「社会活動」の両軸。
  • リスペクト&インクルーシヴ。
  • 著作権から生じる利益➜財団➜社会活動資金:本人が没したのちも継続できる社会活動基盤の仕組みを作り上げた。
  • ↑↓キース・へリングの作品は、既に社会に溶け込んでいる
  • ↑例えば…各種ブランド等とのコラボ商品➜コピーライト商品によるのアートの拡散。
    パブリックアートの大量設置➜「見たことがある!」機会の大量提供。
  • Art is for Everybody.
  • アートを見るために足を運んでもらうのではなく、日常の中にアートを出していく。
  • 大切なのは、アートに興味のない人の「目に触れる」こと、「足を止める」こと。

↓中村キース・へリング美術館の取り組み↓

  • 美術分野の専門家だけでなく社会課題に携わる専門家へのインタビュー、共同プロジェクト。
  • 狭い分野の専門家から、個々の声を拾い上げ、発信する。
  • 作家年表・世界史年表・日本史年表(+美術館として起こしたアクション)を一覧➜作品が生まれる裏にあった社会の動きが見え、作品・作家への理解が深まる。

↓「語り場」から↓

  • 身近なところから取り組める社会活動がたくさんあり、そうと意識していないだけで、すでに取り組んでいる社会活動がたくさんある。
  • 各館の取り組みをもっとアピールしていく必要性。
  • 近年格段にやりやすくなってきている情報発信。継続的に取り組むには、まずは発信する側が楽しんでいるか。
  • 資料・情報をどう見せるか、どう伝えるか。
  • 社会課題と美術館をどうつなげていくか➜どの館にも必ず身近な社会課題との接点があり、それほど難しいことでは無い。

アートエデュケーターとしてだけでなく、現代にアーティストをプロデュースする立場としても、ものすごく考えさせられ、勉強になりました。山梨にある館に、足を運ぶ機会を必ず作りたいと思います。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023。

九州産業大学地域共創学部の緒方泉教授が音頭をとり、毎年開催してくださっている講座です。「博物館リンクワーカー人材」というキーワードがタイトルに入ったのは、2021年からですが、学芸員技術の向上と美術館博物館施設の地域社会への貢献を目指した数々のプログラムに、もう7年もお世話になっています。

今年度もオンラインでの開催です。そもそもはコロナ禍下で集合研修が出来ない!という状況からのZoom活用だったと記憶していますが、Zoomのおかげで、11月から12月にかけて毎週6回の連続講座に、九州のみならず全国から学芸員・関係者が参加するという、稀有な連続講座に育っています。これって、実はとてもすごいことだと思います。

冒頭30分間、担当講師によるテーマ発表があり、そののち3-5名のグループ「語り場」に分かれて意見交換情報共有。その後、各グループからの発表でフィードバックという次第です。第1回目は九州産業大学美術館の学芸室長・中込先生と、香椎丘リハビリテーション病院のソーシャルワーカー・藤さん。数年前からスタートしている、美術館とリハビリテーション病院両者の連携についての発表でした。わたしは残念ながら第1回は参加できませんでしたが、後日動画で共有してもらえるはずですので、発表を拝聴するのを楽しみにしているところです。

第2回は甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課の佐野正晴氏による『「歴史文化財課 佐野さんの民具図鑑」の作り方』でした。上の写真は、花祭窯のある津屋崎で民具の集まる場所、登録有形重要文化財「藍の家」。

以下備忘。


  • 「美術(館)サービス提供者自身の健康」という視点。孤立を防ぐ。
  • 慢性的・全国的な課題「満タンの収蔵庫」「未整理民具の山」「人手不足」。
  • 民具➜地域回想法。
  • 市民向け映像コンテンツの制作➜「民具図鑑」。
  • 行政各部署、市民団体等との協力=役割分担・負担分担による「持続可能化」。
  • 民具+α:民俗学、歴史学、地域密着情報、最新の研究動向、現代社会の動き…。
  • 民具×○○のコラボ。
  • 「民具を守る仲間」を増やしていく。
  • 「緩やかな保存」の視点。民具を使いながら保護していく。
  • 「ひっかかり」を作ることにより、興味を引く=「民具図鑑」動画において「オチ」も大切な構成要素。
  • 民具図鑑を観る➜資料館に足を運ぶ、小中学校が教材として採用する、博物館浴・地域回想法のアウトリーチを伸ばす…
  • まずは学芸員自身が楽しんでできることが大切。
  • 学芸員が楽しんでいる➜一緒に働く仲間も楽しくなる➜観てくれる人・館に来る人も楽しい。
  • 増え続ける資料➜どう保存するか、どう活用するか。
  • デジタル画像・ポジフィルムでのアーカイブ、動画でのアーカイブ。
  • 地域全体で観たときの、資料保存の考え方。ランク付け、取捨選択。

甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課の佐野正晴氏による『「歴史文化財課 佐野さんの民具図鑑」の作り方』と、「語り場」より


甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課「歴史文化財課 佐野さんの民具図鑑(YouTubeチャンネル)

民具を巡る「慢性的・全国的な課題」は、ここ福津市でも同じことです。「民具図鑑」の制作は、もしかしたらここでもできることかもしれず、なんとか提案できるといいな、と思います。