現代根付彫刻展@横浜SOGOを見て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

現代根付彫刻展@横浜SOGOを見て参りました。

先日の東京出張の際に見た根付の展覧会。出張二日目は所用で久しぶりの横浜へ。横浜そごうには、そごう美術館があります。そごうさんは百貨店内に博物館法に基づく美術館を設置した、初の百貨店だったのだということを初めて知りました。

ですが、ちょうど展覧会中だったものは、残念ながらあまり興味をそそりませんでしたので、そごう美術館の展示ではなく、美術館と同じフロア(6階)にある美術画廊で開催中の「現代根付彫刻展」を拝見してまいりました。

さて「現代根付彫刻展」。このタイトルを見て、そういえば根付は古いものしか見たことが無かったと気がつきました。「小さいもの」であり「彫刻」であるという点、そして江戸時代に文化として大きく発展したこと、実用を持った工芸品であるという点が、藤吉憲典の肥前磁器作品に通じるものがあります。それなのに、現代も作り続けている作家さんがいるということを、これまであまり考えたことがありませんでした。

根付、小さいです。高さ3cmも無いものから、大きくても6cmぐらい。そこに細かい彫刻や絵付が施されています。作品の前には、ところどころに拡大鏡が置いてありました。気になる作品の前で立ち止まっては拡大鏡を手に取り、じっくり観察。素材の表示を見れば、象牙、黄楊(ツゲ)、マホガニー、鹿角、黒檀とさまざまでした。一人の作家さんがひとつの素材だけを扱うわけではなさそうで、題材に対して素材を選ぶところからはじまるのだろうな、と思いました。

細かい彫刻も気になりましたが、絵付も気になりました。一番の疑問は「どのように、何を使って彩色しているのか」。根付の素材が異なれば、彩色の材料も方法も異なるはずです。また、もともとは身に付けるものですから、彩色方法によっては、擦れて色が落ちたりすることも考えられます。やきものならば、絵付をしてから窯に入れて色を定着させますが…。

画廊スタッフの方が控えておられたのでお話を伺うと、どうやら作家さんによって、手法がいろいろということで、決まっていないようでした。ただ、よく聞く方法としては、彩色したうえに漆を塗ってコーティングする方法があるのだそうです。また現代では実際に身に付けるよりも、飾る目的でコレクションする方が多いということで、色落ちをあまり気にしなくなってきている風潮もあるとか。とはいえ、わたしが観ている最中に根付をご覧になっていたお客さまのなかには、着物姿の男性もいらっしゃり、そのような方は実際に身に付けるための根付をお探しなのだろうな、と思いました。

最後に気になったのが、お値段。現代ものとはいえ、価格には開きがありました。それも当然で、やはりきっちりと手の入った仕事が見て取れるものは、それなりのお値段がついていました。それでも、そこにかかる技術と時間を考えると、これを生業として生活していけるようになるには、かなり時間がかかるだろうと思えました。伝統工芸文化継承の難しさは、根付の世界にもありそうです。

ともあれ、久しぶりに新しい世界を垣間見たような嬉しい気持ちになった「現代根付彫刻展」でした。買わないと分かっているのに、作品の説明を惜しまずしてくださった画廊のスタッフさんに、心より感謝です。

博物館リンクワーカー人材養成講座『第5回高齢者が美術館を楽しむために~シニアプログラムの実践を通して~』に参加いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座『第5回高齢者が美術館を楽しむために~シニアプログラムの実践を通して~』に参加いたしました。

11月上旬からスタートした学芸員研修の連続講座「博物館リンクワーカー人材養成講座」。今年度は日程の合わない日もあり、飛び飛びで参加しています。

第5回目は、福岡市美術館の教育普及担当学芸員さんによる実践報告。今年度、福津市の「郷育カレッジ」では、わたしが担当する美術鑑賞講座で、福岡市美術館の「どこでも美術館」というアウトリーチ(出前)にご協力いただきましたので、特に思い入れを持って拝聴いたしました。

以下、備忘。


  • 制作物を1年度に届ける→未来への目線。
  • どこでも美術館(アウトリーチ)=地域公民館、学校との連携。美術館に行けない人のところへ、こちらから届ける。
  • シニアプログラム「回想法」:施設職員の方(専門家)のフォローが必要。
  • 「美術」という共通言語。
  • アフターコロナのGOODな傾向:「男性お一人様」の参加が増えている。
  • 実物・実物大の美術作品=「空間を支配するもの」の存在の大きさ。
  • 美術館に行きたいけれども行けない←YouTube、Facebook等でのライブ配信。
  • 何が見えますか、何が描いてありますか?からはじまる回想法。
  • 学問・専門は、専門家だけのものではない。

博物館リンクワーカー人材養成講座『第5回高齢者が美術館を楽しむために~シニアプログラムの実践を通して~』より


特に、実践報告のなかで演者の学芸員さんがおっしゃった「『空間を支配するもの』の存在の大きさ」というキーワードに、美術・美術館の役割をあらためて思いました。また、グループワークのなかで出てきた「学問・専門は、専門家のものだけではない」という言葉に、奢ることなく取り組む姿勢を貫く現場の方々の思いが見え、ハッとしました。

2022年度の博物館リンクワーカー人材養成講座も残すところあと1回となりました。肩の力を抜いて楽しみながら学べる貴重な機会、しっかり自分のものにしていきたいと思います。

サントリー美術館「京都・智積院の名宝」観て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

サントリー美術館「京都・智積院の名宝」観て参りました。

12月最初の週末は、東京出張。南青山の百福さんで開催の「藤吉憲典展(磁)」の最終日に顔を出して参りました。

朝一番に福岡空港から羽田行きで、10時前には都心部に到着。ギャラリーオープンは12時なので、2時間を美術館で過ごすことに。六本木・東京ミッドタウン内にあるサントリー美術館に足を運んでまいりました。六本木ヒルズ内の森美術館でもちょうど展覧会がはじまったところでしたので、どちらにするか迷ったのですが、古いものを観る方に軍配が上がりました。

さて、京都・智積院の名宝。上の写真は上階のホールスペースに設けられた、展覧会のフォトスポット。本展覧会は、長谷川等伯一門による金碧障壁画群が目玉です。実際のところ、その大きさ、迫力はなかなかのものでした。が、個人的には「もともとあるべき場所」すなわち智積院のなかで観たいなぁ、という感想が先に立ちました。そこだけを取り出した状態ではなく、全体として空間的に見るのが一番だろうなぁ、と。あたりまえですが。

そんななか、個人的に一番気に入ったのは、梵字による曼荼羅図。曼荼羅図全体の迫力、面白さはもちろん、ひとつひとつの梵字の生き生きとした筆が、とても良かったです。今にも動きだしそうな文字でした。縮小版を部屋に飾りたいと思いました。それから、南宋時代に書かれたという金剛経も素晴らしかったです。まず第一に読みやすい、そして浮ついたところが無く、かといって固さも無く、力強いのに緊張を強いない字でした。また展示の最後に、智積院が秀吉天下の時代から近現代に至る京都画壇を支えるパトロン的役割を担った一面が垣間見え、素晴らしいなぁと、嬉しい気持ちになりました。

たくさん美術館博物館があるからこそ、出張のたびに、用事のある近くに興味のある展示・展覧会を見つけることが出来るのは、東京ならではの贅沢だと思います。サントリー美術館「京都・智積院の名宝」、良かったです♪

百福さんでの「藤吉憲典展(磁)」、ご来場ありがとうございました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

南青山百福さんでの「藤吉憲典展(磁)」、ご来場ありがとうございました!

百福さんが南青山に移転なさってから初めての個展。わたしも最終日におじゃまして参りました。上の写真は、百福さんのインスタグラムから拝借。オーナーの田辺さんはとても素敵な写真を撮ってくださいます。器の写真撮りはプロの写真家の方でも結構難しい題材のようなのですが、百福さんの写真はいつも、安定した美しさと独特の質感があります。

さて百福さん。東京メトロ青山一丁目駅からも外苑前駅からも歩いて5分と交通至便な場所でありながら、青山通りから一本内側に入っているために静かで落ち着いた空間です。オープンがお昼12時からなので、当日は六本木で一つ展覧会を観てから、お散歩がてら歩いて向かいました。

訪問したのが最終日とあって、お客さまのご来店はのんびりペース。おかげさまで、ご来店の方とはもちろん、オーナーの田辺さんともお久しぶりにゆっくりお話をすることが出来ました。早くに売り切れてしまっていたシリーズもありましたので、目当てにお越しのお客さまにはお詫びをしつつ。

町田でお店をなさっていた時との違い、東京近辺での「食」に対する料理人さんの視点、最近の陶芸作家さんたちの意識と制作の在り方、作家物の器のお店としての矜持とこれからの進むべき方向など、18年お店を続けていらっしゃるからこその視点を、いろいろとお聞かせいただくことが出来ました。そういえば、じっくりオーナーさんのお考えを伺う機会を作ることが、このところ出来ていませんでしたので、とてもありがたく貴重な時間となりました。

昔から何度も思っていることですが、お付き合いのあるギャラリーさんに恵まれている嬉しさを、あらためてかみしめる一日となりました。百福さんでの藤吉憲典展は、次回はまた再来年。楽しみにしていただけると嬉しいです。

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshiの動画が届きました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshiの動画が届きました。

現在ロンドンSladmore Contemporaryで開催中の、藤吉憲典個展。先日オープニングを終えて本人は帰国したところですが、さっそくギャラリーからショート動画が届きました。

Sladmore Contemporary前オーナーGerryの息子さんWillは、映像を仕事にしているプロ。今回藤吉のロンドン滞在中に、さっと撮って、さっと編集して送ってくださいました。とっても格好良くまとまっていて、嬉しい限りです♪

ロンドンでの展示の雰囲気、皆さまにもちょっぴり楽しんでいただけると幸いです。

アート三昧の後は、器三昧。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

アート三昧の後は、器三昧。

南青山の百福さんから個展案内状が届いた!と喜んでいたのは10月中旬のこと。気がつけば、もう今週末11月26日土曜日が個展初日です。あっという間ですね。

11月はロンドン個展(アート)と、百福さんでの個展(器)がひと月のなかに入りましたので、作家・藤吉憲典は、器をしっかり作り込んだうえで、まずは先にオープンするロンドンの個展へ。その間、わたくしは百福さんでの個展の準備です。個展に出す器のリストを作成し、梱包し、発送する、というところまで。展覧会のスケジュールが混んでいたからこそ、早め早めに器が出来上がっていたというのは、発送作業をする者にとっては助かりました。

今回の個展に向けては、久しぶりに蕎麦猪口を少し多めにご用意することが出来ました。ご飯茶碗もいろいろと作っていますので、新年に向けて新しいご飯茶碗を見繕うのも楽しいと思います。『美の壺』放映以来問合せの増えていたマグカップも少し多めにご用意しましたので、こちらはクリスマスプレゼントに良いかもしれません。そして、いつものことですが、ぐい呑、盃、片口…と酒の器がたくさん。

自分用に、贈りもの用に、ハレの日に、ふだん使いにと、選んでいただけると思います。ぜひ藤吉憲典の器を楽しみに、百福さんにいらしてくださいませ。


藤吉憲典展(磁)
百福 momofuku
2022年11月26日(土)-12月2日(金)※会期中無休
12時-18時※最終日17時まで
東京都港区南青山2-11-6-1F
TEL03-6447-0952

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi スタートしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi スタートしました。

ロンドンSladmore Contemporaryでの個展がスタートしました。「案内状が来た!」と思ったら、あわただしく作家の渡航準備。今回はわたしは日本でお留守番でしたが、無事オープンの連絡をギャラリーからもらい、ホッとしたところです。

コロナ禍を経て3年ぶりの個展。先の予定を立てるのが難しい時期にありながら、個展開催を決定し準備してくださったギャラリーと、新作を楽しみにお待ちくださったクライアントの皆さまに、あらためて心より感謝しています。ダンナが顔を出した11月16日夕方からのオープニングと、翌17日のアーティストデモンストレーションでは、懐かしい方々と楽しい時間を過ごすことが出来たようです。

写真はオープン前の様子。わたしもその場に居たかったです(笑)

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi ロンドンSlasmore Contemporary
NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi ロンドンSlasmore Contemporary
NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi ロンドンSlasmore Contemporary
NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi ロンドンSlasmore Contemporary

作家はオープニングを見届けて帰国しておりますが、会期はクリスマス12月23日まで続きます。

博物館リンクワーカー人材養成講座がはじまりました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座がはじまりました。

せっかくの機会なので、具体的な実践につなげていくための学びにしたいと、今年は自分なりに事前準備をいたしました。まずは、自分の取り組みスタンスを整理。

できる範囲での周辺知識の獲得。

連続講座第1日目は、九州産業大学の緒方泉先生による「博物館浴」研究の最前線の報告からスタートしました。そのなかでピンときたキーワードは次の通り。

  • 博物館に課せられる「ケアの義務」
  • 博物館法=社会教育法+文化芸術基本法
  • MUSEUM CHANGES LIVES
  • 博物館やギャラリーは、英国におけるウェルビーイング資源
  • 英国での取り組み Museum Health &Well-Being Summit
  • メンタルヘルスプログラム、MINDFUL MUSEUM
  • 感覚から科学へ
  • 博物館健康ステーション
  • 脳の仕組みの変化を追う
  • 回想法のキーワードは「共感」

これまで、社会教育法のうえに根拠を置いていた「博物館法」が、今年度から社会教育法にプラスして文化芸術基本法をも根拠とするように変わったという、日本の法令上の変化は、遅れ馳せ感はありながらも、きっと歓迎すべき変化なのだろうと思いました。

講座後半はグループに分かれて「語り場」タイム。久留米大学の学芸員課程を教えておられる先生、宮崎県総合博物館の解説員さん、下関市考古博物館の学芸員さんとご一緒させていただきました。宮崎県総合博物館では既に週3回、福祉施設と連携した回想法の開催をしているということで、実際の取り組みについてお話を伺うことが出来たのは、とても刺激になりました。

NEW PORCELAIN SCULPTURE

こんにちは。花花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

NEW PORCELAIN SCULPTURE

11月16日オープンのロンドン個展の案内状イメージが届いて、差し出されたタイトルに、またひとつ今後の展望を示されたような気がしています。

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi @ SLADMORE CONTEMPORARY
NEW PORCELAIN SCULPTURE by KENSUKE FUJIYOSHI

藤吉憲典のつくるものを何と称するか、藤吉憲典の肩書は何なのか。第三者に伝えるには、わかりやすく言葉にすることが必須です。なんと表現するのか最も合っているのか、もっとも伝わるのか、その都度頭をひねっているのですが、今回SLADMOREからいただいた「NEW PORCELAIN SCULPTURE」の文字を見たとき、思わず膝を打ちました。

NEW PORCELAIN SCULPTURE。日本語で言い換えれば「新しい磁器彫刻」です。確かに、そうです。ごく普通の言い回しにもかかわらず、ひとつのジャンルが生まれたような気がいたしました。言葉の力ってすごいですね。そういえば昨年5月に参加した展覧会「BEYOND BRONZ」すなわち「ブロンズを超える」というのも、SLADMOREから贈られた一つのイメージでした。

藤吉憲典の作品群に、「新しい磁器彫刻」という位置づけは、とてもしっくりきます。これを新しいジャンルとして切り開いていくことが、陶芸家(磁器作家)でもあるアーティストとしての、道筋のひとつとなりそうです。

ロンドン個展の案内状が届きました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ロンドン個展の案内状が届きました。

NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi SLADMORE CONTEMPORARY
NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi @ SLADMORE CONTEMPORARY
藤吉憲典ロンドン個展2022
NEW PORCELAIN SCULPTURE by Kensuke Fujiyoshi @ SLADMORE CONTEMPORARY

ロンドンSLADMOREより、11月16日オープンの個展案内状が届きました。前回の個展から「e-invite」=電子案内状をメールでご案内するようになっています。個展出品作品のカタログも「e-catalogue」が先行してギャラリーのトップクライアントに送られます。世界のどこにいるコレクターさんにも、同じタイミングで作品閲覧機会を提供できるということですね。

11月に入り、準備も大詰め。ドキドキワクワクです。