季節の器はやっぱり楽しい♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

季節の器はやっぱり楽しい♪

和食器を扱う楽しさのひとつに、季節が反映された文様の面白さがあります。写真は、今週お客さまにお届けする器の顔ぶれ。左上から時計回りに、染付氷烈梅文飯碗、染付福鬼文蕎麦猪口、染錦なずな文玉縁小皿、染錦枝梅文5寸皿。いずれも作者は藤吉憲典。

肥前磁器の文様の楽しさは、これまでにもこのブログでたびたび書いてきました。江戸時代から描き継がれてきた文様がたくさんあります。藤吉憲典の現代作家としての使命は、そうした伝統文様を、現代に写し直すこと。そのままコピーするではなく、より美しく楽しくデザインし直すことに、作家としての仕事の価値があります。

たとえば「染錦枝梅文5寸皿」の文様は、多様な器に描かれている「枝に梅」のモチーフを、鍋島の文様パターンのひとつ(=お皿の形を生かして丸くデザイン)を借りて5寸の丸皿に落とし込んだもの。肥前磁器の骨董にこれとまったく同じものはありませんが、伝統的な文様と様式を用いて新たに展開したものです。

染錦枝梅文5寸皿 藤吉憲典

また、季節の行事や風物を文様化するのは、江戸時代以来の肥前磁器の得意技。下の写真、節分にちなんだ福鬼文様の蕎麦猪口は藤吉憲典オリジナルですが、器の面を四方に割って間取し、そのなかに文様を描く方法は、肥前磁器の古典的な様式のひとつです。

染付福鬼文蕎麦猪口 藤吉憲典

どちらも「古くからある文様です」と言っても通用する雰囲気でありながら、古臭さはありません。「現代的で新しいけれど、どこか懐かしい」のが、藤吉デザインの特徴のひとつでもあります。

季節の文様は、その器を用いる時期を限定してしまう一面もありますが、だからこそ使う嬉しさももたらしてくれます。とくに蕎麦猪口と小皿豆皿は、季節感を映し出す文様や形がたくさんで、肥前磁器の面白さをぎゅっと凝縮した器ジャンル。食卓に季節感を取り入れたいときに、真っ先におすすめするのが、この二つです。

花祭窯のオンラインショップ「蕎麦猪口倶楽部」では、藤吉憲典の作る蕎麦猪口と小皿豆皿をご紹介しています。

オンラインショップ花祭窯 蕎麦猪口倶楽部

長年の懸案事項「yurinote」をつくろう。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

長年の懸案事項「yurinote」をつくろう。

花祭窯は開業から夫婦二人で運営して来ているので、ダンナの仕事(つくる)以外は、ほぼわたしの仕事です。わたしの仕事は、まさに「なんでもやさん」。一つ一つの仕事は、誰にでもできることですが、その全般がわたしの頭のなかに入っているので、わたしでないと「なにがどこにあるかわからない」状態。これではイカンと「わたしがやっている仕事」をマニュアル化しようと、これまでにも何度も思ったのでしたが、手つかずのまま今に至り。つい先日、お友だちがまったく同じ状態から一念発起して「仕事ノート」を作りはじめたという投稿を拝見して、よし!わたしも!と思ったのでした。

まずは形からということで、その仕事ノートに名前を付けることに。そのまんまですが「有里ノート」を英語で羅列して「yurinote」としました。ローマ字読みすると「有里の手」ともなり、これは良い感じ♪と悦に入ったところです。あとは、ノートを着々と作っていくべし。このブログに書くことで、自分にプレッシャーをかけます。

まずは花祭窯におけるわたしの業務の洗い出しから。


  1. ドメイン・サーバー関係
  2. サイト・ブログ管理
  3. EC(Shopify)
  4. SNS(FB、インスタ、ピンタレスト)
  5. ロンドン
  6. 国内ギャラリー
  7. 海外取引(発送・決済)
  8. 上海
  9. その他海外(台湾、北米、イタリアetc…)
  10. 会計(freee)
  11. 決済
  12. ふるさと納税

まだまだどんどん出てきそうです。随時追加。


これが出来上がれば、わたし自身にとっても、仕事内で発生する「探す」時間が劇的に減らせるはず。それだけでも無駄が大きく減るはずです。さ、がんばろう!

2022経営指針書と、展覧会予定など。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2022経営指針書と、展覧会予定など。

1月5日時点でほぼ書き上げていた今年度の経営指針書。自分のなかでリリースする前に、考えたいことがあり、10日ほど寝かせておりました。結果、かなりの変更を加えて、本日ようやくリリースです。

まず今年度のテーマは、書き初めでも書いた『威風堂々』と、『自由な展開』。創業25周年、次の四半世紀に向けてステップアップの土台となる一年にできるといいな、と思っています。どこにあっても、自分たちは自分たちであると、堂々としていられるように。そして、25年のなかで「これは違う」と勝手に線引きして自ら制限してきたものの縛りを解いて、もっと自由に動いてみようと。

毎年新しいことにチャレンジしてはいますが、経営指針書を書くこと自体がルーチン化して、無意識のうちに「前年に倣え」で考え方が小ぢんまりして来ているかもしれないと、年初に書いた「経営指針書」を反省したのでした。もっと自由に大風呂敷を広げます。

今年の藤吉憲典は、国内ではコロナ禍で延期してきた銀座黒田陶苑さんでの個展と、町田から青山へと移転なさった百福(ももふく)さんでの個展を予定しています。黒田さんでの個展は久しぶりになりますし、百福さん移転後の店舗では初めての開催になります。どちらも、これから先四半世紀の制作活動をワクワクと期待していただける内容にしたいと考えています。

また、状況の読めない状態が続いていたロンドンでも、12月に個展を予定しています。その時に情勢がどうなっているかはわかりませんが、開催を大前提に準備を進めます。もしかしたら作品だけの渡航になるかもしれませんが、個展を開くと決めてくださったギャラリーさん、その先にいるお客さまに喜んでいただけるよう全力を尽くします。

中長期的な展望としては、これまでとは全く異なるアプローチをいくつか発表予定です。昨年は意図せずしてその準備を進めることができましたので、流れに乗ってそのままチャレンジしていきたいと思います。ここで立てた事業計画が、年度末に計画がどのように進んでいるか、あるいは変わっているか。自分たち自身が一番楽しみにしています。さあ、がんばろう。

2022初釜に行って参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2022初釜に行って参りました。

まるまる2年ぶりのお茶会でした。一昨年、初釜の記事を書いたときには、予想だにしなかったことです。これまでも毎年の初釜は特別な機会でしたが、今年はまた特に特別な初釜となりました。

2年間のお休みの間、庵主の和尚様はじめ、先生方は休むことなくいろいろと考えてくださっていたのだと思います。南方流として受け継ぎ守るべき伝統と、時代に合わせてしなやかに変化させていくべきこと・新たに取り入れるもの、そして有事の時にも継続していくための在り方と。その結果としてなのでしょう、南方流としては初めての立礼での初釜となりました。

初釜は、師である和尚様のお点前をじっくり拝見することのできる貴重な機会でもあります。今回わたしの席は幸運なことにほぼ正面からお点前を拝見することができる位置でした。すっかり忘れてしまっているお点前を一緒になぞりつつ、和尚様の所作のすべての美しさに感嘆しつつ、至福の時間となりました。この席にご一緒出来るだけで幸せを感じます。そんな場所を持つことができたことが、ほんとうにありがたいことです。

初釜恒例の色紙には、竹虎図とともに「一呼百諾来一笑萬人賀(いっこすればひゃくだくしてきたりいっしょうすればばんにんがす)」とありました。「一戸百諾」と「 来一笑萬人賀 」。一声かければ多くの人が応えてくれる、笑顔と心からの言葉には万人を幸せにする力がある、といった意味だそうです。笑顔と、心からの言葉。この一年、心にとめて参ります。

初釜はお茶室のお掃除からスタート。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

初釜はお茶室のお掃除からスタート。

一昨年の初釜茶会のあとから、コロナ禍でずっとお休みになっていたお茶のお稽古。2022年の初釜から再スタートするとのご連絡をいただいたのは、昨晩秋福岡県内での一日の感染者数がゼロに近くなってからのことでした。

まるっと2年間のお休みは、南方流に入門以来初めてのことでした。2年の間に少しでも家でお稽古すればよいものの、気持ちがついてこず、結局まったく我が家のお茶室・徳利庵に座ることなく過ごしてしまいました。お点前作法をすっかり忘れてしまった…という心配はあるものの、それよりもなによりも、またお茶のお稽古に伺えることの喜び、先生や先輩同輩の方々にお会いできる嬉しさが勝ります。

さてお茶会の前日は恒例のお掃除。久しぶりに皆さんにお会いできる嬉しさにワクワクしながら行って参りました。ご挨拶を交わし、黙々とそれぞれ仕事にかかります。わたしはつくばいと、その周りの露地のお掃除を担当。庭掃除は、きれいになったと思うとだんだんと細かいところが気になってきてキリが無いのですが、「まずはこれで良し」と思えるところまですると、気持ちまで整って参ります。

お掃除から戻ったら、これまた久しぶりに袖を通す着物の着付けを復習しなければなりません。着物だって、お茶の時でなくても着ればよいものを、こちらもやはり気持ちがついてこず、前回の初釜以降袖を通しておりませんでした。ただ、この間に着物ダンスの整理整頓だけはしておいたのが、良かったです。1週間ほど前に、初釜で着る組み合わせを決めて、風を通しておりました。

さて、着付けの復習。いつもお世話になっているYouTubeの「きものん着付け動画 『袋帯の結び方(二重太鼓結び)』」をチェックです。着付け方法の動画は、いろんな方がたくさんYouTubeに上げていて、助かります。なかでもわたしはこの「きものん着付け動画」シリーズがとても分かりやすくて気に入っています。今回は、帯の結び方→着物の着方→長襦袢の着方と、遡って復習。これで、当日着付けでパニックになることは無いでしょう(笑)

掃除して、着物を用意して、と、準備をしながらお茶会への気持ちも整って参ります。

2022年仕事始め。本年もよろしくお願い申し上げます!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2022年仕事始め。本年もよろしくお願い申し上げます!

旧年中は、たくさんの皆さまに、たいへんお世話になりました。ほんとうにありがとうございました。花祭窯は本日が仕事始めです。本年もよろしくお願い申し上げます!

2年ぶりに「車窓から初日の出♪」で、お正月を迎えました。長崎本線特急かもめ車内から、花祭窯創業地の最寄り駅「肥前山口駅」でのご来光。偶然ではありましたが、素晴らしい場所・タイミングで初日の出を拝むことができました。津屋崎に移転するまでの15年間は、どこへ行くにもこの駅からスタートしていたのです。

今年も家族揃ってお正月の景色を迎えることができたことに感謝です。

玄関先にはダンナが投げ込み。
鏡餅
お仕事デスクにも鏡餅。
ご近所さんからお正月用に蝋梅をいただき、花生け完了。
床の間には「暫」と鏡餅。
年中活躍の市松の花入れは、お正月が良く似合います。

この6月に花祭窯は25周年を迎えます。最高のスタートを切ることができました。今年も一年間面白く頑張ります!

花祭窯の12月の庭。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯の12月の庭。

2021年も残すところ1週間。福岡地方、明日の天気予報には雪マークが並び、年末らしい雰囲気が増してきました。露地の枯れた草や枝を掃除しなきゃと思いながら、まだ手が付けられずにいます。毎年末大掃除の目玉は、露地掃除とガラス窓拭き。今年もギリギリになりそうです。

↓すべての写真はクリックすると拡大を見ることができます↓

花祭窯の露地

まず目をひくのは、サザンカの花弁の絨毯。

花祭窯の露地

水仙がグーンと伸びてきました。つぼみがついているのが見えるでしょうか。

花祭窯の露地

上を見上げると、こんなふう。

花祭窯の露地

南天の赤い実がこんなにしっかりついたのは、数年ぶりのことです。

花祭窯の露地

お茶室も掃除しなければ。

花祭窯の露地

11月下旬に仕込んだ干し柿もいい感じに育ってきました。

梅もどき

玄関には、ご近所さんからおすそ分けいただいたウメモドキ。

小さな露地ではありますが、季節ごとの顔を持っています。毎日少しづつの変化を感じるのが、とても楽しいのです。

「肥前磁器作家の仕事」を取り巻く仕事。の、後日録。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「肥前磁器作家の仕事」を取り巻く仕事。の、後日録。

いつもお世話になっている陶土屋さん=渕野陶磁器原料さんから、毎月「ニュースレター」が郵便で届きます。毎回一番楽しみにしているのは「会長さんの昔話」で、渕野陶土さんの現会長が陶土屋さんの歴史を語るコーナー。これを読むと、佐賀肥前地域の磁器産業を支える陶土業界がどのように変遷してきたか、技術進化の推移や、そのときどきでのご苦労を知ることができます。もう25年も磁器の仕事をしているのに知らなかったことばかりで、これまでの勉強不足を反省する機会にもなっています。

さてその最新号=上の写真がつい先日手元に届き、びっくり。巻頭に大きく「磁器作家藤吉憲典の挑戦」展覧会を紹介してくださっていました。福岡アジア美術館での展覧会に、渕野社長が佐賀から駆けつけてくださったのは、11月14日のこと。本展覧会では 「肥前磁器作家の仕事」を取り巻く仕事を紹介しようと、ふだんからお世話になっているお取引先の皆さんに資料提供をお願いして、展示コーナーを作っておりました。

喜んでくださったご様子を拝見し、そのときも「展示をやってよかった!」とホッとしたのでした。今回あらためてこのように記事にしてくださったのを拝見し、その思いを再確認。よくよく花祭窯は、お取引先の皆さんに恵まれています。ほんとうにありがたいことです。

渕野陶磁器原料さんのニュースレター「ジキよまんば」バックナンバーは、サイトでもご覧いただくことができます。また渕野陶磁器原料さんの扱うものは、ネット通販でも購入できます。全国各地だけでなく海外にまでも原料を発送しておられます。プロはもちろん趣味の陶芸でのご利用にも対応なさっていますので、興味のある方はぜひ覗いてみてくださいね。

↓福岡アジア美術館での展覧会についての記事は、下記から辿ることができます↓

古伊万里の変遷と未来 古典からアートへ 磁器作家藤吉憲典の挑戦 @福岡アジア美術館

陶板(レリーフ)に額縁、第一弾が完成。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

陶板(レリーフ)に額縁、第一弾が完成。

「久しぶりの額縁やさん。」とブログを上げていたのは、十二月の初旬のことでした。「出来上がりました」のお電話をいただき、ワクワクしながら再び額縁屋さんへ。この2週間「待つ楽しさ」を存分に味わいました。上の写真が、その出来上がり^^

思った以上にしっくりと馴染んだ仕上がりで、大満足です。選ぶときは、部分的に額縁のサンプルをあてて、出来上がりをイメージします。全体を囲んだ姿を見ることはできません。額縁をつけることでシマウマの躍動感が損なわれないように、と思っていましたが、杞憂でした。むしろその先への広がりを感じる仕上がりとなり、ニンマリ。色合い、質感、幅…この額縁だからこそ、の仕上がりです。

縞馬陶板 藤吉憲典

↑これが、↓こんなふうに。

藤吉憲典 縞馬陶板

通常絵画などを入れる場合は、ガラス(アクリル)をかぶせますが、陶板の半立体を直接ご覧いただきたかったので、かぶせていません。「縁」のみです。縁をつけることで、より立体感を感じる仕上がりとなり、それは当初のイメージ以上の効果でした。写真では伝わりにくい所でもありますので、興味のある方はぜひ花祭窯にお越しになって実物をご覧くださいね。

額縁に入ると、壁にかけたくなりますね。とりあえず写真を撮りたくて掛けてみましたが、飾る場所と飾り方をどう選ぶかも課題です。花祭窯のギャラリースペースの「白壁」は漆喰なので、鋲を打ち込むのは難しく。どこに何を使えば良い感じにピッタリはまるか、展示のテクニックもちょっと考えたいところです。

こうして一つ、仕上がりが目に見えたことで、俄然面白くなってきました。実はもうひとつ、縞馬陶板の額装を進めています。こちらは藤吉憲典のアート作品を扱ってくださるインポートインテリア・ドーノさんにお願いしています。インテリアアートを提唱するオーナー上田桐子さんのセレクトを圧倒的に信頼しており、全面的にお任せしています。まったく違う雰囲気のものが出来上がってくるのは確実で、とっても楽しみです。

「暫(しばらく)」がやってきた♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「暫(しばらく)」がやってきた♪

来年度以降に向けて、花祭窯(=磁器作家・藤吉憲典)としての新たな挑戦をいろいろと考えています。この11~12月と、そのための情報集め・資料集めと、「お試し」を実践していく期間となっています。明確に意図したわけではなく機会が次々やってきているので、きっとそんなタイミングなのでしょう。

さて「暫」は歌舞伎の演目です。知識がありませんでしたので、ウェブサイト「歌舞伎演目案内」で解説を拝読しました。豪快痛快な勧善懲悪もので、見せ場に「元禄見得」を切るとのこと。このたび我が家にやってきたのは、その浮世絵版画です。古典の浮世絵を現代に復刻したコレクションのひとつ。絵師は、江戸の浮世絵ブーム後期を風靡したという歌川派の歌川国政。役者絵のなかでも「大首画」と呼ばれる「首から上の半身像(胸像)」を描くのを得意としたそうで、我が家にやってきた「暫」も、その大首画。幾何学的な構図と大胆な配色が華やかです。

さっそく床の間に飾ってみると、華やかでありながら落ち着きを感じました。版画ゆえの質感と発色が、全体をやさしく調和させています。技術・色彩感覚の確かさに加え、紙にはオリジナルと同様手漉き和紙を使い、絵具もオリジナルに近い顔料を使用するといった制作工程によるものでしょう。もっと大きなサイズでもよかったかも、と思いました。

実寸は測ればわかりますし、お店(ギャラリー)で実物を見ることもできますが、実際に飾る場所に掲げてみて初めて、そのサイズ感を体感します。実寸より大きく感じたり小さく感じたり、背景(空間)の色によって派手に見えたり地味に見えたり。飾る場所により印象が変わるのも、アートを自分の空間に取り入れる面白さのひとつだと思います。

復刻版画を手掛けたのは、新宿にあるアダチ版画研究所さん。その名も「アダチ版復刻浮世絵木版画」。日本の伝統美術である木版の技術保存、技術者育成をなさっている版画やさんです。上の写真は、アダチ版画研究所の木版解説資料。版画と一緒に届きました。木版についての解説と、題材である「暫」についての解説と、ともに英語表記が併記されており、国内はもとより世界に向けての文化発信の熱意を感じました。

伝統木版は江戸時代から約300年の歴史であるいうことを、今回初めて知りました。日本の磁器の歴史が江戸初めからの約400年ですから、100年ほどの違いはあれど、ともに江戸の文化を体現し、背負って来たものなのですね。特に浮世絵版画は、江戸の庶民文化・流行を色濃く反映したものなのだと思います。肥前磁器が大量生産されるようになったころと重なるのだな、などと思いつつ。蕎麦猪口の文様にも江戸文化の流行は多様に反映されています。俄然親しみがわいてきました。

花祭窯は小さい事業ながら、特にここ10年ほどは毎年「ガチャンガチャンと音を立てて変わっていく」ものがあります。内側からの変化と、外の変化への対応と。そんななかで、今回到着した浮世絵版画。これからの事業に向けて、たくさんのヒントが詰まっていそうです。座敷に行っては床の間を眺め、ニヤニヤしております。