年内のお茶のお稽古は、今週でお仕舞い。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

年内のお茶のお稽古は、今週でお仕舞い。

時折小雨の舞う博多へ、今年最後のお茶のお稽古に行って参りました。今わたしがお稽古しているのは、奥点前のひとつで「袋茶碗」と呼ばれるお点前です。袋茶碗のお稽古に進んだのは今年の春のことでした。

茶道南方流では、奥点前のお稽古は、ひとつのお点前を一年かけて習います。一年の間に、炉が風炉になりまた炉に戻り、炉にも風炉にもときどきで設えの変化がありますので、同じお点前のお稽古をずっとしている感じではありません。覚える間もなく変化していく、という感じです…と、毎回言い訳しながらの、お稽古。

ちょうど同じ袋茶碗を習い中の仲間が目の前でお稽古をしてくださったので、拝見しつつ予習になり、いつもよりはスムーズにお点前をすることが出来ました。スムーズになると今度は所作が次また次へと忙しい感じになり、半年以上前にいただいたご指導「あと0.5秒ゆっくり」に舞い戻るという結果になったりもいたします。その自覚があるだけに、それでもお稽古の後に「だいぶ所作がきれいになってきましたよ」と褒めてくださる先生方の言葉が、とても心にしみるのです。

今日は年内最後ということで、先生が今後のお稽古の進み方を確認してくださいました。来年の春あたりまでは引き続き袋茶碗のお稽古で、そのあとは「天目」のお点前に進みます。天目をさらに1年以上お稽古して、その先へ、と。南方流は、節目となるお免状的なものが他の流派に比べて格段に少ないようで、そのことが、お茶を習うこと自体が大切なわたしにとっては、とてもありがたいのです。お免状は要らないので、ずっとお稽古させてください!という感じ。お茶のお稽古に足を運ぶこと自体が目的になっています。

先生方や和尚さんに年末のご挨拶をしながら、円覚寺のお茶室が自分にとって心の拠り所となる場所になってきているのを実感しました。

シマウマ作品続々-「壁面」の楽しみがどんどん広がります。

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シマウマ作品続々-「壁面」の楽しみがどんどん広がります。

気がつけば、もう12月!とはいえ年内(=花祭窯にとっては年度内)に進めたい仕事はまだまだてんこもり。今年は、藤吉憲典作品において、書画をはじめ「壁面」に本格的に意識を向けた一年となりました。これまでにも陶板レリーフ(半立体陶板)を作成するなど、ジワジワと壁面へのアプローチは続けてきていましたが、本格的に書画作品をアート作品として発表することを決めてから、「どのように提供するか」への意識が新たになりました。

「購入できる作品としてご覧(ご検討)いただく」「お客さまが自分の空間に飾ったときのイメージができるようサポートする」と考えたときに、特に国内では、額縁であったり軸装であったりという、「作品をプレゼンテーションするための+α」が大きな意味を持つことを、実地で学んだ一年でした。

というわけで、引き続き「壁面作品」の「見せ方」を考え続けています。その最新作が、シマウマ陶板の額装。今回も大崎周水堂さんにお世話になりました。

藤吉憲典 縞馬陶板

藤吉憲典の縞馬陶板。額装していたものがひとつ嫁ぎましたので、あらたに二つ増やしました。大崎周水堂のスタッフさんがさまざまに(かつ、かなりピンポイントで!)提案してくださったなかからセレクト。今回はシックで上品な仕上がりとなりました。

縞馬陶板 藤吉憲典

色違いで同じタイプの額縁です。ちょっとした色の違いですが、どちらがよりしっくりくるか、何度もシミュレーションした結果、このような組み合わせとなりました。「作らないけれど、作る側の人」である私としては、このような形で作品に参加できることが、とても面白く嬉しいのです。縞馬陶板シリーズは、個人的にも大好きなので、ずっと花祭窯に飾っていたいという気持ちもありつつ。

そして今年は、少し前までは「はっきり分かれている」と感じていた、器ギャラリーさんとアートギャラリーさんとの垣根というか役割分担が、こと国内においては徐々に意味がなくなりつつあることを、何度も実感いたしました。「器を見に来たけれど、そこで気に入ったアート作品を見つけて、購入する」お客さまが確実にいらっしゃって、それが自然であること。実は勝手な線引きをしていたのは販売する側のわたしたちの方で、お客さまの方がずっと自然体で自由なのだということを感じる場面がいくつもありました。そうとわかれば、何をすべきかは明白です。来年以降は作品を発表する作家側としても、もっと垣根をなくして、「藤吉憲典のアート作品」をご覧いただける機会を増やして参ります。

再読書『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』(ダイヤモンド社)神田房枝著

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再読書『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』(ダイヤモンド社)神田房枝著

美術教育(研修)のプログラムをまとめ直す必要が生じ、このところ関連書籍を読み直ししています。山口周さんの『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか』、藤掛明先生の『コラージュ入門』…

そして『知覚力を磨く』へ。前回読んだのは2020年10月末。もう3年も前のことだったとわかり、ちょっと驚きました。というのも、本書に書かれている内容に、今なお新しさを感じるからです。

以下備忘。


  • 思考の前提となる認知、すなわち「知覚(perception)」
  • 知覚とは、目の前の情報を受け入れ、独自の解釈を加えるプロセス
  • 「どこに眼を向けて、何を感じるのか?」「感じ取った事実をどう解釈するのか?」
  • 人間の知的生産には、「知覚➜思考➜実行」という3つのステージがあります
  • 何の先入観も持たず、ただ眼の前の事物・事象をありのままに見ることが出来なくなってきている
  • 知覚とは、自分を取り巻く世界の情報を、既存の知識と統合しながら解釈すること
  • 新しいものは「誰かの主観」から生まれる
  • 知覚の価値は、他人とは異なる意味づけそれ自体のなかにあります
  • 情報は(中略)データそのものよりも、知覚に基づいた「意味づけ」が圧倒的に重要
  • ゼロベースで観る
  • インプットされた情報を既存の知識と統合し、意味を付与する知覚プロセスのほうは、半自動的に進む
  • 知覚という“コントロールできないもの”を磨く
  • 知覚的盲目
  • 何か明確な目的をもって探している状態からは、なかなか新しいものは出てこない
  • 観察眼を鋭くすれば、「アイデアを観る眼」も磨かれる
  • 絵画が最適な理由①バイアスが介在しづらい②フレームで区切られている③全体を見渡す力がつく
  • 注意点①十分な観察時間②多くの解釈を生む眼のつけどころ③知覚を歪める要素の排除
  • (水墨画)この絵に描かれたパーツは、あくまでも全体との調和のなかで意味を持っており、それらの位置・バランス・濃淡・強調度合い・空白部分なども含めた知覚に支えられている
  • ほとんどの創造性に関与しているのは、過去の学習・経験から得た知識を関連づけるプロセス
  • 点と点をつなぐ観察
  • 曖昧性が深まるほど、「知覚」への依存度は高まる

『知覚力を磨く 絵画を観察するように世界を見る技法』(ダイヤモンド社)神田房枝より


おかげでかなり復習&インプットし直しが出来ましたので、そろそろアウトプットにつなげて参ります。

津屋崎浜の夕日-こんな景色が日常にある贅沢。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

津屋崎浜の夕日-こんな景色が日常にある贅沢。

散歩を再開!と書いていたのは、ふた月ほど前のことでした。

夕方時間を見つけて浜散歩。刻々と変わる海の景色は、最高の散歩のお伴です。宮地嶽神社の光の道シーズンが終わって、夕方の浜は少し静かになりました。

砂浜を津屋崎浜から宮地浜に入り、光の道を通り過ぎて福間海岸の入り口でUターンして、光の道の宮地浜の鳥居から松林沿いに戻ってくるのが、最近のわたしのお散歩パターン。今ちょうど、帰り道で海にお日さまが沈むタイミングとなり、歩きながらこの景色を楽しんでいます。

津屋崎浜 夕陽

わたしのスマホの貧弱なカメラで撮っても、このコントラストの美しさは伝わると思います。これをふだんの散歩タイムに、それを目的とせずとも自分の目で見ることが出来るのですから、贅沢です。この日、この時間帯はちょうど満潮から引き始めたときで、海面が近いのも感じていただけると思います。

浜から一つ内側に入った松林沿いの道からの景色です。建物は、砂浜に面して建っている「海の家」。その隙間の路地から見える夕陽が、とても美しいのです。少しまた歩いて次の路地から海の方を見たら、お日さまが半分海に沈んでいたり、そのまた次の路地から見たら、もうすっかり沈んでいたり。

ここ福津・津屋崎に限らずとも、日本海側で観ることのできる景色だとは思います。でももし福津近辺にいらっしゃることがあれば、ぜひご覧いただきたい景色のひとつです。眼福です。「光の道」シーズンでなくても、見どころ満載。観光客が増えてしまった今となっては、光の道シーズンを外した方が、ゆっくり楽しめると思います。

読書『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

ご存じ『怖い絵』シリーズ中野京子さんの最新作です。

ドイツ文学者であり、絵画をテーマにした書籍を、大量に生み出しておられる中野京子さん。西洋絵画史に伝わる名品の数々を、現世のわたしたちにぐっと身近にしてくれる本の数々は、誰でもが気軽に絵画を楽しめるようになる、大きなきっかけになっていると思います。と同時に、美術界にとっても大きな貢献になっているのは間違いないでしょう。実のところ、わたしはまだ読んでいない本がたくさんありますが、これまでに読んだなかでは『名画で読み解く 王家12の物語』シリーズが、とても興味深かったです。

さて『名画と建造物』。『怖い』シリーズとはまた少し異なる角度からの、絵画へのアプローチで、図書館で発見して期待が高まりました。『怖い絵』シリーズから続く、独特の重厚感ある文章まわしによるエピソードが、安定の面白さでした。もともと雑誌の連載であったものを編集し直したとのことでしたが、対象となる絵画と、そのなかに描かれている建造物の「今」の写真が加わり、歴史と今を比較しながら見ることが出来ます。絵と写真はいずれもオールカラーという贅沢さ。なので、文章を読むのが面倒でも、ビジュアル的な要素で十分に楽しめます。

個人的には巻頭の、エドワード・ホッパー『線路脇の家』(=映画「サイコ」の家)の解説がツボにハマり、そこから一気に読み込みました。読者それぞれに、心に響く絵、建造物、エピソードを見つけることが出来ると思います。本書を片手に、美術館と建造物を巡る旅行するのも楽しそうですね。

『名画と建造物』(角川書店)中野京子著

美術と建築は密接な関係にあるものですから、相性が良いことは間違いありません。最近開いていませんでしたが、わたしの本棚には『くらべてわかる世界の美しい美術と建築』があった!と、引っ張り出してきて復習しました。この第2章が「美術のなかの建築」の特集になっています。西洋史をベースにした中野京子さんのアプローチと、建築を専門とする五十嵐太郎さんのアプローチ。どちらも面白いです。

ロンドンSladmoreのクリスマス・ショウ、スタートしました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ロンドンSladmoreのクリスマス・ショウ、スタートしました!

The Christmas show will run from now until 22nd December! とメールが届いて、そうだった、クリスマス・ショウだ!とあらためて12月を認識。作品が完成して写真を撮ったのも、ロンドンへの発送作業も10月でしたので、なんとなく自分のなかでは完了したような気になっていましたが、いえいえ、ショウは今からです。

Sladmoreに所属する作家がクリスマス・ショウのために作った新作が並びます。いわばグループ展。藤吉憲典は今年は10個ほどの新作を送りました。ギャラリーでの展示とともに、電子カタログにもなりますので、ロンドンに足を運べない方もご覧いただくことができます。下のSladmore公式サイト「Contact」ページ下方にある「Newsletter Sign Up」からメールアドレスを登録すると、展覧会の最新情報が届きます。ちなみに藤吉憲典(Kensuke Fujiyoshi)情報を得るには、「Department」から「Contemporary」を選ぶと、他の現代作家さんの情報とともに展覧会情報が届きます(の、はず!)。

大きなサイズの彫刻を手掛ける作家さんが名を連ねるSladmoreで、Kensukeの作品は贈り物にちょうど良いサイズだと言っていただけます。今年も、自分自身や大切な人へのクリスマスプレゼントとして喜んでいただけると嬉しいな、と。

藤吉憲典の龍-来年の干支「辰」の盃が出来ました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

藤吉憲典の龍-来年の干支「辰」の盃が出来ました!

一昨年までの一周(12年)は干支の置物(箸置き)を作っていましたが、その前の一周は干支の盃を作っておりました。満を持して(!?)盃に回帰、とでも言いましょうか。

もともとは、ふだんお世話になっているご近所の方々にお年始としてお礼かたがたお届けするために作り始めた「干支もの」。長らく販売用ではありませんでした。それが、次第に「販売してほしい」という声が増えてきて、お分けするようになり。

今年は珍しく12月の頭には完成しました。このところずっと年末ぎりぎりだったり、年明けてからだったりしたので、「おおー!」という感じです。お買い求めくださるお客様のことを考えれば、11月下旬から12月初めごろには出来上がっているのが、一番よいのだと思いますが、そこは作り手のペースに委ねているもので。

干支辰 藤吉憲典 龍盃

東京は南青山の百福さんで、お買い求めいただくことが出来ます。
百福さんの公式サイト https://www.momofuku.jp/

大阪阿倍野の暮らし用品さんでは、12月9日(土)~19日(火)の酒器展に並びます。
暮らし用品さんの公式サイト https://www.kurashi-yohin.com/

花祭窯のギャラリースペースでは、プラス二種類ご用意。

干支辰 藤吉憲典 龍盃

干支辰 藤吉憲典 龍盃

吉祥の霊獣「龍」。縁起を担いで良い一年を迎えたいですね♪

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023-その2。

博物館リンクワーカー人材養成講座 2023、前回は甲賀市教育委員会事務局歴史文化財課の佐野正晴氏による『「歴史文化財課 佐野さんの民具図鑑」の作り方』でした。

今回は、山梨県にある「中村キース・へリング美術館」の学芸員さんによる「社会課題と向き合う美術館活動」のお話。キース・へリングのコレクションを持ち、キース・へリング財団から日本で唯一認証されている美術館ということで、個人的には今年度の連続講座のなかで一番興味を持っていた回です。上の写真は、中村キース・へリング美術館のサイトから。https://www.nakamura-haring.com/

31歳という早逝のキース・へリングですが、ニューヨークでブレイク後、日本では1983年の初来日以降なんども展覧会が開かれ、本人も来日しています。ダンナ・藤吉憲典は、高校卒業後に上京して東京で最初に観た展覧会が、キース・へリングだったとのこと。この時は、へリング本人も来日していました。そんなふうに、我々世代にとっては、とても親近感ある存在です。

以下、中村キース・へリング美術館「社会課題と向き合う美術館活動」のお話より、備忘。


  • キース・へリングが向かい合った(’80年代当時の)社会課題➜美術館としてその意思を継いで「今日的」な社会課題に向き合う。
  • キース・へリング=アーティストであり、アクティビスト(政治的・社会的活動家)。
  • 「展覧会活動」と「社会活動」の両軸。
  • リスペクト&インクルーシヴ。
  • 著作権から生じる利益➜財団➜社会活動資金:本人が没したのちも継続できる社会活動基盤の仕組みを作り上げた。
  • ↑↓キース・へリングの作品は、既に社会に溶け込んでいる
  • ↑例えば…各種ブランド等とのコラボ商品➜コピーライト商品によるのアートの拡散。
    パブリックアートの大量設置➜「見たことがある!」機会の大量提供。
  • Art is for Everybody.
  • アートを見るために足を運んでもらうのではなく、日常の中にアートを出していく。
  • 大切なのは、アートに興味のない人の「目に触れる」こと、「足を止める」こと。

↓中村キース・へリング美術館の取り組み↓

  • 美術分野の専門家だけでなく社会課題に携わる専門家へのインタビュー、共同プロジェクト。
  • 狭い分野の専門家から、個々の声を拾い上げ、発信する。
  • 作家年表・世界史年表・日本史年表(+美術館として起こしたアクション)を一覧➜作品が生まれる裏にあった社会の動きが見え、作品・作家への理解が深まる。

↓「語り場」から↓

  • 身近なところから取り組める社会活動がたくさんあり、そうと意識していないだけで、すでに取り組んでいる社会活動がたくさんある。
  • 各館の取り組みをもっとアピールしていく必要性。
  • 近年格段にやりやすくなってきている情報発信。継続的に取り組むには、まずは発信する側が楽しんでいるか。
  • 資料・情報をどう見せるか、どう伝えるか。
  • 社会課題と美術館をどうつなげていくか➜どの館にも必ず身近な社会課題との接点があり、それほど難しいことでは無い。

アートエデュケーターとしてだけでなく、現代にアーティストをプロデュースする立場としても、ものすごく考えさせられ、勉強になりました。山梨にある館に、足を運ぶ機会を必ず作りたいと思います。

コラージュ(切り貼り絵)講座@郷育カレッジ、今年も開催いたしました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

コラージュ(切り貼り絵)講座@郷育カレッジ、今年も開催いたしました。

もともとは数年前に、郷育カレッジに美術系の講座がほとんど無いよね…というところから、これではイカンと始まった講座のうちの一つです。美術の教育普及ワークショップメニューのひとつですが、「心の健康」へのアプローチを意図しています。コラージュ制作を通じて、自分の内側を可視化し、客観的に受け入れていくことで、心のリフレッシュを図る。わたしはこのワークショップを「Meet Me at コラージュ(=コラージュ制作を通じて自分に出会う)」と名付けています。

今回の講座では、コラージュ制作に時間をかけるだけでなく、グループワークの時間をたくさんとることが出来ました。毎年、ご参加の方々の特徴がそれぞれにあるのですが、今年はまずご参加の皆さんの集中力の高さに驚かされました。15分ほどのインストラクションを経て、「では実際に作ってみましょう」で作業をスタートしてすぐに、会場がシーンとなったのです。今までの経験からするとかなり珍しいことでした。作業時間が進むにつれて静かになっていくパターンは多いのですが。

皆さん黙々と手を動かしはじめて、すぐに制作の世界に没入されたので、予定時間通りにスムーズに進みました。あとから何人かの方にお話を伺うと、「自分が形にしたいもの」のイメージが既になんとなく自分のなかにあった、という方が少なからずおられました。もしかしたら、受講に合わせてイメージトレーニングをしてきてくださっていたのかもしれません。皆さまの意欲を感じました。

以下、受講者の皆さまからのご感想から。


  • たいへん楽しい講座でした。
  • 初めての体験でしたが、とても楽しかったです。自宅でもやってみようと思います。
  • 毎年参加しているが、自分を振り返る大事な時間になっています。
  • 切り貼り絵、参加してみて楽しかったです。またこのような機会があればと思います。
  • 初めての体験で、あっという間に時間が経ちました。ありがとうございました。
  • 初めてでしたが楽しかったです。自宅でもまた作ってみたいと思います。
  • 他の人の作品を見せてもらって、思いを話していただいたのが楽しかった。

初受講の方が楽しんでくださったこと、二回目以降の方が自分の振り返りの機会にしてくださっていることに、まずは講師としてはホッとしています。そして「自宅でもやってみる」と思ってくださった方が、何人もいらっしゃったのも、とても嬉しいことでした。そうなんです。簡単なので、ぜひ気が向いたときにやって欲しいのです。と言いつつ、自分自身そんなに定期的にできているわけではありませんが。

まずはコラージュ制作自体を「楽しい!」と思っていただけることが、一番大切です。その次の段階として、コラージュから読みとれる「自分」に関心を持って向き合うことの大切さを、じわじわと伝えていけたら良いな、と思います。美術的コラージュの良さを存分に生かしつつ、くつろいで対話を楽しめる場になるように、エデュケーターとして心がけて参ります。

読書『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。表紙の装丁の文様が気に入ったのと、やはり「イスラエル」が気にかかりました。これまでにイスラエルの作家が書いた小説を読んだことがあるかどうか、定かではありません。おそらく無いのでは、と思います。

古今のいろんな作家さんによる、短編・掌編サイズの物語の傑作選。一つ一つの作品の後に作家の略歴解説がついているのが、とても親切でした。どのお話をとっても、イスラエルという国の地理的な位置づけ、歴史的な位置づけを強く意識させられました。そのような周辺情報無しでもストーリーそのものを味わえますが、少しの知識を足すことで解釈が進み想像力が喚起される側面があるのも事実です。最初の一話を読んで、まずはイスラエルの位置を確認し直し。上の写真は、我が家の壁に貼ってある世界地図から。こういうときにすぐに確認できるので便利です。

前半に集められた、いわば現代の小説家の方々による短編が、とても興味深かったです。それぞれのストーリーに横たわる、それぞれに独特の世界観は、いずれも彼の地で生きる厳しさを考えさせるものでした。日本という国でぬくぬくと生きてきた自分には、生み出すことのできない世界観。あからさまな残酷さや、現実的な悲惨さというよりは、じっと動かずにある諦観と怒り、そのなかを生きる強さなどがないまぜになったパワーを感じました。

海外の書籍を翻訳したものを読むといつも思うのですが、翻訳して届けてくださった出版社や翻訳者の方に、今回も「感謝」の一言でした。世界に目を向けなければ、というときに、その方法の一つとして、その国に生きる人が書いた本を読むことは、とても有用だとわたしは思っています。もちろん新聞を読んだり、テレビやインターネットから流れてくるニュースを見たり聞いたりすることも、その一つかもしれませんが、政治によって簡単に情報が操作され、フェイクニュースがはびこるなかでは、創作された小説から読みとり推し量ることによって得られた印象の方が、事実に近いこともあるような気がしています。

本書の翻訳・編集者の方からは、並々ならぬイスラエルへの執着を感じました。こういう方がいらっしゃるからこそ、我々は、知らない世界を少しづつ垣間見ることが出来ます。これを機会にイスラエル作家の小説、気にかけていきたいと思います。

『砂漠の林檎 イスラエル短編傑作選』(河出書房新社)サヴィヨン・リーブレヒト、ウーリー・オルレブほか著/母袋夏生編訳