花祭窯の霜月の庭。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯の霜月の庭。

あっという間に11月です。ここ津屋崎では、先週この冬一番の…って、もう冬なのですね…寒さがあり、毛布やらフリースやらを引っ張り出したところでした。

ツワブキ

ツワブキが庭のあちこちに咲きはじめています。この黄色が大好きです。赤く色づいて見える葉っぱは、ナンテンの木。

山茶花

サザンカはつぼみがたくさんついています。先日一輪だけ先に咲いているのを見つけましたが、季節はこれから。この冬もたくさん咲いてくれそうです。

ムラサキシキブ

先月に引き続き、ムラサキシキブもきれいに実をつけています。ムラサキシキブの奥に見えるのは、干し柿。

干し柿

今年はダンナがぜんぶ仕込んでくれました。買ってきた麻ひもが弱くて干し柿の重さに耐えられませんでしたので、ビニール紐で。

花祭窯の庭

この花の名前は何だったかしら…と思いつつ。可憐な雰囲気でいくつも咲いています。

ナンテン

ナンテンも赤く色づいて参りました。

水仙

そしてこちらは今から伸びてくる、水仙。

ひと月過ぎるのがあっという間に感じる今日この頃ですが、先月の庭の様子を振り返れば、顔ぶれはずいぶんと変わってきているもので、それだけの時間が経っていることがわかります。

花祭窯の露地の小さな世界に楽しみをもらう毎日です。

このあとなにかご予定がおありですか?と聞かれないようなお点前を目指します。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

このあとなにかご予定がおありですか?と聞かれないようなお点前を目指します。

月に2回のお茶のお稽古は、自分に向かい合う貴重な時間です。「自分に向かい合う時間」って、どういうことだ!?と問われれば、お茶のお稽古におけるわたしの場合は「自分の性分を否応なく認識させられる時間」と置き換えることが出来ます。

週末に予定されているお茶会で、濃茶を点てる係を仰せつかりましたので、先日のお稽古ではそのお点前を見ていただくことに。濃茶のお稽古に取り組んでいたのは、もう何年も前になります。基本のお点前の復習ということになりますが、それでもまた手順を思い出すのに四苦八苦。

そしてわたしにとっての一番の難敵は、手順以前に、一つ一つの所作がおろそかになってしまうことです。頭で考えはじめると、とたんに急いた動きになり、雑になってしまいます。ほんとうに、何年やっても何度やっても同じパターンの繰り返しで、我ながら呆れます。そんなダメダメぶりを最近書いたような気がする…と思い見直したところ、前回書いてから、まだふた月と経っていませんでした(汗)。

お濃茶のお点前を見ていただいた後に、先生方からいくつかのご指南をいただきました。そのなかのひとつが「一つ一つの所作を、もっとゆっくりすると、もっときれいに見えますよ」ということ。これまでにも数えきれないほどいただいているご指導です。「せっかちな性格が出てしまいますね」と弁解すると、「わたしもね、先生からよく『このあとなにかご予定がおありですか?』って聞かれていたのよ」と。そして「大丈夫。何度も何度も繰り返してやっていくことで、少しづつ身に付いていくから」とおっしゃってくださいました。

「このあとなにかご予定がおありですか?」というのはつまり、「お点前をそんなに急ぐ理由が何かあるのですか?」ということですね。ゆったりとエレガントな先生が、かつてそのようであったとは全く想像できず、わたしを励ますために作り話をしてくださったのかもしれません。それでも信頼する先生から「大丈夫」と言っていただいたことで少し安心し、それがいつになるかはわかりませんが、大丈夫になるまで稽古を積むべしと、あらためて思えたのでした。

というわけで、わたしのお茶修行は続きます♪

郷育カレッジ「ふくつ散歩 神興東(じんごうひがし)編」に参加しました!

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

郷育カレッジ「ふくつ散歩 神興東(じんごうひがし)編」に参加しました!

郷育カレッジ講座のなかでも定番の人気講座となりつつある「ふくつ散歩」シリーズ。福津市内の8つある小学校区を単位としたエリアで、それぞれの地域の方が地元を案内してくださるお散歩シリーズです。どのコースも毎回定員越えの申し込みがあるので、抽選で当たった講座にしか参加できませんが、今年度初めて「神興東」が当たりました!

歴史ある「神興神社」からスタートし、今回のメインは「みずがめの郷」と親しまれるエリアにある「久末ダム」の周囲をゆっくりお散歩です。福津市内にある大きめの公園のうち、市が管理する「なまずの郷」「みずがめの郷」「あんずの里」は、いずれも自然豊かな立地にあり、運動施設を備えているところが共通点。日ごろから市民の憩いの場、健康活動の場になっています。そういえば、なまずの郷とあんずの里には何度も行っていますが、みずがめの郷に足を踏み入れるのは初めて!だということに気がつきました。

さて、みずがめの郷。久末ダムをぐるりを回るウォーキングマップには、「小回りコース」と「大回りコース」とがあり、それぞれの距離と参考所要時間・参考歩数が記載してあります。ウォーキングコースに距離が書いてあるのはよく見かけますが、所要時間や歩数の参考情報があるのは新鮮でした。自分のレベルやその日の体調に合わせて選択できますから、親切ですね。今回はゆっくりと景色を楽しみながら、ということで、小回りコース。

郷育カレッジふくつ散歩 みずがめの郷

郷育カレッジふくつ散歩 みずがめの郷

郷育カレッジふくつ散歩 みずがめの郷

ほぼ平坦で歩きやすく、池(ダム)の景色も周りの木々も美しく、素晴らしいお散歩コースでした。これまでみずがめの郷に行ったことがなかったなんて、我ながらもったいないことをしました。これからは、折を見つけて散歩に行こうと思います♪

再読書『コラージュ入門』(一麦出版社)藤掛明著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

再読書『コラージュ入門』(一麦出版社)藤掛明著

今月末にコラージュを活用した美術講座を行うので、資料準備の前に読み直し。わたしがアートエデュケーターとしてコラージュを取り入れるきっかけとなったのは、学芸員技術研修会の「美術館でコラージュ療法」講座でした。そのときご指導くださった、聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科教授・藤掛明先生の本です。2021年に新刊を購入していますので、約2年ぶりの復習読書。

藤掛先生は博士号を持つ臨床心理士であり、特に芸術療法のスペシャリストとして現場での仕事をしてこられた方です。本書は「コラージュ療法入門」ではなく、あえて「療法」を外して『コラージュ入門』となっています。治療や更生を目的とした臨床的コラージュの枠を出て、誰もが(本書での言い方を借りれば「一般の人たち」が)使い、自己の成長に役立てることが出来るコラージュ。活用の場が広がっていくことへの期待を感じさせる本です。

以下、備忘。


  • 「自分を新しく発見できる」「自分が好きになれる体験」
  • 完成した作品は、独特の魅力を放つ。それは美術上の美しさというのに止まらず、自分を新たに知り、周囲との関係を考えるヒントに満ちた不思議な魅力がある。
  • コラージュで自分を知り、関係を深める
  • コラージュのイメージの心地よい流れに身をゆだね、そのイメージから、勇気づけられるもの、触発されるものを受け止めていけばよい
  • 即興的に取り組む
  • 「最近のわたしの気持ち」
  • 第一印象
  • 作者の意図を味わう
  • 多義的に味わう
  • 「印象や感想を交換する」
  • 「解釈はしない。印象を述べる」
  • その後も作品を眺め直す習慣を作る
  • 自由にイメージから入る
  • (Doコラージュは)言葉の関与が増え、表現に一定のコントロールが及びやすくなる。
  • (その結果)メッセージ性・意図性が非常に高まる。
  • (研修参加者の期待)自分を発見する
  • 自己洞察も自己表現も楽しいが、一番楽しくわくわくするのは、会場で起きる相互作用性のドラマ
  • 会場参加者全体に向かって肯定的なコメントをフィードバックする
  • 暴くのではない
  • 安全で保護された環境を用意し、開放的な雰囲気の中で、意味ある発見がもたらされる
  • 頭の整理
  • 欲しいものと要らないものがくっきりと浮かび上がってくる
  • 現実には好きなものを自由に手に入れることは無理でも、台紙のイメージの世界ならば体験できる
  • 自分の世界を自分らしく意味づけしてもよいのだという自信
  • 他者のコメントが、他者の意味付けと異なる場合でも(というか異なるからこそ)、それも多義的な意味の一つとして受け止められ、むしろ作者の世界を広げ、深めてくれることになる。
  • 新しい自分との出会いであり、多くは、少し感じていたものを言葉にしてもらったような納得感
  • 自己受容
  • 「何かがわかるものではなくて、作ったものをヒントにして、いろいろなことを考えて行く方法」
  • 作品が完成した段階では、まだイメージは多義的なままの世界をとどめている
  • 完成後の分ちあいを丹念におこなうとその時点で、統合に向けて動き出します。
  • 多様性の世界
  • 参加者一人ひとりの感想が皆意味がある
  • 描き手自身やグループメンバーが、どの意味にぴんと感じるかで、より意味のある事柄が明らかになってきます。
  • 今大切な意味が何なのかを発見しあう、探しあう
  • 一つの正解に絞り込むのではなく、一つでも多くの正解を生み出し、広げていくという感覚
  • ここがめずらしいな、この人のユニークな表現だな
  • 一つの作品の中に共通しているテーマや比喩を探す
  • 台紙の使い方の特徴から分かること
  • 描画作品の用紙は、実施者から参加者に与えられた「世界」
  • この与えられた「世界」をどう使おうとしているのかという視点
  • 空間象徴
  • コラージュ作品は、作成者本人に自由に語ってもらうのが大切
  • 相手の大切な世界を引き出す質問
  • コラージュ画面の写真が、自分自身の(比喩的に)分身であることを感じてもらう体験
  • 無意識と意識との双方にまたがっており、言葉によって介入することに向いている
  • 既存の写真に意味を与えていくおもしろさ

『コラージュ入門』(一麦出版社)藤掛明 著より


今回は特に「わかちあい」における要点をピックアップしてみました。研修の場面でも「対話」が復活し、ワークショップに取り入れることが出来るようになって参りましたので、ますますコラージュの効果が期待できます。楽しみです。

偶然発見、「coppers早川 造形展」@阪急うめだ本店。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

偶然発見、「coppers早川 造形展」@阪急うめだ本店。

先週のことですが、大阪日帰り出張の帰りに、ちょっぴり時間を作ることが出来ました。

現在大阪市内では、めぼしい美術館が大規模施設修繕で長期休館しています。おそらく万博に備えて、なのでしょうね。そのうえ月曜日でしたので、美術展を観に行くのは諦めておりました。が、新幹線の時間に少し間がありましたので、せっかくだからと梅田で降りて久しぶりに阪急さんのうめだ本店へ。

どんな展示をしているかは全く情報の無いままに、7階の美術画廊へ直行。そこで目に飛び込んできたのが、上の写真にあるようなオブジェの数々でした。金属だということはわかりましたが、何で作っているのかなぁ、造形が面白いなぁ、と思いながら拝見。すみません、coppers早川さん、存じ上げませんでした。早川篤史さん(息子さん)と早川克己さん(お父さん)による親子ユニットだということで、DMに書いてある略歴を拝見して、なるほどと納得。

展覧会タイトルに「coppers早川 造形展 ~銅の不思議な世界 2023~」とあった通り、不思議な、でも何となく懐かしい親しみを感じる作品が並んでおりました。造形にも色合いにもなんだか明るさがあって、完成度の高さは感じながらも、取り澄ましていない姿に好感。短い時間ながら充実した鑑賞時間となりました。そうと知らずに阪急さんに向かったのでしたが、ラッキー♪阪急うめだ本店さんでの会期は11月7日まででした。

おかげで、弾丸日帰りながらも一つ展覧会を観ることができて、充実度合い増し増しの大阪出張となりました。最近は、できるだけ出張の際に、美術館やギャラリーでの展覧会を観る予定を入れるようにしています。coppers早川さんは、福岡では福岡三越で個展を開催なさることがあるようです。情報チェックして、また見に行きたいと思います。

特別展「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」@九州国立博物館 を観て参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

特別展「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」@九州国立博物館 を観て参りました。

日曜日は朝一番で九州国立博物館へ。花祭窯から九州国立博物館へは、車の混み具合にもよりますが、だいたい1時間半程度です。と思って8時に出発したところ(九博のオープンは9時半なので)、長いこと工事が続いて片側一車線をいくつも抱えていた道路がいつの間にかほぼ全線開通しており、1時間で到着。思いがけず早く到着できたので、開館前の30分は、便利な「アクセストンネル(虹のトンネル)」でつながっている太宰府天満宮へお参りに行くことが出来ました。ラッキー♪

さて九州国立博物館。今年三回目の訪問は、年初の美術展チェックから楽しみにしていた、古代メキシコ展です。

6月に手元に届いた季刊誌『TRANSIT』の特集がメキシコだったのも後押しして、否応なく期待が高まっておりましたが、

その期待に応えてくれる、大満足の展示内容でした!

まずなによりひとつひとつの展示作品が素晴らしく、ピラミッドの写真をドーンと据えた壁面も効果的で、適度な展示間隔と背面までぐるりと見える展示が随所にあり、年表や地図などの資料も充実していました。

何が一番良かったか!?選べません。あれもこれもと、もし家に持って帰って良いと言われたれら、欲しいものがたくさんありすぎました。「今日の一番」を選ぼうと会場を2周しましたが、どれもこれも、素晴らしい。土偶の数々が、土偶と呼ぶにはその装飾の凝りようがすごすぎました。赤の女王の部屋も良かった。3周目に入ろうかと思いましたが、さすがに10時を回るとお客様の数が増えてきましたので、断念。大満足の展覧会でした。

全作品が撮影OK(ただしフラッシュ禁止・動画禁止)というのも、良かったと思います。自分の好きなものを写真で持って帰ることが出来るというのは、とても嬉しいこと。わたしは、特に子どもたちが自分の気に入ったものと一緒に写真を撮ってくれたらいいな、といつも思うのです。ずっとあとから写真を見返したときに、その時の自分の好きだったものを辿ることが出来るので。日本国内の美術館博物館も、だんだんと撮影OKを推進するようになってきたので、良かったなぁと思います。もちろん保護保存の観点から、撮影禁止をするべきところはするべきですが。

九州国立博物館の特別展は、年内はこれがラストです。会期は12月10日まで。大満足の休日でした。

特別展「古代メキシコ マヤ、アステカ、テオティワカン」@九州国立博物館 

BCP(事業継続力強化計画)策定に、ようやく手を付けました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

BCP(事業継続力強化計画)策定に、ようやく手を付けました。

BCP = Business Continuity Plan、日本語で言うと「事業継続力強化計画」。日本語で言った方がわかりやすいと思うのですが、それはさておき、これをやらねば!と腰を上げたのは、一年以上前のことでした。

せっかく道筋をご指南いただいたのに、1年以上放置状態…で、そんなわたしのダメダメぶりを見越していたかのように、プラン策定からgBizでの電子申請までを一貫で行うセミナーを、福津市商工会さんがご用意してくださいました。これは…わたしのため!?指導してくださる中小企業診断士の先生は、前回と同じ先生で、そこから一歩も進んでいないわたしとしては合わせる顔がないところを「恥を忍んで今度こそ!」の決意を込めて申込。ちなみにgBizとは、法人や個人事業主向けの共通認証システムで、これを申請してIDを取得すると、事業者向けの複数の行政サービスを利用しやすい、というものです。

さて当日…の少し前に、商工会の経営指導員さんからお電話いただきました。「実は」とおっしゃることには、なんと今回のBCP研修の参加希望者が「花祭窯さんだけなんですよ」ということで、セミナーがキャンセルになるのかと思いきや「なので、マンツーマンでプランを策定することが出来ますので、時間配分なども柔軟に変えながら進行しますね!」というありがたいお言葉。文字通り、わたし(花祭窯)のために開催していただくこととなりました。

いやはや贅沢ですね。わたし一人に向けて解説してくださるので、疑問があるところはその都度先生のお話をさえぎって、質問・確認することが出来ました。30分ほどの解説の後は、実際に電子申請用の画面を開いて、直接書き込んでいきました。上の写真は、下書き用のフォーマットをプリントアウトしたものですが、画面上で直接入力していっても、一時中断で保存・修正・追記が出来ます。登録申請者が増えるに従い、どんどん改良されているようで、行政のシステムにしては使いやすいと思います。

基本的な事項の入力が済み、要領がわかってきたところで、次回までに残りの計画を入力するのを宿題として、一回目の講習はお仕舞い。2週間後の次回は、先生に入力内容を確認していただいて、修正加筆のうえ電子申請完了!を目指します。

ところで今回この制度の概要をあらためてご説明いただいて、BCP策定&申請が、事業資金融資や補助金申請の際の加点ポイントになるケースがけっこうあることがわかりました。計画策定は、あくまでも自分たちの事業を守る指針として取り組むものですが、同時にそのような加点ポイントがあるとわかると、モチベーションアップにつながりますね。

読書『スカーレット』(新潮社)アレクサンドラ・リプリー著/森瑤子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『スカーレット』(新潮社)アレクサンドラ・リプリー著/森瑤子訳

林真理子著『私はスカーレット』にすっかり魅了され、このあとスカーレットはいったいどうなるのやら…と、気にかけていたわたくし。

マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』の後を受けたアレクサンドラ・リプリーによる続編『スカーレット』が、ちゃんと図書館にありました!で、さっそく借りに行き、まず驚いたのがその厚さ。上の写真を見るとわかりますが、なんと6cm超、ページ数にして1090ページ。今なら文庫版でなくても分冊にするだろうな、というところですが、この厚さと重さも含めて迫力の一冊でした。

スカーレットの「その後」は、マーガレット・ミッチェル本人が書くことを良しとしなかったため公募されたといわれており、世界中の熱烈なスカーレットファンが、それぞれに「その後」の物語を紡いだのだと思うと、ドキドキしました。たくさん寄せられたであろう「続編」のなかから見事その座を射止めた本書は、質・量ともに期待に違わずお腹いっぱいになるものでした。

森瑤子さん訳の本書、林真理子著を読んだ後で、ほぼ違和感なくしっくりときました。もしかしたら、林真理子氏が森瑤子訳の『スカーレット』のイメージをある程度意図的に踏襲していたのかもしれないな、と感じました。森瑤子さんと少しだけ異なる点としては、林真理子さんは黒人や地方の登場人物のセリフに方言のような日本語を当てていません。これは出版された時代の違いだと思います。ともあれ、とてもスムーズにストーリーに入り込めたのは、世界観に大きなずれが無かったからであり、大切なポイントだったと思います。『私はスカーレット』は一人称での訳本ですが、スカーレットの一人称語りはアレクサンドラ・リプリーの『スカーレット』から始まっていたので、そこが踏襲されていたのも良かったのかもしれません。

さて『スカーレット』。『風と共に去りぬ』のアメリカ南北戦争に対して、イギリスのアイルランド問題を持ってきたところに、ただの大恋愛小説としては終わらせない著者の意気込みを感じました。人種と階級、持つ者と持たざる者。わたしにとっては、アメリカとイギリスの歴史の一側面を知るための興味深い教材にもなりました。そして、スカーレットとレット・バトラーのすれ違いは、これでもかというようにまた繰り返されながらも、少しづつ距離を詰めていく感じが絶妙でした。読者に二人の愛が成就するという確信を疑わせないあたりは、続編を書く上で不文律だったのでしょう、安心して読み進めることが出来ました。

残りのページ数が少なくなるにつれ、もうすぐスカーレットとバトラーが今度こそ気持ちを通じさせるはず!という期待と、もうすぐストーリーが終わってしまうことに対する寂しさが、ないまぜになって押し寄せてきました。林真理子氏の『わたしはスカーレット』にはじまり、こんなに気持ちを持っていかれた読書は久しぶりでした。こうなると次は、もう一度『風と共に去りぬ』に立ち返らねばと感じています。その次は原著に挑戦することが出来たら良いな、と。続編の『スカーレット』も、原著からするとずいぶん意訳されているという評価もあるようなので、やはり原著を読んでみるべきかな…と。これを全部果たそうとしたら、読書時間がいくらあっても足りなくなりそうですが(笑)。おかげさまで、すっかりスカーレットのとりこです。

Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その2。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その2。

現代アートコレクターのOmer Koc氏は、藤吉憲典のSladmore Contemporaryでの最初の個展の時から、作品を購入してくださっています。ロンドンのギャラリーMESSUMSから刊行される氏のコレクション図録に、インタビュー記事を提供いたしました。英文原稿については刊行待ちとなりますが、元となっている日本語原稿を一足早くこちらでご紹介いたします。


Q3. あなたにもっとも影響を与えたアーティストあるいはアート作品は?

A3. わたしに影響を与えたものとして、一人のアーティストあるいは一つの作品を上げるのは、とても難しいことです。ミケランジェロ、ルノアール、マティス、ピカソ、シャガール、クリムト、ロダン、モネ、北斎、漫画家の永井豪、大友克洋、手塚治虫、そして、名も知らぬ古伊万里の職人たちや、あらゆる分野のアーティストとその作品からさまざまな影響を受けています。

表現手法や技術的な影響だけでなく、彼らのチャレンジングな生き様もまた、わたしに大きな影響を与えています。彼ら先人たちのおかげで、わたしは作りたいものを作り、好きなことに挑戦する勇気を持つことが出来ました。

例えば「人魚」という作品があります。伝統的な肥前磁器の表現技法・技術で作られていますが、海の色や鱗の色の表現はモネの影響が強く出ています。またその姿・造形には、マニエリスムの時代の影響がみられます。そして作品全体の醸し出す雰囲気を見れば、漫画家・永井豪の世界観に強く影響を受けていることがわかります。

ただ、実のところ制作している最中には、まったくそのようなことは意識も意図もしていません。ただ自分が「こうすると一番美しくなる」と信じるように作るのみです。完成した作品を観た人からそのような感想を得て、あらためて自分で振り返ると、なるほどその通りかもしれないと感じる次第です。

わたしはアカデミックな美術教育を受けていませんので、わたし自身の五感の美意識に忠実に作品を作っています。美しさの基準は、ひとつではありません。たくさんの偉大な先人たちが創り出した美しい作品の数々に、たくさんの影響を受けています。


実はこのほかにもいくつか質問を受けていましたが、それらは個別の作品についての質問で、文章だけでは伝わりにくいものがありますので、ここでは割愛いたしました。全文(英文)の公開は、図録の刊行を待つことになります。とっても楽しみです。

↓「Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その1.」はこちら↓

Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その1。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

Omer Koc’s Ceramic Collection (陶磁コレクション図録)へのインタビュー記事日本語原稿。その1。

現代アートコレクターのOmer Koc氏は、藤吉憲典のSladmore Contemporaryでの最初の個展の時から、作品を購入してくださっています。ロンドンのギャラリーMESSUMSから刊行される氏のコレクション図録用に、藤吉憲典のインタビューを求められたのでした。5月に英文原稿を送り、藤吉に関する部分については、夏に既に校正も終了し、刊行を待つばかりとなっています。英文原稿については刊行待ちとなりますが、元となっている日本語原稿を一足早くこちらでご紹介いたします。


Q1. ご自分のことを陶芸家だと考えていますか、それとも彫刻家だと考えていますか?

A1. どちらでもあり、どちらで呼ばれても構いません。1997年に陶芸作家として独立したところから、わたしの作家としてのキャリアはスタートし、その10年ほどあとから、磁器彫刻家としての作品を発表し始めました。そして今は、書画家(水墨画家)としても作品を生み出しています。すべての表現技法がわたしにとっては大切なものであり、これからもアーティストとしてどのように変化していくか、自分自身でも予見できません。わたしの作った作品を所有してくださる方が、「藤吉憲典は何者か」をそれぞれにイメージしてくださったら、それでよいと思います。


Q2. どのようにして陶芸家・磁器彫刻家としての技術を身に付けたのでしょうか。どのような環境に影響を受けてきましたか?

A2. 佐賀県の磁器の産地・有田の隣町で育ちました。当時県内で唯一デザイン科があった有田工業高等学校に進学し、高校時代は絵ばかり描いていました。卒業後は、グラフィックデザイナーとして東京のデザイン事務所に就職。ところが父親の病気のためにわずか3年ほどで帰京することとなり、佐賀有田の窯元に商品開発デザイナーとして参画したことが、やきもの(肥前磁器)との出会いとなりました。

立体であり用途を求められるやきもののデザインは、グラフィックで培った平面デザインの技術やセンスだけではまったく不足であり、そこから「古伊万里」と呼ばれる古い名品、遡っては中国や朝鮮の古い磁器を研究しまくることになりました。美術館や博物館、骨董商、ギャラリーに通って実物を見て触るとともに、資料を大量に読みました。わたしは、やきものについての学術的な教育も受けていませんし、やきものの師匠もありません。古い名品こそがわたしの師となってくれました。

おかげで、自分自身の目、手、五感を通して、自分の美意識に忠実に、ものづくりに向き合うことが出来ています。そしてもうひとつ、幼少期から書道家であった父親の特訓を受けており、書道の基礎が叩き込まれていたことも、今考えると特質すべきことでした。自然な筆遣いや余白のバランス感覚、全体としての調和美を最も重視する視点は、わたしが陶芸作家としてデビューし、磁器彫刻家として作品を生み出すキャリアにおいて、大きな特長になっていると思います。


Q3.以降はまた次に。

偶然同じ時期にインタビューが入った『Homes and Antiques』8月号の、日本語もと原稿も、バックナンバーでご紹介しています。どちらも読んでいただくと、アーティスト・藤吉憲典の作品バックボーンが、より分かりやすいと思います。

英国の雑誌『Homes & Antiques』8月号への、藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その1。その5まで続きます。