こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
読書『赤く染まる木々』(早川書房)パーシヴァル・エヴェレット著/上野元美訳
いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、著者名借りです。『ジェイムズ』(河出書房新社)、『消失』(集英社)、『消失』を映画化した『アメリカン・フィクション』と、パーシヴァル・エヴェレットの名前は、わたしの記憶にインパクトを残していたようです。名前の既視感で本書を手に取り、表紙を眺めているうちに「あ!『ジェイムズ』の人だ!」と思い出しました。
本作もまた、わたしが読んだ前2作に引き続きのテーマです。『ジェイムズ』が皮肉を最大限に込めたパロディの形を借り、『消失』がブラックコメディの形を借りていたのに対して、本書『赤く染まる木々』は、実にストレートでした。アメリカの黒人リンチの歴史に迫るミステリーは、次々に起こる事件に、根本にある動機以外は何の解決も解明も見いだせないままにストーリーが終わり、読み手に「考える」ことを促します。この「なにも解決していない、なにも終わっていない」というのが、著者の一番言いたいことなのかもしれない、と思いました。
読み始めてまず思い出したのは、ビリー・ホリデイの歌『奇妙な果実』にまつわるストーリーでした。本書の中にも、その歌詞(日本語訳)が載っています。アメリカの公民権運動が活発化したのは、1950年代後半から60年代中頃とのこと。第二次世界大戦の敗戦国である日本の民主化を推し進めた、となっている米国が、自らの足元ではまだまだこのような状態であったことに、あらためて大きな矛盾と衝撃を感じました。
本書では、米国の現在と、現在の権力者に対する風刺的な描写もあります。読み終わった今、切に思うことは、パーシヴァル・エヴェレット氏が、このまま本を書き続けることができますように、ということ。そして、日本にも届きますように、ということです。
