読書『海に眠る古伊万里 水中考古学からのアプローチ』(雄山閣)野上建紀著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『海に眠る古伊万里 水中考古学からのアプローチ』(雄山閣)野上建紀著

雄山閣という出版社からの刊行物について、このブログに掲載するのは初めて。公式サイトには「日本最大級の学術専門書籍出版社 考古学・歴史・美術を中心に刊行」とあり、なんとも魅力的な響きです。学術書は価格が高くなりがちですが、欲しい人にとってはそれだけの(あるいはそれ以上の)価値あるものなので、仕方がありません。この機会に野上建紀氏の著作をまとめて購入しようかとも思いましたが、まずは一冊目を読んでみてからにすることに。ところで「水中考古学」なる言い方を、わたしは本書で初めて知りました。上の写真は、陶片ミュージアム@花祭窯の展示棚に並ぶ唐草の陶片。

「海を渡る陶磁器」に関する本は、これまでにも何冊か読んできていましたが、ここまでがっつりと自分たちの取り組む「陶片ミュージアム」とフィールドが被っているものに出会えたのは、とても貴重です。数年前に、野上建紀氏が西日本新聞に「海に眠る古伊万里」についての連載記事を書いているのを見つけ、こんな研究者が長崎大学にいらっしゃるのね!と、密かに喜んでいたのでした。その最新刊が出るという情報を得たので、即ゲットした一冊。昨今すっかりページ枚数が減り、字も大きくなって記事ボリュームが心もとなくなりつつある西日本新聞ですが(笑)、こういうことがありますので、チェックが欠かせません。

さて本書。陶片ミュージアムをいよいよスタートしたわたしたちにとって、関連知識を補うのに、素晴らしい教科書になりそうです。ここ津屋崎周辺の沿岸部は、本書で区分するところでは「玄界島海底遺跡」から「岡垣浜」の間にあるエリアになり、そりゃたくさん上がってくるよね!と嬉しくなりました。肥前磁器が上がってくる国内の沿岸部を示した地図だけでなく、輸出伊万里についても調査報告が載っているのが、ワクワクします。アフリカの喜望峰(ケープタウン)でたくさん発見されていることは、わたしが肥前磁器の勉強を始めたころに、骨董屋さんでいろんなお話を聞いていましたが、その貿易路を示した地図もあり、「世界に運ばれた」という言い方が大げさではないことが、あらためてわかります。

実はまだざっくりと読み終えただけですので、これからじっくり細かく読み直します。著者の野上建紀先生は、長崎大学での研究職に入る前には、佐賀・有田にある「有田町歴史民俗資料館」におられたそうで、そこもまた本書の内容への説得力となっています。本書の巻末に載っている、引用文献・参考文献のリストも、とてもありがたく。そのうち花祭窯の陶片も見に来て下さったら嬉しいな、と思います。

『海に眠る古伊万里』(雄山閣)野上建紀著

佐賀出張―この季節の花祭は、新緑と小鳥の鳴き声のパラダイス♪

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佐賀出張―この季節の花祭は、新緑と小鳥の鳴き声のパラダイス♪

佐賀・花祭にやっと行って来ることができました。例年春になると「これ以上放置すると、草刈りがたいへんなことになる!」という焦りが出てきて、それが背中を押してくれます。ダンナ・藤吉憲典は、陶芸材料等の仕入れや情報集めにしばしば佐賀(というか、有田エリア)に足を運びますが、わたしは毎回同行するわけではないので、気が付いたらうっかり時間が経ち過ぎている!事態に。なので、やっと行ってこれると、ホッとします。今年こそはもっと定期的に行くぞ!という決心を、もう何年続けていることか(笑)

さて花祭。花祭窯も30年目を迎える今年は、そろそろ今後の整備についてきちんと考える時期に来ているように思います。創業以来、無意識のうちに「感性」を研ぎ澄まし育む場所となった自然豊かな里山は、津屋崎に移転した後もその働きが健在であることを、訪れるたびに思い知らせてくれます。庭というには野生化しつつあるエリアの草掃いは、なかなかの重労働。ですが、緑に囲まれさまざまな小鳥の美しい鳴き声が空から降ってくるなかでの作業は、汗びっしょりになりつつも爽快で、なんとも言えない充足感があります。

ミニ果樹園計画続行中ですが、この間にミカンの木がひとつ枯れてしまいました。レモンとポンカン(のはず、の柑橘)と昨年植えた梅の木の皆さんは健在。土地に合う合わないもあるので様子を見ながらですが、これから増やしていきたい梅は、どうやら合いそうなので一安心です。収穫物としては、カボスの摘み残しがありましたので確保し、出始めのタケノコを掘り、大満足です。帰りにご近所の農家さんの直売所で、サイズの小さいイチゴが1パック250円で出ているのを見つけて、大喜びでゲットしました。

これからまたグングンと草が伸びてくる季節。手入れにちゃんと足を運ぶべく、スケジューリングです^^

2026年本屋大賞が発表されましたね♪

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2026年本屋大賞が発表されましたね♪

本屋大賞、第23回目だそうです。初めて「本屋大賞」なるものが発表されたとき、「書店員さんが選ぶ」という画期的な位置付けに、なんだかとってもまぶしさを感じたのを覚えています。「権威から現場へ」とでも言いましょうか(大げさ!?)そんな痛快な感じ。

今年の本屋大賞は、朝井リョウ氏の『イン・ザ・メガチャージ』。これは読んでいました。「大賞というほどだったかな?」と一瞬考えましたが、わたし自身、本書を契機に朝井リョウ氏の著作を遡ってまあまあの冊数読んだことを考えると、たしかに影響力の大きい一冊だったといえます。「推し活」をテーマにしながら、普遍的な社会問題をあぶりだしているあたりが、「凄腕」な印象につながった読書でした。

2位以下10位までの面々は読んでいませんでした。すなわち「これから読もうかな」本のリストが積みあがったわけで、ワクワクしています。翻訳小説部門の1位は『空、はてしない青』で、こちらも読んでいました。3位の『ジェイムズ』も読んでいましたので、なんとなくニンマリ。いずれも、いつものカメリアステージ図書館新刊棚で手に取ったものでしたので、これらのタイトルを選書してくださた司書さんに感謝です。図書館蔵書の選書に際しては、ある程度書店からの推薦があるのだろうとは思いますが、それでも実際に図書館に並ぶかどうかは司書さんの選択にかかっていますので、尊い仕事だなぁと思います。

本屋大賞の公式サイトに、歴代の受賞作が載っているのを、あらためて見てみました。第1回目の小川洋子さん『博士の愛した数式』は読んでいますが、その後の23回までで、読んだ本が7冊。三分の一よりも少ないことが判明しました。本屋大賞だからといって読まねばならない、ということではありませんが、機会があれば読んでみようかな、のリストに入ります。翻訳小説部門は2012年に第1回がはじまっていました。2026年までの15回(冊)のなかで読んでいたのは、わずか3冊。まだ読んでいない翻訳小説受賞作は、優先的に読書リストに挙げていきたいと思います。

「本が売れない時代」への新しい流れとしての本屋大賞。書店や図書館では、「本屋大賞特集」が組まれる季節です。楽しみにして足を運びたいと思います^^

読書『食べられる野草 採り方・食べ方・見分け方』(成美堂出版)長野修平・三宅克典監修

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読書『食べられる野草 採り方・食べ方・見分け方』(成美堂出版)長野修平・三宅克典監修

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から。緑が青々と伸びてくるこの季節に、思わず手が伸びた一冊です。もともと佐賀の里山でスタートした花祭窯。季節の野草や山菜を収穫して食すのは、当時から日常の楽しみです。海辺へ来てからは海の幸も加わり(採ってくるのは専らダンナですが)、我が家の「食」に関するサバイバル能力は、農家さんや漁業者さんには遠く及ばないものの、まあまあなのではないかしら、などと思う今日この頃。

さて『食べられる野草 採り方・食べ方・見分け方』。まず嬉しかったのは、そのナビゲートの親切さ丁寧さでした。手厚い案内は時代の要請(!?)もあると思いますが、ほんとうにわかりやすく、特に「見分け方」に関する内容は、食することを前提の本では大切なところだと思いました。野草採り山菜採りは、それが習慣化してくると、むしろ決まったもの・わかりやすいものに偏ってくる実感を持っていたので、あらためて「そういえば、これも食べれるんだった!」を教えてくれる本書は、非常に魅力的です。

今年に入ってから、すでにタラの芽はいただいたところですが、これからノビル、ツワブキ、ワラビなどの定番の顔ぶれが楽しみな季節がやってきます。昨年スタートした「畑レッスン」から引き続き畑を営んでいるわたしとしては、春になって畝のまわりに生えてくる面々のなかに「食べられる草」がたくさんあるのがわかっているので、これらを雑草扱いせずに収穫したいところです。

佐賀・花祭での生活を始めたときに手に入れた野草の本・山菜の本は、常に身近においていました。それから約30年。採取のガイド本として外に持ち出すので、まあまあボロボロになってきていたところ。本書を読んで、そろそろ新しいガイド本を手に入れてもいいかな、と思いましたので、購入決定本です^^

『食べられる野草 採り方・食べ方・見分け方』(成美堂出版)長野修平・三宅克典監修

「ふじゆりスタイルについて」のページを、久しぶりに更新しました。

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「ふじゆりスタイルについて」のページを、久しぶりに更新しました。

春はいろいろと見直したくなる季節ですね。久しぶりに「ふじゆりスタイルについて」のページを更新しました。更新前は「ふじゆりスタイル とは」というページ名でしたので、ページ名もちょっぴり変更。いつもダンナ・藤吉憲典を広報する仕事ばかりしているので、「自分について」の見直しがおろそかになりがちです。

とはいえ、何か新しく追記すべき情報があったとかいうことではなく、単なる見直し。一度完成させてアップすると、振り返ってそのページを確認する機会というのはあまりなく、放置状態になりがちです。久しぶりにページを覗くと、書いた当時の自分の状態があらわになって、恥ずかしい感じも。今回も見直しながら、ページから滲み出る、熱意ゆえ!?の暑苦しさを感じ(笑)、これはもっとスッキリさせねば!となりました。

結果、あれこれと継ぎ接ぎ状に増えていた情報をかなり削り、1ページにまとめることができました。重複していたものや余分なものをそぎ落とすことで、メニュー部分もだいぶスッキリ。「このブログ書いてる人はどんな人?」興味が向きましたら、ぜひご笑覧下さいませ^^

「ふじゆりスタイルとは」

読書『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』(講談社現代新書)川北省吾著

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読書『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』(講談社現代新書)川北省吾著

BBM=メールマガジン「ビジネスブックマラソン」で紹介されていた一冊です。持ち歩きやすい新書版でしたので、もっぱら電車のお伴として隙間時間に読んでいましたら、読み終わるまでにまあまあ時間がかかってしまいました。なんとなく内容に既視感があるなぁと思ったら、「あとがき」に、“本書は共同通信社が2022年3月から2025年4月にかけて配信し、加盟新聞社25紙に掲載された大型国際インタビュー「レコンキスタの時代」を全面改訂し、書籍用に書き下ろしたもの”とあり、腹落ち。福岡のローカル紙・西日本新聞にも掲載されていたので、毎回ではありませんでしたが目を通していました。

少し前に読み終わった、エマニュエル・トッド著『西洋の敗北と日本の選択』(文春新書)と重なるところも多く、以前に読んだ『オリバー・ストーン オン プーチン』で語られていた内容とも重なる部分があり、この手の本は複数冊読むことで見えてくることがあるなぁと感じました。特に『オリバー・ストーン オン プーチン』は、2015~2017年のインタビューがもとになっているものなので、その当時の状況=プーチンの語っていたことが、10年経った現在にどう結びついているのかが多少なりとも見えてきて、とても興味深かったです。

本書でも、国内外たくさんのキーマン(と思われる人たち)へのインタビューがメインになっています。語り手にはそれぞれの立ち位置がありますから、その方々の言うことや考え方、インタビューを経ての著者の論考をすべて是とするということではなく、ただ実際に何が起こった(起こっている)のか、その一端を知るのに、参考になる一冊でした。自分たちの生きている世の中の現状を少しでも理解するためにも、自分がどう考えるのかを整理するためにも、この手の本をもう少し多方向から何種類か読んだほうが良いかもなぁ、と思いました。

『新書 世界現代史 なぜ「力こそ正義」はよみがえったのか』(講談社現代新書)川北省吾著

藤吉憲典(ふじよしけんすけ)の三つ折りパンフ最新版が出来上がりました。

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藤吉憲典(ふじよしけんすけ)の三つ折りパンフ最新版が出来上がりました。

作家紹介の簡易パンフレットです。前回制作したのが、たしか2024年でしたので、約2年ぶり。A4サイズの用紙を三つ折りにしたコンパクトなものです。今回はCanvaでのデザイン制作で、いまだかつてなく短時間で仕上げることができたと思います。助かりますね。毎回「どの子を表紙に使おうかな」を選ぶのが楽しみのひとつ。今回は久しぶりに貝の陶箱を載せてみました。

藤吉憲典(ふじよしけんすけ)の三つ折りパンフ

写真では見えていませんが、昇り龍の部分を開いた内側には、日本語だけでなく英文での紹介も載せています。

藤吉憲典(ふじよしけんすけ)の三つ折りパンフ

ご希望があれば、送料手数料だけでお届けすることも可能です^^

陶片ミュージアム@花祭窯、2026年4月8日展示棚ひとつからスタート♪

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陶片ミュージアム@花祭窯、2026年4月8日展示棚ひとつからスタート♪

陶片ミュージアム(Museum of Ceramic Fragments)

ブログ内を検索してみたところ、2014年から「陶片ミュージアム」という名前が出てきていました。ここ津屋崎に移転してきたのが2012年でしたので、それからほどなく海辺に上がる陶片の存在に気が付いて、蒐集がはじまったのがわかります。それから「いつかつくる!」と言い続けながら、10年以上が経っていました。ついに「陶片ミュージアム@花祭窯」をオープンいたします。とはいえ、とっても小さなスケール=収蔵庫兼展示ケースとしての「棚」1つからの出発です。

なぜオープン日が4月8日なのか。

4月8日はご存じお釈迦様のお誕生日「花祭り」です。花祭=お釈迦さまの誕生日。花祭窯(はなまつりがま)の屋号は、創業地である佐賀県江北町にある地域の通称「花祭(はなまつり)」からいただいたもので、名前を付けたときは「花祭」がお釈迦さまの誕生日を意味するとは、実は知りませんでした。もし知っていたら創業日を「4月8日」で登録していたかもしれません。ともあれ、お釈迦様の誕生日=「誕生」「転生」の象徴です。「古い陶片から学び、新しい価値を生み出す」という意味を込めました。

コンセプトは ” Fragments as the origin of new value. ”

陶片ミュージアムのコンセプトは、” Fragments as the origin of new value. “。直訳すると「新たな価値の源泉としての断片」というほどの意味になります。

実際の棚展示は、こんな感じ。

陶片ミュージアム 花祭窯

↑「唐草」をテーマにした引き出し。

陶片ミュージアム 花祭窯

↑「赤絵」をテーマにした引き出し。

陶片ミュージアム 花祭窯

↑「青磁」をテーマにした引き出し。

陶片ミュージアム 花祭窯

↑「生活の道具」をテーマにした引き出し。

というような感じです。これからまたぼちぼちテーマ設定やキャプション制作を進めて参ります。

読書『傷つきやすいものたち』(小学館)ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ著/関口英子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『傷つきやすいものたち』(小学館)ドナテッラ・ディ・ピエトラントニオ著/関口英子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、なんとなく手が伸びましたが、もしかしたら視界に「関口英子」さんの名前が見えたからかもしれません。わたしは著者名もろくろく覚えないので、訳者さんのお名前を覚えることもほとんどないのですが、関口さんのお名前に既視感がありました。ブログ内検索をかけてみたら、やはり3冊ほどヒット。なかでも昨年読んだ、パオロ・コニェッティ著『帰れない山』(新潮社)は記憶に新しく、心に残っていました。本書もイタリア文学のさまざまな賞を受賞しているようです。

さて『傷つきやすいものたち』。小学館の公式ウェブサイトでの紹介欄<編集者からのおすすめ情報>の文章が、内容を簡潔に表していました。主人公の中年女性の「夫の妻」「父の娘」「娘の母」それぞれの役割における息苦しさが詰まったストーリーに、さらに時折「母の娘」であった苦しさも紛れ込みます。実際に起きた殺人事件から着想を得て書かれたという本書は、ミステリー的な要素もあるものの、主題は人間ドラマであったと思います。舞台は現代ですが、いつの時代にもありえる物語。映画になっても見応えがあるだろうな、と思った一冊でした。

著者のドナテッラ・ディ・ピエトラントニオさんの著書は、邦訳本が何冊も出ているようでしたので、遡って読んでみたいと思いました。さっそく図書館検索してみたところ、一冊ヒットしましたので、まずはここから。

読書『わたしたちの図書館旅団』(東京創元社)ジャネット・スケスリン・チャールズ著/高山祥子訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『わたしたちの図書館旅団』(東京創元社)ジャネット・スケスリン・チャールズ著/高山祥子訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、「図書館」のキーワードで手が伸びた一冊。なんとなく既視感があるなぁと思ったら、同著者の「図書館関連本」を以前に読んでいました。約三年前に読んだ、『あの図書館の彼女たち』です。『あの図書館の彼女たち』は、第二次大戦中のパリにあったアメリカ図書館の話でした。本書『わたしたちの図書館旅団』は、第一次世界大戦下のフランス北部で活動した、アメリカ・ニューヨーク公共図書館の司書が主人公。

1918年から始まる主人公の物語と、彼女の物語を小説にしようとする、1987年のニューヨーク公共図書館で働く作家志望の女性スタッフのストーリーが、行ったり来たりしながら進みます。このような構成であることで、本を執筆するための調査・研究のなかに、たくさんの物語の種があることがわかります。そう考えると、時代は前後するものの、本書『わたしたちの図書館旅団』は『あの図書館の彼女たち』の続編的な感じです。ひとつのシリーズとして読むと、戦時下の図書館の役割(ひいては平時にも普遍的な図書館の役割)と、重要性が見えてくると感じました。

極限的な状況のなかでの、本・読書の存在意義・価値が、繰り返し語られます。図書館というハード(建物)のみならず、本・物語自体が「避難場所・逃避場所」として機能することは、読書好きならば大きくうなずくことでしょう。「開架式図書館(オープンシェルフ)」「読み聞かせ」「移動図書館」と、現代の図書館活動のなかでも重要なキーワードが次々に出てきて、図書館活動の歴史を知る一助にもなりました。ところで当時のフランスでは、図書館司書といえば男性が当たり前であったようで、これは意外な発見でした。物語中で「世間の人々が何を読むか、わたしたちが決めるべきです」という権威主義の男性司書に対して、主人公が「埃を払う必要があるのは、(本棚ではなく)古臭いあなたの考え方でしょう」と言い返すシーンが痛快です。

本好きの方にお勧めの一冊です。

『わたしたちの図書館旅団』(東京創元社)ジャネット・スケスリン・チャールズ著/高山祥子訳