久しぶりに有田-佐賀有田へ仕事道具の買い物に同行してきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

久しぶりに有田-佐賀有田へ仕事道具の買い物に同行してきました。

花祭窯の独立以来ずっと、材料や道具は有田焼の産地である佐賀県有田とその近辺にある関連産業の事業者さんにお世話になっています。そのほとんどは、藤吉憲典が独立前に、有田の複数の窯元で商品開発デザイナーとして働いていた時からお世話になっていたところ。つまり窯元勤め時代を合わせると、30年を超えるお付き合いだったりします。

久しぶりに、有田への仕入出張にダンナと一緒に行ってきました。ダンナはたびたび足を運んでいますが、わたしは約1年ぶり。「つくる」に関してはノータッチのわたしですが、足を運ぶことで、制作環境について気づくこと・理解することもたくさんあるので、できれば年に数回は足を運びたいと思っています。

今回の有田行きは、絵付に使う筆を購入するのが主目的でした。「筆」は、実は伝統工芸。国内の職人さんの廃業が増えていて、磁器の絵付用の筆も、長いこと使っていた職人さんのものがどんどん手に入りにくくなっています。陶芸材料を幅広く扱う古川商店さんへ。昨年おじゃましたときにも、筆をどこから仕入れるか今後の課題とお店の方がおっしゃっていましたが、「この方の筆は、もう在庫限りなんですよね…」と並べて見せてくださったなかから、「ダミ筆」を選び確保することが出来ました。

次は梱包材やさんへ。梱包材は全国どこにでもありますが、花祭窯では化粧箱の制作とクッション材は、有田で調達しています。やきもの用の梱包材量を幅広く扱っている岩永商会さんへ。クッション材こそ、ネットでもどこででも販売していますが、岩永商会さんではわたしたちにとって使い勝手の良いサイズにカットされたものが何パターンも揃っているので、有田に来たときはついで買いをすることにしています。店内はそれほど広くはありませんが、やきものを包むウコン布や真田紐や紙袋など、「やきものを扱っている人が欲しいもの」が置いてあるので、「あ、これも必要だった!」と目に留まるのもありがたく。

それから今回は足を運びませんでしたが、有田の「卸団地」と呼ばれる業界関連の工場やお店が集積する場所に、化粧箱を作ってくれる蒲原興産所さんがあります。もう長いこと同じパターンでの化粧箱制作をお願いしているので、電話注文して作ってもらって送ってもらうというお取引になっています。長年、やきもの=ワレモノ用の箱をつくっている会社なので、強度面で安心であるというのと、丁寧な仕事できれいな紙箱を作ってくださること、品質に対して制作料金も良心的だと思うのでずっとここにお願いしています。

有田での用事が済んだら、創業地・花祭へ。冬の間できていなかった草刈りです。ちょうど梅の花が咲き出したところでした。ちゃんと手入れできていなかったので、木が少し弱っている感じで申し訳なく、蔓をはらって元気に復活してくれるよう声掛け。数年前に植えたリンゴの木は二本とも元気でした。柑橘系の木は、たびたびうっかり草刈り機でカットしてしまったりしていましたが、それでもちゃんと根付いています。ありがたいですね。

桜の木が二本、とても大きく育っていましたので、今年の桜の季節が楽しみです♪

読書『血の魔術書と姉妹たち』(早川書房)エマ・トルジュ著/田辺千幸訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『血の魔術書と姉妹たち』(早川書房)エマ・トルジュ著/田辺千幸訳

いつものカメリアステージ図書館新刊棚から、表紙の雰囲気に惹かれて手に取りました。読み終わって出版社を確認したら、早川書房さん。思わず「やっぱりね~」と声に出ました。わたしのなかでは、すっかり「早川書房=海外の小説に強い出版社」のイメージです。

478ページですからまあまあの厚さの長編ですが、ぐいぐい引き込まれて読了。著者はSFやファンタジーの短編をいくつも出していて、長編は本書が初だったということでしたが、最後までドキドキしながら読みました。登場人物たちがその後どうなるのかとても気になり、なんなら続編も期待したいところです。

「魔術」「魔術書」というワードには、魅力があります。すぐに思い浮かぶのは「ハリーポッターシリーズ」ですが、ハリーポッターもそうであったように、おどろおどろしいシーンや残酷なストーリーとは切り離せないところもあります。こうした「闇」の部分を描くからこそ、読者が引き込まれるということもあるのだろうと思いつつ。

場面(舞台)も登場人物も生き生きと描かれていて、読みはじめてすぐに、頭のなかに鮮やかなイメージがわいてきました。引き込まれる小説は、そんなふうですね。あくまでもわたしの脳内の勝手なイメージですが、こんなふうにビジュアルイメージが容易に浮かぶ小説は、映像化もしやすいのかなぁと思いました。

小説の続編と、映画化があるのならば、必ず読みたい・観たいひとつです。

『血の魔術書と姉妹たち』(早川書房)エマ・トルジュ著/田辺千幸訳

ご質問「いろいろな藤吉憲典作品を、ウェブ上でまとめて見れる場所はありますか?」へのお返事。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

ご質問「いろいろな藤吉憲典作品を、ウェブ上でまとめて見れる場所はありますか?」へのお返事。

最近、お客さまから聞かれることが増えてきた質問です。そういえば、藤吉憲典のつくる器もアート作品も、ジャンルを超えて一覧できる場所というのは、ウェブ上にありません。あえて挙げるならば、藤吉憲典の公式インスタグラムでは、そのときどきに撮ったものをアップしていますので、器も彫刻も書画も、いろいろなものが画像としてあがっています。

藤吉憲典公式インスタグラム https://www.instagram.com/ceramicartist_kensukefujiyoshi/

アート作品については、藤吉憲典の公式サイトで作品を掲載しています。

藤吉憲典公式サイト ARTWORK

器については、蕎麦猪口はオンラインショップのサイトでご覧いただけるようにしていますが、それ以外のものにつきましては、一覧でご覧いただける場がありません。また蕎麦猪口も、購入についてはここ数年ずっと在庫希薄でお待たせし続けている状態で、申し訳ない限りです。

花祭窯 蕎麦猪口倶楽部

このように、見ることができる場所が分かれているうえに、掲載されていないものも多数なので、ほんの一部ではありますが、「いろいろな藤吉憲典作品を見れるページ」を作ってみました。

もともと、器に興味のある方々と、アート作品に興味のある方々は異なるので、一緒にしない方が探しやすい、という考えから、「分けて情報発信」をしてまいりました。が、上のようなご質問を頂けるということは、最近は「藤吉憲典作品」というくくりで探してくださる方が、少しづつではありますが、増えてきているということですね。とっても有難いことです。「藤吉憲典作品を、ジャンルを超えて一覧できる場所」ウェブ上にそろそろ作る時が来たのかもしれません。ちょっと模索してみます^^

「Chat GPTを自分の仕事にどう生かしているか?」の、その後。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

「Chat GPTを自分の仕事にどう生かしているか?」の、その後。

ホリエモンこと堀江貴文氏の著書『堀江貴文のChat GPT大全』(幻冬舎)を読んだのは、2023年11月も終わろうとしていたころ。わたし自身が実際にChat GPTを使い始めたのは、そこからまた時間を経た2024年2月のことでした。

その後のたった1年の間に、世の中には生成AIをテーマとしたセミナーや本が大量に出てきて、実際に仕事で実用的に生かしている人もどんどん周りに出てきて、日常的にさまざまな場面で「知らなかっただけで、実はこれも生成AI」というサービスに取り囲まれていることに気づく…という今日この頃。ウェブ上のサービスにおける、チャットボットでのヘルプ機能などは、どんどん改良が進んでいるのを実感します。例えば、花祭窯ではクラウド会計システムを利用していますが、決算書の作成や確定申告の準備でわからないことが出たときも、ほとんどはヘルプの自動回答で解決し、すごいなぁと思いました。

Chat GPTというのは、そんな生成AIのなかのひとつのサービスなわけで、生成AIを学んで使いこなそうとしているお友だちの話を聞けば、いろいろなタイプのものがあり、それぞれに得意不得意があるから、ケースに応じて使い分けるのが良い!ということだそうです。実際に実践セミナー的なものに参加して、知識としていろんなサービスがあることがわかりました。が、わたしにできる方法は、自分の理解の範囲で少しづつ前に進むこと。なので、身近で信頼できる方々がSNSで共有してくれる「こんな使い方してみた」という事例を参考にしながら、自分にあてはまる方法を試しているという感じです。今のところ、意識的に使っているのはChat GPTだけ。

一番最初に「これは使えるかも」と取り入れたのが、翻訳機能としての使い方。前にもブログに上げていましたが、Deeplとの二段構えで使っています。両方使うことで、自分の伝えたいニュアンスに近い表現を見つけるのが以前より容易になり、英文メール作成に掛ける時間はずいぶん短縮しています。Chat GPTの良いところは、なぜそのような言い方にするのがベターなのか、きちんと説明もしてくれるところ。とても勉強になります。お友だちに、Chat GPTを英会話の先生のように仕立てて使っている方がいるのですが、さもありなん、です。使いこなしている方は「自分用」にカスタマイズしているのですね。

それから最近増えている使い方は、「検索」。「もともと検索はAIの得意とするところ」という話を聞いて、そりゃそうだ!と思いました。出典とともに情報を並べてもらうことができるのは、とても便利です。もちろんChat GPTの画面に「ChatGPT の回答は必ずしも正しいとは限りません。重要な情報は確認するようにしてください。」と出ている通り、「裏をとる」ことは必要です。Chat GPTに限らず、インターネット上にある情報はそういう(ファクトチェックを要する)性格のものという前提ですね。

それからもう一つ、例えば作品紹介などの文章作成をする際に使うのも便利ですが、Chat GPTはもともと英語で考えて答えが戻ってきているのか、日本語での回答も言い回しが英語っぽいことがよくある、ということに気が付きました。もともとAIが作った文章をそのまま使うという選択肢はありませんが、「人の目チェック」の必要性は、わたしは使うほどに感じています。これも使いこなしている方に聞くと、どのような日本語にすべきかの細かい指示をパターン化しておくことで、ずいぶんと解決できるようですが、なかなかそこまでは出来ておりません。

本日は、自分の進捗状況備忘録としてのブログでした^^

お散歩がてら津屋崎千軒のお雛様訪問:なごみ→豊村酒蔵→藍の家。

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お散歩がてら津屋崎千軒のお雛様訪問:なごみ→豊村酒蔵→藍の家。

ご近所観光案内施設・なごみが、「ご近所のお雛様」情報を発信してくれております。さっそく週末に見て回ってきました。

津屋崎千軒のおひなさま2025

まずはなごみからスタート。見ごたえのある大きな雛段飾りです。

なごみのお雛様

続いて豊村酒蔵。お座敷にずらりと並んでいます。よく見ると、三組のおひなさま。たくさんのお人形さんとお道具が、なんとも豪勢です。

豊村酒蔵のお雛さま

そして藍の家。今年は1階だけでの展示ですが、それでもたくさんのおひなさまがあって、見応えがあります。

藍の家のおひなさま

藍の家のおひなさま

お雛様は、見るのは楽しいばかりですが、設営と撤収がたいへんなのですよね。毎年頑張って並べてくださる皆さんに心より感謝です。三月末まではご覧いただけるとのこと、お散歩がてら津屋崎千軒でお雛様巡り、いかがでしょうか?

津屋崎千軒のおひなさま2025

福津市立図書館協議会委員の任期中最後の会議に出席して参りました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

福津市立図書館協議会委員の任期中最後の会議に出席して参りました。

2023年7月からの2年の任期で採用された「福津市図書館協議会委員」の、任期中最後(たぶん)の会議に参加して参りました。任期自体は2025年6月末までとなっていますが、次回の会議は7月以降の開催になるため、実質最後のお務め。

市立図書館の運営について、年に数回、有識者・図書に関わる地域の諸団体・市民が集まり、よりよい図書館運営のための意見交換をするための協議会。「図書館協議会」の設置は、図書館法で定められているもので、全国にある公立図書館の多くがその仕組みを採用しているとのこと。設置していないからといって、罰則があるわけではないようですが。協議会メンバーに有識者だけでなく市民委員を公募する方法も、多くの公立図書館で採用されているようです。

今回の会議も、活発な意見が出ていました。行政関連の他の審議会に入っていないのでよくわからないのですが、こと図書館協議会に関しては、特に公募による市民委員さんの発言が活発で、意味のある公募採用になっているな、と感じます。わたしもそうですが、市民の代表として選ばれて席に着いたからには、図書館発展のために少しでも寄与しなければという思いがあるのですね。一方、これまでの流れから、さまざまな団体で役職的に席を得ている方々のなかには、どんどん進む図書館運営の在り方についてこれていない、あるいは自分の所属に直接的に関係のあるテーマ以外は興味が無いのが態度に出ている方々も。そういうなかで、今回の会議でもお一人傍聴に入った方がありましたので、良かったと思いました。客観的に評価する目線があることは、重要ですね。この傍聴制度は、もっと知られるべきだなぁなどと思いつつ。

ともあれわたし自身の想いとしては、お世話になっている図書館が健康的に存続してくれることが一番で、そのために自分にできることをちょっとでもできれば、というその一点。2年間の任期で遺せたものはほとんどないのかもしれませんが、ほんの少しでも貢献できていたらよいなぁ、と思いました。

明日から3月、お雛さまシーズン到来♪

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

明日から3月、お雛さまシーズン到来♪

毎年恒例の、登録有形文化財・津屋崎千軒民俗館「藍の家」で、お雛様展示の準備が着々と進んでいるようです。ご近所観光案内施設「なごみ」でも、大きな雛段が出ています。そんな「ご近所のお雛様」情報を、なごみが発信してくれております。

津屋崎千軒のおひなさま2025

昨年に国宝指定を受けた「豊村酒蔵」でも、代々受け継がれてきたおひなさまを観ることが出来そう。こうして近所でいろいろなお雛様展示を楽しむことができる津屋崎千軒は良いところだなぁ、と、あらためて思います。

我が家でも、毎年恒例の雛香合を出しました。

お雛様 藤吉憲典

もうずいぶん長いことこの顔ぶれです。そろそろ新しいお雛様も作ろうと思うんだけど…とは、ここ数年毎年効いているダンナのセリフのような気がしますが、こればかりは作り手の気持ちひとつなので、楽しみに待つしかありません。

今週末は暖かくなりそうです。ちょうど宮地嶽神社の「光の道」のシーズンでもあり、福津市内では関連のスイーツフェアも開催中。お散歩がてら津屋崎千軒でお雛様巡り、いかがでしょうか?

津屋崎千軒のおひなさま2025

2025年の1本目-映画『ゆきてかへらぬ』を観てきました。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

2025年の1本目-映画『ゆきてかへらぬ』を観てきました。

わたしにとっての毎年この時期の一大イベント(!?)「確定申告」が提出できたので、映画館に足を運んできました。2025年の1本目は、邦画『ゆきてかへらぬ』です。

「ゆきてかへらぬ」は、中也の詩のひとつに付けられたタイトル。

中原中也「ゆきてかへらぬ」

「中原中也」と聞いて、映画の中身をよく確認せずに観に行きました。ふたを開けてみれば、主役は中原中也ではなく、その恋人であった女優・長谷川泰子だったのかな、と。とはいえ、詩人・中原中也と、女優・長谷川泰子と、評論家・小林秀雄、ほぼこの三人による「三人芝居」でした。三人の熱量がそれぞれに素敵で、実に見応えがありました。なかでも泰子を演じた広瀬すずさんが、ものすごくよかったです。わたしはこれまで広瀬姉妹ではどちらかといえば「広瀬アリス派」だったのですが、この映画を見て「広瀬すず」の凄さに目を開かされました。

そして、画がとても美しかったです。京都の景色も東京の景色も、全編通して時代の空気感が漂うセピア調の色彩で、どっぷりとその世界観に浸ることが出来ました。登場人物三人の芝居がかった物言いも、いかにも時代を感じさせるもので良かったです。草刈民代、トータス松本、柄本佑ら、脇の名優たちが、「え?それだけ?」というような短い時間での登場であるのも面白く。深い余韻が残り、期待を大きく上回る素晴らしさでした。帰宅後はさっそく、中也の詩を本棚から引っ張り出し(笑)。

↑この詩集の帯の裏側に、角川ソフィア文庫から、長谷川泰子本人による『中原中也との愛 ゆきてかへらぬ』なる本が出ているのを発見。今まで、まったく目に入っていませんでした(汗)。そのうち気が向いたら読んでみようと思います^^

まずは今年の映画1本目。もともと映画館では洋画ばかり観ていたのですが、昨年あたりから邦画を観る機会が増えています。最寄りの映画館で上映される本数自体も、邦画>洋画という感じで、きっとハリウッドでのストの影響が続いているのだろうな、と思いつつ。おかげで邦画にも目が向いたので、これはこれで良いことですね。次はもう観たいものが決まっているので、封切りが楽しみです^^

映画『ゆきてかへらぬ』

花祭窯の如月(きさらぎ)の庭-春の到来に備えて準備を整える。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

花祭窯の如月(きさらぎ)の庭-春の到来に備えて準備を整える。

二月は気温の低い日が続きました。今日からようやく少し気温が上がりそうで、ホッとしているところです。これから暖かくなって植物たちが動き出すのに備えて、花祭窯の小さな露地も、ガーデナー・造園家のガーデンアルテさんに入ってもらいました。だいたい1年に1回の頻度で、プロに整えていただくようにしています。昨年はやはり2月頃に「そろそろお願いしないとね」と思いつつ、うっかり4月になっていたので、その反省を生かして早めに依頼。

花祭窯の如月の庭

花がほぼお終いのサザンカもすっきり。

花祭窯の如月の庭

ずいぶんと上に高く伸びていたサルスベリやザクロも、すっきり程好い高さに整いました。

花祭窯の如月の庭

こうして見ると少々寂しいですが、これからここに緑が増えてきます。

花祭窯の庭 ジンチョウゲ

ジンチョウゲも毎年しっかり花をつけてくれます。もう少ししたら香ってきそうです。

読書『暗殺者たち』(新潮社)黒川創著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『暗殺者たち』(新潮社)黒川創著

先月読んだ黒川創さんの『この星のソウル』がとても興味深かったので、図書館で著者名検索をかけて、本書を借りてきました。

本書は「日本人作家がロシアで大学生への講義として語っている」という形で成り立っています。最初から最後まで口語体。その文体のやわらかさが、わたしにとっては少し難解だった内容を、読みやすくしてくれました。前回読んだ『この星のソウル』は1890年代あたりを中心として、現代につながるお話。本書は1900年頃を中心としたお話で、やはり現代の語り手による近代史。発刊されたのは本書の方が早くて2013年発売となのですが、わたしとしては、『この星のソウル』を先に読んでいたことが、本書を読みやすくしてくれたと感じました。

伊藤博文暗殺、大逆事件の幸徳秋水とその周りにいた人物たち、夏目漱石などの名前が出てきます。本書もまた近代における日本と朝鮮半島・韓国との関係や、中国、ソ連との関係を、小説ならではの方法で覗き見ることのできるものでした。実際の事件を語るのに、文学作品を例に引き出しながら描かれるのが、興味深かったです。日本であれロシアであれ、本を書く人の政治的な思想や信条が色濃くその作品に反映される時代。その時代に限らず、そもそも「本を書く」というのは、フィクションかノンフィクションかを問わず、そういうことなのかもしれませんが。

新潮社のサイトでの紹介ページのなかに、著者・黒川さんと作家・四方田犬彦氏による対談が掲載されているのですが、そのなかで著者が「語られている個々の事実は、すべて資料的典拠を示せるファクト」とおっしゃっています。そのうえで「ここから大きな一つのフィクションをつくりだすこともできる」と。そういえば過去にNHK大河ドラマになった『西郷どん!』を書いた林真理子氏が、「事実と事実の間にあるもの、とくに何をどう言ったか、というセリフの部分は自由に作ることができるから、そこにいかに想像力を働かせることができるかが書き手の力量」というようなことをおっしゃっていましたが、まさにそういうことなのでしょう。

日本の学校教育では自国の近代史をおろそかにし過ぎているという議論はずいぶん前からあるものではありますが、今回も、自身を省みて、知らないこと理解できていないことがあまりにも多いと気づかさる読書でした。黒川創さんの作品、また少しづつ読んでいきたいと思います。

『暗殺者たち』(新潮社)黒川創著