花祭窯祝の器展

形あるものの強さ。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

形あるものの強さ。

「強さ」という表現が合っているのかどうか、ちょっと言葉が見当たらないのですが。仕事はじめに「形あるものを作るからこその喜び」を垣間見る出来事がありました。

数年前、長い海外生活から日本に戻っていらしたばかりというお客さまとの出会いがありました。藤吉憲典のつくる造形作品を特に気に入ってくださり、お付き合いが続いています。つい先日のこと、そのお客さまから「これ、藤吉先生の作品ですよね?」と届いた写真。拝見したところ、窯を開いて初期のころよく作っていた片口でした。

聞けば、お姉さまからお引越しの際に「特に気に入っているもの」として、譲り受けたなかにあったということでした。片口に一目ぼれしたお客さまが、さっそくこれを使おうと洗っていた時に「憲」の銘が目に入り、びっくりして問い合わせてくださったのでした。

そのお客さまのなかでは、藤吉が食器作家でもあることはご存じであったものの、どちらかといえば芸術家のイメージ。一方、お姉さまは「ずいぶん前に器のギャラリーでとても気に入って買った」とおっしゃるだけで、その片口の作家名もご存じなかったのでした。

思いがけず大切なお姉さまから譲り受けた器に「憲」を見つけ、とても驚いたし感慨深かったと、縁の不思議を喜んでくださったお客さま。わたしたちもまた、ありがたい出来事のお知らせに嬉しい気持ちでいっぱいになりました。

藤吉憲典は、その作陶の志として「国宝より家宝」をずっと掲げています。その意図そのままに、「人から人に大切に受け継がれるもの」となっているワンシーンを見せていただいた出来事でした。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。