藤吉憲典 カエルオブジェ

読書『キリギリスのしあわせ』(新潮社)トーン・テレヘン著、長山さき訳

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『キリギリスのしあわせ』(新潮社)トーン・テレヘン著、長山さき訳

オランダから届いたお話。読後にまず思ったのは「読後感」に既視感があるということ。とてもやさしくて、ちょっぴり切ない、そんな気持ちなのですが、過去にもそんなことがあったような。すぐにその理由がわかりました。『くまのプーさん』です。でも、キリギリスのお話の方が、プーさんのお話よりも、切ない感じ、不条理感がちょっぴり大きいかな。あくまでも個人的な感想ですが。

くまのプーさんは、石井桃子さんの訳が素晴らしくて、さらに大人になって原著を読んだら、石井桃子さん訳のイメージにぴったりの語感の英語が並んでいて、とても嬉しかったのです。本著『キリギリスのしあわせ』も、長山さきさんの訳が素晴らしいからこその、この読後感なのだと思います。ただ、原著はオランダ語になりますので、語感の確認は私には難しいですが。

『キリギリスのしあわせ』 にはいくつものお話が入っています。「なんだかちょっぴり不条理」な感じのお話も。とてもいいな、と思うのは、それらのお話から、教訓めいた説教臭い感じが一切してこないこと。同じストーリーでも、教訓めいた雰囲気が出た途端に、鼻白んでしまいますので。「ただ、そうなんだよ」というお話を書くことの方が、もしかしたら難しいのかもしれませんね。そう考えると、貴重な出会いです。

著者の『ハリネズミの願い』(新潮社)が2017年に本屋大賞の翻訳小説部門賞を受賞しているということでした。まったく存じませんでしたので、これはぜひ、遡って読んでみようと思います。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。