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読書『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚より。「ヒール」の単語を見て「プロレスのヒールになぞらえた小説かな」と思いながら借りてまいりました。読み始めてすぐに、そのまま「プロレス」のお話だと判明。ストレートなタイトルでした。

著者の中上竜志さんは、本書の前作となる『散り花』で第14回日経小説大賞受賞なさっているのだそうですが、それも「プロレス小説」だったとのこと。日経BPの公式サイトによると “「プロレスを書きたい」という強い思い” が「プロレス賛歌」の受賞作を書かせたということで、それに続く本書『ヒール』もまた、その「強い思い」の延長線上にあるといえそうです。

さてストーリーは、章ごとに何人もの登場人物の視点から描かれます。それぞれの立ち位置からの葛藤が語られ、章を読み進めるほどに全体が見えてきました。本書に限らず、プロレスを語る時に必ずと言っていいほど出てくるのが、エンターテインメントであるプロレスを、「真剣勝負」と呼べるか否かについての議論。わたしが小学生の頃には「プロレス=八百長」というような話題は、子どもたちの間でも熱く交わされていました。それをひとことで八百長と呼んでしまうのは少し違うと思っても、ちゃんと説明する言葉は持っていなかった頃のこと。

小学生の頃にテレビでプロレスを見ていた者としては、とても興味深く入り込めるお話でした。当時わたしが好きだったスタン・ハンセンやタイガー・ジェット・シンは、そういえば「ヒール」だったんだよなぁ、などと思いつつ。プロレス小説では長いこと、中島らも著『お父さんのバックドロップ』が、わたしのなかでは一番で、1993年に出た文庫版が今でも手元にあります。

遡って『散り花』も読もうと思います。

『ヒール 悪役』(日経BP)中上竜志著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。