読書『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

読書『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

読書『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

いつものカメリアステージ図書館新刊棚で発見した、久しぶりの小川洋子さん。わたしのなかで、小川洋子さんといえば『妊娠カレンダー』です。小川洋子さんといえば『博士の愛した数式』とおっしゃる方も多いですね。読んでいて日本語のやさしさとか美しさを感じる本でした。が、わたしにとってはやはり『妊娠カレンダー』の印象の方がずっと大きいままです。

さて『耳に棲むもの』。まず目を引いたのは、その表紙の不思議な絵でした。そして手に取ったら、小川洋子さんの著書だった、ということで。前情報無しに読みはじめました。最初の2編を読んでいるときは、短編集なのね、と思いました。たしかに、講談社のウェブサイトにも「作品集」と説明されています。が、独立しているように見えたそれぞれの物語はつながっていました。こういうのを何と呼べばよいのでしょうね。一つ一つ別のものとして読んでも、通してひとつのものとして読んでも、無理なく成立するしなやかさを感じます。

物語のトーンは全体的に淡々と落ち着いていて、日本語のやさしさが響いてくる感じがあるのですが、内容はちょっと不思議で、紙一重で気持ち悪さもある…という読後感です。読みながら「ああ、小川洋子さんの小説の雰囲気ってこんなふうだった」と思いました。単純に「いいお話だった!」とはならないのが、魅力なのかもしれません。

あらためて巻末の作家情報を読み、小川洋子さんの著書で読んでいないものがたくさんあることに気が付きました。遅ればせながら、遡ってみようと思います。

『耳に棲むもの』(講談社)小川洋子著

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。