Homes&Antiques 2023 Aug

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その5。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

『Homes & Antiques』8月号への藤吉憲典のインタビュー記事原稿。その5。

特集コーナー「HEIRLOOMS OF THE FUTURE(未来の家宝)」での藤吉憲典のインタビュー記事です。日本国内でこの記事をご覧いただける機会はまずないと思われることと、インタビューで尋ねていただいた内容が、作家のキャリアを理解するうえでとても有用なものだったため、元となった日本語原稿を何回かに分けてご紹介していくシリーズです。


Q10. 創作のインスピレーションは、どこで得ていますか。(Homes & Antiques)

A10. 海、山、花、鳥、動物、およそ自然にあるすべてです。山に住んでいた時には山を朝夕散策していましたし、海の近くに越してきてからは海辺を、毎朝散歩しています。また、古いものから受けるインスピレーションも大きいですね。時代を超えて残ってきたものにはそれだけの理由があると思いますし、理屈抜きにパワーを感じるものがたくさんあります。(藤吉憲典)


Q11. ご自身のキャリアのなかで、最も誇りに思っていることはどんなことでしょうか。(Homes & Antiques)

A11. 1997年に独立して以来、ずっと伝統的な肥前磁器の表現様式をそのまま生かしてきたことです。わたしには師匠はありませんが、江戸時代(1600年代~1800年代)の肥前磁器の名品の数々こそが、わたしにとっての師です。表現方法において奇をてらうことなく、流されることなく、古伊万里の先人たちが遺してくれたものを、自分の個性で形にし直すことを徹底してきました。

日本には「写し」の文化がありますが、写しとは劣化したコピーを作ることでは無く、オリジナルを超える良いものを生み出そうとする行為です。わたしがやってきているのは、まさに肥前磁器における「写し」の王道だと自負しています。現代アート市場において、わたしが投げかけたいのは、観た人をびっくりさせるような作品ではなく、心安らぐ作品、手に入れた人が笑顔になる作品です。数百年後にも受け継がれ残っていくものを目指しています。

実は、わたしが独立以来掲げている作陶理念のひとつに「国宝より家宝」があります。作りたいのは、業界や評論家に称賛されるようなものではなく、自分や愛する人のためにそれを買い、遺していきたいと思ってもらえるようなもの。なので、今回インタビューの打診をいただいたときに、テーマが「HEIRLOOMS OF THE FUTURE(未来の家宝)」であると聞いて、とても驚くとともに、嬉しかったです。(藤吉憲典)


特集コーナーへの掲載を打診してくださった、Our Media「Homes & Antiques」編集者のケイティ、作り手の魅力を引き出す質問を届けてくれたライターのドミニク、間をつないでくれたSladmoreのサラに、心より感謝です。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。