わたしにとって「パラダイス」な場所。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

わたしにとって「パラダイス」な場所。

30年ほど前の話ですが、大阪に住んでいたころのこと。忙しくてほとんどテレビを見ない生活のなか、『探偵ナイトスクープ』だけは楽しみでした。当時の司会は上岡龍太郎さんと岡部まりさんのコンビ。毎回探偵が調査する事案が、とても馬鹿馬鹿しくて面白かった。なかでも馬鹿馬鹿しさ極まる(とわたしが感じていた)コーナーのひとつに、桂小枝探偵が担当する「パラダイス」シリーズがありました。

「パラダイス」を辞書で引けば、楽園とか平和で楽しいところを意味していて、辞書で引かなくてもなんとなくそのニュアンスは日本語としても定着しています。桂小枝が取材する「パラダイス」には、偏愛的な面白さがありました。万人受けするわかりやすいパラダイスではなく、一定の世界観のなかでのパラダイス。紙一重のパラダイス。

そんなことを思い出したのは、先日草刈りに行った花祭で「楽園」を感じたからでした。すくすくと育った雑草を刈るのは、けっこうな肉体労働です。しかも我が敷地は何気にスペースが広い。ですが、さわやかなお天気に助けられ、汗びっしょりになりながら草を刈ると、頭のなかが空っぽになって、気分すっきり。道端に寝っ転がれば、聞こえるのはさまざまな種類の鳥の声と、そよ風と木のさわさわという音と、水路を流れるちょろちょろという水の音。目に入るのは青空と、ひたすらに木々の緑。木や草の香りに混ざって、柑橘系の花甘い香りがします。五感に入ってくるものが、あまりにも静かで穏やかで、まさにパラダイスなのです。そうだった、こんなふうだった、と、里山を満喫しました。

そこでの生活には、自然の怖さ厳しさが伴っていたのも事実で、両方あっての田舎暮らしでした。いずれにしても、自然の中の自分の存在を意識しないではいられない環境。自然はいつも、ずっと、美しく偉大なのです。ここに来るたびに思うことながら、ここでの生活がとても貴重なものであったことを、今回もまた再認識。こんなふうにリセットできる場所は、やはりわたしにとってのパラダイスなのだと思います。自分にとってのパラダイスを持っている贅沢を感じた週末でした。草刈りがまだ半分以上残っているので、また近々行かねばなりません。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。