小皿豆皿でおせち 藤吉憲典の小皿豆皿

仕事柄、気になること―食器屋の場合。

こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。

仕事柄、気になること―食器屋の場合。

仕事柄、気になってしまうことって、どんな職業の方にもあると思います。たとえば、日本料理人である友人と一緒に食事に行くとき、彼が選ぶお店はたいてい中華かフレンチになります。理由は、日本料理店だとどうしても仕事目線で厳しく見てしまい、純粋に食事を楽しむことが難しいから、と。

花祭窯は「食器屋」でもありますが、個人的には、どんな場面でも常に器が気になるということではありません。家庭で使う食器は、好きなもの、気に入っているものを使うのが一番ですし、好みは人それぞれ。飲食店であっても、それぞれの業態に合った器の選び方がありますから、「ひどく食べにくい」など実用的に残念なことがない限り、それほど気になりません。逆に「これは気が利いている!」という器使いに出会って、とても嬉しくなることはよくあります^^

ただ、やはり「いい料理屋さん」と言われるところに足を運ぶときは、やはり器使いへの期待も高まります。仕事で足を運ぶときは、料理を盛った状態の観察はもちろん、料理がお腹に収まったら、器を撫でまわし裏返し、しみじみと眺めます。お店の方に、どんな器なのかを教えていただいたりもします。現代ものと骨董とを取り合わせて使っておられるお店も多く、とても勉強になります。

プライベートでそうしたお店に足を運ぶときは、そこまでは致しません。が、先日あるお店に出かけたときに、無意識に器使いに対する目が厳しくなっていることに、気づきました。まずお料理が目の前に出てきた時の盛り付けが気になり、いただこうと手に持った時に取り扱いやすさが気になり、出てくる都度の器の種類が気になり…時間が経つにつれ、気になる箇所が増えて行きます。それらの「気になる箇所」は、そのまま自分たちの仕事へのフィードバック。結局、仕事目線になるのですね。

居心地の良い設え、温かくきめ細やかな接客、旬の食材を生かしたおいしいお料理。そこに、あとひとつ、器使いにももうちょっと心を配ってくれたら…!と。料理人さんは、独立前に修行先で器も含めて学んでおられる方が多いと思うのですが、「決まり事」を超えたところでの(食べる人にとっての)扱いやすさや、センスの良さを感じる器使いができるかどうかは、またさらに勉強や経験が必要なものなのかもしれませんね。

先日読んだ本「あらゆる事業は教育化する」を思い出しました。食器屋としてできることが、もしかしたらあるかもしれないな、と思いつつ。

投稿者:

ふじゆり@花祭窯

花祭窯おかみ/Meet Me at Art アートエデュケーター ふじゆり のブログです。1997年に開窯した花祭窯は、肥前磁器作家である夫・藤吉憲典の工房です。その準備期から、マネジメント&ディレクション(=作品制作以外の諸々)担当として作家活動をサポートし、現在に至ります。工芸・美術の現場で仕事をするなかで、体系的な学びの必要性を感じ、40代で博物館学芸員資格課程に編入学・修了。2016年からは、教育普及を専門とする学芸員(アートエデュケーター)として、「Meet Me at Art(美術を通して、わたしに出会う)」をコンセプトに、フリーでの活動をスタートしました。美術を社会に開き、暮らしと美術をつなぐことをライフワークとして、コツコツと歩んでいます。