こんにちは。花祭窯おかみ/アートエデュケーターふじゆりです。
再読書『コラージュ入門』(一麦出版社)藤掛明著
今月末にコラージュを活用した美術講座を行うので、資料準備の前に読み直し。わたしがアートエデュケーターとしてコラージュを取り入れるきっかけとなったのは、学芸員技術研修会の「美術館でコラージュ療法」講座でした。そのときご指導くださった、聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科教授・藤掛明先生の本です。2021年に新刊を購入していますので、約2年ぶりの復習読書。
藤掛先生は博士号を持つ臨床心理士であり、特に芸術療法のスペシャリストとして現場での仕事をしてこられた方です。本書は「コラージュ療法入門」ではなく、あえて「療法」を外して『コラージュ入門』となっています。治療や更生を目的とした臨床的コラージュの枠を出て、誰もが(本書での言い方を借りれば「一般の人たち」が)使い、自己の成長に役立てることが出来るコラージュ。活用の場が広がっていくことへの期待を感じさせる本です。
以下、備忘。
- 「自分を新しく発見できる」「自分が好きになれる体験」
- 完成した作品は、独特の魅力を放つ。それは美術上の美しさというのに止まらず、自分を新たに知り、周囲との関係を考えるヒントに満ちた不思議な魅力がある。
- コラージュで自分を知り、関係を深める
- コラージュのイメージの心地よい流れに身をゆだね、そのイメージから、勇気づけられるもの、触発されるものを受け止めていけばよい
- 即興的に取り組む
- 「最近のわたしの気持ち」
- 第一印象
- 作者の意図を味わう
- 多義的に味わう
- 「印象や感想を交換する」
- 「解釈はしない。印象を述べる」
- その後も作品を眺め直す習慣を作る
- 自由にイメージから入る
- (Doコラージュは)言葉の関与が増え、表現に一定のコントロールが及びやすくなる。
- (その結果)メッセージ性・意図性が非常に高まる。
- (研修参加者の期待)自分を発見する
- 自己洞察も自己表現も楽しいが、一番楽しくわくわくするのは、会場で起きる相互作用性のドラマ
- 会場参加者全体に向かって肯定的なコメントをフィードバックする
- 暴くのではない
- 安全で保護された環境を用意し、開放的な雰囲気の中で、意味ある発見がもたらされる
- 頭の整理
- 欲しいものと要らないものがくっきりと浮かび上がってくる
- 現実には好きなものを自由に手に入れることは無理でも、台紙のイメージの世界ならば体験できる
- 自分の世界を自分らしく意味づけしてもよいのだという自信
- 他者のコメントが、他者の意味付けと異なる場合でも(というか異なるからこそ)、それも多義的な意味の一つとして受け止められ、むしろ作者の世界を広げ、深めてくれることになる。
- 新しい自分との出会いであり、多くは、少し感じていたものを言葉にしてもらったような納得感
- 自己受容
- 「何かがわかるものではなくて、作ったものをヒントにして、いろいろなことを考えて行く方法」
- 作品が完成した段階では、まだイメージは多義的なままの世界をとどめている
- 完成後の分ちあいを丹念におこなうとその時点で、統合に向けて動き出します。
- 多様性の世界
- 参加者一人ひとりの感想が皆意味がある
- 描き手自身やグループメンバーが、どの意味にぴんと感じるかで、より意味のある事柄が明らかになってきます。
- 今大切な意味が何なのかを発見しあう、探しあう
- 一つの正解に絞り込むのではなく、一つでも多くの正解を生み出し、広げていくという感覚
- ここがめずらしいな、この人のユニークな表現だな
- 一つの作品の中に共通しているテーマや比喩を探す
- 台紙の使い方の特徴から分かること
- 描画作品の用紙は、実施者から参加者に与えられた「世界」
- この与えられた「世界」をどう使おうとしているのかという視点
- 空間象徴
- コラージュ作品は、作成者本人に自由に語ってもらうのが大切
- 相手の大切な世界を引き出す質問
- コラージュ画面の写真が、自分自身の(比喩的に)分身であることを感じてもらう体験
- 無意識と意識との双方にまたがっており、言葉によって介入することに向いている
- 既存の写真に意味を与えていくおもしろさ
『コラージュ入門』(一麦出版社)藤掛明 著より
今回は特に「わかちあい」における要点をピックアップしてみました。研修の場面でも「対話」が復活し、ワークショップに取り入れることが出来るようになって参りましたので、ますますコラージュの効果が期待できます。楽しみです。